2021年5月27日 参議院文教科学委員会質疑(教職員による児童生徒性暴力防止法案について質疑、付帯決議)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。

この度、超党派の先生方による高い問題意識の下、教職員による児童生徒への性暴力を防ぐための法律案が提出されました。

児童生徒に対する性暴力被害は非常に深刻であり、取り返しが付きません。信頼する大人に裏切られ、身体的にも精神的にも、子供の頃に受けた被害はその後もずっと続きます。子供に対する性被害を防ぐための施策は一刻の猶予も許されない状況だと考えております。

御尽力された先生方に敬意を表し、被害を防ぐため、被害を受けた方々を支える、共に考えるための課題について、これから質問させていただきます。

代読いたします。

まず、被害を受けた児童生徒への相談体制についてお尋ねします。

被害を受けた児童生徒への支援体制充実が欠かせません。暴力被害の中でも、性被害の支援は専門的知見が特に必要です。法案の十七条では、国と地方自治体に対して、通報、相談体制整備のための措置を義務付けています。二十条では、被害児童生徒、保護者に対する継続的な支援も明記しています。

こうしたことを実現するためには、専門的な窓口設置や人員体制のための予算措置が必要となります。特に、自ら被害を訴えることが難しい障害のある児童生徒の場合、よりきめ細やかな体制が必要不可欠になると考えます。

今後、どのような体制整備が必要と考えますでしょうか。発議者の先生方の御見解をお聞かせください。

○衆議院議員(浮島智子君)

お答え申し上げます。

御指摘のとおり、被害を受けた児童生徒の支援体制、これは極めて重要なことであります。

本法律案では、第十一条で、国、地方公共団体共に財政上の措置その他の必要な措置を講ずるとありまして、十分な予算措置が講ぜられることを提案者としてはしっかりと求めてまいります。また、本法律案では、基本理念を定める第四条第三項で、被害を受けた児童生徒等を適切かつ迅速に保護することを定めておりまして、第十九条の一項で、児童生徒等の人権及び特性に配慮することも定めております。

また、障害のある児童生徒へのよりきめ細やかな体制をしっかりと整備することを求めてまいります。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

今先生から、障害のある児童生徒へのきめ細やかな体制整備を求めたいとの御意見がありました。この点について、大臣の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

相談体制の整備や被害児童生徒等への支援については、これまでも文科省から各教育委員会に対して、被害児童生徒の相談体制整備やスクールカウンセラーなど専門家等による適切な支援を行うことを求めてきたところです。

特に、障害のある児童生徒については、例えば、知的障害等により性暴力として認識しづらいため問題が潜在化しやすいと言われており、児童生徒等や保護者から相談が寄せられていなくても、児童生徒等が気になる行動をしている場合には個別相談を行うなど、障害の特性に応じたよりきめ細やかな支援が必要と考えております。

本法案が成立した暁には、法案の趣旨や各規定等を十分踏まえつつ、通報、相談窓口の設置や児童生徒のケアなどを関係府省や教育委員会等と連携しながら、被害を受けた児童生徒等を守るために必要な取組を進めてまいりたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

次に、本法案の重要なポイントである再免許授与特例の関連についてお尋ねします。

法案では、都道府県教育委員会がわいせつ行為で免許を失効した者に再び免許を授与する際、教育職員免許状再授与審査会の意見を聞かねばならないとしています。

しかし、この審査会の事務は都道府県教育委員会に置かれます。そうしますと、審査会のメンバーなどの人選も教育委員会が行う可能性があります。児童生徒の性暴力被害に詳しい専門家からは、教育委員会は身内をかばう体質があるとの指摘もあります。身内をかばわないよう、中立性を持って判断される仕組みが必要だと考えます。適正な判断を行うためにも、教育委員会とは切り離した組織にすべきではないでしょうか。

この点について御見解をお聞かせください。

○衆議院議員(牧義夫君)

御指摘のとおり、免許状の再授与の審査については、その中立性がきちっと担保されなければならないことは共有させていただきたいと思いますが、ただ、この審査に当たってのその諮問機関を都道府県教育委員会に置くことは、法律上の仕組みとしてはこれ一般的なことであるということも御理解をいただきたいというふうに思います。

この免許の再授与の審査の基準については、加害行為の重大性、本人の更生の度合い、被害者及びその関係者の心情等に照らして総合的に判断されるというふうに考えております。これに反して身内をかばうような審査がなされないよう、我々もきちっとチェックをさせていただきたいというふうに思っております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

次に、質問項目を少し変えさせて、質問項目の順番を変えさせていただき、通報義務について質問いたします。

第十八条一項では、児童生徒性暴力などの事実があると思われる場合に学校や設置者への通報等を義務付けています。一方、同二項では、犯罪の疑いがあると思われるときに速やかに警察署に通報とあります。この点について、学校や教育委員会が犯罪の疑いがないから警察に通報しなくていいと警察に通報せずに覆い隠すことにならないか懸念しています。

例えば、近頃明らかになったケースとして、約二十五年前に受けた教師からの行為がわいせつ被害だったと大人になってから認識し、裁判などで訴え、事実関係が認められたということがありました。このように、後になって、自分がされた行為は性暴力だったのだと、実は断り切れない状況だったという場合があるわけです。子供が被害を自覚するには適切な配慮と働きかけが必要なのです。

子供からの被害聞き取りに当たっては、虐待を受けた子供に実施されるような、児童相談所と警察や検察が連携して被害内容を確認する協同面接が望ましいという意見もあります。警察への通報が協同面接につながっていくことになると考えられますので、性暴力を受けたと思われるときは必ず、かつ早期に警察に通報するよう義務付けた方がいいのではないでしょうか。

この点について見解をお聞かせください。

○衆議院議員(馳浩君)

第十八条第二項の趣旨は、犯罪があると認めるときに警察に通報するという規定が第十八条第七項にあることに加えて、より早期の段階、すなわち犯罪の疑いがあるという段階での警察への通報を促すために置かれているものであります。仮に犯罪の疑いがないから通報しなくていいという判断をしたとしても、第十八条第一項に規定する場合には、学校又は学校の設置者への通報といった適切な措置を義務付けられるのでありまして、十八条第四項に基づき、学校において適切に事実確認が行われることが求められます。

なお、第十八条第五項においては、学校における事実確認の場面でも、被害を受けた児童生徒等の人権及び特性に配慮するとともに、名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならないことが定められております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

この法案が、児童生徒が受ける性暴力被害がいかに深刻かということをこの国会の場でも認識する契機になると存じます。被害を出さないため、また、もし被害が出てしまったときに児童生徒の立場に立った支援ができるよう、皆様とともに取り組んでまいりたいと存じます。

これで質問を終わります。

 

法案可決に合わせて、委員会としての法律への意思表示をする「付帯決議」が提案、可決されました。この決議のなかで、舩後が提案した項目が採用されました(太字参照)。

教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律案に対する附帯決議

政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一、教育職員等のみならず、何人も児童生徒等に対してわいせつ行為を行うことはあってはならないことに鑑み、保育士についても実態把握を進めるとともに、わいせつ行為を行った教育職員等が懲戒後に保育士等に職種を変えて就く実態があることから、早期に保育士資格についても特定免許状失効者等に対する教育職員免許法の特例と同様の仕組みを検討すること。

二、教育職員等以外の職員、部活動の外部コーチ、ベビーシッター、塾講師、高等専門学校の教育職員、放課後児童クラブの職員等の免許等を要しない職種についても、わいせつ行為を行った者が二度と児童生徒等と接する職種に就くことができないよう、児童生徒等に性的な被害を与えた者に係る照会制度が必要である。その検討に当たっては、イギリスで採用されている「DBS制度」も参考にして、教育職員等のみならず児童生徒等と日常的に接する職種や役割に就く場合には、採用等をする者が、公的機関に照会することにより、性犯罪の前科等がないことの証明を求める仕組みの検討を行うこと。

三、児童生徒等に対するわいせつ行為を行う可能性が高い者を教壇に立たせないことが重要であることから、こうした者をあらかじめ教育職員等として採用しないための適切かつ実効性のある採用過程の在り方等について検討するとともに、小児性愛が疾病として診断基準等が確立されているとはいえない現状に鑑み、小児性愛についての研究に関する支援の拡充を検討すること。また、児童生徒性暴力等を行った教育職員等に対する更生プログラムの開発等についても支援を行うこと。

四、児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われる事案が発覚した際の事実確認の手続に関し、被害児童生徒等への負担に十分に配慮し、かつ、そもそも教育は本来的に教育職員等と児童生徒等の信頼を基盤とすることに留意した上で、関係機関における役割分担の明確化を図るとともに、具体的な調査方法や客観的な判断基準を定めるなど、本法の安定的な運用を図ること。

五、性被害にあった児童生徒等及びその保護者の負担を軽減するため、関係機関の連携による面接の一括化や適切な質問項目の設計、マスコミ等への対応支援、被害にあった児童生徒等が調査に適切に応じられるための支援その他スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールロイヤー等を置くなど、適切な調査方法・調査項目の速やかな構築を講じること。

六、学校の設置者が専門家の協力を得て行う調査に関しては、被害を受けたとされる児童生徒等の尊厳の保持及び回復並びに再発防止をその目的として留意するとともに、事実関係を客観的に確認し、公正かつ中立な調査が行われることを旨とすること。また、政府は、第三者による調査や通報者の保護、事実誤認による教育職員等の救済措置など、厳格な運用のための全国的な基準を定めること。

七、教育職員等、地方公共団体の職員その他の児童生徒等からの相談に応じる者による児童生徒性暴力等に係る通報に関し、当該通報を行った者が不利益な扱いを受けることがないよう、公益通報者保護制度と同様の教育職員等を保護するための制度の構築について検討すること。

八、私立学校の教育職員等については、児童生徒等が教育職員等による児童生徒性暴力等を受けたと思われる事案が発覚した後、処分の決定がなされる前に依願退職する事例が見受けられ、その場合には教員免許状が失効しないことを踏まえ、退職前に適正かつ厳正な処分が行われるように徹底するとともに、私立学校の教育職員等による児童生徒性暴力等への対応策について更に検討を行い、必要に応じて措置を講じること。

九、児童生徒性暴力等を未然に防止するため、空き教室の解消など学校施設の改善を図るとともに、全ての児童生徒等に目が行き届くよう、教育職員等の多忙や疲弊を改善するための人的配置及び人材確保に努めること。

十、障害等により自ら被害を訴えることが困難な児童生徒等については適切な支援と配慮を行うとともに、特別支援学校、特別支援学級など、児童生徒等の数が少なく、他の児童生徒等、教育職員等の目が行き届きにくい環境について、被害を未然に防止する措置を講じること。

十一、児童生徒性暴力等の防止のための児童生徒等に対する啓発に当たっては、性被害を防止、早期発見、保護・支援するための学校現場での教育内容及び方法を研究、開発し、教育職員等と児童生徒等の双方が安心して学習に取り組める環境を整備するとともに、性に関して学ぶこと等を通じて一人一人の性、心身、人生を尊重することの重要性についての意識を共有する等により、児童生徒等が相談しやすい雰囲気の醸成に努めること。また、教育職員等に対する児童生徒等の人権・特性等に関する理解や児童生徒性暴力等の防止等に関する理解を深めるための研修等の充実に向けて、十分な財政上の措置を講じること。

十二、都道府県の教育委員会は、特定免許状失効者等に対する免許状の再授与に当たっては、専門家等の意見を聴き、審査が公正、公平に行われるよう留意するとともに、国は、審査に関して全国で統一的な運用がなされるよう、指針等の策定その他の支援を行うこと。

十三、都道府県教育職員免許状再授与審査会等の設置・運営やデータベースの整備、調査・啓発、必要な人材の確保など、本法の効果的な運用に当たり十分な予算を確保すること。

十四、データベースの整備等に関して、児童生徒性暴力等の処分と、他の処分は明確に区別されることとし、データベースに記録される事由は児童生徒性暴力等による処分のみとすること。

十五、教育職員等のみならず何人によるものであれ、児童生徒等へのわいせつ行為は、被害を受けた児童生徒等の心身に大きな傷を残すものであるので、文部科学省を始めとする関係機関は、児童生徒等を性被害から守るために連携を図り、プライバシーの保護を含む児童生徒等の権利利益の擁護に資する必要な取組を実施するとともに、被害を受けた児童生徒等のレジリエンスを信じ、支えることに万全を期すこと。

右決議する。