2020年11月17日 参議院文教科学委員会質疑(新型コロナによる教育現場への影響/定員内不合格)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
まず最初に、太田委員長、就任おめでとうございます。本委員会での私の質問方法などについての御配慮を引き続きお認めいただきまして、ありがとうございます。心より感謝申し上げます。委員の皆様も、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
では、質問に移ります。
代読いたします。
全国的に新型コロナの感染者の増加傾向が強まり、感染拡大の第三波が押し寄せる中、再び学校閉鎖、一斉休校の可能性を考えますと、対応は待ったなしです。
大臣は、GIGAスクール構想の実現に向けた取組を加速させ、義務教育段階の全ての子供たちに対して一人一台の端末の導入を本年度中に進める決意を述べられました。
しかし、資料一にありますように、年収四百万円を境にPC、タブレット所有の差がくっきり表れ、オンライン授業が進む中、経済格差による教育格差が拡大していることが明らかになりました。端末が確保されても、自宅学習となりますと、ネット環境の整備やデジタル端末に慣れていない生徒、家庭への支援が必要です。
また、資料二にありますように、コロナ禍により、親の失業や収入減により余裕がなくなり、子供への教育費を削らざるを得ない家庭も増えています。学校と保護者との事務連絡もデジタル化という流れの中で、経済格差による格差拡大を引き起こさないように、困窮家庭への支援は必須です。低所得世帯やコロナによる収入減が発生した世帯に対し、高等学校までの教育費について、緊急教育手当の給付なども検討すべきと考えます。今手を打たないと、格差は広がる一方です。
大臣、考えをお聞かせください。
○国務大臣(萩生田光一君)
新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、家庭の経済事情にかかわらず安心して教育を受けられるよう、各学校段階を通じて教育費の負担軽減を図ることは重要です。
義務教育段階においては、市町村が就学援助を実施していますが、家計急変の場合も、対象者の認定や援助について柔軟な対応を行うよう促すとともに、今年六月からは国の補助要綱を改正し、家庭でのオンライン学習に係る通信費も支援できるようにしたところです。
高校段階においては、高等学校等就学支援金による授業料支援を行っており、今年度からは年収五百九十万円未満世帯の生徒を対象とした私立高校授業料の実質無償化が実現しました。また、家計急変に際しては、都道府県が行う授業料減免事業に国庫補助をすることにより支援を行っております。高校生の授業料以外の教育費支援としては、高校生等奨学給付金による支援を行っており、今年度から家計急変世帯も対象に加えるとともに、家庭でのオンライン学習に必要な通信費相当費の追加支給も実施したところです。
文科省としては、今後もこうした取組の着実な実施と充実を図りつつ、教育負担の軽減にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
次に、コロナ禍での高校生、大学生などや奨学金返還者の生活苦の深刻化と高等教育の無償化について御質問いたします。
先週、奨学金の会主催の院内集会に参加いたしました。今年四月から、低所得層の大学、短大、高専、専門学校で学ぶ学生に対する授業料、入学金の減免と給付奨学金の支給を定めた大学等修学支援法が施行されました。しかしながら、その集会での報告によりますと、今まで給付されていた三百八十万円から四百七十万円の世帯に対する支援がなくなり、私立大学、国立大学の学費値上げもあって、新制度によって負担が軽減されるのは全学生の一割程度にしかすぎないということでした。
また、コロナ禍で、親の収入減や本人のアルバイト収入減などで学生の困窮化が深刻化しています。高等教育無償化プロジェクトFREE京都の調査によりますと、四人に一人が退学や休学を検討しています。五月には学生支援緊急一時金の制度が創設されましたが、そもそも一人十万円、住民税非課税世帯は二十万円では学業を続けるには焼け石に水です。
資料三を御覧ください。
二〇一七年の数字ですが、日本は教育に対する対GDP比での公的支出が二・九%と低く、OECD平均の四・一%を大きく下回っています。また、高等教育だけの支出はOECD加盟国最低の〇・四%、OECD平均の半分以下です。
奨学金の会会長の三輪定宣千葉大名誉教授の試算によりますと、OECD平均並みの教育予算にするためには約五・九兆円の増額が必要ということです。二〇二〇年度の文教予算は四・三兆円ですので、この規模では到底追い付きません。
全ての教育が無料で高等教育の公費負担率一位であるノルウェーの教育大臣は、コロナ危機のデジタル化をきっかけに大学は知識のデータベースを全ての市民に無料公開するときが来るだろうと、学生ではなくても大学の授業が聞けるようになる可能性を語っています。これこそ国の礎である教育の目指すべき形と考えます。
今こそ教育予算を大量に投資し、全ての教育段階の無償化を実現すべきときです。大臣の決意をお聞かせください。
○国務大臣(萩生田光一君)
OECDのデータによれば、二〇一七年度において我が国のGDPに占める公的財政教育支出の割合は三・一%。先生の資料二・九%になっているんですが、奨学金を入れると三・一%になります。データのあるOECD諸国三十八か国中三十七位は変わりませんので大きな変化はないんですが、低い水準であることは、もうこれは認めなくてはならないと思います。
文科省としては、資源に乏しい我が国が将来にわたって世界に伍していくためには教育投資が重要であると考えており、様々な教育課題に対応し、我が国の国際的地位にふさわしい政策を実施するために十分な教育予算を確保する必要があると考えております。
この観点から、昨年十月からの幼児教育、保育の無償化に続き、本年四月より年収五百九十万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化、真に支援が必要な低所得世帯の子供たちを対象とした高等教育の修学支援新制度を進めてきたところです。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により、子供たちの学びの機会が奪われることがないよう、各学校段階の特性を踏まえつつ、授業料等を納付することが困難な者への配慮の要請、家計急変世帯への授業料減免のための財政的支援、学びの継続のための学生支援緊急給付金などの創設などの支援を行ってまいりました。
新たな時代を見据えつつ、各教育課題への対応に必要な予算の確保に努め、教育政策の充実を図ってまいりたいと思います。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
さて、ここから障害のある生徒の定員内不合格の問題について質問いたします。
昨年十一月二十六日の文教科学委員会において、私は、障害のある生徒の高校受験における合理的配慮と定員内不合格に関する質問をいたしました。沖縄では毎年千三百人から千五百人の定員が空いているのに、百人以上の定員内不合格があり、障害や貧困、虐待などにより学ぶ環境が保障されずに、点数の取れない生徒が入学を拒否されています。
これは沖縄だけの問題ではありません。障害児の高校進学に取り組んでおられる各地の団体の情報を集めますと、資料四にありますように、十三道県で、障害のある子供が、定員が空いているにもかかわらず入学を拒まれています。中には、一次、二次、三次募集と落とされ続け、何年も浪人しているという実態があります。
その一方、NHKの調査によれば、二〇一九年春の受験で、分校を含む全日制公立高校のうち、四三%余りに当たる千四百三十七校の学科やコースなどで定員割れが生じています。資料五にありますように、十八の道県では半数以上の高校が定員割れとなっており、定員内であれば原則不合格にしない都府県の定員割れが少ないという関連性がうかがえます。特に、長年定員内不合格者を一人も出していない東京、大阪、神奈川は、明らかに低い数字です。
この数字は、定員内不合格者の数ではなく、定員割れをしている高校の数です。したがいまして、都市部と違い、通学区域を考慮して極端に高校数を減らせないなどの事情がある地方や島が多い自治体と単純な比較はできないかもしれません。しかし、原則定員内不合格を出さない方針の都府県とそうではない道府県の違いが定員割れの学校数の割合に影響していると思います。
このような状況の中、二〇二〇年の高校受験において、沖縄県の定員内不合格者数が過去最少の五十三人と、前年から半減しました。二〇一六年から一八年まで百五十人以上、一九年には百十一人の定員内不合格者がいたのにです。沖縄県教育委員会は、定員内不合格者数が減少した理由について明言していません。ただ、私が昨年の質問で取り上げました知的障害のある生徒の三年目の受験をめぐり、定員内不合格を出さないように県の内外から要請を受け、県教委が二月の校長会で学ぶ意欲のある受験生をできる限り受け入れるようにとの通知を出した影響があるのではないかとの沖縄タイムス社の記事もあります。教育委員会が積極的に定員内不合格を出さないように各高校に指導することで数は減らせるという実績であると考えます。
大臣は、昨年の臨時国会での私の質問に対して、定員に満たない場合で不合格となった者の人数は把握していないが、合否状況の調査については実施者である都道府県教育委員会の意向も十分に勘案した上で検討する必要があるとお答えになりました。
再度大臣にお伺いいたします。高校への進学率は九七・八%、特別支援学校高等部を加えると九八・八%、しかも、私立高校を含め八割以上の生徒が授業料実質無償化の対象となっています。定員に満たない場合の受験生、受験者への対応のこのような地域格差を放置していることは、ほぼ高校全入時代の実態に合わないと存じます。せめて、各自治体の定員内不合格の実態、数値の把握をお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(瀧本寛君)
お答え申し上げます。
高等学校入学者選抜の方法等につきましては、実施者でございます都道府県教育委員会等の判断で決定し、各校長がその学校及び学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力、適性等を入学者選抜により合否を判定することとされております。したがいまして、空きがあるから全て受け入れるということに必ずしもなっていない、すなわち、定員内不合格自体が否定されているものでは制度上ございません。
文科省としては、各実施者におきまして入学者選抜が適切に実施されることが必要と考えておりまして、その観点から、定員内不合格の実態調査の実施について各都道府県教育委員会の意向を確認をさせていただきましたところです。
その結果、調査を仮に実施するということになった場合、二点ございますが、一つ、都道府県教育委員会それぞれの方法等により選抜されたにもかかわらず、定員内不合格の人数等が都道府県ごとの多寡のみで単純に比較されてしまうのではないか、もう一点、校長の公正な合否判断に少なからず影響を与えてしまう可能性があるのではないかなどの理由によりまして、入学者選抜の円滑な実施等に支障を生ずるおそれがあるという意見でございました。
これまで実施者の意向を確認の上で調査について判断をしたいということで御答弁申し上げてまいりましたので、ただいまのような御意見を踏まえまして、定員内不合格の実態調査そのものについては、実施は差し控えさせていただくこととしたいと考えております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
残念ながら前向きな回答はいただけませんでしたが、引き続きこの問題について質問いたします。
障害者差別解消法では、入試における合理的配慮の提供は国公立学校においては義務ですので、文科省も受験上の配慮の具体例を収集され、学校設置者への対応の要請、情報提供をしていただいているかと存じます。
現状では、お配りした資料六のような合理的配慮が行われておりますが、中には、試験の公平性や中立性を理由に、意思疎通のための介助者、支援者、代筆者を認めないとか、あるいは認めたとしても受験生の意思疎通に慣れた者ではなく、教育委員会や受験校の初めて会う教職員が付くため、本人の意思がきちんと伝わらず、試験で不利益になる事例もありました。
また、私と同様、人工呼吸器を使い、まばたきでコミュニケーションを取るというある生徒は、記述式では幾ら時間を延長しても間に合わないため、中学校の試験では記述式から選択式の変更が認められていました。しかし、高校受験では不公平と認められていません。都道府県で対応がばらばらなのです。
そこで、御提案させていただきます。
障害のある生徒の合理的配慮については、全国の共通ガイドラインを作り、そのガイドラインにのっとり個別にその生徒に合った試験方法を決めるという仕組みは取れないものでしょうか。この提案について、大臣、お考えをお聞かせください。
○国務大臣(萩生田光一君)
高等学校において、障害のある生徒が障害の状態などに応じた適切な指導や必要な支援を受けられるようにすることは大変重要であると考えています。
文部科学省では、障害のある生徒への指導における配慮として、入学試験の実施に際し、別室実施や時間の延長などの実施方法の工夫など、可能な限り配慮を行うよう都道府県教育委員会に対して指導をしているところです。
障害のみを理由に入学を拒否されることはあってはなりません。ただ、他方で、その学校が目指す教育内容に、その希望する生徒が障害の有無にかかわらず付いていけるかどうかについても考えてあげなくてはならないと思っているところでございます。
御提案のあった全国ガイドラインにつきましては、今日、先生からの御提案なので引き取らせていただいて検討してみたいと思います。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
少なくとも、中学校の試験で認められているような方式を認めるよう指導してほしいと願いますが、いかがでしょうか。それも難しいでしょうか。
○政府参考人(瀧本寛君)
お答え申し上げます。
障害のある方に対する入学者選抜やその方法等については、最大限配慮をしていただけるようにお願いをしておりますけれども、具体的にどのような内容とするかということについては、それぞれの実施者、県立高校であれば都道府県教育委員会において判断をしていただきたいと思います。
いずれにしても、障害があることのみをもって排除されるようなことはあってはならないと考えているところでございます。
○委員長(太田房江君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(太田房江君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
改めて、ガイドライン作成をお願い申し上げます。
加えて、もし私が質問をする際、参議院の職員が文字盤を使うと、文字盤をしてもらう形になると、自分の言いたいことが質問できなくなってしまいます。このような場合は合理的配慮の不提供に当たると感じますが、大臣はいかが受け止めますでしょうか。
○国務大臣(萩生田光一君)
先生のおっしゃっていることは我々も理解ができます。例えば、高校受験を控えた中学生が幼少期から車椅子で生活をしていて、それを試験会場に入って見知らぬ誰かに押してもらうことの不安やストレスというのはきっとあるんだと思います。あるいは、ペンが持てない、書けない子供たちが、しかし一生懸命頑張ってきた成果を発揮したくて代筆をする場合に、県の職員の初めて会う人が本当にその自分の意思どおりに書いてくれるのかという、こういうことはすごく不安だと思います。
先生のまさしく文字盤を追うというのは、この目の動きでやらなきゃならないので、申し訳ないですけど僕が急に先生に話しかけられても答えられないのと同じように、参議院の職員や、あるいは先生が何かの試験を受けるときに初めて会う人がその意思疎通ができるかというと、それはすごく難しいと思うので、そういうことの合理的な支援というものは受験にあっても必要だと私は思いますから、さっき申し上げたガイドラインの中で、こういう点は気を付けていきましょうよ、こういう点は配慮しましょうよというのは、自治体任せじゃなくて、少し国としても、文字どおりのガイドラインで最終的には試験の設置者がやることになると思いますけれども、しかし目安になるものは作っていきたいなというふうに思っているところでございます。
すごく難しいテーマだと思いますけれど、学ぶ意欲のある子供たちが、なかなかその障害だけを理由に前に進めないということはあってはならないと思います。他方、繰り返しになりますけれども、だからといって、特別な配慮をして入学ができても、その学校の授業がしっかり分かってくれなかったらその子はもっと大変な思いをするわけですから、その辺のバランスをきちんと見ながら、都道府県と国としっかり連携取れるような体制を取っていきたいなと感じたところでございます。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
引き続き質問いたします。
一方、たとえ合理的配慮を尽くしても、試験で点数が取れなければ高校のカリキュラムを履修する見込みがなく、定員内で不合格であっても仕方がないという考え方は高校現場にも多くの人の意識にも残っています。残念ながら、今年の春、私が関わった沖縄や熊本でも、合理的配慮を得て二次、三次募集の面接で高校進学の意欲を自分なりの方法で示しましたが、定員が大幅に空いているにもかかわらず不合格とされてしまいました。
一方で、北海道では自閉症の障害のある生徒が、また、千葉県、愛知県でも知的障害のある受験生がそれぞれ合格しています。試験で点数が取れないという点では、さきの定員内不合格にされた受験生と同様です。
学校教育法施行規則では、高等学校長が入学者選抜により判定し、入学を許可することとされています。しかし、同規則五十四条では、児童が心身の状況によって履修することが困難な教科は、その児童の心身の状況に適合するように課さなければならないとあり、百四条で高等学校に準用するとあります。
また、資料七にありますように、今日の高校には障害のある生徒を始め様々な生徒が在籍しており、高等学校学習指導要領総則編や文科省の平成九年の通知で、教育課程の編成については、障害の種類や程度に応じて適切な評価が可能となるよう、学力検査において配慮を行うとともに、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を図ることと説明されています。
具体的には、資料八のように、大阪府が平成十三年度に出した府立高校における障害のある生徒に対する学習指導及び評価についての通知と、それに基づいて作成した生徒さんの評価基準の事例を御覧ください。評価の在り方や評価の方法を生徒の障害の状況に即して検討、知識の量のみを測るのではなく、生徒の学習の過程や成果、進歩の状況などを積極的に評価などと示されています。
また、定時制高校では、合理的配慮という言葉がない一九八〇年代から、社会のセーフティーネットとして、勤労生徒だけでなく、学齢期に高校に行けなかった高齢者や障害者、外国籍の子供や不登校の子供など、多様な存在を受け入れ、一人一人の生徒に向き合い、各自に合わせた授業、評価方法を考えて実践してきました。
こうした取組に学んで、評価の在り方、進級の基準などの内規を弾力的に運用することは可能です。現に沖縄県教育委員会は、さきに紹介した知的障害の受験生の受験に当たり、当初、高校では特性に応じた教育課程を提供できず学びを保障できないとする見解を撤回し、高等学校においては入学された全ての生徒に対し学びを保障する必要があると修正しました。
こうした検討をすることなく、高校での単位が履修できない、能力、適性がないとして不合格とするのは、障害に応じた合理的配慮の不提供に当たるのではないでしょうか。障害のある生徒や家族は、障害を理由に不合格とされているのではないかと懸念をしています。
大臣は、以前、障害を理由にした不合格はあってはならないとおっしゃっていました。こうした懸念を踏まえ、少なくとも障害のある生徒に対しては、障害を理由にしていないんだよと分かるように不合格の判断理由をはっきりと示すべきではないかと考えます。大臣、いかがお考えでしょうか。
○国務大臣(萩生田光一君)
入学者選抜の結果については、本人からの請求等に基づき学力検査の得点などを開示する仕組みが設けられていると承知しており、結果の開示方法や範囲等については実施者において適切に判断されるべきものだと考えております。引き続き適切な対応を促してまいりたいと思います。
繰り返しになるんですけれど、学ぶ意欲のある子供が障害を持っていて、思うように筆記や何かで実力が発揮できない、しかし、そのお子さんを進学させるかどうかは、設置者の判断でいろんな配慮があって私いいと思うんです。今先生からいただいた大阪府立の学校などは、まさしくこの子のためのオーダーメードの評価をつくって積極的な受入れをしているということがよく分かります。全てオールジャパンで同じことができるかは分かりませんけれども、こういう取組の努力をしている学校の事例なども是非各都道府県にも紹介しながら、学ぶ意欲がある、ここにすごく分かりやすく、教科の到達目標、①毎日出席することと書いてあるんですね。もうちゃんと毎日来いよと。そしてしかし、静かに落ち着いて授業を受けること、板書は指示に従いノートやプリントに写し提出すること、こういうことをきちんと続けながら、自分の能力で一生懸命頑張っていくという子供たちに学ぶ機会を与えたいというこの気持ちは先生も私も同じだと思いますので、学校設置者の皆さんにいろんな例示を示しながら、一つでもいい結果が出せるようにしたいなと思っているところでございます。
○委員長(太田房江君)
時間が参っております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
ありがとうございます。
合理的配慮は、受験時だけでなく、高校に入った後も合理的配慮を得て学ぶことでほかの生徒たちにもいい影響をもたらすと考えております。
以上で質問を終わります。
今回の質疑について、大阪経済法科大学アジア太平洋研究.センター客員研究員. 公教育計画学会理事の一木玲子氏より、コメントをいただきました。
2020.11.17参議院文教科学委員会質疑における大臣他答弁についてのコメント
一木玲子
(大阪経済法科大学アジア太平洋研究.センター客員研究員. 公教育計画学会理事)
1 障害のある生徒の高校受検と定員内不合格について
<評価点 無し>
高校の入学者選抜は教育委員会、各学校長が判断するもので、定員内不合格自体が制度上否定されていないため実態調査を行わないという文部科学省の答弁は、現在の日本の教育政策全体から見て疑問である。文科省は、高等学校進学率が90%以上に達した1980年代より、高等学校は「事実上すべての国民が学びうる教育機関となった」という認識のもと、全ての高校進学者の学習権を充たすよう個別化・多様化された教育政策を進めている。事実、高校卒業資格は就業資格や給与に直結しており、高校入学・卒業は、一人の人間の生涯を考える上で切り離せないものになっている。昨今の高等学校授業料無償化も、高校教育が子ども全体の問題であり準義務教育的な位置づけを持っているという世論の上に成り立ったものであろう。
各都道府県が決めている毎年の高校入学者定員も、その流れの上のものであり、国及び自治体は、全ての高校進学希望者の学習権を保障するべく定員を設定し予算措置をしているはずである。このように考えると、進学希望をしている者を定員内であるのに不合格にすること自体、公の責務放棄である。
都道府県教育委員会は、生涯を通した教育の観点からも、住民の青少年育成の観点からも、直ちに定員内不合格者数調査を実施し、定員内不合格を出さずに学習権を保障するための高校教育の体制を構築するための基礎資料として活用すべきである。
2-1 高校受検時の合理的配慮の全国ガイドラインについて
<評価点>
「障害のみを理由に入学を拒否されることはあってはならない」
「全国ガイドラインについては、引き取らせていただいて検討したい」
荻生田文部科学大臣の「障がいのみを理由に入学を拒否されることがあってはならない」「(受検時の合理的配慮について)全国ガイドラインについては…検討したい」との弁は、障害を理由に入学を拒否されてきた/いる多くの障害者にとって、非常に力強い答弁である。国連障害者権利条約24条一般的意見4号では、「締約国は、就学前、初等、中等及び高等教育、職業訓練及び生涯学習、課外及び社会活動などあらゆる段階における、障害のある人を含むすべての生徒を対象とした、差別のない、他の者との平等を基礎とした、インクルーシブ教育システムを通じて、障害のある人の教育を受ける権利の実現を確保しなければならない」と記載され、各国では知的障害者も含めた障害者の高校教育、大学教育が進められている。
<留意点>
・このような世界的な流れからも、障害者の学習権保障という観点から、早急に障害を理由に高校入学を拒否された事例、合理的配慮をされずに受検ができなかった事例、受検はしたが不合格になった事例などの差別事例を集めて防止に努めるべきである。
・高校受検における合理的配慮の全国ガイドラインを作成することは急務である。現在は自治体により大きな格差があり、同じ人でも都道府県が違うと受けられる合理的配慮に違いが出るという奇妙な状況がある。全国の先駆的な事例を基準としたガイドラインを早急に作るべきである。
2-2
<評価点>
荻生田大臣の「車いすで生活している受験生が、試験場で見知らぬ誰かに押してもらうのでは不安やストレスがある。代筆も、県の職員が初めて会う人だと自分の意志通りに書いてくれるのか不安に思う。‥文字盤は‥職員や初めて会う人が意思疎通できるかというと、すごく難しい。そういう合理的支援は受験時も必要と思う。」という答弁は障害者の権利を踏まえた真っ当な意見である。このような考えの上で、全国ガイドラインを作成しなくてはならない。
<留意点>
試験の補助をする人や介助者、コミュニケーションを円滑に行うための意思疎通支援者などは、本人が指定した人が行うことは、多くの都道府県等教育委員会がが「公平性」の観点から否定・躊躇している実態がある。しかし、これは障害者の権利に関わることであり、全国の文部科学省、教育委員会関係者には、舩後議員など障害のある議員から研修を受ける機会を設けるなどして新たな一歩を踏み出してほしい。
また、ガイドラインには、全ての進学希望者の学習権を保障するという観点から東京都や千葉県などの高校入試時に行われてきた先駆的事例の紹介や、障害者差別解消法の観点に照らし合わせて妥当とされる事例も紹介することで、今までの成果や今後の課題を共有するようなガイドラインの作成を希望する。
2-3
<評価点及び留意点>
障害のある受験生が不合格になった際には、その人の障害が理由ではないことを、都道府県教育委員会に立証する責任がある。荻生田大臣からは入学者選抜の結果を開示する仕組みがあるので適切な対応を促すと前向きな答弁があった。もう一歩踏み込んで、合理的配慮の適切性に関する項目を追加し、差別解消法の観点から第三者が評価するような仕組みが必要ではないかと考える。
荻生田文部大臣の「大阪府立の学校はオーダーメイドの評価を作って積極的な受け入れをしていることがよく分かる。こういう取り組みをしている学校の事例なども各都道府県に紹介しながら、学ぶ意欲がある自分の能力で頑張っている子どもたちに学ぶ機会を与えたいという気持ちは同じ」という答弁は評価できる。
国際的にも、知的障害者を含むすべての障害者の高校進学、大学進学が進んでいる。日本でも、そのような事例はあり、自治体や学校で実施されてきた評価の合理的配慮などの仕組みは、今後の全ての学校の参考になるものである。全国ガイドラインを作る際には、障害者には高校教育は無理であるという多くの人が持っている思い込みを払しょくして、学ぶ意欲のある者が学ぶ体制を構築するためにも、このようなで高校で学んできた障害者の声や自治体や学校の先駆的な事例を載せることが必須である。
<参考>
〇国連障害者権利条約24条一般的意見4号
締約国は、就学前、初等、中等及び高等教育、職業訓練及び生涯学習、課外及び社会活動などあらゆる段階における、障害のある人を含むすべての生徒を対象とした、差別のない、他の者との平等を基礎とした、インクルーシブ教育システムを通じて、障害のある人の教育を受ける権利の実現を確保しなければならない。
〇中央教育審議会 1999/12/16 答申等 初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)
第2章 第4節 高等学校入学における能力・適性等の判定
現在,高等学校は,進学率が約97%に達し,事実上すべての国民が学び得る教育機関となり,個性化・多様化が進んでいる。また,専修学校高等課程(高等専修学校)も中学校卒業者の一部が進学する後期中等教育機関となっている。
入学者選抜については,高等学校進学率が約67%であった昭和38年の「公立高等学校入学者選抜要項」(初等中等教育局長通知)において,「高等学校の教育課程を履修できる見込みのない者をも入学させることは適当ではない」とした上で,「高等学校の入学者の選抜は,……高等学校教育を受けるに足る資質と能力を判定して行なうものとする」とする考え方を採っていた。しかし,進学率が約94%に達した昭和59年の「公立高等学校の入学者選抜について」(初等中等教育局長通知)においては,「高等学校の入学者選抜は,各高等学校,学科等の特色に配慮しつつ,その教育を受けるに足る能力・適性等を判定して行う」として,高等学校の入学者選抜は,飽くまで設置者及び学校の責任と判断で行うものであることを明確にし,一律に高等学校教育を受けるに足る能力・適性を有することを前提とする考え方を採らないことを明らかにした。
これに基づいて現在それぞれの学校や学科の特色に応じた多様な選抜方法の実施,知識に偏らず思考力,表現力などを評価する学力検査の工夫,学業以外の活動の積極的評価など,入学者選抜の改善の努力が進められているところである。 さらに,中高一貫教育制度の実施にあわせて,平成11年度からは,高等学校の入学者選抜について,生徒の多様な能力,適性等を多面的に評価するとともに,一層各学校の特色を生かした選抜を行い得るよう,調査書及び学力検査の成績のいずれをも用いず,他の方法によって選抜を行うことを可能とする制度改正を行い,選抜方法についての設置者及び各学校の裁量の拡大を図ったところである。
今後,このような趣旨が更に徹底され,後期中等教育機関への進学希望者を盲・聾・養護学校高等部も含めた後期中等教育機関全体で受け入れられるよう適切な受験機会の提供や,高等学校の整備,盲・聾・養護学校の高等部の整備などの条件整備に努める必要がある。