2022年3月8日 参議院文教科学委員会質疑(大臣所信に関する質疑/コロナ禍におけるアーティスト支援、オンライン授業の課題、インクルーシブ教育)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

末松大臣には、与野党国対委員長会談の際は大変お世話になりました。本委員会でもよろしくお願いいたします。

冒頭、委員の皆様に御報告がございます。

私は車椅子を利用していますので、自力で体の向きを変えて委員会室内を見渡すことができません。また、眼球の動きにも制限があります。そうした私への合理的配慮として、今国会より、私のパソコンに広角のカメラを設置し、質問されている先生方と答弁されている大臣、参考人の方々のお顔をモニターで見られるようにすることをお認めいただきました。元榮太一郎委員長以下、理事の先生方々の御理解に感謝申し上げます。

では、早速質問に移らせていただきます。

改めて自己紹介いたしますが、私は若い頃、プロのギターリストを目指しておりました。全身が動かなくなった今でも、センサーをかんで演奏できるギターを開発して仲間とバンド活動をしております。そういったバックグラウンドもあり、文化芸術支援は私の議員活動の柱の一つとなっております。

末松大臣に対する初質問は、コロナ禍におけるアーティスト支援についてでございます。

文化庁のアーツ・フォー・ザ・フューチャー事業が来年度も予算増額で継続されることは大変喜ばしいことですが、今年度の本事業に申請され交付決定を受けた団体の皆さんから私の下に悲痛な声がたくさん届いています。末松大臣には、是非その声に耳を傾けていただきたく存じます。

代読いたします。

ここで、申請者の悲痛な叫びを紹介させていただきます。

12月30日に実績報告、2月20日の時点で何も返答なし、十二月のイベントでコロナと天候に起因する集客の減少などで赤字、立替払などで約300万円、今月末の支払もできず、このまま首をつるしかない状況に追い込まれています。この事業はアーティスト支援ではなくアーティストいじめです。AFFに採択されましたが、精算があることを信じて実績報告を出したら、要項には載っていない条件をたたきつけられ、経費の大幅な減額、おかげで資金がショートして借金を負いました。もう廃業するしかなくなりました。ひどいとしか言いようがありません。

末松大臣、ほかにもたくさんありますが、以上が私の下に寄せられた魂の叫びの一部です。まずは、今年度のアーツ・フォー・ザ・フューチャーにおいて交付決定された事業で、明らかに不正申請の場合を除く全ての事業に交付決定時に認めた全経費を今月末までに交付いただくことをお約束していただけませんでしょうか。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生には、長らくいろいろと御指導いただいておりますことに感謝申し上げます。

コロナ禍における文化芸術活動につきましては、私自身、これまでに関係団体の皆様から直接お話を伺う中で、その長期にわたる影響の中、関係者の皆様が大変厳しい状況に置かれていることを認識をしてございます。

こうした状況を踏まえまして、文部科学省では、コロナ禍における文化芸術活動を支援することを目的にアート・オブ・ザ・フューチャー事業を展開しており、既に七千団体に支援を実施をしております。このうち約半数の団体は既に額の確定手続に入っておりますが、御指摘のような御意見をいただいていることは承知はいたしてございます。

そのうちに、一点目でございますけれども、その交付決定時に認められていた経費が認められないというこの御指摘につきましては、額の確定作業において、当初の計画とは異なり要件を満たしていると認められない場合や、実際の支出内容に補助対象外経費の計上が判明した場合などは減額されることがございます。この点については募集当初よりその旨記載しておりますが、引き続き丁寧な説明が必要と考えます。

また、2か月間連絡がないとの御指摘につきまして、そのような意見も踏まえて、改善を図るべく、先日、3月中に額の確定、四月の末までに補助金の支払の見込みについて周知を図ったところでございます。

引き続き、適正かつ速やかな補助金の支払ができるように取り組んでまいりたいと存じます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

私は、金のことで追い詰められ、死を決めたことがあります。人は絶望を感じると死を選びます。その経験から、今回も死を選択される方もおられると思います。

大臣、是非3月末までに補助金の支払、お約束を実行していただけませんでしょうか。

○政府参考人(杉浦久弘君)

失礼いたします。お答え申し上げます。

先ほども大臣からもお話もありましたが、経費が、交付決定時に認められた経費が認められないという理由としましては、実績報告のときに当初計画と異なって要件を満たしていると認められない場合ですとか、実際の支出内容に補助対象外経費の計上が判明した場合とか、適正な証拠書類が確認できない場合など、幾つか場合が考えられます。

いずれにしても、この経費として認められるか否かという点につきまして事務局で判断難しい場合には、速やかに文化庁とも相談してもらいながら、しっかりと綿密にコミュニケーションを取りながら、適正かつ速やかに補助金の支払が進みますように引き続き頑張ってまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○委員長(元榮太一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(元榮太一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ユーザーの皆さんは破産が迫っています。早急な対応をお願いいたします。

○政府参考人(杉浦久弘君)

お答え申し上げます。

なるべく、ルールにのっとりながらなるべくお助けできるように、早くやってもらうように、私の方からも今日のお話を、御指摘を受けまして、しっかりと関係者の方に指示したいと思います。

先ほど申し上げたとおり、見込みとしては3月中に額の確定、4月までに補助金の支払の見込みということで動いておりますけれども、申請者の方々のお立場にしっかり寄り添いながら、できるだけ早く進めていきたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

続きましては、コロナ禍におけるハイブリッド授業の課題についてお伺いします。

2020年春、コロナによる一斉休校が地域によっては3か月に及び、学びの空白が問題になりました。

これを受けて、文科省は、GIGAスクール構想による一人一台端末配布を前倒し、2021年3月末までに公立小中学校設置自治体の97・6%が納品を終え、校内のネット環境は公立高校も含めて97・9%が四月から使い始められる状況ということでした。

しかしながら、教員のICTスキルのばらつき、対面授業を中継するだけでICTを駆使した授業の工夫がなされていない、通信環境のない家庭に貸与する通信機器の容量制限、学校の回線容量の不足等々、ハード面、ソフト面での問題が山積している状況が漏れ聞こえてきます。

災害心理臨床学のお立場からコロナ禍と心のケアについて研究されている兵庫県立大学大学院減災復興政策コースの冨永良喜先生がオンライン授業緊急調査をされています。冨永先生の御了解の下、その中から保護者の声を紹介させていただきます。

クラス内で陽性者が出たため、数日の自主休校を選択しました。登校不安を理由に欠席した場合は、1日2時間のオンライン授業を受けられます。オンライン授業は、同学年の登校不安者、濃厚接触者全員が同じ授業を見るため、自分のクラスの授業とは限りません。進度が微妙に違い、既に習った授業であったり、進み過ぎていたりします。オンライン授業を受講している生徒のプライバシーの保護のため、名前は先生しか分からない番号で表示され、受講生の画面やマイクはオフ、教育系の動画をユーチューブで視聴する感覚です。授業をする先生は教室のリアル授業優先なので、空き時間の先生が画面の見え方、音声などを確かめ、不具合があれば授業者に調整を依頼します。授業者がパソコン操作に不慣れな場合、もう一人が待機し、少なくとも2、3人の先生がオンライン授業には必要となり、1日に2時間しかオンライン授業ができない理由がよく分かりました。先生方は不慣れな中、精いっぱい学びを止めない努力をされており、感謝しますが、このシステムのオンライン授業は、先生は疲弊し、生徒は気休めにしかならないと思いました。この状態でオンライン授業に参加して出席扱いにすることやこま数として認めることは難しいということも理解できました。

この事例からは、学校の回線を全校生徒が同時接続可能な状態に整備、ICTに関する支援員を各学校へ配置し、教員のICT活用技術の向上を図るサポート体制、対面の授業を視聴するだけでなく、ICTを活用したオンライン授業の質の向上、オンライン参加の際の個人情報保護やタブレット利用のルール整備など、ハード面、ソフト面で課題が生じていることがうかがえます。

自治体や学校にオンライン授業の運用を丸投げするのではなく、先進的に取り組んできた自治体、学校間の格差をなくすために文科省が方策を早急に取る必要があると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(末松信介君)

各般にわたる御意見をいただきました。

本年度から一人一台端末を活用した新しい学び、多くの学校にとって初めての取組でございまして、地域によって取組の差が生じておることはよく分かってございます。

このため、学校が苦労するその端末やネットワークトラブルへの対応も含めまして、様々な支援をワンストップで担いますGIGAスクール運営支援センターを各都道府県に整備するため、必要な予算を新たに措置をしたところでございます。全国で二百か所ぐらいを設けたいと考えています。

また、省内の特命チームが優れた取組事例を情報発信し、取組に遅れの見られる教育委員会に個別にきめ細かなアドバイスを行うとともに、端末の活用に向けたチェックリストを更新、充実させまして、3月3日にガイドラインとして策定、周知をしたところでございます。全国的な底上げが図れるようにというように考えてございます。

それと、その学校教育ですけれども、この教師から児童への対面指導というのはやっぱり基本でございます。児童生徒同士の関わり合いを通じて行われるものでございますから、授業だけでなく、その学校行事とか部活動とか、教師、友達との触れ合いがあって子供というのは育まれるものでございますので、一つは対面のこの授業というのを非常に重視をしてございます。

子供たちの学びの保障のために非常時におけるICTの活用を一層推進したいわけでありますけれども、このオンラインでの学習指導が学校教育の全てを代替するものではありませんが、したがって、その記録上で、先ほども舩後先生御質問されたと思うんですけれども、出席とは別の扱いとなるものと考えてございます。出席でも欠席でもないという、オンラインでの特例授業という書き込み欄が、書き込むことができるようになってございます。そういうような対応をいたしております。

引き続き、その学校教育の意義を御理解いただいた上で、児童生徒や保護者の皆さんの不安が解消されるように、できるだけな対応をしてまいりたいというふうに考えてございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

所信で大臣は、GIGAスクール構想を進め、リアルとデジタルの最適な組合せによる価値創造的な学びを具体化していくとおっしゃいました。災害時に避難所や自宅からオンラインで教員とつながることも想定して、小中学校段階でもオンライン授業を出席扱いにすることの検討も必要ではないかと問題提起させていただきます。

先ほど、学校は授業だけではなくと学校教育の意義に触れた答弁もありました。であるからこそ、私は、学校という場所は、障害のある子もない子も、様々な家庭環境にある子供、外国籍の子供や文化背景の違う子供など、その地域に暮らす多様な子供たちが分け隔てられることなく共に学ぶことが大変重要だと考えております。

大臣は所信において、不登校を始め様々な問題を抱えている子供たちを誰一人取り残さず、可能性を最大限に引き出す学校教育、支援が必ずしも十分ではなかった子供たちへの教育機会の保障にこれまで以上に力を入れて取り組みますとおっしゃいました。大変心強く感じております。ただ、その支援の方向性が、特例校の設置促進やオンライン指導、取り出し指導の促進となっていて、少し違うと思うところです。

私は、誰一人取り残さない教育とは、特例校をつくったり取り出すことではなく、同じ場所で分け隔てられることなく必要な支援や配慮を得て共に学ぶインクルーシブ教育のことと考えております。

そこで、大臣にお尋ねいたします。

大臣は、障害のある子供のインクルーシブ教育についてどのようにお考えでしょうか。文科省が言うところのインクルーシブ教育システムと、私の考えている分け隔てられることなく共に学び育つという意味のインクルーシブ教育は同じでしょうか。あるいは、どこがどう違っているのでしょうか。大臣、お願いいたします。

○国務大臣(末松信介君)

インクルーシブ教育とインクルーシブ教育システムとは異なるものであると思います。

インクルーシブのこの教育システムとは、障害者の権利条約に規定されている概念でございまして、障害者の精神的、身体的な能力を可能な限り発達させるという目的の下で、障害者を包容する教育制度であると認識をしております。

このため、こうした制度を実現するためには、単に障害のある子供と障害のない子供を可能な限り同じ場所で教育を受けられるように条件整備を行うだけでなく、大事なところはやはり一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える方法が一番私はいいと思います。それも必要であると考えています、そういう学びの場を提供することが。

先生には今申し上げたところでございまして、インクルーシブ教育とインクルーシブ教育システムとは若干異なるという認識でございます、私は。

○委員長(元榮太一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(元榮太一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

先ほどのアーツ・フォー・ザ・フューチャーの質問にいま一度戻りますが、最後に大臣のお言葉でユーザーへのお支払をお約束ください。

○国務大臣(末松信介君)

次長も答えましたけれども、私の言葉でということで、最大限の努力をいたしたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

それでは、インクルーシブ教育の質問に戻ります。

私は、障害の状態によって特別支援学校、特別支援学級、通級、通常学級などの多様な学びの場に分けていく日本のインクルーシブ教育システムは障害者権利条約の求めているインクルーシブ教育とは一致していない、少なくとも方向性としては目指すものではないと考えます。

権利条約第24条、「教育」の条文解釈であるインクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的意見第4号で、障害のある人の一般的な教育制度からの排除は禁止されるべきである、一般的な教育とは、全ての通常の学習環境と教育部門を意味するとあり、第六十三段落で、障害のある生徒と障害のない生徒で同一の、一般的な教育制度の中でインクルーシブな学習機会を享受する権利及び個々の学習者があらゆる段階において必要な支援サービスを享受する権利の保障を国に求めています。

ここでは、権利条約が言う一般的な教育制度とは、通常の学級、学校を意味していること。その中で、排除されることなく実質的に共に学ぶために必要な支援、合理的配慮を受ける権利の保障を国の施策として求めています。

そこで、大臣にお尋ねいたします。

障害者権利委員会、2019年10月29日、初回の日本政府報告に関する質問事項の中、今回、コロナ禍で本審査が2回延期されておりますが、今年の夏にジュネーブでの建設的対話が予定されていますが、日本政府としてこの質問にどのようにお答えになるのでしょうか。

○国務大臣(末松信介君)

お尋ねの障害者権利委員会からの質問に対する日本政府の回答として、現在外務省において取りまとめ中と承知をいたしてございます。

これまで文部科学省では、障害がある子供も通常の学級で学べるように、小中学校の通級による指導の教員定数の基礎定数化ですね、そして、学習サポート等を行う特別支援教育支援員の法令上の位置付けと配置に係る財政支援の充実とか、それらに取り組んできておりまして、そうした内容が含められるよう、外務省と調整をいたしてございます。

引き続き、障害のある子供とない子供が、可能な限り一緒に、共に暮らせる、過ごせることができるように条件整備を行ってまいりたいと思います。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。質問を終わります。