2025年5月22日 文教科学委員会質疑(教員の定額働かせ放題をなくせ 給特法改正案)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
本日は、公立義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。
まず、今回の法改正の経緯と目的をお伺いいたします。
2019年の給特法改正では、教員の残業の上限を月45時間、年間360時間以内とする指針に沿って、自治体が条例によって1年単位の変形労働制導入の判断をするとなりました。しかし、資料1にあるとおり、3年後の2022年教員勤務実態調査では、教員の月当たり時間外在校等時間は、自宅での持ち帰り仕事を含め、小学校で84時間40分、中学校で107時間10分、2016年度の調査時より改善されたとはいえ、依然過労死ラインの80時間を上回っている実態が明らかとなりました。
このように、過労死ライン超過の長時間労働が長年放置され、2023年度、教員の精神疾患による病気休職者が7119人で過去最高になるなど、長時間労働が蔓延する現状に対して学校のブラック職場のイメージが定着して、教員志望者が減少、今、教員の働き方改革と待遇改善を進めなければ教員不足によって学校教育が崩壊しかねない、そのような危機感の下で今回の法改正となったと認識していますが、大臣の御認識はいかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
委員にお答えさせていただきます。
まさに学校教育の成否、教師に懸かっておりまして、教職の魅力を向上させ、教師に優れた人材を確保することが不可欠だと私どもも考えております。
こうした公教育の要でございます教師を取り巻く環境でございますが、依然として大変厳しい状況となっておりまして、この現在の状況をまさに改善しなければ、委員御指摘のとおり、我が国の教育の質の低下、これを招きかねないという強い危機感を私どもも持っているところでございます。
このため、教職の魅力を向上させ、教師に優れた人材を確保するためにも、今回この学校における働き方改革を進め、教師が高い専門性を最大限に発揮して教育活動を行うことができるようにするとともに、教師の職責にふさわしい処遇改善等を図ることをその目的、内容とする今回の法案を提出しまして、教師を取り巻く環境の整備、着実に実行してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
指針で教員の残業の上限を月45時間、年間360時間以内としたにもかかわらず、実態はその倍以上、そして1日の休憩時間は23分、恒常的な土日や自宅での持ち帰り仕事、こうした実態があるにもかかわらず、誰も責任を取っていません。
その原因は、給特法に規定された教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しない、その代わりに一律4%の教職調整額を支給するという、いわゆる定額働かせ放題の制度にあります。
衆議院での議論でも、教員の勤務実態について、労働基準法との関係から様々な質問が寄せられました。文科省は、変化の激しい子供たちに日々対応する教員の仕事は柔軟性と裁量性が大きく、教員は自らの専門性、自律性を発揮して仕事をするもので、管理職が一つ一つ職務命令を出して業務をするものではない、時間外勤務を命じることのできる超勤四項目以外は、管理職の指示なく行った場合は使用者の指揮命令下における労働時間に該当しない自発的勤務、要するに自己責任だというわけです。
一方で、教員の勤務実態を把握し、健康の維持管理をするために、超勤四項目以外の校務時間、自宅での持ち帰り時間も含めて時間管理の対象としていると説明されています。また、給特法3条では残業代を払わないと規定されていますが、文科省も、労基法で定められた最低基準である1週間の所定労働時間40時間、1日の休憩時間1時間は教員にも適用されるとしています。
今回の法改正の目的が、多数の休職者や離職者を生み、教員志願者の減少によって教員不足を引き起こした教員の長時間労働を何とかしようというのであれば、まずは時間外勤務を減らすことが最重要課題です。
2019年の給特法改正時に、参議院附帯決議では、2、3年を目途に教員の勤務実態調査を行った上で、給特法の抜本的見直しに向けた検討を加えることとされています。
勤務実態調査でいまだに過労死ラインを超える長時間労働の実態が明らかになった以上、給特法の定額働かせ放題は撤廃し、超過勤務にはきちんと残業代を払う仕組みに変えるべきです。調整額を4%から毎年1%ずつ10%まで引き上げることは、多少の待遇改善にはつながっても、給特法の枠組みを6年間温存することになり、問題の解決にはつながりません。大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
まさに、教育活動におきましては、日々子供たちと接している教師の創意工夫が重要なところでございまして、今回の給特法に関しましては、労働基準法、また地方公務員法の特別法といたしまして、逐一管理職の職務命令によるのではなくて、教師が専門性を発揮していきながら業務を遂行し、教師の裁量を確保する仕組みといたしまして、この給与その他の勤務条件について特例を定めたものでございます。給特法におきましては、こうした職務の特殊性を踏まえた上で、時間外勤務手当ではなくて、勤務時間の内外を包括的に評価するものとして教職調整額を支給することになっております。
今回、中央教育審議会におきましては、1年以上にわたりまして、この給特法の法制的な枠組みを含めまして総合的な議論を行いました結果を踏まえて、給特法を維持した上で、高度専門職としての教師の職務の重要性にふさわしい処遇を実現するために、この教職調整額を10%に引き上げるとともに働き方改革の更なる加速化のための仕組みを構築することも盛り込んだ改正案を提出することとしたものでございます。
○委員長(堂故茂君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(堂故茂君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
教員が長時間労働するのは自己責任ですか。結果、病気になるのも自己責任ですか。
以下、事前に準備した原稿を代読します。
超勤4項目以外の時間外勤務を禁止しておきながら、超勤4項目以外の業務についても学校教育活動に関する業務として勤務時間管理の義務付けをしています。これは、自発的行為でなく労働時間だと文科省も認めているということではないでしょうか。好きこのんで残業する人はいません。やらなければならない業務だから、身を削っているのです。それなのに、残業代すら支払われないのです。
教職調整額と引換えに、ほぼ無制限に善意で時間外労働を強いられている教員の働き方、大臣は異常だと思われませんか。変えませんか。答弁をお願いします。
○国務大臣(あべ俊子君)
令和元年の給特法改正以降、文部科学省におきましては、教師の在校等時間の上限を定めまして、客観的な勤務時間管理の徹底等を求める指針の策定、また、学校、教師が担う業務に係る3分類に基づきまして、この業務の精選と見直し、また小学校35人学級などの教職員定数の改善など、学校における働き方改革を進めてまいりましたところでございます。
その結果、在校等時間の客観的把握が行われるようになり、勤務時間管理が進むとともに、令和4年度の勤務実態調査の結果におきましては、給特法の下におきまして、教師の時間外在校等時間を減少させることができたところでございます。
しかしながら、依然として在校等時間の長い教師も多く、教育委員会によっては取組状況に差があることから、取組を加速させていくことがまさに必要でございまして、今回の法案におきましては、給特法の仕組みを維持した上で、この教師の勤務時間管理の責任を有している全ての教育委員会に対しまして、教師の業務量の管理、また健康を確保するための計画の策定とその実施状況の公表等を義務付けるなど、働き方改革の更なる加速化のための仕組みを構築することとしているところでございます。
○舩後靖彦君
今回の改正案では、学校における働き方改革の一層の推進として、教育委員会に対し、教員の業務量管理・健康確保措置のための実施計画の策定、公表、計画の実施状況の公表を義務付けています。しかし、時間外在校等時間を減らすため、管理職による退勤の強要による持ち帰り残業の増加、出退勤記録の改ざんなどが懸念されます。
名古屋大学の内田良先生ほかによる小中学校教員を対象とした学校の業務に関する調査によりますと、自治体の出退勤調査では、勤務時間の虚偽申告を求められたことがある人は16.6%、6人に1人いるとのことです。また、自治体の調査では、休憩時間中の労働や持ち帰り仕事の時間が調査対象になっていません。
さらに、4月22日に行われた日本労働弁護団主催の院内集会で、岐阜県の現役高校教師である西村祐二先生は、給特法の枠組みの中では教員自身が出退勤時間の管理をおざなりにしてしまっていると報告されています。
岐阜県の小中高の教職員を対象とした調査によると、タイムカードの打刻を正確にしている人は6割、正確でないときがあるが26%、ほとんど正確でないが14%でした。正確に報告しない理由として当てはまるものとして、勤務改善につながらないが71%、課される報告をしたくないが75%、目的が明確でないが41%、管理職からの暗黙の圧力が26%でした。つまり、教員の業務量を把握しても、給特法の定額働かせ放題の枠組みの中では改善につながらないと教員は分かっているのです。
教員の業務量管理・健康確保措置実施のための計画策定、公表、実施状況の公表義務付けは、教員の長時間労働が改善されないことに対して、国も学校設置者も校長も誰も責任を取らない現状において一定の前進とは考えます。
であれば、なおさら、把握した教員の時間外勤務を自発的勤務として一律の教職調整額で丸めてしまうのではなく、時間外労働として扱い、残業代の支払を通じて労働時間規制を実効化させることが必要ではないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
まさに、教師が専門性を発揮いたしまして業務を遂行し、裁量を確保するため、給特法におきましては、勤務時間の内外を包括的に評価し、教職調整額を支給することにしているところでございます。
この仕組みの下におきまして教師の業務量を把握、改善していくためには、令和元年の給特法の改正以来、タイムカード等を活用いたしました在校等時間の客観的な把握を求めてまいりましたところでございます。令和元年におきましては、その域内の学校におきまして客観的な方法で在校等時間を把握している教育委員会の割合が約半数程度であったものが、現在では、ほぼ全ての教育委員会において、所管する全ての小中学校等において客観的な把握が行われるようになっているところでございます。
また、在校等時間を目標の範囲内にすることのみにこだわり、虚偽の時間を記録することやさせることはあってはならないことでございまして、この旨は現在の指針におきましても明確にお示しをしているところでございまして、今回の法案におきましては、給特法の仕組みを維持した上で教師の健康福祉の確保に向けて時間外在校等時間を縮減する仕組みを構築することとしております。
引き続き、指針で示します在校等時間の客観的な把握、また管理が教育委員会や学校の責務である点を徹底させていただきながら、在校等時間を適切に把握をした上で、教師が働く環境の改善が進むように取組を促してまいります。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
衆議院の審議の中で、教員の1か月当たりの平均時間外在校等時間を30時間まで削減すること、そのために、教員一人当たりの担当授業時数の削減、教育課程の編成の在り方の検討、教員定数を定める義務標準法の改正、教育活動を支援する人材の増員、部活動の地域移行に向けた財政支援などの措置を講ずることが附則新第3条に盛り込まれました。また、公立中学校の35人学級実現が附則新4条として新設されました。これらが実現すれば、時間外在校等時間は減ると思われます。しかし、講ずるべき措置のうち、一人当たりの担当授業時数削減、教員定数の改正で教員の数を増やす、中学校の35人学級実現のためには、教員のなり手を増やす必要があります。
しかるに、現状では、長時間労働が蔓延した学校のブラック職場のイメージが定着して、教員志望者は減少しています。資料2を御覧ください。2023年度の小学校教員採用試験の倍率は全国平均2.3倍で過去最低、中学校は4.3倍で前年度の4.7倍から減少、高等学校は4.9倍で前年度の5.3倍から減少となっています。特に、小学校では2倍を下回る自治体が21あり、秋田県では1.3倍と、教員の質を確保するどころか、最低限の人員確保すら危うい状況です。
全国公立学校教頭会の調査によると、2024年の始業式時点で全国2割の学校で教員不足が生じていたとのことです。1980年代に大量採用された教員が大量に退職し、また中途退職者も増えていることで採用者数が増える一方、受験者が減少している現実があります。日本全体で労働力不足が深刻化し、大企業を中心に初任給30万円などと採用条件が引き上げられ、教員のなり手不足は更に深刻化しかねません。
もちろん、教員は子供たちの成長にじかに向き合うやりがいのある仕事であり、給料面だけで教員志望のインセンティブが向上するわけではないと思います。しかし、教員のやりがいを搾取するような現在の長時間労働を改善しないことには、教員定数だけ増やしても教員不足は解消されません。このままでは、時間外在校等時間30時間以内を守らせるためのプレッシャー、時短ハラスメントが横行するだけのことになりかねません。
大臣、このような中途半端な改正で、本当に教員の長時間労働を解消できるとお考えですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
まさに委員がおっしゃるように、なり手不足のところをいかにこの教員の魅力的な職場、働き方を改革していくかということが重要なところでございまして、教師の時間外在校等の時間を縮減するためには、学校におけるこの働き方改革を更なる加速化を進めていきながら、学校の指導、運営体制の充実を一体的に推進する必要が私どもあるというふうに考えています。
今回の法案におきましては、全ての教育委員会に対しまして、働き方改革の計画を策定する、また実施状況の公表など取り組んでいただくこととしておりまして、具体的には、学校、教師が担う業務に関わる3分類に基づく業務の役割分担の見直しや精選、効率化の徹底のほかに、標準を大きく上回る授業時数の見直し、校務DXの加速化、部活動指導員の配置、休息の部活動の地域展開などの取組を進めてまいります。
また、学校の指導、運営体制の充実に関しましては、小学校における教師の持ち授業時数の軽減、また中学校における生徒指導の体制強化のために、必要な教職員定数の改善を四年間で計画的に実施することに加えまして、教員の業務支援員などの支援体制の配置充実を図ることとしているところでございます。
今回の法改正を通じまして、この教師の時間外在校等時間の縮減を進めるとともに、教師の職責にふさわしい処遇改善を行うことによりまして、教師を取り巻く環境を総合的に整備をし、心ある、志ある有為な人材が教師を目指すことができるようにしっかり取組をしてまいりたいというふうに思っております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
私の事務所には、全国の多くの現場の教員から悲痛な要望のファクスが届いています。一つを紹介します。
子供たちのための仕事をしたいと思っていますが、授業の準備も十分できずに子供たちの前に立つことが多く、子供たちの話もゆっくり聞けません。一日の担当授業数が多過ぎて、勤務時間中に授業の振り返り、準備、子供たちに向き合う時間が取れないからです。小手先の働き方改革では教員の長時間労働に歯止めを掛けることはできません。長時間勤務にブレーキを掛ける残業を支給する制度がどうしても必要です。
この訴えにあるように、通常の職場や私立学校、国立学校と同様に、労働基準法にのっとり、残業代を支払うことで、給与面と労働環境面で教育現場を魅力ある職場に変えていく必要があります。
一方で、教員の多忙化、長時間労働の根本原因にメスを入れないで、残業代を払えば、あるいは教職調整額を増やせばいいというものではないはずです。教員の多忙化、長時間労働の第一の原因は、学習指導要領で定められた学ぶべき内容の増加です。
資料3を御覧ください。授業、学習指導は、部活動指導のように校外の人材に任せるということはできません。まずは、教員の本来業務である教える内容を精選し、授業のこま数を減らす必要があります。そのために、学習指導要領を改訂し、カリキュラムオーバーロード、教える内容の過積載の状態を改善する必要があります。
これは、教員の負担を減らすためだけではありません。外国語や道徳が教科化され、教科書がどんどん分厚くなって、学ぶ内容や時間数が増えている現在の状況は、子供たちにとっても容量オーバー状態であり、授業についていけない子供、不登校の子供の増加にもつながっています。
学習指導要領の詰め込み過ぎを解消し、教員が本来の業務である授業準備や子供に向き合う時間を確保することが教員の働き方改革、教員不足解消を進める本丸と考えます。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(あべ俊子君)
まさに授業を始めとして教師が教師でなければできないことを専念できる環境を整えなければいけないと私ども考えておりまして、この総合的な勤務環境改善を通じまして、時間外在校等時間を縮減することがまさに重要でございます。
その上で、御指摘の学習内容、また標準授業時数に関しましては、子供たちの学習状況や、これからの時代に必要な資質、魅力などを総合的に考慮した上で、全体として教育の質の向上につながるよう検討すべきだとまさに考えているところでございます。
この点につきましては、中教審に対して、標準授業時数の弾力化、これに加えまして、学習指導要領や解説、教科書、入試、教師用指導書の影響も含めました授業づくりの全体を捉えまして、また、過度な負担、負担感が生じにくい在り方の検討を今まさにお願いしているところでございまして、具体的には、引き続き中教審で検討していくところでございますが、教育課程の改善と働き方改革の両立を図っていきながら、全体として教育の質の向上につながるよう議論をしっかり進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
済みません、魅力と言ってしまいましたが、能力でございました。読み違えで失礼しました。
○舩後靖彦君
代読いたします。
教員に定額働かせ放題で長時間労働を強いて、教員不足がますます教員の心身の健康を脅かしています。そうしたブラックな学校の状況が、教員を目指そうとする学生の意欲をそぎ、教員不足に拍車を掛けるという悪循環です。こうした状況は、何よりも教育を受ける子供たちの学びや育ちに悪影響を与えています。公立学校の危機的な状況は、小手先のびほう策では解決できません。
給特法による定額働かせ放題をなくし、長時間労働に法的規制を掛ける残業代支給に抜本的に変えるべきと申し上げ、質問を終わります。