2021年5月21日 重度障害者の在宅介護職員(ヘルパー)に対する新型コロナウィルス感染症ワクチンの優先接種及びPCR検査の定期検査化等を求める緊急要望書の提出

難病患者支援団体の方から、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の在宅障害者と同居の配偶者に感染者(PCR陽性者)が発生したとの知らせを受けました。同じ病と生きる舩後にとっても重大な事態ととらえ、厚生労働大臣あての緊急要望書を提出いたしました。

詳細は以下をご参照ください。

2021年5月21日

厚生労働大臣
田村憲久 殿

参議院議員(ALS患者) 舩後靖彦

重度障害者の在宅介護職員(ヘルパー)に対する新型コロナウィルス感染症ワクチンの優先接種及びPCR検査の定期検査化等を求める緊急要望書

日頃より新型コロナウィルス感染症(以下:コロナ)の感染拡大防止・終息に向けてご尽力いただき、誠にありがとうございます。

昨年から続くコロナ感染拡大において、入所施設やグループホームなどでのクラスターが発生しています。そして、最近、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の在宅障害者と同居の配偶者に感染者(PCR陽性者)が発生しました。重度訪問介護サービスで介助にあたっていたヘルパーの一人が感染源でした。そのヘルパーはPCR検査で陽性判定でしたが、他に代われるヘルパーが見つからず(もともと訪問系介護サービスの人手不足に加え、ALSなどの意思疎通支援が必要な利用者には、慣れている者しか代替えが利かないという課題があります)、本人も症状がないことから、「マスクをしていれば大丈夫」との判断で介助を継続してしまったそうです。

常時介護を必要とする重度障害者の長年の要望により、2018年から障害支援区分6の重度訪問介護サービス利用者は、入院中の介護利用が可能になっておりますが、コロナ禍においてはそれも厳しい状況になっています。自分の意志で体が動かせず、声を出して指示することができないALS患者にとって、微妙な体位の調整や意思疎通支援には慣れているヘルパーが不可欠であり、慣れない看護師の介護では体調維持が難しく、長期間の入院・治療に耐えることができません。

今回のケースの問題点として、ヘルパー及び事業者の誤った認識は確かにありますが、他方、重度障害者・児の在宅生活を支えるヘルパーの深刻な人材不足と、重度障害者・児に対応可能な医療機関の不足という側面が根底にあります。この二つの根本的な課題の早期改善を図る施策は必要ですが、まずはこのコロナ禍を生き抜くために、緊急に以下のことを要望いたします。

1、国としてワクチン接種の優先順位を見直し、重度障害者・児のヘルパーへの早期接種の方策を講じてください。例えば「常勤の介護者」、「医療的ケアを行う介護者」、「医療的ケアを必要とする在宅 の障害者・児」の優先順位を医療従事者と同等とするなど。

2、介護事業所職員の集中的・定期的PCR検査を定期的に実施し、定期実施への国としての補助をお願いいたします。

3、介護事業所に対する感染防止策の周知徹底をお願いいたします。

PCR検査陽性で在宅療養となった障害者・児の介護に従事する際、「マスクの着用」、「手指消毒」、「3密回避」及び「部屋のゾーニング」、「 PPE の着脱方法」等の周知徹底を図り、陽性判定が出た介護者が「マスクをしていれば介護を行っても大丈夫」という誤った認識が生じないよう、改めて国からも介護事業所に対し、感染防止策の周知徹底を求めます。

4、コロナで入院した重度訪問介護サービス利用者について、症状によって可能であれば、コロナ病棟専属看護師同様の感染対策を取ったうえで、慣れたヘルパーの介護を可能とする方策のご検討をお願いいたします。

以上