2023年4月12日 資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会 参考人質疑

【参考人】

蟹江 憲史・慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授

竹内 純子・特定非営利活動法人国際環境経済研究所理事、東北大学特任教授

高村 ゆかり・東京大学未来ビジョン研究センター教授

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、蟹江参考人、竹内参考人、高村参考人、御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。

私は、ALSという難病により全身麻痺で、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。そのため、事前に作成した質問をパソコンで読み上げさせていただきます。聞きづらい点もあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。

本日は、気候変動による災害や環境破壊という私たちの日常生活に身近な問題であり、かつ地球規模での喫緊の対応が必要な課題がテーマとなっております。

そこで、まず3人の参考人の皆様にお尋ねします。

国連の持続可能な開発目標やパリ協定を踏まえ、政府は、2030年には温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年のカーボンニュートラルという目標に向け、化石燃料中心社会から脱却し、クリーンエネルギー中心の社会、経済、産業構造へ転換することをうたっています。

一方、この間の温暖化で、シベリア、アラスカなどで永久凍土が解け出し、数万年にわたって封じ込められていたメタンガスが大気中に放出されています。メタンガスはCO2の二十五倍もの温室効果があり、その大量放出は温暖化をより一層加速させ、不可逆的な暴走状態に陥れる危険性が指摘されています。既に永久凍土の融解は後戻りできる地点を越えてしまったと警告を発している科学者もいます。

このような危機的状況において、政府が掲げた目標についてどのように捉えておられるか。また、この目標達成に向けて、国、自治体、企業、市民社会の課題は何だとお考えになりますか。

○会長(宮沢洋一君)

それでは、皆さんに質問のようですので、まず蟹江参考人からお答えをお願いします。

○参考人(蟹江憲史君)

御質問いただきまして大変ありがとうございます。

SDGsもそうですけれども、目標を掲げるということの効果がいろいろなところで出始めてきています。それはまあこれまでも指摘されたとおりですけれども、目標を掲げるということは非常に大事だと思います。可能な限りやはり高い目標を掲げていくということが非常に大事だと思いますし、そのビジョンを明確にしていくということが非常に大事になってくるというふうに思っております。

ただ、今そのために非常に大事、より大事になってきているのは、行動をどうするか、アクションをどうやってつくり出していくかということだと思います。具体的にどうするかということですね。その意味で、いろいろな地域でもゼロエミッション、2050年に向けた行動を開始するという目標を掲げるところまでは来ていますので、これはもちろんそのまま続けていくべきだと思いますけれども、あとはそれを実現するための方策を具体的に考えていく、今はそういうフェーズに来ているのではないかなというふうに思います。

ただ、同じように、生物多様性もそうです、それから貧困もそうですし、いろいろなところでSDGsに関して言えば課題が掲げられているんですけれども、まだない目標もあります。気候変動は目標があって動き始めていますので、是非ほかの分野でも目標を掲げて、そこに向けて次のステップとして政策を実体化していくというプロセスがこれから非常に大事なのではないかなというふうに思います。

○会長(宮沢洋一君)

では、次に竹内参考人。

○参考人(竹内純子君)

舩後先生、御質問いただきまして、ありがとうございます。

非常に強い危機感に裏打ちをされた御質問を頂戴したというふうに考えております。

日本の目標をどう考えるかという御質問にお答えするとすると、目標を高くするといったようなところは、実はちょっと時間軸をよく考える必要があるというふうに思っております。2050年、まあ30年という時間も変化に十分かと言われればなかなか難しいところはございますが、2030年といったようなところで、余りにこの野心を引き上げる引き上げるという方向にばかり行きますと、ちょっとそちらの目標達成に足を取られて、二足のわらじ、先ほど高村先生が言われた二足のわらじをうまく履きこなすことができなくなるといったようなところも懸念をされるところでございます。

そうした中で、ちょっと御質問の趣旨からそれてしまうかもしれませんけれども、私は、日本に期待をされているのは、実はその適応の分野、日本というのは、CO2の削減というような文脈からは、皆さん、CO2をどう削減するかというようなところに皆さん注目を、今目標というようなところでされていると思うんですけれども、この増えている自然災害にどう適応して、ある意味、人命を救い、被害を小さくしていくかといったようなことの重要性が極めて上がってきております。

そうした中で、実は、日本というのは自然災害が極めて多く、かつそれに対応していく、先ほど嘉田先生もおっしゃってくださったような地域の知恵から防災技術、そういった保険制度も含めて、極めて多くの災害に適応してきた国でございます。

国連気候変動交渉の場等でも、日本に対して、この適応分野で非常に大きな存在感を期待をするというような声をいただくこともございますので、日本の46%や2050年カーボンニュートラルという目標がどうかということだけではなくて、日本がこの分野において何を得意として貢献をし得るのだろうといったようなところはもう少しスコープを広げてもよいのかもしれないというふうには考えております。

私からは以上でございます。

○会長(宮沢洋一君)

続いて、高村参考人。

○参考人(高村ゆかり君)

舩後先生、どうも御質問ありがとうございました。

先ほどの吉良先生の御質問にも関わっているかと思います。そちらでお答えをいたしましたけど、若干、二、三追加をさせていただこうと思います。

行動が大事ということ、いかに魂を入れるかが大事ということは申し上げました。同時に、国際的な状況といたしますと、この脱炭素化への動きというのが先進主要国、G7の国でも国連の下でも加速をする方向にあるというふうに見ています。

G7に関しては、御存じのとおり、2021年、22年と、まず可能な技術のある電力分野において、その大宗を2035年までに脱炭素化をするという目標が日本を含めて合意をされております。

IPCCの報告書の御紹介をいたしましたけれども、これを受けて、国連事務総長は、2035年には60%削減、先進国については、途上国よりも能力が高い技術力と財政力があるので、50年カーボンニュートラルを40年に前倒しができないかということを発言をしています。

こうした国際的な動きを踏まえて議論をする必要があるだろうというふうに思っているというのが一つでございます。

それから、二つ目でありますけれども、特には地域と企業の点についてどういう対策が必要かという点でまいりますと、特に国に期待しますのは、このカーボンニュートラルに向けた大きなビジョンとグランドデザインであります。

これは、企業も地域も、先ほど森屋先生からモビリティーの話もございましたけど、どういうふうに地域を設計をしていくかということの大きな基礎となるビジョンと国の方針というのが、地域が実際にそれを計画を立てて行っていく上で非常に重要だと思います。

そのときに、私、本日も申し上げましたように、こうした取組自身が地域の課題を解決ができる可能性がある、政策の構想力があればそれが可能になり得る。企業に関して言うと、こうした取組がうまく進めていけると、まさにサプライヤーや金融市場の中での評価を上げることができる、こうしたオポチュニティーも出てきていると思います。それゆえに、先生方への御期待として申し上げている次第であります。

以上です。

○舩後靖彦君

参考人の皆様には、貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。

これで質問を終わります。