連載「ふなごさんに聞く!」。舩後ふなご議員が現在、国会で取り組んでいる政策課題や活動についてQ&A形式でわかりやすく解説します。第3回は「インクルーシブ教育」について、詳しく解説します。

第一回 重度訪問介護

重度訪問介護って、そもそもなんのことですか?

障害者が生活するために使える制度(福祉サービス)の一つです。障害者のための制度はいろいろありますが、重度訪問介護は障害者のなかでも特に、全身が動かせないような重い人を対象にしています。具体的にはお風呂や食事、お出かけ、会話(声を出せない人もいます)、見守りのなどのお手伝いを長時間連続でできるというものです。身体障害者だけでなく、知的、精神障害のある人も使えます。

とっても便利!この制度があれば、障害があっても、不自由なく暮らせるんですか?

う~ん…。ところが、そうでもないんですよ。この制度、家にいる時には使えるんですが、通勤や働いている時、通学や学校では使えないんです。新型コロナウィルス感染防止で進んだ在宅勤務の時もダメなんです。それに大人だけに認められていて、18歳未満の人も使えないんです。

それは大変だ!改革が必要ですよね。

そうなんです。多くの障害者がこの問題に困っているんです。実際私も、同僚の木村英子議員も、この制度を使えないルールのせいで、国会議員として働く間は、全部自分でサービス料を払わなければいけなくなる可能性があったんです。今は「とりあえずの対応」として、参議院が「肩代わり」をしてくれています。私自身はひとまず何とかなりましたが、これでは、他の多くの障害者の人たちは働けないままで、不公平なんです。

なんとかしないといけないですね。舩後ふなごさんの出番ですね。

このサービスを使っている人は、家で寝ていても、仕事をしていても、外出していても常に、お手伝いする人が必要なんです。それだったら、仕事に行ったり学校に行ったりして、いろんな人と関わったり、やりたいことをやったり、あるいはお金を稼いで使ったりすることで、充実するし、楽しく過ごせると思いませんか。

ですからこれから、まずは、学校や仕事では使えないと決めている、国(厚生労働省)のルールをなくしていきたいと思います。さいたま市では、家で働いている場合に、重度訪問介護と同じようなサービスを使える、独自の取り組みをしているんですよ。

また国も10月から、民間企業で働く重度障害者の人を対象に重度訪問介護に代わるサービスを始めるそうなんです。こういう取り組みを使う人に、その結果どういう風に生活が充実したか調べ、その結果を根拠にして国に、重度訪問介護の使い方を「変えてください」と働きかけていきたいと思っています。

第二回 ALSって?

舩後ふなごさんはALSという病気なんだよね。どんな病気なの?

ALSの正式名称は「筋萎縮性側索硬化症きんいしゅくせいそくさくこうかしょう」といいます。難しい名前ですね。この病気を発症すると、歩く、話す、食べる、呼吸をするなどの運動ができなくなります。初めて症状が出てから、数年で「全身まひ」の状態になり、そのままだと、亡くなると言われています。

全身まひ?それって、どんな感じなんですか?

「太いロープで指の先までグルグル巻きにされ、身動きとれない状態」といえば、ピンとくるでしょうか。体が動かなくなってから、ALS患者はずっと一生、続くのです。私も今、「全身まひ」の状態です。

そうなんですね。どうしてこの病気になってしまうのですか?

いろんな人が研究をしていますが、原因はわかっていないんです。この病気を治す薬も、残念ながらありません。病気になるのも、ある日突然なのですよ。どんな生活をしていたか、どんな仕事をしているかといったことは、関係ないと考えられています。

どのくらい患者さんがいるのですか?

日本には約1万人の患者さんがいます。世界では、有名な科学者のホーキング博士もこの病気でした。

舩後ふなごさんは、この病気があるから、「人工呼吸器」という機器をつけているんですよね?

そうなんです。この病気になると、息を吸ったり吐いたりするために必要な筋肉も動かなくなってしまうので、機器で体に空気を送り込んでいるんです。ただ、機器から空気を送るための管を喉につなぐため、声を出せなくなってしまうんですね。だから、目を動かしたり、顔の動きで反応するセンサーでパソコンを操作したりして、周りの人と会話しています。

なんだかそれって、かっこいいですね!

すごいでしょう。ALSになって体は動かなくても、人の力をかりたり、機械をつかったりすれば、できることはたくさんあるんです。私は短歌を作ったり、ギターを弾いたりもできます。みなさんのおかげで、国会議員にもなることができました。ほかのひとも、仕事をしたり会社の社長をしたり、いろんな活動をしています。ALS患者さんと会うと、きっと、いろんな発見や驚くことがあると思います。ぜひ、いろんなALS患者さんに会ってみて、お話をしてみてくださいね。

第三回 インクルーシブ教育

舩後さんは「障害のある人もない人も誰もが自分らしく生きられる社会づくりの土台はインクルーシブ教育」って言っているよね。でも「インクルーシブ教育」って、なんのことですか?

インクルーシブは一言でいえば「分けへだてられない」という意味です。ですから「インクルーシブ教育」は、障害や国籍、民族、宗教や性的指向(どんな性別の人を好きになるか)を理由に排除されず、様々な人が同じ場所で一緒に学ぶ、という意味になりますね。

あれ?いまはみんな一緒に勉強していないんですか。

そうなんです。障害のある子は、障害児だけが通う学校(特別支援学校)に通っていることがあります。同じ学校に通っていても障害児だけのクラス(特別支援学級)に分けられていることも少なくありません。

私のように人工呼吸器を使用していると、「元気な子と一緒だと危ない」などと言われて、障害児だけの特別支援学校への入学を指定されることもあります。また知的障害のある子も「勉強についていけないから、丁寧に見てくれる特別支援学校がいいよね」と言われるんです。

でもどうして、インクルーシブ教育が大事なんですか?

障害があったり、国籍が違ったりする子と小さいころから一緒にいることで、自分とは少し違う人と、どうやったら仲良くできるか、楽しく過ごせるかを自然と知ることができるようになります。私が40歳のころに病気になって、急に障害者になったように、誰もがいつ、障害者になるかわかりませんよね。そういうとき、小さいときから障害のある子とつきあっていたら、どんなふうに生活するのか、困ること、楽しいこともイメージしやすくなると思います。そうしたことを通して、誰もが差別をしない、されないようになるとも思います。

実現のためにどうすればいいのですか。

「みんな違ってみんな一緒」「障害に基づいて分けることは差別」という考え方を、社会全体で当たり前にしていくことです。

実際の学校のなかで考えてみると、授業や試験、クラス活動、行事に参加できるように、その子の状態に合わせてやり方を変える工夫(合理的配慮)が必要です。公立学校では、よほどの負担ではない限り、この工夫をしないといけないことになっています。

大切なのは、その子を変えようとするのではなく、学校の方をどのように変えれば、その子と一緒に過ごし、学べるのか、子ども、親、先生たちが一緒に考えていくことだと思います。