2024年3月19日 参議院文教科学委員会質疑(大臣所信に対する質疑)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
まず冒頭、元旦に起きました能登半島地震でお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げるとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。また、被災地支援、復興に奔走されておられる官民全ての方々に敬意を表します。
支援を必要とする人、とりわけ災害弱者と言われる高齢者、障害者などが取り残されることのないよう、私も様々な方たちと協力して尽力してまいります。
では、盛山大臣の所信に対して質問をいたします。
まず、大臣と旧統一教会との関係についてお伺いします。
大臣は、2021年の衆院選で、旧統一教会の関連団体、世界平和連合と政策協定に当たる推薦確認書に署名していたと報道されました。写真を見て薄々思い出してきた、内容をよく読まずにサインしたのかもしれないとお答えになっています。その後、署名の写真が報じられ、署名は記憶にない、自分のサインに似ている、軽率にしてしまったのではないかと、二転三転した答弁を繰り返しています。
政策協定の内容を確認もせずに署名し、そのこと自体を忘れていたとしたら、選挙民との約束、信義則違反、そのような候補者を信任することはできません。まして、協定を結んだ団体の正体を確認しない、あるいは認識していながら隠蔽して、旧統一教会の解散命令請求をする文部科学大臣に就任したなら、不誠実、不見識、倫理観の欠如ではないでしょうか。
子供たちの人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者の育成を目的とする教育行政のトップとしてふさわしいと言えません。宗教法人を所管し、解散命令の請求に関して公平中立な審理が進められるのか疑念が起きるのは当然です。
この間の大臣の不誠実な答弁を国民は見ています。岸田首相が盛山大臣を更迭できないのも、旧統一教会との癒着、裏金、脱税問題で閣僚更迭がドミノ倒しとなり、自身の旧統一教会との関係も追及されかねないからと見透かされています。
能登半島地震への対応、物価高、下がり続ける実質賃金、急速な少子高齢化などの国民生活や、ウクライナ情勢、ガザでのジェノサイドなど、内外に重要な課題が山積しています。しかし、自民党派閥の裏金問題、盛山大臣の旧統一教会との癒着に審議の多くが費やされてしまいました。自民党内での調査では自浄作用は働かず、予算委員会、政治倫理審査会での質疑でも事実解明には程遠く、国民の政治不信、政治への諦めが広がっています。
朝日新聞の投書欄に、小学六年生が、覚えていませんと言ってばかりの政治家に苦言を呈し、これでは政治に興味持てませんと投書していました。こうした事態を引き起こした盛山文科大臣は、大臣としてふさわしくないばかりか、議会制民主主義の根幹を揺るがし、国権の最高機関としての国会議員としてふさわしくないと申し上げざるを得ません。
大臣、このような答弁を繰り返し、子供たちの前で御自分が大臣としてふさわしいと言えますか。釈明は結構です。端的にお答えください。
○国務大臣(盛山正仁君)
先日の新聞報道も含め、一連の報道等で掲載された写真等を踏まえれば、御指摘の集会に伺い、推薦状を受け取ったのではないかと思います。また、推薦確認書につきましても、正直、記憶にございませんが、先日の新聞報道等を踏まえれば、推薦確認書に署名したものと思われます。
他方、この集会は、2022年7月にありました安倍元総理の銃撃事件以前のものであり、その後、自民党においてガバナンスコードの改訂等を行い、自民党として旧統一教会及びその関係団体との関係の断絶を宣言したということでございます。
私としましては、現在、旧統一教会との関係は絶っており、法令に基づいて解散命令請求の対応や特定不法行為等被害者特例法に基づく指定等の対応に取り組んでいるところでございます。引き続き、職責を果たしてまいりたいと考えております。
○舩後靖彦君
私は、このような質問をせざるを得ない事態を引き起こした大臣の言動は、子供たちに対して悪影響しかないと思っております。
時間が限られていますので、次の質問に移ります。
能登半島地震から2か月半がたちました。仮設住宅への入居も始まっていますが、いまだに1万5000戸で断水、1万人近くの方が不自由な避難所暮らしをされています。正月の門松が飾られた家屋が倒壊したままで、奥能登の被災地では時が止まったかのような状況が続いています。
資料1を御覧ください。奥能登の輪島市、珠洲市、穴水町、能登町における高齢化率は5割、発災直後に1次避難所に避難された方は5割から9割に及びます。当然、避難所には多くの要介護の高齢者がおられ、中には高齢者が6割を超えた避難所もあります。
発災直後の2日から輪島市、穴水町の避難所に入り支援をされた北陸学院大の田中純一教授に話を聞きました。避難所は、右も左も福祉ニーズが必要な人ばかり、どこの避難所も福祉避難所化している、しかし初期対応はできていない、本人の忍耐と我慢と努力で乗り切るしかなかったとおっしゃっています。
本来、一般の避難所の運営は自助が基本で、個別対応は無理なので、障害者、高齢者等支援を要する人、集団生活が難しい人用に福祉避難所の整備が必要とされています。しかし、実際には、1月12日時点で予定の17%しか開設できなかったと報道にありました。福祉避難所に想定されていた施設、スタッフが被災している場合もあります。
つまり、高齢化が進む地域で大災害が起きれば、一般の避難所で様々な状態の被災者を受け入れるしかない。一般の避難所をバリアフリー化し、福祉、避難用具を備蓄するなど、誰も取り残さないインクルーシブ防災の整備をしていく必要性がはっきりしたと言えます。
そこで、1次避難所の4割を占める公立の小中学校のバリアフリー状況についてお尋ねします。
資料2を御覧ください。2022年9月現在の石川県内の公立小中学校の校舎、屋内運動場のバリアフリー化状況です。
避難者の割合が高かった奥能登の2市2町で、一般に避難所として使われる屋内運動場のバリアフリートイレ設置率はゼロから67%、建物内の段差解消でさえゼロから67%、校舎内のバリアフリートイレ設置率も25から44%、校舎内の段差解消はゼロから75%です。
2020年に策定された学校施設のバリアフリー化指針によれば、2025年度末までに、避難所に指定されている全ての学校にバリアフリートイレを整備、スロープなどによる段差解消は全ての学校に整備、エレベーターは要配慮児童生徒が在籍する全ての学校に整備すべきとなっています。
大臣、この数字を御覧になってどうお感じになりますか。
○国務大臣(盛山正仁君)
舩後先生の御指摘に関してでございますが、学校の施設は、障害のある児童生徒等にとっても支障なく安心して学校生活を送ることができるようにすることがもちろんでございますが、それに加えて、先ほど来舩後先生がるる述べられたとおり、災害時に避難所としての役割を果たすという観点からもバリアフリー化を進めていくことは大変重要であると思います。
そういったことは、もう29年前になりますけれど、阪神大震災のときにも、私の実家そちらでございましたので感じたところでありますし、また、東日本大震災でもそういうことが言われ、徐々に徐々に今その整備が進められているところではございますが、まだ十分ではないというのは舩後先生の御指摘のとおりかと思います。
こういう状況を踏まえまして、文部科学省におきましては、令和3年度より、既存施設におけるバリアフリー化工事の補助率を3分の1から2分の1に引き上げるなど、学校設置者に対する支援の充実に取り組んでいるところです。他方で、公立小中学校等施設のバリアフリー化については、令和4年9月時点の調査結果を見ますと、全体として一定の進捗は見られるものの、令和7年度末までの整備目標の達成に向けて更なる取組の強化が必要である状況にございます。
引き続き、各学校設置者における取組の実態把握を行いつつ、その取組を後押しするために国として必要な支援に努めてまいります。
○舩後靖彦君
この数字は1年半前の数字ですが、2025年までの整備予定を見ても、校舎においては、2市2町とも、バリアフリートイレ、段差解消の整備率は変わっていません。屋内運動場については、輪島市のみ、バリアフリートイレ、段差解消、エレベーター設置の予定が100%ですが、珠洲市、穴水町、能登町は全く変化がありません。
日本は災害大国です。毎年どこかで地震、豪雨災害などで避難する機会があります。しかし、車椅子で使えるバリアフリートイレもなく、段差があり、エアコンなど望めない一次避難所がほとんどです。これでは、私のような車椅子利用で二十四時間の介助、医療的ケアが必要な重度障害者はもちろん、視覚障害者、歩行障害のある人、オストメート利用の内部障害者、体温調節のできない人、赤ちゃん連れの人などはハード面で避難所から排除されてしまいます。
資料3を御覧ください。この傾向は、石川県のみならず全国平均でも同様です。2025年度までの整備予定では、校舎、屋内運動場におけるバリアフリー化の整備率は2022年9月調査時点から数%しか上がらず、100%に遠く及びません。しかも、資料4にあるように、バリアフリー化の整備計画すら策定していない地方自治体が75%に及んでいます。
耐震強化、バリアフリー化改修工事について国庫補助率を3分の1から2分の1に引き上げ、バリアフリー化加速化に向けた事例を紹介するなど取り組んでおられることは承知しています。しかし、ここまで進捗状況が芳しくない理由は何だとお考えですか。
○政府参考人(笠原隆君)
学校施設のバリアフリー化につきましては、令和2年度から令和4年度までの間に一定の進捗はあるものの、その取組状況には地域差があり、令和7年度末までの整備目標の達成に向けて取組の遅れている地域を中心として取組の加速が必要であるというふうに認識してございます。
施設整備の主体である学校設置者においては、バリアフリー化を進める際の課題といたしまして、老朽化している施設の大規模改修の機会に合わせて工事の実施を予定しており、早期の着手が難しいということですとか、バリアフリー化を含めた課題が山積している中で予算確保が難しいなどの意見があると認識してございます。
文部科学省といたしましては、バリアフリー化改修工事に対し、先進地域の事例の周知や取組の遅れが見られる自治体に個別にヒアリングを行い、取組の加速を促しているところでございます。
引き続き、各学校設置者の事情を丁寧に把握し、きめ細かい支援に努めてまいります。
○委員長(高橋克法君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(高橋克法君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
大臣、地方自治体任せにするのではなく、政府の責務とするべきではないですか。
○国務大臣(盛山正仁君)
御指摘はよく理解できるのですが、権限の問題というんでしょうか、地方分権ということでもあり、設置者というものが国ではなくそれぞれの教育委員会その他であったりということでございますので、責任主体が行うということを一層御理解をしていただく、そして整備を進めていただくということが何より大事なことだと思います。
そして、我々国としては、それら設置者、責任主体が行う整備に対しての支援をできるだけ手厚くしていく、こういうことではないかと考えております。
○舩後靖彦君
一方で、校舎のバリアフリートイレ、段差解消、エレベーター、全て100%の整備率を達成した自治体もあります。浦安市、箕面市、大東市、伊丹市、宝塚市などで、大阪市、藤沢市もほぼ100%となっています。浦安市、藤沢市、箕面市、伊丹市では、屋内運動場もほぼ全て100%です。これらの自治体は、本人、保護者の意向を尊重し、障害のある子もない子も共に学ぶインクルーシブ教育が進んでいます。
菅原麻衣子東洋大学福祉社会デザイン学部教授によりますと、藤沢市では小学校で給食の配膳目的でエレベーター設置を進めてきました。2015年に全ての子供が居住地区の学校の通常学級に入学できることを保証して就学指定を行うインクルーシブ教育の方針を掲げ、これを機に学校施設再整備基本方針を策定、既存校舎のバリアフリー化、エレベーター設置を進めてきたといいます。
ふだんから学校に障害のある子供、教職員がいないところではニーズがなく、なかなか学校のバリアフリー化は進みません。その結果、今回の能登半島地震のように高齢化が進んだ地域で、ハード面も人的対応面でも何の配慮もない1次避難所で多くの要支援者が過酷な避難生活を余儀なくされます。避難所に行くことを諦め、壊れて危険な自宅にとどまらざるを得なくなるわけです。
障害者、高齢者、外国籍で日本語が不自由な人、赤ちゃん連れなど、支援を要する人を含め、地域社会の多様な住民を災害時に受け入れるため、学校はふだんから多様な人が学び働けるバリアフリーでインクルーシブな環境であるべきと考えます。大臣、いかがですか。
○国務大臣(盛山正仁君)
舩後先生におかれましては、私が、エレベーター、エスカレーターの駅への設置を始め、いろんな方々の、障害をお持ちの方も健常者にとっても、誰にとっても暮らしやすい、ユニバーサルな社会という言葉を使いますが、ユニバーサル社会推進法というのを作って取り組んできたということは御案内のことかと思います。
私も、インクルーシブな社会環境、こういったものをつくっていくことが必要であると考えておりますし、学校におきましては、障害等の有無にかかわらず、誰もが支障なく安心して過ごすことができるような環境を整えていくことが重要であると考えます。
文部科学省におきましては、学校施設のバリアフリー化に対する財政支援を行っているほか、令和4年3月に取りまとめた新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方についての報告書において、インクルーシブ教育システムの理念を踏まえた施設環境の整備を推進する必要がある旨を示しております。
こうした考え方を踏まえた計画的な環境整備が速やかに進められるよう、引き続き必要な財政支援を講ずるとともに、学校設置者に対する働きなどを行っていく考えであります。
○舩後靖彦君
地域の学校で学びたいと希望する子供が学校設備面の理由でその希望がかなえられないことのないよう、入学後に物理的なバリアで嫌な思いをすることのないよう、しっかりと整備を進めていただきたいとお願いいたします。
さて、支援の必要な障害者や高齢者などにとって、避難所のハード面だけでなく、意識の上でのバリアが避難所への避難をためらわせることにもなります。
資料5を御覧ください。環境の変化への適応が難しい発達障害や知的障害、精神障害のある人が大きな声を出したり言い争いになり、受入れに課題があると報じられています。
ほかにも、盲導犬を連れた視覚障害者が利用を断られる、24時間介助の必要な障害者が周囲への遠慮から避難所にいられなくなるなど、最初から避難所への避難を諦めてしまっています。
こうした心のバリア、差別や偏見は、幼いときから障害のあるなしで保育、教育で分けられてきた結果、お互いを知らないで育ってきたことで生じています。障害や慢性疾患を抱えた人の生活、そのニーズが知られていないから、非常時において災害弱者、避難弱者にされてしまうのではないでしょうか。
反対に、東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市で、気管切開と胃瘻で医療的ケアの必要な中学生の事例です。自分が通っていた小学校で2か月間の避難生活を送りました。一緒に避難した町内会の人たちの中にそのお子さんを知っている人も多く、夜間の吸引で音が出ても嫌な顔をされない。長期の避難生活の中で様々に配慮して温かく見守ってくださったそうです。
公立小中学校ではありませんが、熊本地震の際は、熊本学園大がキャンパスを避難所として開放。様々な障害のある人、高齢者、一般の近隣住民が避難したユニバーサルな避難所として注目されました。元々、様々な障害を持つ教職員、学生が在籍しており、ハード面でもソフト面でも多様な人に対応してきたインクルーシブな環境でした。だからこそ、非常時において即座に対応でき、学生、教職員、地域の障害者団体や住民が一体となって要支援者への対応に当たることができました。
つまり、ふだんから障害者、要支援の高齢者、外国人などが顔の見える関係を築いているコミュニティーが災害にも強いコミュニティーと言えます。そのためにも、地域の誰もが小さなときから通う保育園、学校で共に学ぶことが重要になってくると思います。
大臣、いかがお考えですか。
○国務大臣(盛山正仁君)
先ほどちょっと私もバリアフリーのことをお話ししましたが、平成12年、2000年でございます、交通バリアフリー法という法律を政府提案で提出をいたしまして、そして、それで交通関係の施設にバリアフリー化、義務化をしてから日本のバリアフリー化が進んだわけでありますが、そのときの国会で、当時は運輸大臣でございますが、当時、運輸大臣とのやり取りで運輸大臣からお答えいただいた内容が、ハードの施設整備は大変大事ですと、できるだけエレベーター、エスカレーターその他、そういったことを国としても力を入れてやっていきますという話をした上で、あわせて、大事なことというのは、心のバリアフリー、ソフトの部分ですと、相手のことをおもんばかって相手の困っていることに対して手を差し伸べるという心のバリアフリー、これが大事ですということを国会でも御審議をいただき、少しでも多くの方に御理解を賜ろうとしてきたところでございますが、今、舩後委員からお話がありましたとおり、現実にはまだそこまでなかなか行っていないというのが現状でございます。
それで、災害時の対応も見据えまして、共生社会の形成に向けまして、私ども文部科学省も、学校教育においてインクルーシブ教育システムを構築することが重要だと考えております。
文部科学省におきましては、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごすための条件整備と一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として、特別支援教育の充実に取り組んでいるところです。あわせて、障害のある子供と障害のない子供が触れ合い、共に活動する交流及び共同学習を各学校等で推進するためのガイドや具体の実践事例を紹介する動画のほか、心のバリアフリーノートの作成等を通じて、障害者理解教育の促進を図っているところです。
さらに、特別支援学校と地域の小中学校等を一体的に運営するインクルーシブな学校運営モデルの創設に向けまして、令和六年度予算案に関連事業経費を計上し、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が共に学ぶ環境を整備するため、様々な観点から実証的な研究を行うこととしているところです。
これらの施策を通じて、引き続き、インクルーシブ教育システムの推進に向けた取組の充実に努めてまいります。
○舩後靖彦君
誰一人取り残さず、助かった被災者一人一人の命を守るために、医療、福祉、教育など、個別必要な支援の確保と避難環境の整備が必要です。地方自治体任せにせず、国が全力を挙げて対応していただくことをお願いし、質問を終わります。