熊本県「定員内不合格」についてのコメント

本日、脳性麻痺で医療的ケアの必要な住谷栞音さんが、3年目の挑戦の2次募集(後期試験)で、熊本県立甲佐高校に不合格とされたとの知らせを受けました。住谷さんは、昨年・一昨年と2年続けて定員内不合格とされていました。昨年、今年は、20数名の募集に対したった1人の受験でありながらの不合格です。学ぶ意欲のある受験生を不合格にし、同世代と共に過ごす場を奪ってしまうことは、多様な存在、違いを排除せず共に生きるインクルーシブな社会を目指すうえで大きな障害であり、断じて許容できません。

住谷さんは気管切開をしていて発声できないため、受検時の合理的配慮として意思疎通支援者の付き添いを認められていました。しかし、県教育委員会が指定した支援者は住谷さんと面識がなく、力を出し切れなかったのです。至極当然と思います。私が委員会で再質問をする際、文字盤を読み取ってもらい質問を作成しますが、読み取る人が慣れている介助者ではなく、文字盤を読んだことがない参議院職員が行うようなものだからです。

このため私は今月、議員会館で栞音さんのお母様と応援する方々にお会いしたうえで、文部科学大臣や熊本県教育委員会に障害のある受験生の定員内不合格をなくし、本人が力を発揮できる合理的配慮の提供を求める緊急要望を行いました。

その後、ご家族や支援者の方々が交渉した結果、今回の試験ではようやく、要望が認められました。お母様の報告では、介助者は代読内容を聞こえないようにヘッドフォンを付け、本人とは筆談。受験後、住谷さんは「やっと伝えられた」と満足げだったとのことです。しかし、合格という結果の平等は与えられませんでした。高校で 学びたい、という子どもの基本的な権利に対する認識が高校側にないと言わざるを得ません。

残念ながら、今年もすでに沖縄、千葉県、愛知県でも定員内不合格が起きています。ほぼ99%の子どもが、実質無償で高校に進学する時代において、1%の子どもを高校から排除することの大義はあるのでしょうか。障害のある子だけの問題ではありません。貧困などにより学ぶ環境を保障されてこなかった、最も教育を必要としている子どもを排除するのは、教育機関としての敗北ではないでしょうか。

住谷さん、ご家族、支援者の思いに反する今回の判断に強く抗議します。

参議院議員 舩後 靖彦