2025年5月15日 文教科学委員会質疑(インクルーシブ教育推進のための教員加配/障害のある受験生の合理的配慮)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。
先日、私は、文科省のインクルーシブな学校運営モデル事業を受託している群馬県玉村町立上陽小学校を視察してまいりました。モデル事業自体は開始2年目で、群馬県立伊勢崎特別支援学校と月1回ペースで交流、共同学習を進めているところですが、今回はその様子は拝見できませんでした。上陽小学校では、ダイバーシティーとインクルージョンを目指す教育実践が明確なビジョンの下で行われていました。
資料1を御覧ください。
6学年を低学年、中学年、高学年のブロックに分け、ブロックチームの複数担任、教科担任で多角的な視点から子供たちを支援。全ての子供にとって居心地のよい安心できる場となるよう、通常学級、肢体不自由、知的障害の特別支援学級、教室になじめない子のためのYUME学級を出入り自由とする。授業では、課題ごとにゴールと学ぶ過程を明確にし、子供たちが自分の進度で主体的に学べる自由進度学習を取り入れるなど、様々な工夫がなされていました。
教室や机などの配置も一斉授業の方式と異なり、6年生の社会科の授業では、先生が授業を進めている教室の隣の高学年用多目的教室で、一部の6年生がタブレットを使い、自分で調べて学習をしていました。4年生の音楽の授業では、特別支援学級のお子さん二人も支援員の支援を受けながらピアニカの演奏をしていました。
車椅子のお子さんもいるので、3階建ての校舎内は全て段差をスロープで解消、エレベーターも設置されており、私もスムーズに移動することができました。どの授業でも子供たちが元気よく思い思いのやり方で課題に取り組んでおり、子供たちのエネルギーに圧倒されました。また、授業を見学する間、先生方と子供たちとの間にフラットな関係が構築されていることが見て取れました。校長先生のお考えが基になっているものと思いますが、その光景に感動の思いが満ちあふれてきました。
一方で、上陽小学校の経営構想を実現するために様々な工夫、ICTを使った情報共有や全校挙げての柔軟な対応がなされており、そのためには県、町からの人的サポートがとても重要であると感じました。
低学年、中学年、高学年ブロックごとに担任4名、特別支援ブロックに3名配置していますが、2学年で3クラスしかない場合、担任教員は3名しか取れません。1名分は、教科担任を回したり、県のインクルーシブ特配から出ています。教員以外の支援員、スクールサポートスタッフなど国で予算化されているスタッフ以外にも、コラボレーター3名、補助員1名、介助員2名、YUMEルームの支援員1名などが県と町の予算から独自に配置されています。
このように、障害だけでなく、日本語を習得していない外国籍の子供、教室になじめない子など、支援を必要とする子供たちを誰一人取り残さないインクルーシブな学校にするためには、何といっても人手、とりわけ正規の教員が必要です。視察の後、県教委や町教委、上陽小学校の先生方と意見交換をいたしましたが、玉村町長、町の教育長からは、国は全体の教育予算を増やし、とにかく正規教員を増やしていただきたいと強く要望されました。
大臣、教員の働き方改革も急務です。支援の必要な子がいるクラスは学級定数を35人から30人、25人に減らすか、副担任の加配をするなど、国の支援で人的措置をすべきではないですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
文部科学省といたしましても、この共生社会の形成に向けまして、特に、誰も取り残さないインクルーシブ教育システムの構築のために、この特別支援教育の推進を図る必要があると考えているところでございます。
このため、障害のある子供たちが通常の学級で学べるよう、通級による指導の担当教員の基礎定数化、また外部専門家や特別支援教育支援員の配置、地域の小中学校への支援や情報共有、提供を始めといたしました特別支援学校のセンター的機能の強化などに係る財政的支援は行ってきているところでございます。さらに、障害に応じた支援を含め、一人一人の教育的ニーズにきめ細かく対応していく、このことができるように、令和7年度予算におきましては、小学校における教科担任制の4年生の拡充、また小学校35人学級の完成など、過去20年間で最大となります5827人の定数改善を計上させていただきまして、学校の指導、運営体制の充実を図っているところでございます。
文部科学省といたしまして、各教育委員会等におきまして、こうした国の取組も有効に活用しながら、各学校、また地域の実情に応じた指導、運営体制を整えていただくよう促してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○委員長(堂故茂君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(堂故茂君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
今紹介したこの好事例を生かすためにも、国の支援は必須と考えます。
大臣、お願いします。もう一度答弁をお願いします。
○国務大臣(あべ俊子君)
先ほども申し上げましたように、障害に応じた支援を含め、一人一人の教育的ニーズにきめ細かく対応していくための指導体制の充実はまさに本当に大変重要だというふうに私どもも考えておりまして、令和7年度におきまして、35人学級が完成する小学校に続きまして、財源確保と併せましてしっかりとやってまいりまして、済みません、過去20年間で最大となる5827人の定数改善を計上しているところでございまして、しっかりとまたきめの細かい対応のための私ども取組をしてまいりたいというふうに思います。
○舩後靖彦君
次に、障害のある受験生に対する合理的配慮についてお伺いします。
私の質問に応えて、2022年12月、文科省は、高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料を作成いただきました。しかし、受験の公平性と、障害のある受験生が障害のない受験生と平等に受験に参加するための合理的配慮をめぐって様々な問題が起きています。
熊本県では、知的障害のある受験生が昨年の学力検査で記述式回答から選択肢回答への変更を求めましたが、認められませんでした。また、本人が慣れた意思疎通支援者の配置を求めましたが認められず、県教委の指導主事が付くことになり、結果は定員内不合格でした。そして、今年度の受験でも、前年度認められなかった中学校時代の担任を支援者とすることは認めましたが、浪人して一年のブランクがあり、意思疎通が難しく、調整が付かないまま、昨年同様、指導主事が付くこととなり、今年も定員内不合格でした。
熊本県では、2018年、19年、20年の受験において、医療的ケアが必要で言葉で伝えることが困難な受験生に対して、面識のない県教委職員が意思疎通支援者として付いたため意思が伝わらず、力を出し切れずに定員内不合格となりました。
私は、後期試験に向けて、本人と意思疎通できる支援者を付けるよう県教委に要望書を出し、また、本委員会で当時の萩生田大臣に、参議院の職員が文字盤を読み取れますかと質問いたしました。その結果、後期試験では慣れた意思疎通支援者の配置がかない、受験生はやっと伝えられたと全力を出し切ったすがすがしい表情で受験を終えました。
合理的配慮を得て、ようやく受験の土俵には乗れましたが、定員内不合格で結果の平等は得られませんでした。
5年前に慣れた意思疎通支援者を付けることを認めながら、今回認めなかった理由として、熊本県教委は障害が違うと説明しています。言語障害と身体障害のある受験生には認めながら知的障害の受験生に認めないということは、知的障害のある受験生が支援を受けて相手とコミュニケーションを取っているのではなく支援者が勝手に代弁しているのだろうという、知的障害者に対する偏見と差別があるのではないでしょうか。
大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
文部科学省といたしましては、令和5年12月に、文部科学省所管事業分野におけますこの障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針を改正いたしまして、その趣旨について各都道府県等に通知を行うとともに、各種会議を通じてこの周知を図っているところでございます。
個別事案、委員のおっしゃった個別事案に関してはコメントは差し控えさせていただきますが、この中におきましては、合理的配慮の基本的な考え方といたしまして、実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、必要かつ合理的な配慮を提供しなければならないこと、また、介助者や支援員等の人的支援に対しては、本人との人間関係や信頼関係の構築、維持が重要であるため、これらの関係も考慮した支援のための環境整備にも留意することが望ましいことを示しているところでございます。
引き続き、対応指針に基づく合理的な配慮の提供が適切に実施されるよう、しっかりと努めてまいりたいと思います。
○舩後靖彦君
障害者権利条約で、合理的配慮とは、障害者が障害のないほかの者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいうとあります。
また、文科省作成の参考資料には、受験上の合理的配慮とは、学校生活において提供される合理的配慮と同様に一人一人の障害の状態や教育的ニーズなどに応じて対応されるものであり、本人、保護者や都道府県教育委員会などと可能な限り合意形成を図った上で決定し、本人に提供することが望ましいとあります。
熊本県教委は、当初の合理的配慮提供案で、昨年同様、支援者として指導主事2人が付き、面接官の質問に回答しなかった場合、支援者は面接官と同じ質問を2回まで繰り返す、支援者は面接時の回答の支援を行うと示してきました。
しかし、本人が理解できない言葉を分かりやすく翻訳することなく繰り返すことは、障害の状態やニーズに応じた対応とは言えません。また、本人との意思疎通に慣れていない指導主事がどのように回答の支援を行うというのでしょうか。
その後、私の要望書に応えて、熊本県教委は、面接官の質問に回答しなかった場合、支援者は面接官と同じ質問を伝わりやすい言葉にして2回まで繰り返すと変更しましたが、本人に慣れた支援者の配置に関しては受験上の公平性を理由に認めませんでした。その根拠として、県教委は、有識者によるインクルーシブ教育に係る検討委員会で高校入試における合理的配慮の在り方について検討した結果、入試の公平性を確保する観点から、支援者は利益相反がない第三者である方が望ましいという意見を得たとしています。
しかしながら、この検討会では、教育委員会側からの資料提供のみで検討がなされ、当事者からのヒアリングはなされていません。公平性を担保するという観点で、中学の担任であれば利益相反には当たらないとしていますが、現役の高校受験のときはそもそも意思疎通支援者の配置が認められず不合格。卒業後1年のブランクがあるため、元担任とは意思疎通が難しく頼めないという事情は何ら考慮されていません。障害がある受験生が障害のない受験生と平等に学力検査や面接という土俵に上がるための合理的配慮と受験の公平性の比較衡量については、個別に丁寧に検討すべきと考えます。
インクルーシブ教育に係る検討会という名称ながら、インクルーシブ教育を実践する現場の人も障害当事者も委員の中にはいません。そして、本人に会ったこともなく、本人、保護者から聞き取りもしていない検討会の意見で合理的配慮不提供にお墨付きを与えるような方法は不適切と考えますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
障害者差別解消法の趣旨を踏まえまして、合理的配慮の提供に当たりましては、本人、保護者と教育委員会等の相互理解がまさに重要であるというふうに私どもも考えているところでございます。
このため、先ほど述べました対応指針におきまして、必要かつ実現可能な対応案を本人と教育委員会等が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要であり、例えば、本人がふだん講じている対策、また教育委員会等が対応可能な取組等を対話の中で共有するなど、建設的な対話を通じて相互理解を深めていきながら様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられることなどを示しているところでございます。
引き続き、高等学校入学者選抜の場面におきましても、この障害者差別解消法やまた合理的配慮の趣旨が適切に理解されるよう、周知に努めてまいりたいというふうに思います。
○舩後靖彦君
この受験生は、前期試験、後期試験とも不合格となり、定員割れして二次募集をしていた高校を受験し、定員内で合格。毎日楽しく高校に通っているということです。
実はこの高校は、5年前に慣れた意思疎通支援者を付けるよう要望書を出したときの受験生を定員内不合格とした高校でした。当時とは校長先生が替わり、受験の挨拶をしに行った本人、保護者に対して、本校を志願していただきありがとうございますと言われたそうです。5年前にこの校長先生であったら、受験をやり切った医療的ケアの必要な受験生も楽しい高校生活を送っていただろうと思うと、残念でなりません。
校長の考え方、そして教育委員会の姿勢で、同じ定員内でありながら高校生になれたりなれなかったり、こうした理不尽な格差を国としてなくしてほしいと改めて強くお願いし、次の質問に移ります。
3月の予算委嘱審査でもお尋ねしましたが、3月28日に公表された国公立小中学校、特別支援学校のバリアフリー化実態調査の結果についてお聞きします。資料2を御覧ください。
2年前の調査時から、校舎のエレベーター設置率、バリアフリートイレ、スロープによる段差解消は、二年前に比べて2から6ポイントしか増えていません。また、広域災害時の避難所として想定される体育館、屋内運動場でも、2年前から2から6ポイントしか増えていません。さらに、バリアフリー化の計画、策定方針がある学校設置者は、2年前より6.9ポイント増えたものの、31.9%にとどまっており、5年間の整備目標は完全に達成困難な状況です。
大臣はこの現状をどう捉えていますか。
○国務大臣(あべ俊子君)
学校施設のバリアフリー化につきましてでございますが、この整備目標を設定した令和2年度から令和6年度の間に一定の進捗はございますが、令和7年度末までの整備目標の達成に向けて、進捗が十分ではない状況にあるということは認識をしているところでございます。
こうした状況も踏まえていきながら、現在、文部科学省におきましては、バリフリーに関する学識経験者等から構成されます有識者会議を設置いたしまして、学校施設のこのバリアフリー化の推進のための議論をまさに今進めているところでございまして、文部科学省といたしましては、引き続き、有識者会議の議論を踏まえさせていただきながら、この学校設置者が計画的にバリアフリー化を進められるような必要な取組を推進してまいりたいというふうに思っております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
終わります。ありがとうございました。