2019年11月28日 文教科学委員会 参考人質疑(教員の給与に関する「給特法」改正案 変形労働時間制の是非/働き方改革)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、御多忙の中、郡司参考人、西村参考人、東川参考人、相原参考人の皆様にお時間をいただき、委員会で御意見をお聞かせいただきますこと、誠にありがとうございます。

まず、教育現場におられる郡司参考人と西村参考人にお伺いいたします。

この間の給特法の審議の中で大臣の答弁をお聞きしておりますと、一年単位の変形労働時間制を採用しても、そのことで直ちに教員の業務量、長時間労働が縮減されるわけではないが、業務改善と併せると夏休み期間などでまとめて休みを取りやすくなるという御説明だったと理解しております。

しかし、多くの教員から、現在でも夏休み期間中に休めない、五日連続で休むことも難しいという声が多く届いております。

教員の働き方改革が夏休み期間中にまとめて休むという形で提案されていることへの評価、そもそもそれが可能なのか、あるいはどうしたら可能となるのか、改めてお伺いしたく存じます。

○参考人(郡司隆文君)

ありがとうございます。

冒頭の意見陳述でも述べさせていただきましたように、確かにこの一年単位の変形労働時間制の導入をもって業務が削減されるものではありません。私がそれに賛成する理由ですが、また改めてになってしまいますけれども、現状においては、十六時四十五分で勤務が終了するというのは実質的に不可能である、それ以降の時間については捨てている状況にあると。これを積み上げて夏休みの長期休業中にまとめ取りをできるようになれば、これはマイナスはないというふうに考えております。

それが実際にできるようになるにはということで御質問があったかと思うんですけれども、例えば、文科省については、先ほどもありましたように、部活大会の日程等々ですね、制度設計をしていただくと。教育委員会においても、様々これまで行っていた研修、あるいは研究指定、あるいはプールの管理の在り方など、様々やれることってあるのかなと。学校においても、これまでの補習や○○スクールのような、小学校だとそんなこと等を行っているわけなんですけれども、そういうものがどうなのか。部活動の在り方、日程、練習日はどうなのか。プール指導、あるいは任意の研究団体での研修なんというのもたくさん、任意とはいえ、ほぼ強制みたいな、そういうものもたくさん入っております。そういうものも思い切って見直していくということにつながっていければこれができるのではないかというふうに思います。もちろん、それぞれ、できない、無理だ、どの程度できるかというところに応じた変形労働時間制を設定していただければいいのかなというふうに思っております。

以上です。

○参考人(西村祐二君)

夏休みのまとめ取りについては、それはあったらあるにこしたことは、可能であればそれがあるにこしたことはないんですけれども、それよりも、今優先すべきは何かということを伝えたいです。

私は岐阜市に住んでいるものですから、県立所属ですから岐阜市が行っている十六日間の閉庁日というのが適用されているわけでは決してないんですけれども、やはりすごく評判がいいです。それは、十六日間のうちで本当は取れなかった年休をどんどん消化していって、ここで長期休みをつくっていける。若しくは、年休を使わなくても、もし夏休み後の授業準備をしたければ、その期間中、静かな学校の中で自分の授業準備や自己研さんやということも行っていけると。確かに、何も反対する理由はないんじゃないかなというふうにして思うんですね。

それが変形労働時間制となってくると、変形労働時間制の場合は、何か同じように見えて実は全然別物で、その夏の休暇の代わりに十一か月間の業務が実は増えるんですよと、まあ、本当に確実に増えると思います。増えるんですよというそこの部分がありますので、もし、そこの部分をきちっと説明した上で、こういった夏休みのまとめ取りについてどう思いますかと教員に質問してもらえれば、多くの教員はこれに疑問を持つと思います。

ですから、長期閉庁期間という形で今の制度でもできる、それについてはかなり高い支持が得られているということが分かっているわけですから、変形労働時間制という何が起きるか分からないようなものを導入するよりも、現制度の中でやるべきだと考えます。

○舩後靖彦君

代読します。

ありがとうございます。

因果関係は分かりませんが、私は四時間睡眠を続けた結果、ALSを発症しました。個人差はありますが、三時間睡眠を続けるような生活をしていたら、ばたばたと倒れる先生がおられる可能性が高いと感じます。その辺りはどうお考えでしょうか。郡司参考人、西村参考人にお伺いいたします。

○委員長(吉川ゆうみ君)

舩後靖彦さん、恐縮です。最初の質問は四人の参考人に御質問でしたか。(発言する者あり)お二人で。はい、済みません。

じゃ、お続けください。

○参考人(郡司隆文君)

四時間とか三時間睡眠というのは、もうかなりきつい状況だろうなということは想像に難くありません。

ただ、この変形労働時間制が想定しているのは、恐らく多くの教員が、現状でも少なくとも過半数の教員がまだ学校に残っているであろう一時間程度が週三日程度、しかも忙しい時期に限りということですので、そこまでこれを導入することによって勤務が大変になるということはないのかなと。その四時間、三時間ということにならないためにも、我々それとは別にしっかりと業務改善はしていかないといけないのかなというふうに思います。

以上です。

○参考人(西村祐二君)

様々御意見あるんだなと思ったのが、八時間でも帰れない状況であるから、はみ出した部分をどこかで補填するんだという、そのような考え方もあるんだなと今日すごく勉強させてもらったんですが、そうなってくると、結局十一か月間の長時間労働はもう放置、諦めてくれと、これはもう現状維持なんだということを宣言してしまうことになります。

五十年前の教育現場は、もっとゆとりがあったと聞いております。働き方改革は五十年前の教育現場に戻すんだという理念で何年掛かろうが進んでいきたいと思う中で、もう長時間労働は固定ねというふうにして言われてしまう、そういった危惧があります。

一つ私の署名活動に寄せられた意見を紹介しますが、例えるなら、夏休みの一か月間は十二時間寝られるから、それ以外の十一か月間は四時間睡眠でいいよねというような制度です、これっておかしいですよねと、そんなことをしようとしているのが変形労働時間制なんだと。この署名には、現職教員、教員家族、教員志望の学生、それから学校に直接関わりのない市民の方たち、もちろん保護者の方たちなんかがたくさんこの制度自体に疑問符を付けております。ですから、拙速に結論を急ぐのではなく、もっと時間を掛けて、来年の通常国会でもいいんじゃないかなと私は思います。

○舩後靖彦君

代読します。

ありがとうございます。

続きまして、相原参考人にお尋ねいたします。

民間企業では、働き方改革として大企業に罰則付き残業時間の上限規制が設けられております。しかし、残業時間は規制されても、人が増えない以上、業務量は減らず、社内でできないことを社外に持ち出し、自宅持ち帰りでサービス残業が恒常化しているとも聞いております。

一方、教員の働き方改革では上限ガイドラインを指針に格上げするとしていますが、労使協定によらず給特法を前提とするため、上限時間を超えた際の罰則規定も割増し賃金もありません。

民間企業での実態を踏まえ、教員の働き方改革、一年単位での変形労働時間制導入に関しての御意見を伺いたく存じます。

○参考人(相原康伸君)

ありがとうございます。

本質を突いた御質問だというふうに私は思います。七十年ぶりの大改正ですので、働き方改革はオールジャパンで進める必要があります。

精神論でまず言えば、学校の働き方改革が今回の働き方改革をリードするぐらいの形で持っていくのがよろしいんだろうというふうに思っています。タイムカードだけで全ての労働管理ができると私は思いませんけど、管理の手法も含めて昭和以前の段階の状況に私はあると思っているんです。相当程度改めていかないと、私はこれテーマとして大きくなっちゃうなというふうに思っています。

大企業の若しくは大手の企業の労働時間管理が厳しくなり、そこからあふれた業務などが中小企業に転嫁することになれば、日本全体の付加価値は高まることとなりません。舩後委員がおっしゃったとおり、学校現場での働き方は、見た目良くなったけれども本人にとってみての働き方は全然変わっていないというのでは、今回の本質を突いたものにならないんだろうという御指摘はそのとおりだと私は思います。

上限規制の罰則規定は、今回、相当きつく入りましたから、これが意識改革や業務転換につながった面は大変大きいというふうに私は思っておりますので、罰則がなくても学校現場は変われるんだという実態が今回示せるかどうかというのは大変大きなチャレンジじゃないかと私は思います。

○舩後靖彦君

代読します。

ありがとうございます。

多くの現場教員、関係者が指摘しておりますように、教員の多忙化、長時間労働の問題を解消するには、教員の本来業務を明確にし、精選して業務量を減らす、教員を増やすことが必要と考えます。しかし、現状は、学習指導要領の改訂で学ぶ量は増え、道徳の教科化、小学校では外国語が教科化され、学力テスト悉皆調査で学力向上が保護者からも求められるなど、教員の授業準備、評価等の本来業務を増やす一方で時間外勤務を減らせと言っているわけで、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような状態です。

さらに、担任が家庭との連絡のために作成しているクラス便りや校外学習の際の指導案作りなどの従来からある業務も校長のチェックや教育委員会への報告が必要となるなど、学校の管理強化の中で必要な事務手続が大幅に増えているという実態を伺いました。

萩生田大臣は、学校における働き方改革は特効薬のない総力戦とおっしゃっていますが、このように、教員の本来業務だけ取っても増加し、構造的な長時間労働が拡大している中、変形労働時間制を導入することが妥当なのか、西村参考人、東川参考人にお伺いしたく存じます。

○参考人(西村祐二君)

やはり、変形労働時間制ではなく、膨大な業務量が発生しているこの現実をどうすべきかという。そのためには、残業時間です。残業時間をどうするのかというためには、結局、これが残業とみなされていないんですね、給特法によって。残業は減らしましょうという行動をしようとしているにもかかわらず、今はまだ残業という概念がないんですよね。

ですから、最初にやらないといけないことは、残業は残業と認める。でないと、残業を減らそうなんという議論は本来できないはずです。ですから、そこにもっと時間を掛けて審議をしていただくべきなのに、変形労働時間制についてずっと話合いがなされている様子を憤りを持って拝見していたというところでございます。

○参考人(東川勝哉君)

ありがとうございます。

やはり、いろいろ御意見出ているように、業務量の圧倒的多さ、かつ、それが例えばタイムカードの打刻によって一度は例えば職員室などでも一旦帰る雰囲気ができるのかも分かりませんが、打刻することによって安心して、その後また仕事ができるという逆の構造も一方ではあるのかなというところ。

意識改革という意味では、このように、一年単位の変形労働制も含めて、その是非も含めた議論をしていくことは必要だというふうに思いますが、少しでも前に進めていくためには、何かしら採用して前進させていくことが必要だなというふうに感じております。

以上です。

○舩後靖彦君

代読します。

ありがとうございます。

先日の委員会において、萩生田大臣は、タイムカードなどの客観的方法により勤務時間の状況把握を法令上明確化し、勤務時間管理を徹底するとおっしゃいました。確かに、教員の勤務時間、勤務状態を可視化することは一歩前進かと思います。しかし、本当に客観的な記録がなされるのか、また、その結果、指針の上限を超えて勤務した実態が判明した場合、どう改善策を取るのか担保されていないと本委員会でも指摘されております。

教員の勤務時間管理の在り方について、西村参考人に現場からの御意見を伺いたく存じます。

○参考人(西村祐二君)

結局、この残業は自発的にやっているものだ、自分がやっているものだと、自分でしっかり管理しましょうねという、そのようなところにとどまっているような気がしてなりません。ですから、ちょっとタイムカード押すの面倒くさいからということで、別に残業代も発生しないしいいかというぐらいの認識でいるような教員も少なくないかもしれないなと思っているところです。

また、仮に、じゃ、四十五時間を超える残業が発生しているというような申告がなされたときに、要するに、法律で定める指針を超えたような、若しくはそれに準ずる条例で定めているものを超えたときに誰の責任になるのかと、そのときに、じゃ、管理職に責任を問うことができるのかと、そこが非常に大事かなと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

文部科学省は、三年後の二〇二二年に勤務実態調査をし、給特法の枠組みを含め、中長期的に必要に応じて検討するとしています。給特法はほぼ半世紀前に施行された法律で、その後、学校の状況も労働法制も大きく変わっています。今まさに教員の長時間労働、ただ働きの働き方改革が必要と存じますが、郡司参考人、西村参考人に現場からの率直な御意見を伺いたく存じます。

○参考人(郡司隆文君)

ありがとうございます。

本当に現場は今非常に厳しい状況にあるという認識を持っております。子供たちの健全な育成ということを学校は担っていかなくちゃいけない、そのためにも、今後、持続可能な学校指導、運営体制を構築していかなくちゃいけない、まさに中教審の答申に書いてあったとおりだと思います。

そのために業務改善をしっかりと行い、何に注力していくのか、あるいはこれまでの慣習で行っていた業務をもう一度しっかりと見直して、子供たちのための本当に学校になるように我々もしっかり現場の責任者としてやっていかなくちゃいけないなというふうに思っております。

以上です。

○参考人(西村祐二君)

働き方改革は非常に大事だというような認識を多くの教員が共有できているのかどうか、これは正直不安なところであります。というのは、結局、この働き方の問題の責任がどこに所在するのかというのは非常に曖昧なんですね。

今後、国が、では給特法改正案定めました、条例で設けてくださいとなったときに、今度は自治体の責任に、自治体が定めるも定めないも、ここで定めたら自治体の責任ですよというふうになるのかなと。今度、教育委員会の方は各学校で話し合ってくださいねと、もしなったとします。そうしたら、各学校の中で決めたことということで、教育委員会も学校の方に責任を投げてくるのかなというふうに思います。今度、学校の中では、来年度の一年間の年間スケジュールはこんな感じですと、これは、今年と同じように行事もたくさんありますけれども、皆さん、これでよいですかと言われて、なかなか意見が上げにくいような職員会議の中で、五秒、十秒で、はい、では決まりですと、来年もこのスケジュールで、どうか皆さん、ぎりぎりまで頑張ってくださいというような形で、これは皆さんが職員会議の中で了解していただいたものですからと。今度は、管理職から、ともすれば一人一人の教員に対して責任が投げられていくような現状、それが現状なわけです。ですから、誰のせいで、何のために私はこんなに働いているんだろう、そして疲れて静かに消えていく、辞めていくというような実際ですね。

この責任がどこにあるのかということも給特法の問題を考える上ではっきりしていただくということが非常に大事かと思っております。

○舩後靖彦君

代読します。

ありがとうございます。

最後に、相手を信頼し、認めなければ、その人は成長し、その人らしく仕事をすることはできないと考えております。これを指導者がやらねば、この改正も見かけだけのものになると考えます。

このことを付言し、質問を終わります。