2025年3月19日 参議院予算委員会質疑(医療的ケア児支援/社会保障予算削減に反対)
○委員長(鶴保庸介君)
次の質疑者の舩後靖彦君の発言席の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
次に、舩後靖彦君の質疑を行います。舩後靖彦君。
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
総理出席の予算委員会は初めてです。よろしくお願いいたします。
まず、医療的ケア児の支援についてお伺いいたします。
昨年末から今年にかけて、神戸市で医療的ケア児に対するネグレクト、福岡市では呼吸器外しで人工呼吸器利用の子供が亡くなり、母親が逮捕されるなど、事件が相次ぎました。
医療的ケアを必要とする当事者として、医療的ケア児支援法策定に関わった者として、非常にショックを受けました。医療的ケア児支援法が施行され、医療的ケア児支援センター設置や訪問対応、看護、保育所、学校への看護師等の配置は進んでいますが、基本的なケア者はいまだに家族、特に母親に集中しています。
孤独な介護の毎日に、この子さえいなければとケアを投げ出したくなることは誰にもあり得ます。多くの医療的ケア児の親は、他人事ではない、明日は我が身と語っています。こうした事件の背景には、子育ての責任が家庭に押し付けられている現状があると考えます。
こども家庭庁として、そのような問題意識はおありですか。大臣、お答えください。
○国務大臣(三原じゅん子君)
全ての子育て家庭において、子育て当事者が過度な使命感や負担を抱くことなく、健康で自己肯定感とゆとりを持って子供に向き合えるよう、必要に応じて支援していくことが重要であると考えております。
特に、医療ケア児の家族の状況については、これまでの調査研究等においても、いつまで続くか分からない日々に強い不安を感じる、自らの体調が悪いときに医療機関を受診できない、家族以外に医療的ケア児を必要とする子供、医療的ケアを必要とする子供を預けられるところがない、保護者が慢性的な睡眠不足であるなどの悩みや不安が指摘されて、本人はもとより、家族も含めて支援を行っていくということ、大変重要であると考えております。
令和3年に施行されました医療的ケア児支援法においても、医療的ケア児とその御家族への支援については、医療的ケア児の日常生活及び社会生活を社会全体で支えることを旨として行わなければならないとされており、医療的ケア児とその家族が共に安心して生活ができるように、施策の推進に引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
こども家庭庁は、今回の痛ましい事件について、医療的ケア児本人や家族に対する医療的ケア児支援センターや自治体の支援状況を把握しておられますか。大臣、お答えください。
○国務大臣(三原じゅん子君)
地域における医療的ケア児等への支援体制の整備に当たっては、自治体や関係機関等への情報の提供などを行う医療的ケア児支援センターの果たす役割は大きなものがあると考えております。
お尋ねの事案は捜査中であり、個別具体の中身につきましては差し控えますが、各自治体や医療的ケア児支援センターからのヒアリングなどを重ねておりまして、お尋ねの事案の子供と御家族の状況、障害福祉サービスなどの利用状況、各自治体や医療的ケア児支援センターによる支援の状況等について把握を行っております。
御指摘のような痛ましい事案の発生を防ぐためにも、引き続き、こども家庭庁としては、全国の医療的ケア児支援センターの活動実態の把握とともに、医療的ケア児とその御家族のニーズをお聞きしながら、自治体のみに任せることなく、支援体制の整備が一層進むように取り組んでまいりたいと考えております。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
2020年の医療的ケア児者の家族への調査では、代わりにケアを依頼できる人がいないと答えた人は約4割、対応可能な事業所が十分ではない、対応できる職員が少ないが主な理由となっています。中には、短期入所用に4ベッドあるが対応できる職員がいないため、親が倒れたなどの緊急時用の1ベッドしか稼働していないという重症心身医療福祉センターもありました。
医療的ケア児支援法の基本理念は、医療的ケア児の日常生活、社会生活を社会全体で支援するとあります。家族、とりわけ母親が安心して医療的ケア児を任せて親自身のケアをできる時間をつくり出すために、自治体の支援体制整備に国としてどのような予算措置をとっていますか。大臣、お答えください。
○国務大臣(三原じゅん子君)
医療的ケア児及びその御家族につきましては、将来への強い不安、医療的ケアを必要とする子供の預け先がない、慢性的な睡眠不足である等の悩みや不安を指摘する声が出されています。
このため、こども家庭庁では、医療的ケア児等総合支援事業を実施いたしまして、医療的ケア児支援センターの設置や医療的ケア児等コーディネーターの配置を支援いたしまして、医療的ケア児と御家族への相談援助を実施するとともに、医療的ケア児の支援に係る関係機関のネットワーク化や、医療的ケア児の支援者への研修に対する支援のほか、医療的ケア児とその御家族の日中の居場所づくり等の支援を行っています。
また、本事業におきましては、医療的ケア児や重症心身障害児を一時的に預かる環境整備も促進いたしまして、御家族の負担軽減や一時的な休息、レスパイトの確保など、家族支援の充実というところにも取り組んでいるところでございます。
引き続き、医療的ケアが必要な方とその家族が安心して地域生活を送ることができるよう、必要な支援の充実に取り組んでまいりたいと思います。
○舩後靖彦君
次に、子育て支援策の財源確保についてお伺いいたします。
昨年、障害児を含め、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援することを目的に、児童手当の所得制限撤廃、保護者の就労要件を問わないこども誰でも通園制度などの施策を盛り込んだ改正子ども・子育て支援法が成立しました。
子育て支援策を拡充することには大いに賛成です。しかし、そのための予算3.6兆円のうち、1.1兆円は社会保障の歳出削減で賄うとされました。その財源とされたのが、高額療養費の限度額引上げ、高齢者医療、介護保険の自己負担割合引上げなどです。高額療養費制度に関しては、がん患者、私のような難病患者などの当事者、医療関係者からの猛反対に遭い、また、与党内でもこのままでは参院選を戦えないという思惑から、見直しを凍結しました。
しかし、2028年までに子育て支援のための財源を社会保障予算削減で賄うとした社会保障の改革工程はそのままです。次のターゲットは、高齢者医療、介護保険の自己負担割合の引上げ、ケアプラン作成の有料化などが挙げられています。
子育て政策の財源確保は必要です。しかし、そのために命と健康に直結する医療、介護を削るとは本末転倒です。亡国、棄民の政策であり、今からでも撤廃してください。政府は常々予算がないと言いますが、減税した法人税を元に戻して累進強化する、金融所得課税の導入などで税収を増やし、不必要な予算を削るなどして予算配分全体を見直すべきです。それでも足りなければ、必要な予算は積極財政で国債発行してでも確保すべきと考えます。
総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君)
少子化を食い止めるというのは、もう時間との闘いでございます。財源を確保していかねばなりません。
現在の経済財政状況を踏まえましたときに、増税をするとか国債を更に発行するとか、そのような手法を取るつもりはございません。既定予算の最大限の活用によって1.5兆円程度、歳出改革による公費の節減で1.1兆程度、これを捻出をいたしまして、残る1兆円はどうするのということになりますと、これは、歳出改革によって生ずる保険料負担の軽減効果の範囲内で子ども・子育て支援金制度を構築したいというふうに考えておるところでございますが、歳出改革につきましては、改革工程におきます医療・介護制度の改革を実現することを中心に取り組むということにいたしておりまして、現役世代の御負担を軽減し、誰もが年齢にかかわらず能力や個性を生かして支え合う全世代型社会保障をつくっていきたいというふうに考えておるところでございます。
社会保障に関する改革はどうするんだいという話でございますが、今委員が御指摘になりましたように、これは国民生活に幅広い影響がございますので、関係者との丁寧な調整を行ってまいりたいと思っておるところでございます。
先ほど、子育て政策の財源確保のために命と健康に直結する医療、介護を削るのは本末転倒だというふうな御指摘がございましたが、私どもはそういうようなことを考えておるわけではございませんので、歳出改革あるいは既存予算の、既定予算の最大限の活用、そのようなものでこの財源を捻出したいというふうに考えておるものでございます。
○委員長(鶴保庸介君)
計測を止めてください。
舩後君が発言の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
子育て世代と高齢者世代間の対立をあおるようなことはやめるべきです。以下、事前に用意した文書を代読します。
総理、子育て支援の財源を同じ社会保障の枠内から捻出するという財務省の論理ではなく、国民の健康と暮らしを守るため、まずは国債発行で社会保障を支えることを御決断ください。総理、改めてお答えください。
○内閣総理大臣(石破茂君)
財源の確保にはいろんな手法がございます。今御指摘のように、それでは国債の発行で賄えばよいのではないかということでございますが、国債を発行いたしました場合に、これは建設国債ではございませんので、結局のところ、次の世代への御負担ということは不可避だというふうに思っております。私は、国債発行で社会保障を賄うことを完全に否定はいたしませんが、そのことをもってして、次の世代の御負担にならないということをどのように考えるかということは、やはり大変重要なことだというふうに思っております。
どうやって子育ての費用を捻出するかというのは、あらゆる歳出改革の中で考えていかねばならないことでございますが、冒頭御指摘いただきましたように、このことによって、シニアな世代と若い世代の対立をあおるというつもりは全くございません。そうならないように政策は注意しながら決定をしていかねばならないと思っております。
先ほど猪瀬議員との議論でもございましたが、そこにおいてキーワードになるのは、私はやはり応能負担ということだと思っております。単純に年齢で切るのではなくて、高齢者の方々で本当に御負担になる能力が、能力という言い方をあえてするとすれば、高くない方もいらっしゃいます。
一方において、それが若い世代、高齢者ではない世代以上に収入がある方もおられると思います。そこにおいて、一律年齢で切るという考え方についての是非というものは、今後社会保障の財源を見出していく中でやはり議論の必要があるものと考えておりますが、現時点で政府として確定的なことを申し上げる段階にはございません。
○舩後靖彦君
別の質問に移ります。
3月12日の予算委員会で、我が党の大島委員の、なぜ保育所の保育士に付く補助が障害児支援の事業所の保育士には付かないのかの質問に答えて三原大臣は、障害児支援事業所における保育士などの賃金、サービスの基本報酬の見直し、処遇改善加算の充実などを図ってきた、一方、保育については、公定価格で行われており、人件費部分は人事院勧告を踏まえて公定価格の引上げを行っている、処遇改善に関するルールや制度の違いがあるため、一律にこの両者を比較することはできないと答弁されました。
しかし、保育所の保育士の処遇改善では数万円の補助金が出ますが、障害児支援事業所の加算では数千円で、一桁違います。働く保育士の現場感覚からすれば、障害児支援施設においても人員配置基準で保育士又は児童指導員が必要とされているのに、なぜここまで違うのかとなります。これでは、障害児支援事業所で保育士を雇いたくても、保育所と待遇で差が付き、確保できないという現実があります。
保育所であっても、障害児支援事業所であっても、子供にとって保育士が必要なことに変わりはありません。障害児支援施設と保育所の事業所運営に対する基本的な部分は別として、同じ保育士の待遇改善に関する補助はせめて同水準にすべきではないですか。
こどもまんなかをうたい、障害児も一般子供施策の中に包摂したこども家庭庁として検討をお願いします。大臣、いかがですか。
○委員長(鶴保庸介君)
大臣、時間です。手短にお願いします。
○国務大臣(三原じゅん子君)
保育士の処遇改善は、先日予算委員会などで大島議員への御答弁申し上げたとおり、処遇改善に関するルールや制度が違いますので、引き続きこのことも喫緊の課題だと認識してございます。
なお、保育制度と障害児支援制度の双方は、ここを所管する立場として制度の区分なく保育士の処遇を改善すべきとの御意見につきましては、障害児支援制度は利用者自らがサービスを選択し、事業者との契約によりサービスを利用する仕組みであること、障害者に対しては、年齢による切れ目のない支援が求められており、サービスごとに報酬単価が決定される障害福祉制度との整合性を図る必要があること等を踏まえると、慎重な議論が必要と考えております。
いずれにいたしましても、保育士の処遇改善、これは引き続き喫緊の課題であると認識しておりますので、それぞれの制度の枠組みの中で必要な取組を検討してまいりたいと考えております。
○舩後靖彦君
終わります。ありがとうございました。