2021年3月30日 参議院文教科学委員会質疑(少人数学級法案について質疑/財務省の姿勢を問う)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。

本日は、少人数学級に向け、学級編制と教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法案についての審議でございます。私としても、少人数学級を進めようとする方向性自体は異を唱える考えはございません。五年間を掛けた段階的な取組とはいえ、ようやく少人数学級への道筋が付いたことに期待する声も少なくないと存じます。しかし、少人数学級の進め方、ICT教育の推進、教育の質向上の問題など、課題も少なくありません。こうした観点から、以下、質問してまいります。

代読いたします。

まず、なぜ文部科学省が求めていた小中学校の三十人学級が実現できなかったのかという点について質問いたします。

萩生田大臣は、小中学校の三十人学級を目指しておられたと報じられています。しかし、予算編成における大臣折衝の結果、小学校のみの段階的な三十五人学級で決着したとのことです。なぜ大臣の目指す基準まで到達できなかったのでしょうか。財務省は、学力などに学級規模の縮小の効果がないか、あっても大きくないなど様々な理由を示し、消極的だったようですが、現場の教員の方々からは少人数学級を求めている声があることは、誰よりも大臣が御存じだと思います。

大臣は、一月十二日の閣議後記者会見で、一人一人に寄り添ったきめ細やかな指導が可能となる、子供たちの落ち着いた学校生活につながるなどの点を挙げ、少人数学級化の重要性を自ら挙げておられます。にもかかわらず、なぜ実現できなかったのでしょうか。まずは、萩生田大臣、改めて事の経過をお聞かせください。

○国務大臣(萩生田光一君)

ソサエティー五・〇時代の到来や、子供たちの多様化の一層の進展、今般の新型コロナウイルス感染症の発生なども踏まえ、ICT等を活用した個別最適な学びと協働的な学びを実現するとともに、今後どのような状況においても子供たちの学びを保障することが不可欠であり、今回、義務標準法を改正し、公立小学校の学級編制の標準を現行の四十人から三十五人に引き下げることにしました。

少人数学級の検討に当たっては、地方六団体を始め学校現場における少人数学級の効果や必要性の声は大きく、そうした高いニーズも踏まえ、当初、私は三十人学級を目指して全力で取り組んでまいりましたが、財務省始め関係者間で様々な検討、調整を丁寧に行った結果として、小学校における三十五人学級の計画的な整備を行うこととなった次第です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

大臣始め文部科学省が進めようとしていた小中学校三十人学級が実現しなかったという結果を踏まえ、財務省の御見解をお尋ねしたく存じます。

文部科学省によると、小中学校の学級編制の標準を三十人学級にするための必要教員はプラス約八万人、必要額は国費で一千七百億円とのことでした。もちろん、必要なのは国費だけではないですし、教員数だけでなく教室の確保なども必要になるとは思います。しかし、それを考慮したとしても、この規模の支出をすることすら難しいのでしょうか。二〇一七年度において我が国のGDPに占める公的財政教育支出の割合はOECD平均を大きく下回っていることを踏まえても、少人数学級化を含め、教育支出の割合を高めるべきと考えます。

財務省は、二〇一四年にも、既に実施済みだった小学一年生の三十五人学級を四十人学級に戻そうとしていたとの報道もありました。財務省は少人数学級を進めるべきではないとお考えでしょうか。公的教育支出を増やすおつもりはないのでしょうか。御見解をお聞かせください。

○大臣政務官(元榮太一郎君)

御質問にお答えいたします。

舩後委員御指摘のように、三十人学級の所要額が国費で千七百億円であれば、国と地方の合計では五千億円以上の財源が必要となります。これだけ巨額の財源を毎年度確保することは容易ではないと考えております。また、子供たちのために学校教育をより良いものにしていくことは重要でありますが、同時に、その子供たちが将来巨額の財政負担を負うことのないよう、限られた財源を効果的かつ効率的に活用していくこともまた重要であります。

こうした観点から、今般の検討過程において、当方より、学力を含む教育に与える効果をきちんと検証すべきではないか、教員の配置の適正化や外部人材の活用を行うべきではないか、教員の採用倍率が大幅に低下する中、教員の質を確保することが重要ではないか等の指摘を行ってきたところです。

今般、小学校三十五人学級を実施する中で、その効果の検証や外部人材の活用、教員免許の在り方等について検討を行っていくものと承知しており、教育の質を高めるため、丁寧に検証を進めていくことが重要であると考えております。

○委員長(太田房江君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(太田房江君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

おっしゃるとおり、将来の子供たちが巨額の財政負担を負うのでしょうか。その根拠をお示しください。

○大臣政務官(元榮太一郎君)

御質問にお答えいたします。

巨額の財政負担を負うかどうかということではございますが、先ほど御答弁を差し上げたとおり、国と地方の合計で五千億円以上の財源が必要となりますので、総合的に丁寧に検討していく必要があるかなといったところで答弁をしたところでございます。

○委員長(太田房江君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(太田房江君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

もう一度お答えくださいますか。

○大臣政務官(元榮太一郎君)

もう一度御答弁申し上げます。

先ほど御答弁しましたとおり、国と地方の合計では五千億円以上の財源が必要となりまして、これが毎年度確保することとなりますと歳出の増加につながりますので、そういった意味では、将来の子供たち世代に財政負担が生じる可能性があるということで申し上げました。

いずれにいたしましても、効果を検証しながら慎重に検討していきたいというふうに考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

納得いく御回答ではありませんが、次に進めます。

財務省さんは、少人数学級を進めることにも公的教育支出を増やすことも消極的なようです。しかし、専門家の方々からも、少人数学級の必要性を強調している声は多くあります。鳴門教育大学大学院の藤村裕一遠隔教育プログラム推進室長は、個性を伸ばし発揮させるためには一学級二十五人から三十人は絶対的な条件とも指摘されています。文科省が進めようとしているICT教育との関連を考えても、少人数学級の進展が必要です。

ICTを使った授業は、今までの講義式一斉授業に比べ個別指導の割合が高まると見込まれます。萩生田大臣は、衆議院の文部科学委員会における答弁で、私としては、一人一人に応じたきめ細やかな指導は小学校のみならず中学校においてもその必要は変わりがないと認識しております、この少人数のトレンドというものを続けていく必要があるのではないか、こう認識しておりますし、引き続き努力をすることをお約束したいと思いますと答弁されています。三十五人学級は到達目標ではないと思います。私としましては、少なくとも一学級の平均人数がOECD平均並みの二十五人以下になるような学級編制にしていただきたいと考えております。

今後、文部科学省として三十五人から更なる少人数学級化を展望しているのでしょうか。もしビジョンにあるのなら、どのくらいの期間での実現を考えているのでしょうか。大臣の御見解をお聞かせください。

○国務大臣(萩生田光一君)

一人一人に応じたきめ細かな指導は、小学校のみならず中学校においてもその必要性に変わりはないと認識しております。

今回の小学校の三十五人学級は、ゴールではなく、まさしくスタートです。これから、先ほど財務省からも答弁ありましたけど、義務標準の引下げを進める中で学力の育成やその他の教育活動に与える影響、外部人材の活用の効果など実証的な研究を行い、これらの検証などを行った上で、その結果を踏まえ、学校の望ましい指導体制の在り方について引き続き検討を進めてまいりたいと思います。

私としては、まずは、スタートした三十五人学級を中学校まできちんと進めた上で、引き続き、当初皆さんに公言していた三十人という目標を更に追求していくことが望ましいのではないか、期間をと言われましても、これはなかなか難しいものですけど、まずは目の前にある小学校の三十五人をきちんと完成させたい、こう思っているところでございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

次に、インクルーシブ教育と少人数学級の関連についてお尋ねいたします。

私は、障害のある子もない子も共に学び、育つことが重要だと考え、インクルーシブ教育の実現を訴えています。また、障害だけでなく、外国籍の子供や様々な文化、社会的背景を持った多様な子供たちが同じ教室の中で学ぶ、誰も排除しないインクルーシブ教育を進める上で、少人数学級は重要だと考えております。

こうした中、通常学級で少人数学級化が進まないことがインクルーシブ教育を阻害しているのではないかという問題提起もあります。つまり、少人数学級化が進まないために、通常学級から障害、言語などにニーズを有する子供が排除されているということです。こうした意見を踏まえると、インクルーシブ教育を進める上でも少人数学級が必要だと感じております。

本委員会で参考人として招致した名古屋大学名誉教授の中嶋哲彦先生からも、インクルーシブ教育はどういう社会をつくるかというので本当に必要なことです、その際に、クラスサイズが小さくなるというのは、やっぱり子供同士の接点を増やしていったりとか、それから先生の目が行き届くようにするという意味でとっても大事なことですという御意見をいただいております。

誰も排除しないインクルーシブ教育を進める上でも、少人数学級の進展が必要だと考えます。こうした点について、大臣の御見解をお聞かせください。

○国務大臣(萩生田光一君)

まず、地域の小学校の通常の学級にも発達障害などの障害のある子供たちが在籍をしており、障害の特性などに応じ必要な支援を受けながら学んでいます。

三十五人学級が実現することにより、こうした子供たちに対してもよりきめの細かい支援を行うことが可能となることから、今回の少人数学級は、先生御指摘のとおり、特別支援教育の観点からも大変意義深いことであると考えております。

文科省においては、これまでも、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられるよう、子供の学習活動上のサポートなどを行う特別支援教育支援員の配置促進、特別支援教育に関する教職員の資質向上、通級による指導のための教員の定数の配置措置等の条件整備に取り組んできたところであり、今後、今回の三十五人学級の実現と併せて、より一層障害のある子供たちへの支援を充実を努めてまいりたいと思っています。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

続いて、ICT活用の教育についてお尋ねいたします。

ICT教育を進める上では、子供たちにとって分かりやすく魅力のある内容、使い方になっているかを考えることが言うまでもなく重要です。今の子供たちは、幼児の頃からスマホやタブレットに親しんでいる子も少なくありません。大人たち以上にデジタル機器に熟知している子供が、子供たちが多いことを踏まえると、子供たちの目線で授業の内容が魅力あるものになっているのか、内容が面白いかなどが検証されるべきではないでしょうか。

熊本市や広島県では、児童や生徒に対し、オンライン授業におけるICT活用などについてのアンケート調査を行っています。その中には、好意的な反応も多かった一方、質問がしにくかった、オンラインで長い時間授業を受けるのは疲れたなどの意見、また学習の時間が減ったなどの声も出ています。民間調査研究会社などが中学生に行った調査によると、学習塾のオンライン授業に比べ、学校のオンライン授業は満足度が低かったとの結果もあります。

こうしたことを踏まえ、ICTによる授業、オンライン授業がどのように行われているのか、子供たちにとって意義ある内容になっているのか、子供の目線で点検されるような調査を国の責任ですべきではありませんでしょうか。この点について御見解をお聞かせください。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答えを申し上げます。

ICTはこれからの学校教育を支える基盤的なツールであり、特にこれらを活用して行われる遠隔オンライン教育は、緊急時における子供たちの学びを保障することはもとより、日常的な学びの場面においても、ICTを利用して空間的、時間的制約を緩和することによって、他の学校、地域や海外との交流なども含め、今までできなかった学習活動を行うことが可能となります。

文部科学省が実施した平成三十一年の全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査においては、授業でもっとコンピューターなどのICTを活用したいと思いますかとの質問に肯定的に回答した児童生徒の割合は八割程度と把握しております。また、昨年六月に実施した臨時休業期間中の学習指導の状況に関する調査では、同時双方向型のオンライン学習指導を通じた家庭学習を実施する設置者の割合が一五%と把握しているところであります。

文部科学省としては、遠隔オンライン教育も含めたICTのより効果的な活用が図られるように、子供たちの視点も含めたICTの活用に関する調査等を行うことによりまして、今後とも、学校現場における利用状況等を適切に把握しながら、学習指導の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

次に、ICTを使った授業の在り方についてお尋ねします。

先ほども少し触れましたが、少人数学級との関連で考えても、従来の講義式一斉授業に比べ、個別指導の割合が増えることが見込まれます。そうした中、今までの授業とは異なるアプローチが必要になると見込まれます。端末を配れば終わりではなく、配った端末をどのように使うかが問われています。現場任せにしてしまっては教職員の方々の負担は増すばかりです。

文部科学省としても、全国の教育委員会、学校を支援するためのGIGAStuDX推進チームをつくり、好事例の横展開などに取り組んでいるともお聞きしておりますが、せっかくの機器が無用の長物にならないための実践を探る方策をどのようにお考えでしょうか、御見解をお聞かせください。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答えを申し上げます。

GIGAスクール構想の実現に当たっては、教師がICTを活用しながら、児童生徒の個別最適な学びと協働的な学びを実現していくことが重要です。

このため、文部科学省では、教師がICTを活用して指導する力を身に付けられるようにすることや、その支援を行うため、教育の情報化に関する手引の作成、公表や、昨年九月からは順次各教科等の指導におきますICTの効果的な活用に関する参考資料、さらには解説動画を公表するなどの取組を進めているところです。さらに、昨年末に立ち上げました、委員からも御紹介ございましたGIGAStuDX推進チームの特設ホームページ上で、学校でのICTの日常的な活用イメージを具体的に持てるよう、優れた活用事例等を全国の学校現場に向けて情報発信をしております。

具体的には、例えば、子供たちが一人一台端末を通じて自分の意見などを入力し、それをクラウド上のホワイトボードでクラス全員で共有し、コメントし合い、議論を深めている事例や、小学校のプログラミング学習において、中学校の技術科教員とビデオ会議システムでつなぎ、中学校教員が一斉指導、同時に小学校教員が個別支援を行うことでオンラインでの小中連携を図り、子供たちの学びを深めている事例など、ICTを有効に活用した事例を御紹介をさせていただいているところでございます。

文部科学省としては、GIGAスクール構想の実現に向け、学校現場において円滑にICTを活用できるよう、引き続き、優れた活用事例の更なる充実などを積極的に推進をしてまいりたいと考えております。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

続いて、ICT機器の扱いについてお尋ねします。

一人一台端末を配備するのはよいとして、その後のアフターケアについての心配の声も寄せられています。例えば、バッテリーの交換、五年後の端末更新時の負担などです。配備して終わりでは意味がありません。更新などの諸費用が個人負担に向かないように、あらかじめルールを作っておくべきだと考えますが、この点について御見解をお聞かせください。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答えを申し上げます。

文部科学省では、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを実現するため、GIGAスクール構想の実現に向けて取り組んでおり、当初四年間での整備予定を、昨年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて計画を大幅に前倒しをし、本年度内での整備完了を目指して、一人一台端末と高速大容量の校内通信ネットワークの環境整備を加速させてきました。

そして、現在、来月四月から、もう間近でございますが、GIGAスクール元年が開始するに当たり、文部科学省として、各教科等の指導におけるICTの効果的な活用に関する参考資料や解説動画の作成、提供、さらには一人一台端末の活用に関する優良事例や本格始動に向けた対応事例等の全国の教育委員会や学校の参考となる情報の収集や発信、共有など、学校に整備されたICTの積極的な利活用の促進に向けて全力で取り組んでいるところであります。

こうした取組を進めつつ、今後のICT端末の更新等に際して費用負担等の在り方については、関係省庁や地方自治体等と協議をしながら検討してまいりますが、まずは、その検討のためにも、令和の時代のスタンダードとして学校における一人一台のICT活用が当たり前である社会をつくり上げていくということが前提だと考えております。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

是非、少人数学級を進めていくとともに、公的教育支出を増やし、インクルーシブ教育を実現していただきたいとお願い申し上げ、質問を終わります。