2024年12月19日 文教科学委員会質疑(教員不足、多忙化/在外教育施設でのハラスメント被害対策)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
あべ大臣御就任後、初めての質疑となります。これからどうぞよろしくお願い申し上げます。
大臣は、今国会の挨拶において、公教育再生の要は教師です。学校における働き方改革の更なる加速化、教師の処遇改善、学校の指導、運営体制の充実、教師の育成支援について、文部科学行政の最重要課題として一体的に進めますとおっしゃいました。
ブラック職場のイメージが定着してしまった学校では、教員の多忙化、長時間労働ゆえに教員を目指す人が減少し、教員不足がますます深刻化しています。全国公立学校教頭会の調査によると、2024年の始業式時点で、全国2割の学校で教員不足が生じていたとのことです。文科省が初めて教員の欠員を調査した2021年度の5.8%よりかなり悪化していることが分かります。
教員に限らず、多くの職種で人手不足が深刻化している中、職業としての人気がなくなった教員の採用試験の倍率は低下し、2023年度は過去最低の3.4倍、小学校に限れば2.3倍です。中でも、小学校教員採用試験の倍率が1.5倍に満たない秋田、福岡、長崎、大分、鹿児島県などでは、教員の質、量共に確保することが難しい現状です。
実は、私のおいも教員をしております。学校が忙し過ぎて人生設計すらままならない状況では、どんなに教員という仕事にやりがいや魅力を感じていても、燃え尽きてしまったり、そもそも教員になろうという気になれないのではないでしょうか。
文科省としても、教員の多忙化、教員不足を深刻に受け止め、様々な対策をされてきたことは承知しております。そして、2025年度予算の概算要求で、残業代の代わりに一定割合を上乗せする教職調整額について、現行の基本給の4%から13%へと大幅引上げを求めました。しかし、財政制度審議会では、調整額の引上げが実効性ある学校業務の縮減策と連動していない、各教員の在校時間に差があるが、その差に応じためり張りがない、とりわけ若手教員へのインセンティブにはならないという理由で現行の4%から10%への段階的引上げを提案しています。
財務省は、調整額引上げの条件として教員の働き方改革の進捗状況を挙げ、将来的に調整額でなく残業手当として支払う案も打ち出しています。
大臣、財務省のこの認識をどう受け止めていらっしゃいますか。
○国務大臣(あべ俊子君)
舩後委員にお答えさせていただきます。
今回の財務省の見解に対しての私の意見、見解でございますが、教師、本当に、舩後委員のおいごさんも今教師ということでございますが、学校教育の充実発展に欠かせない存在でございます。厳しい勤務実態がある中で、教師を取り巻く環境整備のためにやらなきゃいけないことはたくさんございまして、まずは学校における働き方改革の更なる加速化、もう待ったなしでございます。また教師の処遇改善、また学校の指導、運営体制の充実を一体的、総合的に進めないといけないというふうに考えているところでございます。
財務省の見解に関しましては、時間外在校等時間の縮減が容易でない地域と学校もあるんです。非常に複雑なお子さんたちがたくさんいるところ、また、いろんな教員の手当てが、なかなか人数が加配ができていないところもある中であって、そういう非常に厳しいところもある中で時間外在校等時間の縮減を教職調整額の引上げの条件とすると、真に必要な教育指導が行われなくなるおそれが確かにあります。
学校が対応する課題が複雑化、困難化していって教師が非常に多忙になっている中にありまして、また、教職員定数の改善の学校現場の支援が見られないこともあり、子供たちや教師の支援という観点から大変大変課題の多い提案であるというふうに考えています。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
私も常々、日本は教育予算が少な過ぎる、教職員定数の基準を大幅に改善し、少人数学級で教師の負担を減らし、教員が子供一人一人にきちんと向き合える時間を確保すべきと主張してまいりました。財務省には、教育に必要な予算はけちけちせずに積極財政で出すべきと申し上げたいです。
その一方で、残業代の代わりに調整額を引き上げる給特法のやり方では、現場の教員たちが定額働かせ放題と批判するように、長時間労働の抑制にはなりません。財務省案について、教員の中には、残業削減の実効性が期待できる、労働基準法への将来的な切替えを示唆しているとして評価する声もあります。しかし、調整額の割合を増やすにせよ、労働時間に合わせて残業代を支給するにせよ、教員の多忙化、長時間労働の根本原因にメスを入れないで残業代を払えばいいというものではないはずです。
私は、昨年の通常国会で、たとえ予算が付いて教員の定数改善がされても、ブラック職場と言われる学校に教員のなり手が即座に増える見込みはない、教員の負担を減らし子供たちが安心して学べる環境を維持するには、教員の本来業務である教える内容を精選し、授業のこま数を減らすしかない、次期学習指導要領の改訂に向けて早速取りかかっていただきたいとお願いしました。それに対して当時の盛山大臣は、学習指導要領の内容については、教師の業務改善のみを理由として削減するというものではなく、子供の学びの観点から考えていくべきものと答弁されました。
私は、外国語や道徳が教科化され、教科書がどんどん分厚くなって、教える内容や時間数が増えている現在の状況は、教員の業務負担だけではなく、子供たちにとっても容量オーバー状態だと見ています。カリキュラムにおいて学校や教師、生徒に過大な負担が掛かっている状態、いわゆるカリキュラムオーバーロード、教育課程の過積載については、教育課程、学習指導及び学習評価などの在り方に関する有識者検討会においても言及されています。
資料を御覧ください。東京学芸大学大森直樹研究室が、1989年学習指導要領改訂の実施時期より2017年改訂時期までの間勤務した教員を対象に、その時期の標準時数が子供たちの生活に合っていたかどうか調査した結果です。
それによりますと、第1次ゆとり教育の1989年の場合、週6日制で1日の平均授業時数は五時間、そのときは、子供の生活に合っていた、やや合っていたが77%であったのに対し、第2次ゆとり教育が始まり週5日制となった1998年では5割弱まで減っています。さらに、外国語科の時間が年70時間増えた2017年改訂では1日6時間制となり、やや合っていない、合っていないが9割を占めています。
調査に応じた教員は、6時限目になると子供も自分も集中力が続かない、子供がいらいらしてトラブルが起きる、放課後の習い事や塾がある子供は休む暇がないと、子供たちの負担感を指摘しています。
子供たちは、情報化、グローバル化した複雑な時代に合わせて、主体的、対話的に学び、未来を創造する力を求められ、あれも必要、これも大事と、授業時間数と教科数、学ぶ内容がどんどん増やされます。教員にとっては、教える内容だけでなく、アクティブラーニングだICT活用だと授業方法に変化を求められ、現場への要求は高まるばかりです。
しかし、学習指導要領で教育現場を縛るのであれば、それを実現するための人手の確保などの条件整備が先ではないでしょうか。学習指導要領の詰め込み過ぎを解消することが、子供たちの過重負担を減らすとともに、教員が本来の業務である授業準備や子供に向き合う時間を確保し、教員の働き方改革、教員不足解消を進めることになると考えます。
大臣、学習指導要領の改訂に向けて、学習内容の精選と週5日制の下での授業時数削減について、中教審に諮問していただけませんか。
○国務大臣(あべ俊子君)
舩後委員がおっしゃるように、本当に今の教育課程のいわゆる部分が、教員だけじゃなく子供にとっても大変負担になっているというふうに私自身も感じているところでございます。
今回の教育課程、その際、この教育課程の実施に伴う負担の指摘に関しましても、私ども文部科学省としても真摯に向き合う必要があるというふうに感じておりまして、この検討に際しましては、負担、さらには負担感が生じている構造を丁寧に議論していくことがまさに重要だというふうに感じているところでございまして、この点、学習指導要領のこの検討に先立って行われた論点整理のところでも、また総授業時間数は現在以上に増やすべきではないとした上で、この学習指導要領や解説のみならず、実は、教科書、入試、教師用の指導書などの影響も含めた全体を見据えた上で、過度な負担が生じにくい、そういう仕組みを検討すべきだという指摘が、まさに委員がおっしゃったように指摘がされたところでございます。
12月25日に実は予定されている中央教育審議会におきましては、こうした委員がおっしゃったところの論点、また、それまでに話し合われた論点整理の内容も踏まえていきながら諮問を行う予定でございます。
○委員長(堂故茂君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(堂故茂君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
まさに現場では明らかに詰め込み過ぎと感じています。以下、事前に用意した原稿を読み上げます。
コロナで一斉休校となり授業時間が減ったとき、学校現場で教える内容にめり張りを付け、内容を削減して乗り切りました。学習内容の精選、標準時数の削減など、学習指導要領の検討に向け、是非現場からの声を中教審に反映していただくようお願いし、次の質問に移ります。
次に、海外で暮らす子供たちのための在外教育施設、日本人学校についてお伺いいたします。
海外で暮らす子供たちのため、日本から多数の先生方が海を渡り、物価高騰、円安環境で大変な中、志を持って取り組まれていることに改めて敬意を表します。
この日本人学校をめぐり、当事務所に管理職、すなわち校長によるハラスメントについての相談が寄せられました。個別の内容についての言及はここでは避けますが、相談を受け、在外教育施設におけるハラスメントへの対応、相談、被害者への支援体制に課題があると感じました。
こんな声をいただきました。海外日本人学校に勤務する教員は、とても狭い人間関係の中でストレスを感じながら勤務しています。そのとおりだと思います。少しでも改善につなげるべく、質問をいたします。
まず、在外教育施設に派遣された教員のフォロー体制について質問いたします。
派遣教員がハラスメント被害に遭ったり、職場環境に悩んだりしている場合、どのような相談体制があるのでしょうか。在外教育施設の多くは、日本人会や進出企業の代表者、保護者の代表などから成る学校運営委員会によって運営されており、一義的には学校運営委員会の責任で行われると承知はしておりますが、文科省としてはどのように関与しているのでしょうか。
○政府参考人(茂里毅君)
お答え申し上げます。
在外教育施設は、一般に日本人会等が設置主体となって設立されており、その運営を行う学校運営委員会にハラスメント等の相談を受けて対応を行う責任が一義的にございます。
その上で、文部科学省では、派遣職員に対して、これ全ての派遣職員でございますが、職員に対しまして、派遣教員に対しまして文部科学省の派遣担当の連絡先を紹介しており、文科省に個別に御相談いただいた場合、元校長やスクールカウンセラー、スクールロイヤーから成る文科省委嘱の在外教育アドバイザーなども活用しながら、学校運営委員会が適切に対応できるよう支援しているところでございます。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
今回事務所に寄せられたケースは校長によるハラスメントの被害の訴えでした。文科省によると、校長として派遣される教員に対してはハラスメント防止を含めた研修を行っているとのことです。
ハラスメント防止に向けて実際にどのような研修を行っているのでしょうか。御説明ください。
○政府参考人(茂里毅君)
お答え申し上げます。
文科省では、在外教育施設への派遣が内定した教師に対し内定者研修会を行っております。
昨年度の研修会におきましては、派遣教師全体に向けまして、ハラスメントを含めた服務に関する講義を行うとともに、さらに、管理者向けには管理者研修を実施して、教職員間のトラブルへの対応を始めとする管理職としての心得について講義を行ったところでございます。
今年度の研修会におきまして、これは来年の1月22日から26日の5日間予定しておりますが、この研修会においては、グループワークによるハラスメント事案のケーススタディーを追加いたしまして、現在御指摘いただいたような内容なども踏まえた上でより充実した研修を行いたいと考えております。
○委員長(堂故茂君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(堂故茂君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
服務に関することという一部ではなく、ハラスメントという一段上の項目を設け、研修を充実したものにしてください。大臣、いま一度お願いします。
○政府参考人(茂里毅君)
御指摘も踏まえながら、より充実したものにしてまいりたいと思います。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
文科省が認識している在外教育施設におけるハラスメント件数、相談件数、処分された件数について御教示ください。
その上で、被害者へのフォローアップについて、文科省はどのように行っているのでしょうか。さらに、発生の原因、分析、再発防止策を文科省としてどのように行っているのでしょうか、お答えください。
○政府参考人(茂里毅君)
お答え申し上げます。
令和2年度以降、文科省の担当に直接寄せられたパワハラに関する相談は全部で13件ございます。ハラスメントによる処分に至った事案は1件でございます。
文科省では、個別の事案に応じて先ほど申し上げました文科省委嘱の在外教育アドバイザー、これも活用しながら、学校運営委員会との連携の上、職務環境の改善につなげるなどの対応をしているところでございます。
御指摘ありましたハラスメント事案の原因につきましては様々だと考えられ、一概に申し上げることはできませんが、文科省といたしましては、教育委員会等に対して適切な人材の推薦を行うよう要請しつつ、選考におきましてもハラスメント防止の観点を一層重視するとともに、研修内容の一層の充実等により、ハラスメント事案の発生防止に努めてまいりたいと考えております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ハラスメント被害を訴えた現場の教員からはこんな意見もありました。文科省は運営委員会に調査を丸投げし、調査方法、調査結果、処分について当事者の説明が全くありません。ヒアリングについては当該者のみでした。調査を担当した運営委員会には、せめて半分の教員からのヒアリングやアンケート調査をお願いしたが、無視された、運営委員会を穏便に解決したいようだ。以上です。
教員を日本から派遣している文科省がより中立的に相談を受け、調査を行うような体制が必要なのではないでしょうか。文科省は国内から教員を派遣しており、教員が健康で不安なく働けるための環境づくりの責任があると感じます。この点について、文科省の見解をお聞かせください。
○国務大臣(あべ俊子君)
ありがとうございます。
在外教育施設、本当に私ども重要だと思っております。日本から海外に転勤をして、一生懸命企業で頑張っている方々を教育をしてくださるその在外教育施設での先生方に対しては、私ども文部科学省として、各教育委員会から出されている方々に対して対応させていただいているところでございますが、まだまだ実は私個人としても足りないというふうに思っておりまして、まず在外教育施設に関して一義的には学校運営委員会にハラスメントの相談を受け、調査を行う責任があるものと承知をしているところでございます。
その上で、文部科学省におきましても、やはり派遣教師に対して文部科学省の担当の連絡先は御紹介をしているところでございますが、ハラスメントの相談を受けた場合には学校運営委員会と連携して適切に対応することにしているところでございます。
ただ、やはりこの教員の対応に関しては、まだまだ私どももできることがあるんではないかというふうに考えているところでございまして、今回の舩後委員の御指摘も踏まえまして、文部科学省として、引き続きこの派遣の先生方、教師が在外教育施設において活躍できるような、本当にしっかりとした環境の整備を努めてまいりたいというふうに思っておりまして、まさにこの在外教育施設の先生方が日本から出かけていって、その海外で勤務している親御さんたちのそのお子さんたちをやはり文部科学省としてもしっかりと対応していくことをさせていただきますので、これからも御指導よろしくお願いします。
○舩後靖彦君
海外に暮らす子供たちのため、志を持って取り組んでいる先生方が不安なく働ける環境となるよう、文科省も主体的に関わっていただきたいと申し上げ、質問を終わります。