定員内不合格問題・熊本県の事例についての緊急要望

議員が取り組んでいる「定員内不合格」について、熊本県で暮らす当事者の方からも相談が寄せられました。熊本県からご家族が上京され、議員が面会致しました。

2/26議員会館での面談の様子

(2月26日、議員会館での面談の様子)

当事者は、住谷栞音さん。脳性マヒの重度障害があり、気管切開と胃瘻があるため、医療的ケアが必要な状態です。

2018年、2019年と普通高校進学を目指して受験しましたが、2年間続けて公立高校を定員内で不合格とされてしまいました。現在、3度目の挑戦をしている中、前期試験(面接のみの試験)で、付き添いとして、普段の介助者ではなく、慣れていない県教委の職員を付けられ、意思を十分に伝えられなかったという問題が起きたこともあり、緊急要望を行ったということです。

この日は、住谷さんのお母様や支援者の方々が参議院議員会館にご来訪下さいました。出迎えた議員はあいさつで、以下のように述べました。

はじめまして、れいわ新選組・参議院議員の舩後靖彦でございます。きょうは遠いところお越しくださり、本当にありがとうございました。

お嬢さんの栞音(しのん)さんは、去年・一昨年と公立高校を定員内不合格とされ、今年2月に行われた入試でもただ一人定員内不合格とのこと。

このことは、同世代の仲間たちとともに学びたいという意欲のある生徒を、定員が空いているにもかかわらず排除することを意味します。思春期の重要な時期に同世代と切り離され、居場所を失うことにつながる、と私は考えます。障害のあるなしにかかわらず、社会的に孤立していく子どもたちの将来を思い、心が痛みます。

今日は、まず皆様のお話を伺い、本日、文部科学省に緊急要望書を提出します。よろしくお願いいたします。

面談での文字盤のやりとり

(面談では文字盤でのやりとりも)

住谷さんのお母様からは「合理的配慮をお願いしたいといっても、熊本県からの返答は何も変わっていなかった」と憤りの声もありました。

要望書を受け取る舩後議員

(要望書を受け取る舩後議員)

事態を深刻にとらえ、議員はご意見を踏まえた「緊急要望書」を萩生田光一・文部科学大臣に提出することを決めました。

面談を終えた後、舩後議員は文部科学省へ向かいました。大臣との面会を希望しましたが、残念ながら公務で難しく、初等中等教育局長がご対応してくださいました。

議員は、自身の体験をまじえながら、このように語りました。

本日は、予算審議また、新型コロナウィルス対策で大変お忙しいなか、お時間を取ってお会いいただき、誠にありがとうございます。

ご存じのとおり、障害のある生徒が高校受験をする際、自治体ごとに合理的配慮として様々な「特別措置」を設けております。

しかしながら、受験時につける意思疎通支援者が、受験生が慣れている人ではなく、教育委員会の指定した人である場合、意思が的確に伝わらず、かえって本人にとって不利となる場合があります。

これは、私が文教科学委員会で再質問をする際、文字盤を読み取ってもらい質問を作成することが認められておりますが、読み取る人が慣れている私の介助者ではなく、文字盤を読んだことがない委員部の職員の方である場合を想像していただければ、おわかりいただけるかと存じます。

3月に入りますと、後期試験が始まります。この時期を逃しますと、思春期の貴重な時期にまた1年間、浪人生活送ることになりかねません。

何卒、緊急要望事項をご検討いただき、速やかにご対応くださいますよう、お願い申しあげます。

丸山洋司・初等中等教育局長に要望書を手渡す舩後議員

(丸山洋司・初等中等教育局長に要望書を手渡す舩後議員)

このあいさつでも述べた通り、声を出せない障害者が意思疎通を図るとき、慣れた介助者が行うかどうかは、非常に重要です。丸山局長は、議員が委員会で文字盤を使っている様子も実際に見ていますので、議員の問いかけに、真剣な表情でうなづきました。その上で、「熊本県教育委員会に合理的配慮がどういう状況だったか聞いてみたいと思います」と事実確認を約束して頂きました。

翌日、文科省特別支援教育課と児童生徒課が熊本県教委と電話会議を行い、事実確認などを行ったそうです。

その後、3月2日に住谷さんと熊本県教委が話し合いを行いました。これを受けて、議員は熊本県教育長あての要望書をファクスで送付しました。

話し合いの段階では「検討中」ということでしたが、後日、意思疎通支援者としての介助者、筆談が認められることになったということです。当事者が望んでいた形となり、ようやく「スタートライン」を準備することができたということで、議員も少しだけ安心した様子でした。

とはいえ、試験本番はこれから。引き続き、動向を注視したいと思います。

(2020年3月9日時点)