2024年5月28日 内閣委員会、厚生労働委員会連合審査会質疑(子ども・子育て支援法について)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日はよろしくお願いいたします。

さて、子ども・子育て支援法改正案の最大の問題点は、子ども・子育て支援金制度を創設し、子育て支援策に係る2.1兆円を社会保障費の抑制で確保しようとしていることです。

障害、高齢、病気、貧困、失業など、生きていく上で何らかの困難やハンディを抱える人を社会全体で支えるのが社会保障です。その社会保障制度の利用者への負担増や利用抑制によって浮いた分を少子化対策に充てるというのは、筋違いも甚だしいと言わざるを得ません。その点の質疑は内閣委員会所属の同僚の大島委員にお願いし、本連合審査ではこども誰でも通園制度についてお伺いします。

本制度は、全ての子ども・子育て世帯を対象とする支援策強化の現物給付策の目玉ともいうべき施策です。就労要件を問わずに、六か月から三歳未満の乳幼児を対象に月十時間以内で保育所などを利用できるこの制度は、モデル事業実施の中からも需要の高さがうかがえます。

一方で、保育士一人当たりの子供の数が多く、長時間預かり、低賃金など、労働条件の悪さからくる人手不足で現場は疲弊しています。毎日通う子と不定期に通う子を一緒に見ていくことへの不安が現場から寄せられています。

現行の一時預かり事業が保護者の立場からの必要性に対応するものに対し、こども誰でも通園制度は子供を中心に考え、全ての子供の育ちを応援し、子供の良質な成育環境を整備することを目的とするとされ、理念は大変立派です。しかしながら、全国の保育現場では保育士の一斉退職が相次いでいます。

待機児童対策として次々と新しい保育所が開設され、その影響で、現場では慢性的な人手不足の状態が続いています。その結果、目が行き届かずに子供が安心して過ごせる環境にない、園児に対する虐待と経営者からの保育士に対するパワハラもある、安全に保育できない職場にはいられないなど、悲痛な声が聞こえてきます。

加藤大臣、このような現状で、どのようにこの制度の実施体制を確保するおつもりでしょうか。

○国務大臣(加藤鮎子君)

お答え申し上げます。

幼児教育、保育の現場では、子供をめぐる事故や不適切な対応事案なども生じており、安心して子供を預けられる体制整備を進めていくことは重要であると考えております。

この体制整備の一環として、保育士の配置基準については、こども未来戦略に基づき、4、5歳児について、今年度から76年ぶりに30対1から25対1へ改善するとともに、1歳児については、令和7年度以降、6対1から5対1への改善を進めることとしております。

また、保育人材の確保も重要であり、保育所等におけるICT化の推進等による負担軽減、また、潜在保育士のマッチング支援などに総合的に取り組むとともに、保育の現場や職業の魅力向上とその発信にも取り組んでいるところでございます。

さらに、処遇改善につきましては継続的に取り組んできており、直近においては5%を上回る公定価格の人件費の改定を行いました。

引き続き、こども未来戦略に基づき、民間給与動向を踏まえた更なる処遇改善、これを行ってまいりたいと考えております。

こども誰でも通園制度の体制整備についての御懸念とその御質問がございました。

こうした取組を、今申し上げた取組を進めていくとともに、こども誰でも通園制度の創設を見据え、対象となる全ての子供が利用できるよう、実施主体となる市町村においては計画的に提供体制の整備を行っていただく必要がございます。

このため、国としましても、市町村に対し具体的な施設等の整備量の把握、これをしてもらうよう依頼を行っているところでございます。

さらに、試行的事業を通じて地域の実情に応じた制度設計を行うとともに、市町村向けの説明会を適時行うことなどにより市町村による体制整備、これを国としてしっかり支援をしてまいります。

○舩後靖彦君

法案のレクを受けたときのこども家庭庁の御説明では、障害児、医療的ケア児もこども誰でも通園制度の対象となるとのことでした。

また、実施事業所としては、体制が整っていれば保育所、幼稚園、認定こども園だけでなく児童発達支援事業所なども可能としているとのことでした。しかし、現状、保育所、幼稚園、認定こども園では、障害のある子、とりわけ医療的ケアの必要な子供はなかなか受け入れてもらえません。児童発達支援事業所の中でも看護師や医療的ケアができるヘルパーを配置して医療的ケア児を受け入れている児童発達支援事業所は少なく、医療的ケアの必要なお子さんがどこの地域でも通える実態にはありません。

日常的に障害児、医療的ケアの必要なお子さんが受け入れられない現状の中で、不定期でスポット的に受け入れるというのは全く非現実的で、絵に描いた餅と言わざるを得ません。

大臣、障害児、医療的ケア児がこども誰でも通園制度を使うためにどのように体制整備を図っていくおつもりでしょうか。

○国務大臣(加藤鮎子君)

お答え申し上げます。

まず、医療的ケア児を受け入れる事業所におきましては、看護職員の配置が求められていることもあり、全ての児童発達支援センター等において医療的ケア児の受入れがなされているわけではありませんが、地域の医療的ケア児の数やニーズに応じて地域の事業所が役割分担を行い、連携しながらその受入れや必要な支援を提供していくことが重要であると考えております。

この誰でも通園制度における障害児等の受入れについての御指摘がございましたが、ございました。こども誰でも通園制度では、障害のある子供や医療的ケア児も含め、全ての子供の育ちを応援するためのものであり、こうした子供たちを含めて、自治体における提供体制の整備を進めていく必要がございます。

このため、試行的事業におきましては、保育所や認定こども園等で実施する場合でも、障害のある子供を受け入れる場合には補助単価を約1.5倍とすることにより、障害のある子供の利用の促進を図ることとしてございます。

加えまして、今後、試行的事業を実施しながら、児童発達支援センター等においてこども誰でも通園制度を実施するに当たっては、地域における児童発達支援のニーズや資源の状況等も踏まえながら、障害のある子供の支援に支障がないように留意することが必要であると考えております。

さらに、医療的ケア児の受入れに当たりましては、外出することが難しい子供がいることも考慮しながら提供体制を検討する必要があるほか、看護師のサポートが受けられる体制をどのように整備するのか、こういったことにつきましても併せて検討をしていく必要があると考えております。

こうした受入れに当たって留意すべき点等につきまして、引き続き、試行的事業の実施状況を踏まえ、制度の本格実施に向けて検討を重ねながら、障害のある子供も医療的ケア児も含めた提供体制の整備、これしっかりと進めてまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

一問目で指摘しましたように、今の保育現場では慢性的な人手不足が続いており、ふだん利用しているお子さんだけでも目が行き届かずに、子供が安心して過ごせる環境にない、安全が確保できないという声が上がっています。

教育、保育施設などにおける重大事故防止策を考える有識者会議の報告では、保育所における死亡事故の発生は、ゼロ歳から二歳児、預け始めの時期が最も多くなっています。そのような状態を繰り返すことになるこの制度は、預かる側にとっても、親と離れ、知らない場所で初めて会う大人に預けられる子供にとっても大きなストレスや緊張を強いられます。まして、障害のあるお子さん、医療的ケアの必要なお子さん、こだわりが強いお子さん、アレルギーなどの配慮が必要なお子さんなどがスポット的に利用する場合、どのように子供一人一人の特性、特徴を把握し、安全、安心を確保することができるのでしょうか。

私の知っている医療的ケア児の長時間預かりをしている児童発達支援事業所では、市から試行事業を持ちかけられましたが、日常的に関わらないで短時間、スポット的に医療的ケアの必要なお子さんを預かるなど、怖くてとてもできないと断りました。

大臣、現場から上がっているこうしたリスクに対する不安や懸念に対して、こども家庭庁はどのような対策をお考えでしょうか。

○国務大臣(加藤鮎子君)

お答え申し上げます。

こども誰でも通園制度の実施に当たりましては、子供の安全の確保は大前提であり、障害のある子供や医療的ケア児、アレルギーなど配慮が必要な子供と安全に関わるために必要な、必要不可欠な情報を事前に把握しておくことが重要であると考えております。

試行的事業の在り方に関する検討会でも、安全確保に不可欠な情報の事前把握の必要性に加えまして、慣れるまでに時間が掛かる子供への対応として親子通園が考えられることや、年齢ごとに異なる関わり方の特徴や留意点などについて、報告書において言及をされています。

このため、国が一元的に構築するシステムの中で、保護者が事前に障害の有無等の情報を登録し、受入れ施設がこれらの情報を円滑に把握できるようにしていきたいと考えているところでございます。

また、事業実施に当たりましては、初回の面談を行ったり、親子通園による親子の様子を見たりする中で、初めて利用する子供についての理解を得られるようにすることとしてございます。

さらに、障害のある子供に対する提供体制の確保に向けて、試行的事業においては、保育所や認定こども園等において障害のある子供を受け入れる場合には補助単価を約1.5倍とするとともに、障害のある子供一人一人の特性に合わせたオーダーメードの支援を行っている児童発達支援センター等について、こうした専門性を発揮していただく観点から、実施主体として参画いただくことを可能としております。

こうした取組を通じて、また、様々なお声をしっかり受け止めさせていただきつつ、受入れ施設にとっても、子供や保護者にとっても安心な制度となるように、今後、試行的事業において実例を収集し、更に検討、整理を深めて安全の確保が図られるように取り組んでまいりたいと考えております。

○委員長(阿達雅志君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(阿達雅志君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

それで済むなら慣らし保育は不要です。

以下、事前に用意した原稿を代読します。

事前に受け入れてみないことには、登録情報だけでは現場の対応はできません。まして、医療的ケアの必要なお子さんは毎日の服薬の把握が必要であり、医療的ケアはその実施環境によって様々に対応が異なってきます。慣れるまでは親子で通院するとしても、定まった保育所に通う慣らし保育と違い、利用する保育所が定まっていなければ、受入れ機関にとっては一見さんと同じです。同じ保育所に通うにしても、月10時間という少ない細切れの利用時間では、前に預かったときのことを覚えている余裕が現場にあるでしょうか。

結局、制度をつくっても障害児、医療的ケア児を受け入れる事業者がないということになってしまうのではありませんか。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤鮎子君)

お答えを申し上げます。

障害のある子供や医療的ケア児も含めた具体的な提供体制の整備に当たりましては、例えば、先ほど来申し上げている児童発達支援センター等活用するなど、各地域において体制の整った拠点となる事業所を整備することや、国が整備するシステムにおいて障害のある子供や医療的ケア児の受入れの体制が整っている事業所等を保護者が容易に確認できるようにしていくことなども必要だというふうに思っております。様々な検討が必要でございます。

委員御指摘のように、単純に情報が直前で提供されてもそれにすぐさま保育士の方や看護師の方が対応できるかということも課題だと思いますし、月10時間で連続的にその子供さんの状況を把握していくということができないこと自体も大変重要な御指摘だというふうに受け止めてございます。

委員の御指摘もしっかり踏まえつつ、何ができるかということを検討にしっかり、の俎上にのせながら、障害のある子供や医療的ケア児も含めた子供たちにこの制度、この支援が行き届くことができるような工夫をこれからも検討してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

終わります。ありがとうございました。