2020年7月22日 参議院文教科学委員会質疑(オンライン授業/医療的ケアの必要な子の普通学校受け入れに関する地域間格差)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

質問に入る前に一言申し上げます。

七月五日から断続的に降り続く大雨によって多くの被害が発生しました。それに加えて新型コロナウイルス感染下での避難には緊張、ストレスが伴い、ますますつらい状況とお察し申し上げます。また、感染予防のため広域からのボランティア受入れもままならず、復旧の遅れも気になるところです。

梅雨明けとともに、今度は猛暑が襲ってきます。多くの支援が届くよう、現場から寄せられる声を集め、国会の場に届けていきたいと存じます。

代読いたします。

では、質問に移ります。

まず、オンライン授業の環境整備と障害学生に対する合理的配慮についてお尋ねいたします。

五月二十一日の一般質問で、私は、保護者の方から、休校がいつまで続くか分からない中オンライン授業に期待したが端末の配付は来年度と言われた、進んでいる地域との格差が生じるのは公教育でおかしいのではないかという御意見をいただき、質問いたしました。その後、六月にこの自治体でも予算が組まれたということです。

現場においては、教員も学生も児童生徒も、ICT機器の面でもスキルの面でも私的インフラで対応せざるを得ず、個々人のスキル、機器環境、家庭環境に大きく影響されました。そのため、学校間でオンライン教育の水準には驚くほどの差があると言わざるを得ません。特に義務教育段階では、オンラインを先進的に取り入れている私立と今回初めて取り組み始めた公立との差は顕著です。

また、非常勤講師で何校も掛け持ちして授業されている方は、大学ごとに使用するプラットフォームのシステムが異なり、それに対応してオンライン授業の準備をするのは、講師料の安さを考えるとかなり厳しいものがあります。

私は、移動に制限がある人、空気を読んで集団の規律に合わせることが難しい人、いじめや人間関係が苦手で登校に困難を覚える人などにとって、ICTを活用した対面授業やオンライン授業は個別対応しやすく、平時であっても有効と考えています。しかし、現場任せのままでは本格導入にならないまま、コロナ禍が収まればやめたいというのが大方の本音の中、再び元に戻りかねません。

デジタル機器利用状況がOECD加盟国で最低水準という状況を克服するには、まずはこの間のオンライン授業でどのような課題があったのか実態調査し、その課題を整理して更に本腰を入れて対応する必要があるのではないでしょうか。調査をするお考えがあるか、お聞かせください。

○政府参考人(丸山洋司君)

お答え申し上げます。

新型コロナウイルスへの感染及びその拡大のリスクを可能な限り低減をしつつ、子供たちの学びを保障し、教育の質の更なる向上を図るため、オンライン教育を始め教育におけるICTの活用が極めて重要であるというふうに考えております。このため、文部科学省では、GIGAスクール構想の実現を始めとして、初等中等教育及び高等教育段階におけるICTを活用した教育の充実に向けた環境整備を進めているところであります。

オンライン教育に関する実態調査については、公立学校における学習指導等に関する調査や学校ICT環境の整備予定に関する調査を行い、様々な把握に努めているところですが、御指摘のオンライン教育における課題の実態についても、具体的な事例を収集して全国に共有するなど、検討してまいりたいと考えております。

文部科学省としては、このような令和の時代のスタンダードとしての学校ICT環境整備の推進など様々な取組を通じ、オンライン教育を含めた様々な場面でのICTの活用を促進してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

引き続き、オンライン授業における障害のある児童生徒、学生に対する合理的配慮についてお伺いいたします。

資料一を御覧ください。障害学生を多数受け入れている日本社会事業大学、筑波技術大学、筑波大学の事例が紹介されています。

筑波大学のサイトでオンライン授業における合理的配慮をまとめた指針も示されています。また、公益財団法人大学コンソーシアム京都学生支援事業部でも、大学共同利用機関、NPO法人等による特徴的な取組が紹介されています。こうした配慮は障害のない人にとっても分かりやすく、オンライン授業のユニバーサル化に役立つと思われます。しかしながら、これらの情報が各大学、とりわけ障害学生の受入れの歴史が浅い大学でどれほど共有されているでしょうか。

私がヒアリングした私立大学では、大学の共通プラットフォームを通して、学生支援センターのスタッフが講義のコンテンツに字幕が付いているかどうかだけでなく字幕が適切かどうかをチェックするなど、より丁寧な対応をされています。しかし、それは、支援センターのスタッフに聴覚障害当事者がいることによる自助努力が大きいようです。また、課題として、時間や順番を管理して課題を順次こなすことが苦手な人への対応をリモートでやるのは対面以上に難しく、そうした学生への教職員のケアの負担などが挙がっています。

私の経験からいえば、身体障害を持つ学生にとって、PCを動かすときに必要なスイッチが不良となった際感じるストレスは相当なものです。オンラインにおけるフォローアップが必要です。

さらに、義務教育については、オンライン授業自体がまだ暗中模索という段階であるためか、障害に対する合理的配慮事例を収集したインクルーシブ教育システム構築支援データベースにオンライン授業における事例はまだ掲載されていないようです。オンライン授業で何らかの配慮が必要な学生や児童生徒への合理的配慮事例、内容の質の担保、課題や困難事例への対応などのデータベースを各現場で共有し、取組に生かしてほしいと考えております。合理的配慮に関する対応が遅れている、不十分な大学などでも障害学生が不安なくオンライン講義を受けることができるよう、相談体制や情報の横展開がより一層不可欠になります。

障害学生、支援する教員、職員が孤立しないためにも、情報共有や支援体制をいま一歩踏み込んで改善すべきと考えます。大臣の御見解をお示しください。

○国務大臣(萩生田光一君)

遠隔授業の実施に当たっては、各大学等に対して五月二十二日に事務連絡を発出し、障害のある学生への合理的配慮をお願いするとともに、今お示しいただいたような具体的な取組例を提示をさせていただきました。

また、国立情報学研究所を中心に、遠隔授業の実施に係るオンラインシンポジウムが定期的に、これ一、二週間に一回ずつですけれども開催され、障害のある学生への合理的配慮を含めた遠隔授業の経験や課題、良好事例を共有する取組が進んでいるところですが、文部科学省としても、こうした取組とも連携しつつ、合理的配慮の具体的な事例をより詳細に幅広く収集し、各大学等に共有することに加え、障害のある学生、支援する教職員等が孤立しないように、各大学等に具体的な対応を促してまいります。

義務教育段階に関しては、国立特別支援総合研究所が運営をするインクルーシブ教育システム構築支援データベースにおいて各学校における合理的配慮の取組事例を掲載しているところですが、今後、遠隔授業についても各自治体における実践事例を収集して掲載をしたいと考えております。

さらに、遠隔授業の好事例について各種会議など様々な機会を通じて周知を図るなど、ICTを活用した障害のある児童生徒に対する指導、支援の充実を図ってまいりたいと思います。

○委員長(吉川ゆうみ君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(吉川ゆうみ君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

このまま感染が拡大すると、再び休校になる事態になりかねません。秋までに早急な対応をお願いします。大臣、もう一度御見解をお聞かせください。

○国務大臣(萩生田光一君)

障害を持つ子供の学校のことですか。

それは、全国的にとにかく、たとえ第二波が来ても対応できるように一日も早い整備を急いでいるんですけれど、特に感染拡大があった八都道府県と、それから障害者が通う特別支援学校などは、前倒しでできる限りこの夏の間に整備することで今努力をしているところでございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

それでは、次の質問に移ります。

三月十八日の本委員会で、私は、川崎市立小学校への就学を希望したにもかかわらず、人工呼吸器を付けているということで特別支援学校に就学措置をされたお子さんについて質問いたしました。本人と御両親は処分取消しと地域の小学校への就学義務を求めて提訴しましたが、残念ながら原告の訴えは退けられました。

裁判についてはここで議論すべきことではありませんので控えますが、今日ここで大臣にお聞きしたいのは、障害のある子、とりわけ医療的ケアの必要な子供の就学に関する地域間格差についてです。

裁判で二年間を費やし、新入生としての貴重な時間が失われてしまいました。川崎市にいては小学校就学の見通しは立たないとの思いから、御両親は父親の実家がある世田谷区に引っ越し、転校を決意しました。世田谷区では、既に人工呼吸器利用のお子さんが看護師と介助員の配置を受けて小学校通常学級で学んでいること、本人、保護者の意思を尊重して就学先を決めるという姿勢であることが転校を促したようです。

世田谷区に転入届を出した日に学区の小学校への転校が決まり、就学通知を手にしました。川一つ渡っただけなのにこの違いは何なのか、川崎市教委との協議や裁判に費やした二年半は徒労だったのか。転校が実現しても、御両親の悔しい思いは晴れませんでした。それでも、教科書を受け取り、三年一組の所属と名前を書き込み、ようやく転校の喜びが湧いてきたそうです。六月五日に分散登校が始まり、今は週に四日授業を受け、クラスメートとの学校生活を楽しんでいるようです。

このように、本人の障害の状態は何も変わらないのに、住む自治体を変えただけで地域の通常学級就学が可能になるということは、まさに障害とは、個人の中にあるのではなく、障害のある人と態度及び環境に関する障壁との相互作用であるとする障害者権利条約が示すとおりだと考えます。

資料二にもありますように、全国には人工呼吸器利用の子供たちが地域の学校に就学している例は多々あります。看護師や医療的ケアのできる介助員を付けることで親の付添いなしに通えている自治体もあります。中には財政的に豊かではない自治体もあります。なぜ世田谷区でできることが川崎市ではできないのでしょうか。財政規模からしても、自主財源率からしても、川崎市が財政的な理由でできないわけではないと考えます。

教育は地方分権であり、それぞれの地域の実情に合った教育内容があってよいと考えます。しかし、医療的ケアの必要なお子さん、とりわけ人工呼吸器を利用するお子さんが、ある自治体では地域の学校に自然に受け入れられる、しかし、ある自治体では合理的配慮の検討も主治医や通っていた幼稚園の意見聴取もなく、呼吸器を付けているから安全のため特別支援学校への就学を措置される。

障害者が地域で生きていく上で最も重要なインフラは、地域における人間関係です。それを育む場である地域の学校の就学に関して自治体間でこのような差があることは明らかにおかしいと考えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

障害のあるお子様の就学先につきまして、本人や保護者の意見を可能な限り尊重しながら、市町村教育委員会において総合的な観点から決定することとされております。

具体的には、障害の状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制整備等の事情を勘案して、子供たちにとって最適な学習環境を提供できるよう決定されております。それぞれの自治体において教育上必要な支援の内容の判断や地域における教育の体制整備の状況などは異なることから、自治体間で就学先の決定が異なることはあり得ると考えます。

文科省としては、これまでも障害のある子供の学びの環境の整備に努めてきたところであり、引き続き、医療的ケアに対応する看護師配置に係る財政的支援や子供の生活、活動上のサポートなどを行う特別支援教育支援員の配置促進などを行うなど、個々の児童生徒の状況を踏まえた教育環境となるように施策の充実に努めてまいりたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

人工呼吸器を利用するお子さんが地域の学校で学びたいと希望しながら希望がかなえられず、特別支援学校あるいは特別支援学校の訪問籍を強いられている事例は残念ながら多くあります。看護師の確保が難しいとか、校舎のバリアフリー化の環境整備が進んでいないという理由もあるかもしれません。しかし、地域の学校での受入れが進まない一番の理由は、医療的ケアの必要なお子さん、人工呼吸器を利用しているお子さんを知らないこと、これに尽きるのではないでしょうか。

医者であっても、呼吸器を利用して在宅で暮らす子供の日常生活を知らないため、呼吸器は命に関わり、大勢の活発に動く子供のいる通常学級は危険、就学は無理という判断になるのだと思います。

大臣を始めここにいらっしゃる先生方、国民の皆様も、ALSのため全介助で呼吸器を使ってしゃべれない私がどうやって国会議員の仕事をするのか、実際に同じ場でこうして私と働いてみるまで想像も付かなかったのではないでしょうか。皆様の御理解、御協力があって、私は必要な合理的配慮を得て、こうして皆様と同じ場で質疑をさせていただき、本会議での採決をさせていただいています。まずは当事者がその場に入って共に経験してみないことには、何をどうしたら一緒にやれるのか、できない場合の代替策をどうするのかという知恵は湧いてきません。

先ほどの資料二を見てもお分かりのように、呼吸器利用のお子さんで地域の学校に通っている自治体は限られています。一度受け入れてしまえば、失敗も含めた経験の中から互いに学び、共に学ぶための合理的配慮や授業の工夫が積み重なり、自治体、学校側の受入れ体制が進んでいくものと思われます。しかし、最初の壁を破る人がいない自治体では、前例がないということで、そこで止まったままです。

大臣は、四月六日の衆議院決算行政監視委員会第二分科会において立憲民主党の荒井聰先生の医療的ケア児の就学に関する質問に答えて、あまねく公立学校に入れるというのは難しいので、結果として特別支援学校を選択することになっているとすれば、自治体内で拠点校を設けて人もお金も集中して支援していくことも一つの方法として省内で検討とお答えになっています。大臣、現在この拠点校の検討はどの程度進んでいるでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が安全、安心に教育を受けるには、校長の管理下で学校医、学校配置の看護師、担任、養護教諭などのチームを編成して、一丸となって医療的ケアに対応する体制の構築が重要であり、教育委員会等に対して必要な措置を講じるよう依頼をしているところです。

このときの質問は、どちらかというとインクルーシブ教育の重要性を荒井先生御指摘になりました。私は、障害を持つあるいは医療的ケアが必要なお子さんが、本当は居住地の学区の学校に普通に進めるのが一番望ましいんだけれども、しかし、それは全ての学校でそういう体制が組めるかというと難しいところもあるので、自治体間で拠点校のようなものをつくって、せめて、ここにありますように、人工呼吸器が使用できる自治体というのに限りがあります。今、舩後先生おっしゃったように、誰かが最初のドアを開けないとこういう問題は解決しないと思いますので、少なくとも自治体の中に一校ぐらい、居住地からもしかするとちょっと離れるかもしれないけれども、拠点校を設けるような努力をしていこうではないかということを今省内でも話をしているところでございます。

学校において医療的ケアを行う看護師の配置に係る予算を拡充するなどして自治体を支援をしていますが、特に近年は、地域の小中学校においても医療的ケアを必要とする児童生徒の増加が見られているところです。このため、全ての小中学校において医療的ケアを必要とする子供を受け入れる体制を直ちに構築することは難しいことから、中学校区に医療的ケアの実施拠点校を設けることについて検討させていただいております。

現在、自治体に対してヒアリングを行っているところであり、引き続き関係者にヒアリングを行うなどして、地域の小中学校で医療的ケアを必要とする子供を受け入れる体制の在り方についてしっかり検討してまいりたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

あまねく地域の学校に受け入れるための一里塚として拠点校を設けていただき、自治体間の格差をなくしていただくことは是非とも進めていただきたいと考えます。大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

質問を終わります。