2021年4月15日 参議院文教科学委員会質疑(文化財保護法改正案について質問)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。

本日は文化財保護法改正案についての審議ですが、初めに一言申し上げたく存じます。

私は、昨年十一月の本委員会で、聴覚障害のある学生が教育実習中に受けた差別的な指導について質問をいたしました。その後、文科省は一、二月、障害のある学生の教育実習の実施状況についての実態調査を実施されました。この調査を踏まえて四月、大学と都道府県、指定都市教育委員会に対して、障害のある学生が教育実習に参加する際の支援についてとする通知を出されました。

障害のある学生が差別されずに教育実習を受けられるようにするための改善の一歩だと感じております。この場をお借りしまして、迅速に御対応いただいた関係者の皆様に心から感謝申し上げます。あわせて、この問題について引き続き取り組んでいただき、障害のある学生が安心して教育実習に取り組める環境整備を進めていただくようお願い申し上げます。

それでは、文化財保護法の一部改正法案についての質問に移ります。

代読いたします。

今回の法案では、国の無形文化財、無形民俗文化財、地方の文化財に新しく登録制度を設けることを主眼としております。文部科学省は、新しい制度創設の背景として、新型コロナウイルスの影響によって保存、継承活動に深刻な影響が生じていることなどを挙げておられます。

そこで、まず土台となる文化財予算についてお尋ねいたします。

国内にある多様な文化財のためには、担い手を守るためにも国による大胆な支出が必要です。しかし、各国の文化財関係予算について、国会図書館のまとめによると、国によってまとめた年度が異なるため、一概には言えませんが、フランスの千百六十七億円、ドイツの六百六億円、イタリアの八百十七億円、隣国の韓国の一千億円に比べ、日本は二〇二一年度予算で四百六十億円にとどまっています。二〇一二年度の四百三十二億円に比べて増加はしているものの、二〇年度と比較すると減少しております。

日本の文化財を守るためには、大胆な予算拡充が必要ではないかと考えます。この点について御見解をお聞かせください。

○副大臣(高橋ひなこ君)

御質問ありがとうございます。

文化財の保護政策については、御指摘のように、各国それぞれの特色があり、一概に比べることは困難ですが、文化財の確実な継承に向けた保存、活用を推進するため必要となる予算の確保は大変重要であると認識しています。

令和三年度の文化財予算としては、文化財の修理や防災対策、修理技術者等の育成、地域の文化資源の継承、磨き上げの支援による地域活性化などを図るため、およそ四百六十億円を計上しています。

今後も、文化財の確実な継承に必要な予算を確保するよう、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。専門的人材の育成、配置につながるよう、予算拡充を是非お願いいたします。

続いて、今回の法改正に関連して実施される文化庁長官調査についてお尋ねいたします。

この調査は、現在の文化財保護法の体系では十分保護措置がとられていない分野、文化、例えば生活文化や現代アートやファッションなども調査の対象とし、将来的には登録文化財の対象になる可能性もあるとされています。しかし、学問的な研究の蓄積があるものとは異なり、どのようなものを対象にするのかについては検討が難しいのではないでしょうか。

こうした新しい文化財となり得るものをどういう基準で対象と判断するのか、この点についてお答えください。

○政府参考人(矢野和彦君)

お尋ねの文化財、文化庁長官調査は、地域に眠る現時点では価値付けが定まっていない分野や学術的な蓄積が十分でない文化的所産について、文化財としての価値を調査する予算事業でございます。

令和二年度は、生活文化調査研究事業といたしまして、書道、茶道、華道の詳細調査を実施し、各分野の成立や変遷等の歴史、無形の文化遺産として次世代に継承すべき要素等について調査結果を取りまとめたところでございまして、令和三年度は、無形の文化的所産調査、食に関する習俗や技術の実態調査、生活文化の調査を行うことを予定しております。

令和四年度も、引き続き、時宜に応じて必要な分野の調査を進めていきたいと考えておりますが、その対象の選定に当たっては、文化審議会の専門的な意見も聞きながら検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

御指摘のございました現代アート等につきましても調査の対象となると認識しておりますけれども、文化財として登録するためには、一番重要なところは学術的な調査の蓄積でございます。その蓄積に基づいて、さらに、登録基準に従って文化審議会における専門的、学術的な審議を経る必要があると、そこでしっかりと議論していきたいというふうに考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

関連して質問いたします。

先ほど申し上げた調査に当たっては、特定の団体や個人が利益を生まないような仕組みになることが必要だと考えます。人々の生活文化から生まれた慣習などを国が価値付けることにより、政治利用などにつながることも懸念しています。どのようなものを対象とするのか、事実と根拠が必要だと考えております。

国が取り組む以上、偏りのない多様な観点からの準備が必要です。この点についてどのようにお考えでしょうか。御見解をお聞かせください。

○政府参考人(矢野和彦君)

文化財保護を行うに当たって、特定の団体や個人が利益を得ることを目的とした運用がなされてはならないというふうに考えております。

登録に当たっては、先ほども申し上げましたとおり、文化審議会に諮問し、我が国の文化資源の保存、活用という観点から専門的見地に立って御審議いただき、調査研究の結果を踏まえて審議会答申を経て登録を決めていただくということとしたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

重ねて、特定の団体や個人が利益を得るような仕組みにならないよう検証をしていただきたく、お願い申し上げます。

続いて、新設する無形文化財、無形民俗文化財の登録制度についてお尋ねいたします。

初年度は五件、予算規模は九百万円想定とお聞きしております。新しい制度をつくるのであれば、それに応じた人的資源の確保は欠かせません。現在、国の指定、登録について調査する専門的な調査官は、民俗文化部門で三人、芸能部門で三人、工芸技術部門で三人、食文化部門で二人とお聞きしています。今回、登録制度を創設するに当たって、現時点では人手は増えないとお聞きしております。人は増やさないのに仕事量が増えるということはいささか問題があるように思います。

質の高い調査を行うためにも、専門人材の拡充は欠かせないのではないでしょうか。専門的知見のある職員を増やすべきだと考えます。この点について、大臣の御見解をお聞かせください。

○政府参考人(矢野和彦君)

国の登録制度を円滑に推進していくためには、御指摘のとおり、専門的な知識を有する職員等を充実させる必要があると認識しており、昨年度、食文化の調査官を二名新しく配置したところでございます。また、これまで、常勤職員のほか、専門的な知識を有する者の力を借りるという観点から非常勤調査員の委嘱を行っておりまして、例えば芸能七人、工芸技術六人など、令和二年度で総計七十七人の非常勤の委嘱を行っております。

こういった制度の活用も含めて、必要な体制の確保に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

引き続き、登録制度についてお尋ねします。

登録制度によって、保持者には届出義務や計画の策定、認定など保存、継承に関する義務が課されることになります。この際、保存、活用について負担が増えないようにしなくてはならないと考えます。

本法案によれば、登録した文化財について、国は公開、保存に関する経費を補助できるとしています。この制度によって、地域や担い手の負担が増えてしまってはならないと感じます。負担を増やさないため、国の責任で支援をしていかなくてはならないと考えますが、制度設計はどのように考えているのでしょうか。御見解をお聞かせください。

○政府参考人(矢野和彦君)

御指摘のとおり、事務作業を必要以上に増やさないということは非常に重要だというふうに考えておりまして、届出義務が課されるなど一定の事務作業はあるものの、無形文化財については、有形文化財の場合と比べ、届出を行う義務は少なく、必要最小限のものとしているところでございます。

最近では、国への申請書類に対する押印を政府全体の方針として廃止してきたところでございまして、今後も申請者の負担にならない取組を推進していきたいと考えております。

また、予算についてのお尋ねでございますが、公開、保存に関する経費の補助といたしまして、記録の作成、伝承活動、普及、広報等のための費用を補助するということとしておりまして、一件当たり百五十万円から二百万円程度を想定しておりますけれども、今後、登録の数が増すにつれて、是非拡充してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

続いて、今回の法案提出の契機となっている新型コロナの影響について質問いたします。

文化審議会文化財分科会企画調査会の報告書、参考資料によれば、昨年十二月時点で伝統芸能関連行事が約四千件中止になったそうです。しかし、お祭りなど無形民俗文化財に当てはまるものについては、現時点で文化庁として調査を行っていないとお聞きしています。新聞報道などでは、地方の貴重な行事が縮小、中止に追い込まれているとの話も聞いております。

地方のお祭りなどについては、高齢化や人口移動などにより、コロナ以前から維持、継承への懸念があったとも考えられます。そうすると、コロナによって問題が顕在化しただけとも言えます。もっと早く手を打つべきだったのではないでしょうか。

そこで、大臣にお尋ねします。

伝統芸能や生活文化だけでなく、無形民俗文化財に関してもコロナによる影響の実態調査を行い、登録制度の活用、継承、保存活動の基盤とするべきではないでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

無形の民俗文化財について、文化財保護法に基づき指定等を行っているものについては、都道府県等を通じて新型コロナウイルス感染拡大の影響による行事の実施状況や伝承状況を確認をしています。

また、令和三年度予算に計上している調査事業では、現時点では価値付けが定まっていない無形の文化的所産について調査をしていく予定であり、その中で新型コロナウイルスの影響を受けた現在の伝承状況などを確認していきたいと考えております。

今後、この法案成立した後に、今先生の問題提起については、これは、さすがに日本中の祭礼を全部調査するというと、かなりの時間と費用と、また手間も掛かるので、果たしてそこまでできるかどうか分かりませんけれど、コロナの影響でそういったお祭りが中止になっているのは事実だと思いますので、その辺については少し落ち着いて調査をしてみたいなと思っております。

○委員長(太田房江君)

おまとめください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

最後になりますが、文化を守るためには、何よりも人を守り育てなければなりません。人材のための支出を惜しまずしていただくことをお願い申し上げ、質問を終わります。