2021年6月8日 参議院文教科学委員会質疑(続・コロナ禍で影響を受けたアーティストへの支援/障害のある高校生の校外実習の課題/視覚障害の高校生の教科書負担)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、五月二十日の本委員会で質問しました新型コロナウイルス感染症の影響を受けた文化芸術活動への支援についての追加質問と障害のある高校生に対する合理的配慮についてお聞きいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

代読いたします。

冒頭に、文化庁のアーツ・フォー・ザ・フューチャー事業についてお聞きいたします。

五月二十日に質問させていただいた後、アーツ・フォー・ザ・フューチャー事業への申請数は何件増え、交付決定は何件されたでしょうか。また、二百五十億円の予算のうち、どのぐらい執行されましたでしょうか。文化庁にお尋ねいたします。

○政府参考人(矢野和彦君)

お答え申し上げます。

アート・フォー・ザ・フューチャー事業につきましては、先日一次募集を締め切り、五月二十日時点の約千五百件から約三千八百件増加し、計五千三百件超の申請をいただいております。執行状況についてでございますが、現時点での交付決定数は二百八十件、交付決定金額は約十億円でございますが、もう既に支出された金額は今のところございません。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

私ども障害者が祈念していた障害者差別解消法の改正が成立したこともあり、ここで文字盤をさせていただきます。

○委員長(太田房江君)

速記を止めてください。

 〔速記中止〕

○委員長(太田房江君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

萩生田大臣にお尋ねします。

アーツ・フォー・ザ・フューチャー事業の進捗は順調とお感じになられていますでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

先生も御質疑で触れていただいた後、また、締切りを少し延ばしたりしまして、申請者は順調に増えております。また、ある意味、使い勝手といいますか、その目的は事業者の方とも意思疎通ができている内容だと思っています。

今一番心配していますのは、予算が枯渇してしまうんじゃないかということなので、こういったことも含めて、政府全体で文化を支えるという点で、この事業の有効性について改めて私も機会あるごとに発信をしていきたい、そう思っております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

では、次の質問に移らせていただきます。

昨年十一月二十四日の本委員会で、聴覚障害のある学生の教育実習について質問しましたところ、文科省は教職課程を置く大学八百六十校にアンケートを行い、本年四月、障害のある学生が教育実習に参加する際の支援についての通知を出されました。迅速な御対応、ありがとうございました。

本日は、それに関連して、高校の職業科の実習についてお聞きいたします。

昨年の七月、県立の福祉系高校で学ぶダウン症の生徒さんが、障害者の就労支援をする事業所に校外実習に行きました。しかし、四日間の実習期間の途中で戻されてしまいました。そして、二回目の十一月の実習は受けさせてもらえず、校内実習という名目で自習をさせられ、結局単位が取れませんでした。このこともあり、留年して、現在、一年生をやり直しています。

この高校の社会福祉実践コースでは、一年次から三年次まで、七月と十一月の二回、介護などの校外実習があります。そして、必要な単位を取得すると、介護職員初任者研修修了証と介護福祉国家試験の受験資格が取得できるとのことです。

学校側は、実習で、利用者の自立に向けた生活への援助や、利用者の状況に応じたコミュニケーション方法を実習現場で体験、実践することを求めていました。

一方で、この生徒さんは、ダウン症で知的な遅れがあり、動作も障害のない人に比べ遅いというハンディがあります。したがって、校外学習するに当たっては、実習先の選定や具体的な実習内容について本人に丁寧に説明し、実習先へのマッチングのために、慣れるまで実習担当者が付き添うなどの合理的配慮が必要なことが予想されます。しかし、保護者に伺ったところ、そうした合理的配慮や支援はなく、実習先に丸投げの状態だったということです。実習先の事業所では、知的障害者の利用者さんが袋詰め等の軽作業をしていましたが、この生徒さんは実習先での支援がなく、具体的に何をしたらいいか分からないまま、利用者さんと一緒に袋詰め作業をしていたそうです。実習先の事業所からすると、支援、指導の研修者ではなく、もう一人利用者が増えただけという受け止めだったようです。

昨年は、コロナ禍で三月下旬から一斉休校になり、大方の学校は五月半ばまでで休校でした。この高校も実質的に授業が始まったのは六月、それで七月に即実習に出されたわけです。

福祉援助の理念や技術はおろか、社会的経験がほとんどない十五、六歳の子供が、授業での事前準備ができていない状況で自分より年配の支援が必要な方がいる現場に放り込まれたら、障害のない生徒でも戸惑うのが当たり前ではないでしょうか。現に、この生徒さん以外にも実習の単位を取れずに留年となり、中には自主退学された生徒さんもいるそうです。

コロナ禍による休校で授業日数が足りない中、高校もカリキュラムを消化させるのが精いっぱいで、生徒一人一人への配慮ができないまま突っ走ってしまったという事情は理解できます。しかし、一回目の校外実習が、実習先とのマッチングや合理的配慮がなされないまま行われ、失敗という結果であったならば、二回目の校外実習では、実習先、実習内容の変更、調整、実習先での合理的配慮等の検討をすべきだったのではないでしょうか。

平成二十一年告示の高等学校新学習指導要領でも、学校や生徒の実態に応じ、指導方法や指導体制を工夫改善し、個に応じた指導の充実を図ることとありますが、これは実習にも適用されると考えます。そうした検討もなく、二回目の実習で再チャレンジすることも認められず、実習の単位が認められないというのは、障害による差別ではないでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答え申し上げます。

障害のある生徒が実習を行う際には、障害を理由とする差別的取扱いがあってはならないことはもちろん、本人の意向を踏まえつつ、当該生徒の障害の状態等、あるいは必要な支援の内容や配慮事項、さらには緊急時の対応などについて実習先としっかりと事前調整をするなど、どのような学校種であっても個々の障害の状態等に応じて適切に対応いただくことが重要だと考えております。

文部科学省としては、障害のある高校生の実習が適切に実施されるよう、関係者への周知等に取り組んでまいりたいと考えております。

以上です。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

この件については、保護者から相談を受けた県教委が高校に指導し、今年度は校外実習のやり方について事前に丁寧な調整が行われるようになったと伺っております。

一方、こうした福祉系高校だけでなく、現在、多様な職業科を置いている高校が存在します。こうした職業科では、現場実習の単位は大きなウエートを占めており、進級、卒業にも響きます。こうした実習に関しても、当然、教科学習同様、合理的配慮が必要と考えます。特に現場実習では、実習先との調整、連携が重要です。

文科省は昨年、私の質問をきっかけに、教職課程を置く大学にアンケートを行い、本年四月、障害のある学生が教育実習に参加される際の支援についての通知を出されました。

そこで、是非、実習のある職業科を持つ高校に対して、障害のある生徒の支援状況について調査をお願いしたいと考えております。大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答えを申し上げます。

障害のある高校生の実習におきまして、個々の障害の状態等に応じた適切な配慮や支援が行われるためには、学校の担当教員と実習先の関係者が共通理解を持ち、適切な支援体制を構築することが重要と考えます。

文部科学省では、障害のある高校生の実習についてこのような支援体制が構築されるよう、まずは関係会議等を通じまして都道府県教育委員会等に取組を促してまいります。先ほどの事例でも、県教育委員会がしっかりと高等学校を指導して、その後の対応について改善をしていただいたということですので、私どもとしては、指導要領の趣旨も踏まえつつ、しっかりとこうした内容を関係会議で都道府県の教育委員会に取組を促してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

教科学習だけでなく、実習においても合理的配慮が適切になされるよう現場への意識付けをお願いして、次の質問に移らせていただきます。

高校における視覚障害のある生徒向けの拡大教科書、点字教科書の負担軽減策について質問いたします。

現在、義務教育無償の精神にのっとり、小中学校では拡大教科書、点字教科書も無償となっております。また、高校は有償ですが、特別支援学校高等部では就学奨励費により自己負担がありません。

しかし、一般の高校に通う弱視の生徒さんが拡大教科書を使う場合、通常の検定教科書の数十倍、安いもので一万数千円、一冊の教科書を分冊した拡大教科書では数万円に及ぶ費用を自己負担しなければなりません。また、そもそも教科書会社が拡大教科書を作成していない場合、ボランティアに製作してもらいますが、その実費がやはり一科目数万円掛かってしまいます。

個のニーズに応じた教科書を確保するために、これほどの格差を放置してよいのでしょうか。弱視の生徒が特別支援学校に就学すれば拡大教科書は無償、地域の高校に行けば自己負担というのは教育の機会均等という観点から問題ではないでしょうか。電子教科書やPDF版が普及しても、紙の拡大教科書が必要なごく少数の生徒が取り残されるとしたら、特別なニーズに対する支援になっていないのではないでしょうか。是非、拡大教科書の価格差の補償を御検討いただきたいと存じます。いかがでしょうか。

○政府参考人(瀧本寛君)

お答え申し上げます。

教科書につきましては、御指摘のとおり、義務教育段階では、憲法第二十六条に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するため無償で提供されておりますが、高等学校段階では、御指摘のとおり、拡大教科書を含め有償となっております。

この差の補償をとの御質問ですが、例えばということで、特別支援教育就学奨励費を充実してはとの御指摘もいただくことはございますが、この特別支援教育就学奨励費についてはこれまでも制度の充実に努め、この十年間で受給者数は約十万人増、予算額も約四十六億円増と拡充を図ってきているところですが、対象を高等学校まで拡充することについては、様々な御要望がある中で、制度全体を見通した慎重な検討が必要であると考えております。

また、通常の検定教科書では学習することが困難な生徒の用に資するため、タブレット型情報端末により教科書デジタルデータを拡大して使用するPDF版の拡大図書、あるいは教科書の内容を読み上げることを通じて学習を支援する音声教材について、これまで高校に在学する子供たちを前提に調査研究を進めてまいりまして、その成果物である教材を高等学校を含めた障害のある児童生徒に無償で提供させていただいているところでございます。

そうした中で、御指摘いただいた課題については文部科学省としても認識をしているところでございまして、どのような対応が可能か、引き続き検討してまいります。

以上です。

○委員長(太田房江君)

おまとめいただきます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

どこで学ぶかにかかわらず、特別なニーズがある生徒個人にきちんと支援が届くよう、重ねてお願い申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございました。