2021年1月28日 参議院文教科学委員会質疑(いわゆる大学ファンド法案について質疑)

○舩後靖彦君

れいわ新選組の舩後靖彦でございます。本年もよろしくお願いいたします。

まず初めに、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった羽田はた雄一郎先生並びに国民の皆様に心からお悔やみ申し上げます。もし私も感染した場合、重症化する可能性が高く、他人事では決してありません。また、現場で奮闘いただいている医療関係者の皆様に心から感謝申し上げます。

党としては、年末に菅総理に直接要望しておりますが、医療従事者個人への手厚い給付などを求めております。是非実現していただくことを重ねてお願い申し上げます。改めて、政府におかれましては、感染防止対策を徹底的に進めていただくことをお願い申し上げます。

それでは、質問に移ります。

代読いたします。

今回の法案に対し、私は反対する立場から質問をしたく存じます。

まず強調したいのは、そもそもコロナ禍の今必要なのは、逼迫する学生、大学に国費でお金を投入することだということです。

現在、大学の教育研究環境は逼迫しています。国立大学法人運営費交付金予算額は、二〇〇四年度以降、減少傾向にあります。私立大学等経常費補助金についても、高等教育の修学支援新制度の効果で上昇したように見えますが、同制度で大学院生は対象外となっておりますので、とても楽観できる状態ではありません。

教育研究環境を考える上で重要なのは、研究人材の問題です。特に、博士課程の学生や博士号を取得しながら任期制の職に就いているポストドクター、いわゆるポスドクの方々の生活・研究環境の改善は待ったなしの状況です。国は、ポストドクター一万人支援計画を推進しましたが、ポスドク後のキャリア支援を十分に行ってこなかったという指摘もあります。

国が国立大学の運営費交付金を削った結果、ポストも削られ、行き場も失った若者たちに奨学金という巨額の借金を背負わせた上に、困窮させてきたのです。国は、この誤りの反省に立った政策を行うべきなのです。にもかかわらず、国の支援策は今の今まで不十分だと言わざるを得ません。

内閣府の資料によると、博士課程学生のうち現時点で生活費相当額を受給している割合は一割程度です。国は、二〇二一年度から博士課程に進学する学生の生活費を支援する新たな制度を設けると聞いています。それによりますと、初年度の関連経費は二百三十億円程度とのことです。対象となる学生は七千八百人。こうした取組で生活費相当受給者の二割まで上げるとのことですが、到底足りません。

一般社団法人日本若者協議会のウエブ調査によると、二百三十三人の大学生、大学院生、ポスドク、常勤研究者に対して、現在、大学院生及び非常勤研究者に対して迅速に対応すべき問題は何ですかを複数回答で尋ねたところ、将来常勤職に就く見通しが立たないが百八十六人、学費や研究費の負担が重いが百四十九人、大学非常勤職の経済的問題が百二十八人に上りました。

ただでさえこうした逼迫した状況があることに加えて、このコロナ禍です。ファンドへの投資をする前に、今必要なのは、人件費を含めた基盤的経費に国費を注ぐことであります。通貨発行権がある国が国債を発行して教育費を注入するべきです。今、大学を国が支えなければ未来の人材は途絶えてしまいます。この点、大臣、いかがお考えでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

新型コロナウイルス感染症の影響により経済が低迷する中にあっても、世界各国はイノベーションへの投資強化を計画しています。我が国としても、リーマン・ショック後の反省を踏まえ、科学技術イノベーション活動への力強い下支えを行うことが不可欠と認識しております。このため、国の資金を活用しつつ、大学ファンドを創設し、その運用益を活用することで世界トップレベルを目指す研究大学や博士後期課程学生等への支援に注力する大学への支援を行うこととしております。

今、先生も質問で触れてくれましたが、新たに七千八百名の博士課程の生活費の一部を支援しようということになりました。既存メニューで応援してきた七千名と合わせますと一万四千八百人、約一万五千人まで到達しましたので、これは更に手厚くしてまいりたいと思います。

また、このコロナ禍の困難な状況においても、全国の大学が継続的、安定的に教育研究活動を実施し、広く国民に高等教育の機会を提供していくことが重要だと思っています。このため、大学ファンドによる支援だけでなく、当然のことながら、国立大学法人の運営費交付金等の基盤的経費についても必要な資金が十分確保されるように引き続き努めてまいりたいと思います。

今先生から御批判いただいたように、そんな金があるんだったら運営費交付金手厚くした方がいいじゃないかという御意見は、私も今目の前にあるバランスシートだけ見ればそういう意見があることはよく分かるんですけれど、じゃ、この五千億はそっちへ回すことができるかというと、これまた違う話にどうしてもなってくるんだと思います。ここはまた違う、ある意味、今までの運営費交付金に上乗せできちんと新しいファンドをつくって基盤を強化していくために使わせていただきたいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

そもそも、こうしたファンドの政策を今出してくること自体にも疑問を抱いています。この仕組みで出た運用益を配分するのは、世界に伍する大学のためという名目で、少数の有力校に絞られるのではないでしょうか。そうすると、この仕組みで得をするのはこれまで力を持っている大学であり、すぐに結果が見える分野にお金が積み上がっていく仕組みではないでしょうか。前の質問でも申しましたが、国の失策によって研究環境や生活に困っているポスドクの方々、高学歴ワーキングプアの生み出した反省が全くないと感じます。国にとって都合の良い研究を優先する視点を推し進めようとするこの仕組みは、とてもいびつなものと感じます。

先日、産経新聞の記事で、経団連が自民党の政策を高く評価し、政治献金を呼びかけるという内容を読みました。こうした記事を読むと、私は今回のファンドも、学生や大学院生、ポスドクの方々を見ているのではなく、経済、金融界を見てそんたくしているのではないかと感じてしまうのです。

このファンドの運用益は博士課程学生の支援にも活用することを想定しているとお聞きしています。しかし、いつ、どのように配分されるのか、そもそもきちんと確保されるのか、そうした点が見えないことからも、この政策に疑問を感じざるを得ません。大臣、いかがお考えでしょうか。

○政府参考人(杉野剛君)

大学ファンドでは、科学技術あるいはイノベーションの中核でございます大学の研究力を強化するために、世界トップレベルの研究大学を目指して、高いポテンシャルと明確なビジョンを持ち改革に取り組む大学への助成を行うこととしております。

その際、世界トップレベルの研究基盤を構築するために長期的、安定的な支援を行うこととしておりますので、御指摘のようなすぐに結果が見える分野のみならず、長期的な取組が必要な分野における研究力の強化にも資するものと考えておりますし、また、実際の助成に当たりましては、各大学が描く戦略、これを踏まえての助成となりますので、できるだけ各大学の創意、戦略が生かされる、そういった方向での支援をしていきたいと考えているところでございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

この法案は、政府が昨年末に閣議決定した総合経済対策によれば、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現、十八・四兆円、これに含まれるものであります。一方、同対策によれば、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策は五・九兆円にとどまります。

繰り返しますが、今まず必要なのはコロナ対策ではありませんか。コロナの感染対策を全力で行った上で時間を掛けて検討すべき政策なのではないでしょうか。大臣、御見解をお願いいたします。

○国務大臣(萩生田光一君)

その前の質問で、先生が、すぐに結果が見える分野にお金を積み上げていくんじゃないかと御指摘があったんですが、それは科研費がありますので、ある程度短期間で結果を出していただく研究というのは今までのその補助金を使っていきたいと思います。これは、特別な大学とか特別な研究じゃなくて、先ほども申し上げたように、もう本当に真っ更な状態から夢のある研究を続けていこうという大学を、公私、私立の差なく純粋に選んでいきたいと思っていますので、そこは是非また御意見をいただきたいなと思っています。

確かに、今コロナ禍ですから、コロナに集中していくことは大事だと思います。もちろんそれはそれで文部科学省の所管の範囲でやれることは怠りなくやっているつもりですし、来年度に向けても引き続きしっかりやっていきたいと思います。それと国内の大学に力を付けてもらうことというのは、ある意味アフターコロナを考えたときには必要なことだと思っています。

先ほど他の委員の皆さんにもお答えしましたけど、おっしゃるように、きちんと制度設計して、そしてどういう人が理事になってどういう人たちが監視委員会に入ってそして運用をしていくのかということを説明した方が、順序としては私、正しいと思うんです。ただ、文部科学省が内閣府と一緒になって十兆円のファンドを本当につくるのかというのが、今までのある意味、世論の疑いの目だったと思います。この本気度をしっかり示して、四・五兆円の基金を積むことによって、私は人もまた新たなお金も集めることができると思っていまして、ここはそういう、順序が逆だけれどもそういう志でやっているということは是非御理解をいただきたいなと、そんなふうに思っております。

決してコロナ対策をおろそかにして違うことに注力をしようなんて気は全くございませんので、そこは文部科学省の所管内でやるというならば、コロナに対するその様々な政策は私の責任でしっかり前に進めていくことは改めてお約束させてください。

○委員長(太田房江君)

時間が参っておりますので、簡潔にお願いいたします。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

研究開発費を増やすことは、国が成長する伸びしろ、すなわち供給力を伸ばすものなのだから、どんどん国債を発行して財源を確保し、未来への投資とすればよいのです。

すが政権はこの国の将来をどのように考えているのですかと申し上げ、質問を終わります。


◆反対討論

○舩後靖彦君

私は、れいわ新選組を代表し、国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。

本法案は、十兆円規模の大学ファンドを創設し、その運用益を日本の大学の研究環境整備に助成するため、科学技術振興機構に資金運用と助成の業務を追加することを定めています。しかし、大学の教育、研究環境が逼迫する中、この政策は今の状況にふさわしくありません。

将来常勤職に就く見通しが立たない、学費や研究費の負担が重い。学生、大学院生、ポスドクの方々の現状は大変厳しい状況です。この状況を改善するため、安心して研究に取り組める環境整備に今すぐ取り組むことが必要なのではありませんか。このファンドに五千億円、政府として出資するとのことですが、その額を出せるのなら、今、学生、大学院生を支えるために使うべきではありませんか。

そもそも、今回のファンドの仕組み自体にも疑問を感じざるを得ません。助成先がどのような基準でどのような大学に選ばれるのか、現時点では分かりませんが、結局のところ、今、力を持っている大学、国にとって都合の良い研究をする大学、すぐに結果が出やすい分野にお金が積み上がっていくのではありませんか。この仕組みで本当に得をするのは誰なのでしょうか。国の税金を使ってお金もうけをしたい人たちにとっての利益が優先されているのではないでしょうか。しかして、国内の大学の環境、研究環境を整えるためには運用益を当てにした仕組みではあるべきではありません。

以上、日本の将来の成長の基盤となる人材育成を強化するためにも、大学における研究開発のための予算拡充は国が通貨発行権を行使して果たすべきと申し上げ、討論を終わります。