2021年4月27日 参議院文教科学委員会質疑(一般質疑=医療的ケア児支援/オンライン講義における障害学生への合理的配慮/デジタル教科書)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日の一般質問では、大学などのオンライン授業における障害のある学生への合理的配慮について、大臣所信に対する質問で、質問通告しながら、時間がなく残ってしまった質問も含めてお伺いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

代読いたします。

まず、学校における医療的ケアの提供体制の充実についてお伺いいたします。

文科省は、医療的ケアの看護師配置を毎年拡充し、今年度は前年度比三百人プラスの二千四百人分の予算を付けています。

この点について、一人当たりの時給単価をどの程度と見込んでいるのでしょうか、教えてください。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答え申し上げます。

各自治体が行う医療的ケアのための学校への看護師配置を支援するため、国においては切れ目ない支援体制整備充実事業を実施をしているところでございますが、この事業におきましてはですけれども、厚生労働省の令和二年度賃金構造基本統計調査を踏まえまして、看護師の時給単価を千八百円として予算を積算をさせていただいているところでございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

次に、その看護師配置の予算の拡充について質問いたします。その前提として、現状も説明いたします。

看護師等の学校配置は、具体的には、自治体が要項を作って運用しています。各自治体での看護師募集要項を見ますと、有期雇用である会計年度任用職員の扱いで、非常勤看護師、学校看護師などの名称で各自治体のホームページ、ハローワーク等で公募しているところが多いようです。勤務条件としては、自治体のホームページなどを調べた範囲で、一番安い長野市の時給千七十円から一番高い大阪市の千九百十四円、交通費、期末手当が支給されるところとされないところとでかなり差がありました。

また、この時給ではなかなか看護師が集まらなく、派遣会社から看護師の派遣を受けている自治体、訪問看護ステーションからの派遣を特別に契約している自治体もあり、この場合は時給二千円から三千円くらいになっているようです。

訪問看護を学校へ長時間派遣できるよう、特別に訪問看護ステーションと契約している市もあります。しかし、その市の場合、自治体の財政事情や訪看ステーションを運営する事業者の考えから、事業者が本来得られるはずの収入を半額ほどに抑えた契約になっているそうです。そうでもしないと担い手が見付からないからです。

ほかにも、宿泊を伴う校外学習などでは通常の学校看護師だけでは対応できないため、派遣会社と契約しているケースもあります。保護者によりますと、子育て世代の看護師にとっては、夜勤がなく、勤務時間が一定で、子供が夏休みのとき一緒に休める学校勤務は都合が良いそうです。また、保護者にとっても、看護師の勤務に穴が空いた場合も代替を用意してもらえるので、ウイン・ウインの関係とのことです。また、常時、長期にわたる勤務は難しいので、校外学習などのスポット派遣だけを専門にしている看護師さんもいらっしゃるそうです。

現在、コロナ感染拡大で、医療現場の看護師不足は大変深刻です。しかし、子育て世代の潜在看護師の中には、フレキシブルに働ける環境であれば資格を生かして都合のいい時期に都合のいい時間帯で働きたいと思っている方も多く、学校配置の看護師はちょうどいい働き方とも言えます。しかし、自治体の直接募集にせよ、派遣会社からの派遣、訪看ステーションからの訪問にせよ、賃金の安さがネックになって、質が伴わない、あるいは看護師がなかなか見付からないというのは、医療的ケアの必要なお子さんが安心して学校生活を送るためには憂慮すべき状況です。学校に配置される支援員や看護師など非常勤スタッフの勤務条件、採用形態、募集方法などは設置者に任されていますが、その基盤整備として人件費の下支えは必要です。

コロナ禍により、社会における看護職へのニーズはより明確になってきました。派遣会社や訪問看護を利用する場合、国の補助事業の一時間千八百円では到底足りません。文科省は、少なくとも一八年度から三年連続で自治体のニーズが予算額を上回ったと説明を受けました。昨年度は自治体からの申請額のおよそ七割しか補助できなかったそうです。看護師配置に要した額に対し、本来は国の補助率が三分の一で約三三%なのに、昨年度の場合は二三%しか補填されないことになり、自治体の持ち出しが増え、予算規模の小さな自治体では負担が大きくなります。

文科省が出した学校における医療的ケアの今後の対応についての通知にのっとり、なるべく親の付添いをなくそうと、各自治体でも学校に看護師等を配置するべく努力されていることは理解しております。その自治体の努力に報いるためにも、大臣、看護師配置の予算の拡充をお願いできませんでしょうか、御見解をお願いいたします。

○国務大臣(萩生田光一君)

学校における看護師の配置については、医療的ケアを必要とする児童生徒等の状況を踏まえて自治体等が適切に配置するものであり、文部科学省においては、自治体等の取組を支援するため、学校における医療的ケアのための看護師配置に係る補助を行っているところです。

この国の補助事業については、自治体からの申請状況等を踏まえ、予算の拡充に努めてきているところですが、なお自治体から予算額を上回る申請をいただいているところでありまして、今先生御披露いただいたとおりでございます。

当該事業については、令和四年度概算要求における重要な検討課題と認識しておりますので、引き続き検討を行ってまいりたいと思います。

○委員長(太田房江君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(太田房江君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

それでは、大臣、私と一緒に財務省に参りませんか。謹んでお願いいたします。

○国務大臣(萩生田光一君)

確かに、年度当初のニーズに応えるだけの予算を確保できなかったという事実もある一方、先生も御披露いただいたように、やっぱり自治体ごとのミスマッチもあるんだと思います。長野市と大阪市の例を出していただきましたけど、例えば時給の安い長野市では確保ができて、逆に時給の高い大阪市ではそれでも足りないという状況がございますので、地域性も含めてここはいろいろ知恵を出していかなきゃいけないと思います。

財務省に先生が一緒に行っていただける、そういう機会があるとすれば、心強いと思っております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

私たちれいわ新選組は、新型コロナ感染対策の最前線で働く医療職、看護職の、介護職などの方々個人へ危険手当を支給することも政府に求めています。こうした政策へも是非御理解いただきたく存じます。

次の質問に移ります。

三月十六日の委員会でも質問をさせていただきましたが、オンライン授業における障害のある学生への合理的配慮提供の体制整備についてお尋ねいたします。

新学期に向け、昨年は一年間オンラインだけだった大学でも、対面授業とオンライン授業との併用を準備しています。しかし、三月、年度末を迎える頃から新型コロナの感染が急速に拡大しています。二十五日には、東京、大阪、京都、兵庫に緊急事態宣言が出され、今後も大学におけるオンライン授業が広がる可能性があります。

障害当事者が中心となって活動している全国障害学生支援センターによる新型コロナウイルス感染症に伴う障害学生に関するアンケートの中間報告によりますと、アンケート調査のその他の自由記述欄には、どこに相談したらいいか分からない、合理的配慮に関する相談窓口はあるが、電話相談しか受け付けておらず、メール、ズームなどほかの手段も検討してほしい、支援員、教員に相談しにくいので、アポイント、アポなしで定期的に会って相談できる時間を設けてほしいという声が上がっており、障害学生への相談体制に課題があることがうかがえます。

通常の障害学生支援の体制において、各大学で大きな差があります。同センターが出している大学案内二〇二一障害者版によりますと、全国八百十一の大学、大学校において、障害学生支援室等、専門の相談窓口を設け、専任のコーディネーターを置いている大学があります。しかし、大半は一般学生の相談窓口と一緒で、専任担当者がいない状況です。相談窓口なしと回答している大学も数校あります。これでは、個々の障害特性に合った相談や合理的配慮事例の蓄積ができず、急なオンライン授業への配慮には対応できません。

日頃から、障害学生に対する専門の支援員、専門の支援室の充実強化が望まれます。そのために、大学への支援が必要です。この点について、大臣の御見解をお聞かせください。

○国務大臣(萩生田光一君)

障害の有無にかかわらず、全ての学生がその意欲と能力に応じて大学等において学ぶ機会の確保やそのための環境整備を進めていくことは極めて重要と考えています。

日本学生支援機構の調査によりますと、障害学生支援担当部署を設置しているのは全大学等の九六%、専門の部署を設置しているのは全大学等の二二%ですが、文科省では、支援に当たっての基本的な考え方や合理的配慮の決定手順等を取りまとめ各大学等に周知しているほか、日本学生支援機構において、合理的配慮ハンドブックの作成、支援事例の収集、発信、研修会等を実施し、担当者の専門的知識の習得や実践的能力の向上を図っております。

また、各大学等は、国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金などの基盤的経費を活用しながら障害学生支援策を実施しているところであり、引き続きこれらの予算の確保に努めてまいります。

あわせて、バリアフリー化を推進するための施設整備や障害のある学生の学習支援に資する設備整備に対する支援を行っているところです。

さらに、大学等の支援体制の強化を図るため、先進的な取組を行っている大学を中核として、大学等からの相談への対応や、大学間、担当者間の連携等を推進する事業への支援を行っているところです。

各大学等において、相談窓口の周知や確実に対応できる体制の整備など、障害のある学生の目線に立った支援体制の充実を図ることが重要であるため、文部科学省としては、大学間連携等によるノウハウや事例の共有、担当者への研修などを通じ、引き続き、各大学等における取組の充実を促してまいりたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

次に、デジタル教科書の導入についてお尋ねします。

三月十七日、デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議が中間提言を公表しました。ICT活用の授業転換の一環として、二〇二四年度のデジタル教科書本格導入を目指すとしています。その中には、紙の教科書を全てデジタル教科書に置き換えるという意見もありました。

昨日、有識者会議の中間提言について、文科省はパブリックコメントの結果を公表しました。それによりますと、賛否両論、慎重論が目立っております。肝腎のデジタル教科書のコンテンツを提供する教科書会社からも様々な懸念が寄せられています。例えば、デジタル教科書のコンテンツに対する検定はどうするか、定価の設定方法などです。デジタル教科書導入自体はデジタル社会に向けての大きな流れの必然であり、止められないでしょう。しかし、学校教育における大きな転換点であるデジタル教科書導入に向け、文科省がどのような制度設計をしていくのか、極めて重要です。

今年度、文科省は、学習用デジタル教科書普及促進事業として、学びの保障・充実のための学習用デジタル教科書実証事業やクラウド配信に関するプラットフォームの実行可能性の検証を始めています。教科書製作会社、現場の教職員、保護者、そして何より子供たちの声、子供たちからの意見をきちんと反映して、デジタル教科書の可能性、利便性を引き出す仕組みにするため、懸念点をどう検証していくのか、大臣の御見解をお聞かせください。

○国務大臣(萩生田光一君)

デジタル教科書の今後の在り方については、三月に取りまとめられた有識者会議の中間まとめにおいても、全国的な実証研究を行いつつ検討をすることが必要であるとされています。

そのため、今年度、小中学校等にデジタル教科書を広く提供し、学校現場における普及促進を図るほか、その使用による教育上の効果や健康面への影響を含めた実証研究を行うこととしております。併せて、デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティー検証も行うこととしています。また、端末や通信環境の整備については、GIGAスクール構想において一人一台端末や通信ネットワークを一体的に整備してきたほか、家庭での使用に際して低所得世帯への通信費支援策を行っています。

デジタル教科書の本格的な導入については、次の小学校用教科書の改訂が行われる令和六年度が一つのタイミングだと考えていますが、紙の教科書が、長年にわたり学校教育の基盤を支え使用されてきたことや、一覧性に優れているなどの利点があることも考慮しながら、丁寧に実証研究等の取組を進める必要があると考えています。

今後のデジタル教科書の在り方については、実証研究の成果を踏まえつつ、引き続き有識者会議において制度面も含め御議論いただき、子供たちの学びが充実するよう、丁寧にスモールステップで進めてまいりたいと考えているところです。

○委員長(太田房江君)

簡潔にお願いいたします。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

デジタル教科書は、江戸時代の藩校、寺子屋以来の何世紀にもわたる日本の学校における学びの姿を変える大転換です。是非、慎重な検討をいただきたいと存じます。

これで質問を終わります。