2024年4月23日 参議院国土交通委員会参考人質疑(トラックドライバーの労働環境など)

【参考人】

馬渡雅敏氏 公益社団法人全日本トラック協会副会長

成田幸隆氏 全日本運輸産業労働組合連合会中央執行委員長

足立浩氏  全日本建設交運一般労働組合中央副執行委員長

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日はお忙しい中、貴重な機会をありがとうございます。

私は、ALSという進行性難病の影響で人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。このため、パソコンの音声読み上げ、秘書による代読で質問をいたします。聞きづらい部分もあるかもしれませんが、御容赦ください。

実は、私は、病気になる前の大学生の頃、大型と牽引、つまりトレーラーの免許を取得し、港で原木を運ぶアルバイトの運転手として働いていたことがありました。夢はアメリカ大陸を横断する長距離トレーラー運転手になることでした。結果的にその道は選びませんでしたが、運転手として働いている方々への憧れと敬意は今も変わりません。

今、運転手の方々が厳しい労働環境に置かれていることに強い危機感を抱いています。今回の法案が今の環境を改善する道筋になるのかどうか、参考人の皆様に御意見伺っていきたいと思います。

まず、多重下請の問題について質問いたします。

今回の法案では、元請トラック事業者に対する規制的措置として、下請事業者に運送を依頼した場合、実運送管理簿の作成を義務付けています。管理簿に意味がないとは申しませんが、私はもっと具体的に多重下請を禁止する法規制をすべきではないかと考えます。

この点について、成田参考人、足立参考人の御意見をお聞かせください。

○参考人(成田幸隆君)

ありがとうございました。

禁止するということよりも、今回、法案の中でしっかりそこをチェックしていくことになっていますので、そういうふうにしていけば、我々の課題としては運賃が低いというところに問題がありますので、そこをしっかりやっていけばしっかりした適正な運賃をいただけることになりますので、そうすると、その結果、労働者の賃金が上がっていくということになりますから、そのように今回の法案の中でしっかり対処できていると思っています。

○参考人(足立浩君)

多重下請については、一定、禁止と、禁止というよりも、一定規制はしっかりすべきだというふうに考えています。

これについては、やはり先ほどもいろいろ出ていますが、自分、まあ僕も運送屋、トラックの企業で働いていました。自らの企業で請け負えないようなやっぱり仕事を本来僕は受けるべきでないと思っていますし、しっかりそれはグループ内でやるという範囲であればいいんでしょうけれども、それをやっぱり一定水屋に振るというのはどうなのか。特にユーザーとの関係についても、やっぱり責任を負うという立場ではどうなのかなというふうに考えています。

やはり、僕らトラックの運転手としては、やっぱり自ら受け取った仕事について最後まで責任持ってやりたいというふうには思っていますが、どこで積むのか、何を積むのか、どれぐらいの運賃なのかさっぱり分からない状況の中でやらざるを得ないというのは、やはり身体的な負担も大きいというふうに思っていますので、そういった意味では規制が必要ではないかなというふうに思っています。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

続けて、多重下請の問題に関連して、専業水屋、マッチングサイトの実態調査と規制について質問いたします。

車両を持たず、実運送を行わず、取次ぎのみを行う事業者、いわゆる専業水屋やマッチングサイトの存在によって運転手の賃金が減っているのではないかという指摘もあります。

専業水屋やマッチングサイトを挟む構図自体が多重下請、トラック運転手の賃金低下を招いているという認識があるなら、政府は専業水屋やマッチングサイトについての実態調査を行い、規制を検討するべきだと考えております。

この点について、成田参考人、足立参考人の御意見をお聞かせください。

○参考人(成田幸隆君)

ありがとうございます。

私たちも、具体的に専業水屋によってどこまで賃金が影響があるかということはなかなかつかんでいませんので、そういう意味では、実態の把握についてはしていただくのは是非よろしくお願いしたいと思います。

○参考人(足立浩君)

私たちも実態調査については必要だというふうに思います。

現場では、この前も私の組織の職場の運転手と話しましたが、実際に行くまで荷物が分からない、行く先含めしっかりされない、取りあえず大体この辺、ここから積んで関東のどの地域までというだけで、まず取るのか取らないのかというのが実態になってきたりもしていますので、やはりそういった調査を是非ともしていただきたいというふうに思います。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

ドライバーの方々が搾取されない仕組みをつくることが大事だと私は考えています。

次の質問に移ります。

ドライバーの待遇、労働環境について質問いたします。

運転手の過重労働、長時間労働、人手不足を解消するためには、一刻も早い待遇改善が不可欠です。そのためにも、私は最低運賃を導入する必要があるのではないかと考えています。現在運用されている標準的な運賃の制度では、賃金に反映されていない荷主の方が圧倒的に力関係が強い中で交渉できないという現場からの意見もあります。

標準的な運賃では効果は極めて限定的ではないでしょうか。より強制力のある最低運賃導入に踏み出すべきと考えますが、成田参考人、足立参考人の御意見をお聞かせください。

○参考人(成田幸隆君)

ありがとうございました。

これは先ほどもお答えさせていただきましたが、まずはこの標準的運賃をしっかり収受するように努力をしていく、その先に最低賃金含めてをどう考えるかというふうに考えています。

○参考人(足立浩君)

確かに、今ある標準的な運賃をいかに収受するか、これが本当に焦眉の課題だというふうに思います。

それと同時に、特に、バスが最低運賃を導入して一定の効力を発揮しているという例も聞いています。そういった意味では、すぐに導入ということには、ちょっと少しありますが、一定検討すべき課題ではないかなというふうにも考えます。

以上です。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次の質問に移ります。

国土交通省基準についてお尋ねします。

貨物自動車運送事業の事業用自動車の運転手の勤務時間及び乗務時間に係る基準において、一の運行における最初の勤務を開始してから最後の勤務を終了するまでの時間は144時間を超えてはならないという規定があります。しかし、この項目があることで長距離運行が是認されてしまってはいないかと危惧しています。

6日間144時間出っ放しの運行、運転手の過酷な労働状況が許容されてしまっているのではないでしょうか。私はこの項目については改善すべきだと思いますが、この点について、成田参考人、足立参考人の御意見をお聞かせください。

○参考人(成田幸隆君)

ありがとうございます。

先ほども少し答えさせていただきましたが、この144時間、今、例えば北海道のナンバーの車が九州にいるとかあるんですけれども、本当にルールが守り切れているのかというのも課題だと思いますので、まずはこの144時間を上限とする基準をしっかり遵守をするということからだと思いますので、そこの中で今後のことはだと思います。

○参考人(足立浩君)

建交労は、従来から政策においても144時間については一定短くすべきだというふうに思っています。その理由は、やはり長時間労働の温床になるというふうに考えています。確かに、現場からすると、そこまで運べないではないかと、いろんな議論があると思います。ただ、そのことについては、是非とも、例えば中継輸送であったり、いろんな努力もしながら、この間、いろんな部分でコンピューターも発達して、いろんなやり方ができるんだというふうに考えていますので、是非ともこの点についてはやっぱり短くなって、できるだけ家に帰れるようにしたいというふうに考えています。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次の質問に移ります。

厚生労働省の改善基準告示についてお尋ねします。

労働時間などの労働条件の向上を図るためのルール、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、その中で今日は特に第4条第2項について質問します。

「使用者は、貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の休息期間については、当該自動車運転者の住所地における休息期間がそれ以外の場所における休息期間より長くなるように努めるものとする。」。この項目については、努めるものではなく義務化すべきだと考えます。運転手の方々が休息するためには、やはり自宅にできるだけ帰ることができるようにすべきだと思います。成田参考人、足立参考人の見解をお聞かせください。

○参考人(成田幸隆君)

ありがとうございます。

現行のルールはそういう形になっていますが、先ほど、いろいろな話合いの中で、やはりいかにして労働時間を短くして家に早く帰れるといいますか、そういう制度、そういう中身の中でいろんなそういうことに努めていくことがありますので、今現行はその努めるとなっていますが、これから検討はしていいと思っています。

○参考人(足立浩君)

これについても、建交労は従来から、この条文、条文というか努力義務をやっぱり義務だというふうに要請はしています。

やはりドライバーにとって一番体が休めるのは自宅だというふうに思っていますし、やはり僕らとしては、こういう運賃だとかいろんな行動変容だとか商慣習だとかいろんなことを変える上で、やっぱり労働者の働き方そのものについても一定議論すべきではないかなというふうに考えていますので、是非ともお願いしたいというふうに思っています。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

足立参考人にお尋ねいたします。

先ほど、御意見の中で区域制の再開についての要望をされておられましたが、この点についてのメリットあるいは、あるのであればデメリットをいま一度御意見いただければと思います。

○参考人(足立浩君)

区域制については、規制緩和以前に僕もやっていました。で、メリットは、必ず自分の事業所から出て、どこへ行っても次の仕事は事業所の地域に帰ってくるということですから、やはりドライバー自身も仕事の内容を含め帰れるんだということが前提で行けるんではないかなというふうに考えています。

今のやり方だと、配達しに行った、じゃ、次にどこに行くのか着くまで分からないというのが現状ですし、いつ帰れるのか、まあ144時間後なのかというような問題になってきますので、そういったことでもいいんではないかなというのが一点と。

先ほどからも申しているとおり、やはりこの間のマッチングアプリが、いい悪いはあるんですが、やはりしっかり荷主さんとの付き合いも含めてやれば、必ず帰りにというのは、住居地の、事業所地に一定できるんではないかなというふうに、まあ昔のような電話であるかないかではなくて、今であれば本当にそういうシステムも含めてやれるんではないかなと思っていますので、是非とも僕は、運転手の労働時間の短縮、それから運賃も一定しっかり取れるんではないかなというふうに、もらえるんではないかなというふうに思っていますので、是非とも僕としてはそういった意味での検討、御議論をお願いしたいと思っています。

○舩後靖彦君

ありがとうございました。非常に貴重な御意見を伺うことができました。

これで質問を終わります。