2024年6月11日 文教科学委員会質疑(私立高校の教育費支援/教科書価格)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。

現在、高校進学率は98%を超え、義務教育を終えたほぼ全ての生徒が高校に通っています。高等学校等就学支援金の拡充により、公立高校に通っている世帯年収910万円未満の生徒の場合は実質無償、私立高校に通っている生徒は世帯年収590万円までの場合、平均授業料の39万6000円を上限額として支援金が支給されます。さらに、私学に通う高校生に対しては、都道府県が独自に国の制度に上乗せして授業料などの補助金を出しています。

私の友人のお子さんも私立高校に通っており、昨年までは就学支援金と県の補助金で授業料のほとんどが補助され助かっていたと言います。しかし、昨年は、世帯収入が590万円を超え、就学支援金は11万8800円に減り、県の補助はなくなってしまったとのことです。さらに、私立高校の場合、授業料以外に施設設備費などの納付金が必要となり、そのお子さんが通う高校でも年額23万円の施設設備費の納付が必要です。収入に関係なく県の補助対象は授業料のみであり、施設整備費の負担がきついと言っています。

本来、学校の施設設備の整備は設置者の責任ですが、校舎の耐震化、バリアフリー化、ICT環境の整備などに必要な資金は莫大であり、これを全て施設整備費で賄うことは困難です。

一般財団法人日本私学教育研究所によりますと、2023年現在、私立の全日制、定時制高校で学ぶ生徒の割合は高校生全体の34.7%に及びます。ほぼ義務化されていると言ってもよい高校において私立高校が果たす役割は非常に大きいと言えます。

私立小中高校については、都道府県による経常的経費の助成を国は支援する仕組みとなってはいます。しかし、公立高校であれば負担する必要のない施設設備費の負担という公私格差を解消するためには、私立学校の重要な財政的基盤の私学助成の拡充が必要です。

私立高校で学ぶ生徒が安心して学べる施設設備環境を維持するために、厳しい経済状況が続く中で保護者の負担に転嫁することなく、国が責任を持って私学助成を拡充すべきと考えますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(盛山正仁君)

舩後先生御指摘のとおり、私立学校、特に高等学校ですね、今議論になっているのは、こういったものの重要性というのは我々もそのとおりだと思います。そして、私立学校というのは、公立と違いまして、建学の精神に基づいた個性、特色ある教育を実施しております。そういう点でも、我が国の学校教育において独特な重要な役割を果たしていると考えております。

こういう私立学校に対するものとして私学助成というものがあるわけでございますが、この私学助成は、こうした私立学校が果たす役割の重要性に鑑みまして、教育条件の維持向上や学生等の修学上の経済的負担の軽減、経営の健全性の向上を図ることを目的として実施しているものです。

高校段階について申し上げれば、都道府県による経常費助成に対する補助のほか、施設の耐震化やバリアフリー化、ICT環境の整備など、様々な支援を国は行っております。これらに係る予算について、令和六年度予算においては昨年度より拡充しております。

文部科学省としては、引き続き、幅広い側面から、施設整備を含めた私立に対しての支援施策を推進するなど、私立学校における教育環境の整備に努めてまいりたいと考えます。

○委員長(高橋克法君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(高橋克法君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。授業料無償化に関しても、公立高校と同じ年収まで拡充すべきと考えます。通告はしていませんが、この点、大臣いかがでしょうか。

○委員長(高橋克法君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(高橋克法君)

速記を起こしてください。

○国務大臣(盛山正仁君)

国における高校生等への修学の支援ということで、その公立に対しての生徒さんと私立に対しての生徒さんということで、あっ、私立に通われている、公立に通われている、そこで差別を設けているわけではありません。そこは御理解いただきたいと思います。

それで、多分、根っこにありますのは、私立高校に通う生徒の負担を下げるべきであると、どうしても私立学校の方が公立以外にまあいろいろ授業料その他が掛かります、多分そういう意味ではないかなと思うわけでございますけど、我々国としては、限られた財源を有効活用する観点から、平成26年に所得制限を設けることで捻出した財源により低所得世帯への支援を拡充するなど、教育の機会均等に資するよう支援の充実を図っております。

そして、高校生等の修学支援に係る支援の拡充については、様々な教育政策の中で総合的な観点から考える必要があると考えますが、国においても、令和6年度予算において、低所得世帯に対する授業料以外の支援を充実したところでもございます。

引き続き教育費負担の軽減を着実に進めたいと考えています。

○舩後靖彦君

代読いたします。

高校で学ぶには、授業料、施設整備費以外にも、入学金、行事、教材費など、高額な費用が必要になります。高校進学率九八%を超え、ほとんどの子供が高校で学ぶ現在、後期中等教育の高校は当然国の制度として無償化すべきと考えます。

高校の教科書に頻出すると言われる政治哲学者ジョン・ロールズは、正義の一つである平等は全体の効率性や有益性より重要だという言葉を残しています。

国は、教育予算をOECD平均並みに引き上げ、公立、私立を問わず全ての高校生が学費を心配することなく学べる環境整備を再度お願いし、次の質問に移ります。

教科書価格の適正化についてお尋ねします。前回の一般質疑の際、時間切れでできませんでしたので、改めて本日質問させていただきます。

資料1を御覧ください。円安や原燃料費の高止まりの影響を受け、本文用紙の値段は2022年に比べ平均58%上がっています。しかし、資料2に見るように、教科書価格は前年比で3%上がっただけ。余りに安過ぎます。

さらに、少子化により、2023年度は前年度と比べ、小学生は約10万1000人、中学生は2万8000人減っています。つまり、小中学校で使用する教科書の数がそれぞれ10万1000部、2万8000部減っているわけです。

教科書製作会社の採択率が違いますので一概には言えないとしても、前年度と同じ採択率であれば、発行部数が減少する以上、当然一冊当たりの製造単価は上昇します。製造コストの値上がりを考慮して平均3%価格を上げたと文科省はおっしゃいますが、それでは製造コストの上昇に追い付かないばかりか、発行部数の自然減による製作単価の上昇も考慮されていません。

文科省は、3月22日の本委員会における私の質問に対して、前年度の定価をベースに、毎年度、物価の変動などを勘案し、適切、適正な教科書価格となるよう努めている、各教科書発行者によって製造過程や仕入れの実態などが様々異なる中、実際に掛かった経費の積み上げによる原価計算により単一の定価を決定することはなかなか困難と答えています。しかし、約30年前に生活科が新設されたときには原価計算をしています。ほかの教科に比べて有意にページ単価が高いのは、きちんと原価計算をしたからではないでしょうか。

通常の書籍であれば、出版社は出版部数を決め、原価計算をして定価を設定します。しかし、教科書価格は国によって決められ、採択されて初めて製造できるわけですから、出版部数も自分では決められません。採択部数が少なくても価格を上げることはできないので、原価率は通常の書籍では考えられないほど高くなりかねません。結局、採択率が低いところは教科書発行から撤退せざるを得なくなり、資料3にあるように、教科書発行会社が減少して教科書の多様性が失われていきます。

教科書会社によって、教科書のサイズ、ページ数が違い、採択部数も違いますから、製造コスト、原価が違うのは当然です。しかし、その平均的な原価を割り出し、教科書会社が発行を維持できる適正な価格設定に見直す必要があると考えます。文科省の見解をお聞かせください。

○政府参考人(矢野和彦君)

お答え申し上げます。

近年、子供の数が、今委員から御指摘がありましたように、減少傾向にあるにもかかわらず、義務教育教科書の購入費の予算額については増加傾向にございまして、直近の定価改定においても、令和5、6年度で4.4%の改定を行ったため、これに伴って一冊当たりの教科書定価も確実に高くなっているところでございます。

生活科の教科書について御指摘がございましたが、新設当時、一般社団法人教科書協会が策定した「体様のめやす」というものがございますが、多くの教科書発行会社における教科書編集、製作上の標準的な規格となっていたことから、この「体様のめやす」における判型、ページ数、用紙、配色等を参照し、原価計算により定価の決定をしたところでございますが、この「体様のめやす」につきましては、平成11年11月に公取委から発行者の自主的な教科書の編集、製作活動を制限するので取りやめるよう勧告を受け、平成11年12月に「めやす」は参考として取り扱うこととなっております。

現在では、教科書の規格は各発行者の判断に委ねられているところでございまして、製造過程や仕入れの実態も様々異なる中、教科書のみに掛かった経費を切り出し、教科書ごとに経費を積み上げた原価計算の平均により単一の価格を決定することは困難であるというふうに考えております。

一方で、教科書定価の改定に当たっては、製造コストを価格に反映するため、教科書発行会社の、発行者の損益計算書を用いた分析や、材料費や印刷費等の教科書製造原価に直接影響する経費の上昇などを踏まえた検討を行い、適切な価格設定となるよう努めているところでございます。

文部科学省としては、今後とも、各教科書発行会社の状況を適切に把握した上で、物価や給与の動向等も見据えつつ、引き続き適正な教科書価格の検討と必要な経費の確保に努めてまいりたいと考えております。

以上でございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

教科書は学校教育において中心的な教材であり、教科書で読んだ題材は子供たちの記憶に残ります。教科書作りの責務と社会的要請に応えるため、子供たちにより良い内容を届けたいと教科書発行に関わる人たちは努力しています。そうした教科書製作現場の努力、労務量を反映した価格設定と価格見直しの影響が利用者負担に跳ね返らないよう、高校教科書の無償化をお願いし、質問を終わります。