2021年3月22日 参議院文教科学委員会質疑(2021年度予算案に関する質疑/「学校のバリアフリー化」「学校における医療的ケア児の親の付き添い」)

○舩後靖彦君

れいわ新選組の舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。本日は、令和三年度の文部科学省関連予算について御質問の機会をいただき、ありがとうございます。

では、早速質問に移らせていただきます。

代読いたします。

初めに、医療的ケアが必要な児童生徒への支援について質問いたします。

昨年七月二十二日の本委員会での質問に対し、大臣から、中学校区に一校、医療的ケア児を受け入れ支える体制づくりのために拠点校を設ける方向性を御回答いただきました。新年度予算には、その準備として、医療的ケア児受入れ・支援体制の在り方に関する調査研究が予算化されました。ありがとうございます。

一方、学校バリアフリー化の関連で、国の整備目標は、二〇二五年度までに要配慮児童が在籍する全ての学校にエレベーターを整備すると定めています。つまり、拠点校でなくとも、エレベーターを必要とする子供が在籍する学校は全てハード面の環境整備がなされます。そうなりますと、残る課題は、医療的ケアのできる看護師の配置であろうかと考えます。

文科省は、医療的ケアのための看護師配置のための予算を毎年拡充されていますが、看護師の学校配置については自治体が要綱を作って運用しています。しかし、その運用について、岡山県のある市で問題が生じています。

その市では、医療的ケア児の保護者が看護師配置を求め、認められることになりました。その際、市が作成したガイドライン、市立小中学校における医療的ケア実施要綱には、看護支援員が不在のときは、当該児童生徒に対する医療的ケアは保護者が実施する、宿泊を伴う校外学習時、看護支援員の勤務時間外の医療的ケアについては保護者が実施するという条項がありました。市側は、この内容を、保護者への説明なしに一方的に提示してきたのです。このため、保護者は医療的ケア実施申請書を出すに当たり、この項目を外してほしいと要望しました。すると市側は、それなら看護師配置はできないと通告してきたのです。看護師配置がなされなければ、子供は学校に通えなくなります。保護者はやむなく申請書を提出しました。

こうした要綱、ガイドラインの内容、市側の対応は、資料一にある国による通知の方向性とは大きく異なります。問題が起こっているのはこの市だけではありません。岡山県内の別の市の要綱でも同じような項目が盛り込まれているそうです。

大臣、こうした要綱、ガイドラインの内容、さらに、従わなければ看護師配置自体をなくすという市側の説明に対してどのようにお感じになられますでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

文部科学省では、学校における医療的ケアの実施に関する検討会議の最終取りまとめを踏まえ、平成三十一年三月、学校における医療的ケアの今後の対応についての通知を発出しています。

この中で、教育委員会は、域内の学校における医療的ケア児に関する総括的な管理体制を整備するため、ガイドライン等を策定するとともに、ガイドライン等には、主治医や保護者などと学校との間で考えが異なる場合における合意形成プロセスの場合の設定について、あらかじめ定めておくことも有効であると示しております。

また、この通知の中で、保護者に付添いの協力を得ることについては、真に必要と考えられる場合に限るように努めるべきであり、また、やむを得ず付添いの協力を求める場合には、代替案などを十分に検討した上で、真に必要と考える理由や付添いが不要になるまでの見通しなどについて保護者に丁寧に説明することが必要であるとしているところです。保護者の付添いの必要性については各自治体、学校等が実情を踏まえて判断するものでありますが、文部科学省としては、引き続き通知の趣旨の周知に努めてまいりたいと思います。

御指摘の例につきましては、まさにそういったことを心配して、あらかじめガイドラインを作るときにはこういうことに気を付けてくださいというふうに通知をしておりますので、十分それを理解した上での対応であればこういうトラブルにはならなかったのかなと思って残念に思っています。

○委員長(太田房江君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(太田房江君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

感情論になってしまいますが、市行政の組織は器が小さいと私は思います。改めて、親の付添いができるだけないようにお伝えいただけますでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答え申し上げます。

先ほど大臣からも答弁でございましたが、三十一年三月の通知の中では、文部科学省としては、保護者に付添いの協力を得ることについては、真に必要と考えられる場合に限るように努めるべきということを明示をしておりまして、この保護者の付添いの必要性については引き続きこの通知の趣旨の徹底に私どもとしては努めてまいりたいと考えております。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

この自治体だけでなく、何か所かからいまだに親の付添いを求められているという御相談をいただいております。文科省の通知が出た後、新しいガイドラインが策定されているのかどうか、あるいはこの自治体のように新しく策定されたにもかかわらずこの内容なのか、こうした点についてきちんと検証されるべきと考えます。

そこでお尋ねします。

文科省として、各自治体のガイドラインの策定状況、内容は把握しているのでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君)

現時点で御指摘の医療的ケアに関するガイドラインの策定状況については把握をしておりませんが、平成三十一年三月の通知発出後二年を経過いたしましたことから、今後、各教育委員会におけるガイドラインの策定状況を把握する調査の実施について検討してまいります。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。是非、各自治体のガイドラインについての調査をお願いいたします。

続きまして、学校のバリアフリー化についてお尋ねいたします。

文部科学省は、令和時代の学校施設のスタンダードと銘打ち、学校を誰もが安心、安全に学べる場にするとしています。先週の本委員会での斎藤先生、横沢先生の御質問の中でも御指摘がありましたが、学校のバリアフリー化は、一、インクルーシブ教育の基礎的環境整備として、二、避難所や投票所など、地域住民にとって重要な公共施設を誰もが使えるようにするという二つの意味で大変重要です。

資料二を御覧ください。

これは、昨年の通常国会で改正されたバリアフリー法の参議院附帯決議を踏まえて設置された調査研究協力者会議の報告書概要です。そして、この報告書に基づき、文科省は、集中整備期間として二〇二五年度までの国の整備目標を定めました。先ほども紹介しましたが、少し紹介しましたが、それによりますと、スロープ等による段差の解消について全ての学校に整備する、エレベーターについて要配慮児童生徒等が在籍する全ての学校に整備するなど、一九九〇年代の福祉の町づくりの流れからすっぽりと抜け落ちていた学校のバリアフリー化に文科省としてもようやく本気で着手する意気込みを感じられます。

文科省は、昨年十二月二十五日、公立小中学校等施設におけるバリアフリー化の加速についての通知を各都道府県教育長、指定都市教育長宛てに出しました。国の整備目標を踏まえ、公立小中学校のバリアフリー化に関する整備目標と整備計画を策定し、計画的な整備の加速化を各教育委員会に求めています。

改正されたバリアフリー法に実効性を持たせるためには、各教育委員会が小中学校のバリアフリー化の実態について、配慮を要する児童生徒や教職員の在籍状況、避難所指定の状況を含め的確に把握することが重要です。

その上で、整備計画策定に当たっては、地域の障害者の意見を聞くことが有効とされています。これは計画策定時だけではありません。整備の進捗状況について点検、検証するに当たっても、学校を利用する当事者や地域の障害者が参画し、その結果を定期的にフォローアップ、公表していくことが重要と考えます。

この点について、大臣の御見解をお聞かせください。

○政府参考人(山崎雅男君)

お答え申し上げます。

学校施設は、障害のある児童生徒等が支障なく安心して学校生活を送ることができるようにする必要があるとともに、災害時の避難所など地域コミュニティーの拠点としての役割も果たすことから、バリアフリー化は重要であるというふうに考えております。

委員御指摘のとおり、昨年のいわゆるバリアフリー法及び同法施行令の改正において、公立小中学校等がバリアフリー基準の義務付けに追加されたことを受け、文科省として、既存施設を含め整備目標を設定するとともに、各学校設置者に対しまして、公立小中学校等のバリアフリー化に関する整備目標や整備計画を策定し、計画的な整備をするよう要請したところです。また、学校施設のバリアフリー化を推進するためには、関係者の参画と理解や定期的なフォローアップが重要であるというふうに考えております。

そのため、昨年十二月に改訂を行った学校施設バリアフリー化推進指針において、障害者などの施設利用者の意見を聞いて整備計画を検討することの有効性や定期的に施設利用者との情報交換等を行いつつ、施設のバリアフリー化の仕様について点検し、検証することの重要性などについて新たに盛り込んだところです。また、各学校設置者にこのことを周知するとともに、ホームページを通じて広く公表してきたところでございます。

さらに、文科省におきましても、各学校設置者における整備計画の策定状況や学校施設におけるバリアフリー化の状況について定期的にフォローアップを行い公表するとともに、指針の改訂内容や具体的な整備事業につきまして講習会等で広く周知するなど、既存施設を含めた学校施設のバリアフリー化が進むようしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

資料三を御覧ください。

一九九二年、大阪府は、全国に先駆け、学校施設のバリアフリー化を定めた福祉のまちづくり条例を制定しました。しかし、制定当時、義務化の対象は特別支援学校だけ、地域の小中学校は努力義務でした。そこで、障害者団体が働きかけたのです。この結果、大阪市が翌九三年に制定した要綱で小中学校も義務化されることになりました。

先ほど御紹介した加速化通知の附属資料、公立小中学校のバリアフリー化の状況では、二〇二〇年五月一日現在の大阪府全体のエレベーター設置率は五〇・五%であるのに対し、大阪市内の公立小中学校の設置率は二〇一九年七月時点で九六・四%と大きな差があります。やはり、計画的に整備した差は三十年で大きく付くことが分かります。とても重要なことだと思います。

その上で、エレベーターや多目的トイレが設置されながら自由に使えない問題について質問いたします。

先日、NPO法人子ども情報研究センター主催のインクルーシブ教育研究会のオンライン勉強会に参加しました。その会で、せっかくエレベーター若しくは車椅子で使える多目的トイレが設置されながら利用しづらいという声を、群馬県、東京都、岡山県、愛知県など複数の自治体の親御さんから聞きました。具体的には、鍵が掛かっていて職員室に取りに行く、また、管理する先生に言って開けてもらわなければならず、時間が掛かって授業に遅れてしまうという内容です。解決策として、スペアキーを作ってもらい、付き添う親や看護師、介助員が鍵を持って開閉するという方法を取っているところもあるようです。一方、静岡県や大阪府では、鍵を掛けず、いつでも使える状態になっており、車椅子の子と一緒に移動する場合はクラスメートもエレベーターを使っていいという学校もあるようです。

学校側は、鍵を掛ける理由として、低学年のお子さんがエレベーターに乗って事故があってはいけないとか、多目的トイレやエレベーターの中で悪ふざけをするのを防ぐなどと説明します。しかし、安全面について言えば、今のエレベーターには防犯カメラが付いていますし、センサーが付いていて挟まれる危険性は少ない構造になっています。また、目的外利用については、学校側の懸念が分からなくもありませんが、子供たちは、エレベーター、多目的トイレを必要としている子が使っている姿を身近に見ていれば、むやみに占拠したり目的外利用したりすることはなくなるのではないでしょうか。道徳や福祉教育で教えるよりはずっと効果的に社会的マナーが身に付くと考えます。

学校を一歩出れば、集合住宅や町の商業施設、公共交通機関で子供たちも自由にエレベーターに乗っています。なぜ学校だけ鍵を掛けなければならないのでしょうか。いつでも誰もが使えるユニバーサルデザインの考え方に反すると考えます。

そこで、大臣にお尋ねします。

文科省としては、事故防止上の観点のみからエレベーターに鍵を掛けることは必要とお考えでしょうか。

○政府参考人(義本博司君)

お答えいたします。

学校施設は、障害のある児童生徒等が支障なく安心して学校生活を送ることができるようにする必要があるとともに、災害時の避難所など地域コミュニティーの拠点としての役割を果たすことから、エレベーターの整備を含めバリアフリー化を進めることは大変重要であるということを考えております。

具体的なエレベーターの設置、管理につきましては、設置者や学校においてそれぞれの状況の下に判断いただくものと考えておりますが、御指摘のあったいわゆるエレベーターの鍵の扱いについても同様でございまして、これまで文部科学省としましては、例えば鍵を掛けるなどの具体的な管理について一律に周知等について行っているものではございません。

○舩後靖彦君

代読いたします。

大臣、御見解はいかがでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

もうこれ、学校施設ですから、設置者である地方自治体の判断を尊重したいと思います。

文科省として、一律に鍵を掛けろとか一律に鍵を掛けるなとか、どちらもやっぱり通知を出すというのはちょっとなじまないと思います。確かに、低学年の子供たちの安全のために、利用者が特定できないときには閉めておくと判断する学校や自治体があることも分からなくもないですし、そのために障害者が一々職員室に鍵を取りに行かないとエレベーターが使えない、トイレが使えないということでは何のために造ったのかということにもなりますので、是非現場で運用の仕方しっかり考えていただいて、どちらもカバーできるような方法はきっとあると思いますので、これを言うと、また地方任せで丸投げかとか言う人いるんですけど、そうじゃなくて、まさしく地方自治体の責任でここはしっかり運用を考えていただきたいなと思っております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

実際に鍵なしで安全に使っている学校があるわけですので、文科省としても、バリアフリー化の事例の中で利用者の立場に立った好事例を発信していただくなどしていただければと存じます。

今まで公立の小中学校のバリアフリー化の加速化についてお聞きしてきました。もちろん学校は、公立小中学校だけでなく、幼稚園、高校、高専、私立学校、大学もあります。

先ほどの資料四では、大阪市内の公立小中学校のエレベーター設置率は九六・四%ですが、高校は三割以下と、大きな差があります。小中学校でバリアフリーな環境で自由に移動できていた生徒が、高校に入った途端移動に不自由を強いられ、志望校選択の幅が狭められるのは、障害のない生徒に比べて不公平、不平等であると考えます。

公立小中学校以外の学校に関して、文科省は、先ほどの加速化通知と同時に、学校施設におけるバリアフリー化の一層の推進についてを各都道府県教育長、大学、高専等の学校長宛てに通知しています。

大臣、これらの学校についても設置者任せにすることなく、国の支援、バリアフリー化予算の確保は必要と存じますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(山崎雅男君)

お答え申し上げます。

先ほども申し上げましたが、学校施設のバリアフリー化は重要というふうに考えております。このため、文部科学省では、公立小中学校だけではなくて、全ての学校施設を対象としたバリアフリー化のガイドラインともなる学校施設バリアフリー化推進指針を昨年十二月に改訂し、施設のバリアフリー化における留意点を示すとともに、全ての学校設置者に対し、所管施設の実態を把握した上で整備目標を盛り込んだ整備計画を策定し、バリアフリー化を一層推進するよう要請したところでございます。

また、公立小中学校等以外の公立の幼稚園や国立や私立の学校につきましては、バリアフリー化の推進に必要な経費を学校設置者からの要望に応じ補助しているところでございます。

さらに、前回の委員会でもございましたが、さらに、公立の高等学校等につきましては、一定の要件を満たす場合には緊急防災・減災事業債などの地方債を活用することが可能である旨を周知しているところでございます。

文部科学省としましては、各学校が計画しているバリアフリー化事業に対してしっかりと支援を行えるよう、引き続き必要な予算確保に努めるとともに、バリアフリーに関する好事例を取りまとめ、横展開を図るなど、設置主体や学校種の別にかかわらず、既存施設を含めた学校施設のバリアフリー化の取組をしっかり支援してまいりたいと考えております。

○委員長(太田房江君)

時間が参っております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

学校のバリアフリー化はとても重要です。誰も排除しないインクルーシブな社会の基礎であるインクルーシブな学校へと転換する突破口になることを期待しております。

改めて、地域の学校で共に学ぶため、学校のバリアフリー化の推進をお願いし、質問を終わります。