2023年5月16日 参議院文教科学委員会質疑(著作権法改正案)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。

著作権法一部改正案に関する質疑に入る前に、まず、2月14日閣議後会見の永岡文科大臣の発言についてお尋ねいたします。

報道によりますと、大臣は、公立高等学校入試における定員内不合格の数を初めて調査した結果について触れられ、次年度以降も定員内不合格に関する実態把握に取り組む予定であること、定員内不合格の数を把握していない都道府県教育委員会には、23年度入学選抜以降、状況を把握するよう依頼されたことを明らかにされました。私が参議院議員になった2019年から一貫して取り組んできたこの問題に、文科省としても設置者任せにせず現状把握に努めていくことを明言いただき、感謝申し上げます。

その上で、大臣にお尋ねいたします。

大臣は、文科省として、仮に障害のみを理由として入学を認めなかったということがあった場合、これはあってはならないと考えていると強調されました。これは、障害に対する合理的配慮の提供なく不合格にすることを含めてあってはならないとお考えになっていると受け止めてよろしいでしょうか。

○国務大臣(永岡桂子君)

お答え申し上げます。

高等学校入学者選抜におけます合理的配慮の提供につきましては、障害の状況、状態等に応じまして各実施者において適切に実施されるものでございますが、決定に当たりましては、生徒、保護者及び学校関係者などで対話を行いながら丁寧に進めることが大変重要と思っております。

そのため、文部科学省におきましては、実施者が合理的配慮の内容を決定する際の参考となるよう、合理的配慮の具体の事例を取りまとめた参考資料を作成、公表するとともに、申請のありました受験上の配慮につきまして、仮に提供できないことを決定した場合はその理由を具体的に説明する必要があることなどを示しているところでございます。

御指摘の点につきましては、適切な手続を経た上で、希望どおりの合理的配慮が提供されない場合もあり得ますが、例えば、個別の事案につきまして、検討を行うことなく、前例がないというようなことを理由に一律に提供しない場合などはやはり不適切と考えます。

文部科学省としては、各実施者におきまして、生徒、保護者の希望、そして障害の状態等を踏まえまして、適切な配慮の下で受験がなされますように促してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

都道府県によって受験時における合理的配慮の提供にばらつきがあったり、定員内であれば入学が認められるところと定員内であっても不合格となるところがあるという自治体間における格差は受験生にとって明らかに不合理です。

文部科学省には、引き続き、このような格差を解消するために都道府県教育委員会への働きかけをお願いして、法案に関する質問に移ります。

今回の著作権法改正は、著作権者の意思確認ができない著作物などの利用に関する新たな裁定制度を新設することが主な目的です。現行法でも、著作権者不明などの場合、文化庁長官の裁定を受け、供託金を支払うことで利用は可能となっています。しかし、権利者不明を確定するまでの手続負担が重く、利用できるようになるまでに時間が掛かるのが課題と指摘されています。

そこで、現行法上の裁定制度の利用実績についてお尋ねします。2000年頃と令和に入っての数年間で利用数に変化はあるのでしょうか。あるとしたら、その背景は何でしょうか。

○政府参考人(杉浦久弘君)

お答え申し上げます。

現行の裁定制度に基づく裁定件数に注目いたしますと、2008年度までは年間数件程度で推移していたところ、翌年度以降年々増加し、2022年度においては74件となっています。また、裁定の対象となる著作物等の数につきましては、著作物等の利用方法により大きく異なるため、明確な傾向は見られないところですが、年度によっては数万点となる場合もあり、2022年度は1719点となっております。

この背景といたしましては、2009年度以降、数次にわたり制度を利用しやすくするための見直しを行ってきたこと、すなわち制度を利用しようとする場合に求められる著作権者等と連絡するための相当な努力に関する要件の明確化、また裁定申請中であっても担保金を供託することで著作物を利用できる仕組みの導入、そしてそのほかの手続の簡素化などを行ったことが考えられます。また、インターネットにおけるコンテンツ市場が拡大する中で、過去の作品についても改めて利用したいというニーズが高まっていることなども考えられます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

デジタル化の進展に伴うコンテンツビジネスの活性化で、より簡素で一元的、迅速な権利処理を実現する必要があることは分かりました。

しかし、今回の法改正は、著作権者の利用許諾を確認できなければ利用できないという著作権法の一般原則を転換するものであり、デジタル時代の要請から避けられないとはいえ、権利者と利用者のニーズのバランスと制度設計が新制度の目的に合っているか、著作権保護の観点から慎重な制度設計、運用がなされているかの検討が必要と考えます。

そのような観点から、以下、お尋ねいたします。

新たな裁定制度が実効性を持ち、デジタル化の進展に伴うコンテンツビジネスの活性化、コンテンツ創作の好循環という法改正の目的が達成されるかどうかは、新しい裁定制度の窓口となる登録確認機関に懸かってくると存じます。この登録確認機関は、申請受付、要件確認と補償金の額の決定事務を行う、文化庁長官の登録を受けた民間機関とされています。

登録確認機関の運用資金は新しい裁定手続の際に徴取する手数料ですが、これだけで運営できるはずはありません。かといって、手数料を高くしたら、現行の裁定手続同様利用控えが起き、著作権者の意思不明のまま違法な利用が横行しかねません。著作権等管理事業者が集中管理していないものを含めた膨大かつ多種多様な著作物を分野横断的に一元的に管理するためには、データベースの構築、管理、運営が必要であり、その運営基盤が脆弱では基本インフラの継続性への懸念が生じます。

登録確認機関の運営基盤の安定化という課題がある中、文化庁としてはどのような団体が登録確認団体に名のりを上げると想定しているのでしょうか。

○政府参考人(杉浦久弘君)

お答え申し上げます。

登録確認機関につきましては、文化審議会答申において、著作権に関して知見があり、公益性のある団体などを念頭に体制整備を行うこととされておりまして、こうした民間団体等から登録の申請がなされることを想定しております。

登録確認機関の運営につきましては、手数料収入を元として行われますが、その運営を安定的かつ持続的に行えるようにすることが重要でございます。文化庁といたしましては、そのコストの削減に資するよう、分野横断権利情報検索システムの活用等を含めて、登録確認機関の事務が合理化できるよう検討を行ってまいります。

いずれにせよ、登録確認機関は公募による申請に基づいて登録されるものでございますことから、申請者側の、申請者の側で種々の工夫や提案がなされることとされてございます。文化庁といたしましては、登録確認機関の健全な運営が可能であるか等の観点も含めまして、しっかり審査してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

引き続き、登録確認機関についてお尋ねします。

登録確認機関の分野横断権利情報検索システムが情報をどれだけ集約できるかが新しい裁定制度の円滑な運用の土台となります。そして、この検索システムの構築には、複数の登録確認機関の間、また既に存在する分野ごとの著作権管理団体が保有するデータベースの共有、連携が大変重要になってきます。しかし、そもそもシステムの収集データの種類、フォーマットも異なるそれぞれのデータベースの共有、連携についてはかなりの準備が必要です。

文化庁が設置した分野横断権利情報データベースに関する研究会の報告書によりますと、令和六年度以降の運用を目指すとしていますが、分野横断権利情報検索システムの土台のフォーマットはどこが作るのでしょうか。そして、データベースの共有、連携に係る負担に関して、政府の支援は想定されているのでしょうか。

○政府参考人(杉浦久弘君)

お答え申し上げます。

分野横断権利情報検索システムにつきましては、昨年度、有識者から成る研究会を開催し、基本的な考え方や今後の方向性に関する報告を取りまとめたところでございます。

その報告書では、システムの具体化を図る中で、分野ごとのデータベースの構築に資する標準を示すこと、システムの運用主体と運営基盤の確立や、連携するデータベースを保有する団体等との協力などが今後検討を進めるべき課題として挙げられております。特に、システムの構築、運用に関する費用につきましては、今回の法案により位置付けられている窓口組織に支払われる利用者からの手数料、公的な支援、著作権法に基づく補償金制度の共通目的事業の活用等が考えられると提言されているところでございます。

こうした取りまとめを受けまして、文化庁におきましては、本年度、システムの構築に向けた調査研究を行うこととしてございます。具体的には、各団体が有するデータベースの管理状況などに関する調査、検索画面イメージなどの技術的な仕様の検討、著作権等管理事業者や関係団体を交えた検討と意見集約などを行ってまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次に、指定補償金管理機関についてお尋ねします。

新裁定制度の補償金の受領や著作権者などへの支払などの業務は文化庁長官が指定する指定補償金管理機関が行うとなっています。補償金は、著作権者などが現れれば著作権者などに支払われますが、現れない場合、著作権法や著作物などの利用円滑化、創作振興などに資する事業のために使用されるとされています。

登録確認機関が登録された未管理公表著作物をインターネットなどで公表することによって著作権者などが判明することはあり得るでしょう。しかし、利用者が登録確認機関に申請する前にネットや各団体のデータベースで調べた上で意思不明と判定された著作物の著作権者が判明する率はそう高いとは思えません。しかも、この新たな裁定で補償金を払って利用できる期間は3年間であり、3年後、利用し続ける場合は再度申請して補償金を支払うわけですから、指定補償金管理機関には結構な金額がプールされることになります。そのため、指定補償金管理機関の補償金管理業務については高い透明性が担保されなければならないと考えますが、文化庁としてどのような規制、監督を考えていますでしょうか。

○政府参考人(杉浦久弘君)

お答え申し上げます。

指定補償金管理機関につきましては、一般社団法人又は一般財団法人であって、補償金管理業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを指定することとされております。この指定補償金管理機関に対しましては、その業務の実施方法を定めた業務規程や事業計画について文化庁長官の認可事項といたしまして、さらに、文化庁長官による報告徴取や監督命令等の規定を整備することといたしております。また、法律上、区分経理を義務付けておりまして、先ほど述べました報告徴取や区分経理に違反した場合の業務停止などの行政上の措置を通じて、文化庁においてしっかり監視、監督することといたしております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

新しい裁定制度は、権利者不明、連絡が取れないなどの未管理公表著作物等のみを対象とし、著作権者などが判明している場合あるいは新しい裁定制度を利用後、権利者が判明した場合は、従来どおりの権利処理手続を取ることになります。つまり、著作権法の例外適用であり、権利者と利用者のバランスを取る工夫はされていると存じます。

そして、未管理公表著作物の利用期間を3年間に限定し、期限が切れたら再申請しなければならないとし、制限的な制度設計、運用となっています。しかし、利用者側にとっては、3年経過後に再度手数料を払って再申請しなければならないとなると、手数料、補償金の額にもよりますが、再申請しないでそのまま利用し続けるという違法行為も出てくる可能性も考えられます。

この利用制限期間に関してはパブリックコメントでも幾つか意見が寄せられていましたが、どのような判断で三年という期間になったのでしょうか。

また、著作権侵害は親告罪であるため、著作権者が判明しない場合、利用期限を過ぎても再申請しないで実質利用できてしまいます。このような違法状態が起こる可能性に対してはどのように対応されるのでしょうか。

○政府参考人(杉浦久弘君)

お答え申し上げます。

新たな裁定制度は、集中管理がされておらず、利用の可否など著作権者の意思が明確でない著作物等の利用を可能とする制度でございます。この著作権者等の意思を改めて確認する機会を確保する観点から、利用期間に上限を設けているところでございます。

利用期間の上限を3年とした理由でございますけれども、著作権者等の意思を確認する機会を確保するとともに、利用者の利便性の双方を考慮する必要があるからでございます。また、現行の著作権法では、出版権の存続期間につきまして、設定時に定めがないときは三年としているという規定もございまして、これを参考としてございます。

委員御指摘のように、著作権者が不明、不在であることにより、利用者が許諾を受けられずに著作物を利用してしまうケースは、今般の制度改正にもかかわらず、これまでにも考えられたところでございます。このような場合にも適法な利用を促進していくことが重要であることから、新たな裁定制度を活用していくことが考えられます。

また、新たな裁定制度による利用におきましては、その利用される著作物、利用方法、利用期間を広く公表するなど、著作権者が自身の著作権、著作物等を利用されていることに気付きやすくするような仕組みとし、著作権者が権利を適正に行使できるように配慮していきます。

さらに、著作物の適法な利用を促進していくことは重要でございまして、文化庁としては、著作権制度の普及啓発、それから著作権者による著作物の適正な管理の促進に努めておりまして、引き続き、違法に著作物等が使われないよう周知を行うとともに、新たな裁定制度が適切に運用されるように努めてまいりたいと考えております。

また、先ほどの御質問の最後の方にありましたその期限を超過してでの利用ということについてでございますけれども、それにつきましてでございますが、新たな裁定制度による期限を超過して著作物等を利用していることが判明した場合には、裁定利用者に対しまして再度の裁定申請を利用を促していくといった取組についても検討してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読します。

終わります。ありがとうございました。