2022年4月21日 参議院文教科学委員会質疑(定員内不合格について)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、障害児の高校受験の定員内不合格の問題について改めて質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

この時期、私はいつも大変つらい思いをしております。それは、全国で障害児の高校進学に取り組んでいる皆さんから、無事合格したといううれしい知らせとともに、定員内不合格で高校生になれなかったという知らせも届くからです。

保護者らによると、例えば富山県では、4年目で8回目の受験生が80人定員の単位制の県立高校を受験しましたが、受験生は2人のみで、この受験生だけ不合格とされました。千葉県では、医療的ケアの必要な受験生が3年目で5回目の受験をしましたが、全日制県立高校を定員内不合格とされました。香川県では、18年目、34回目の受験生が定時制の2次募集を受験、8人受験で5人合格、この受験生を含む3人が定員内不合格とされました。これらの県では、能力、適性を判断している、点数が取れなければ高校に入っても進級の見込みがないので、定員内不合格は仕方ないとしています。

しかし、2001年に府立高校における障害のある生徒に対する学習指導及び評価についての通知を出して評価基準自体を変更する合理的配慮をしている大阪府では、一人も定員内不合格を出していません。都道府県教育委員会がやる気になれば、定員内不合格を出さず、受け入れた生徒の障害の状態に合わせたカリキュラム編成、評価基準に変更することで、高校の授業を履修できるのです。これは大阪府の例ではありませんが、中学3年間の成績はほぼオール1だった人工呼吸器利用の生徒さんが、高校では10段階評価で6や7が付いたそうです。本人は何も変わっていないのに、試験の方法や課題提出の方法を工夫したことで評価がこれだけ変わるのです。

また、千葉県教育委員会は、昨年3月、令和3年度千葉県立高等学校入学候補者の決定についてを県立高校長宛てに出しました。入学許可候補者の決定に当たっては、校長は選抜、評価方法に係る説明責任を果たせるよう適切に対応すること、特に、いわゆる定員内不合格とする場合は、その理由について明確に説明できるようにすること、その際、総合的判断のみの理由では説明責任が十分に果たされているとは言えないことに留意することと、踏み込んだ指導をしています。この結果、千葉県では、定員内不合格が1995年に314人という数字を出して以来ずっと3桁でしたが、昨年初めて2桁の92人になりました。今年は50人に減少。定時制高校の2次募集では、定員内不合格がゼロになりました。

都道府県によって定員に満たない場合への対応が異なることは、明らかに受験生にとって大きな不利益をもたらしています。公立高校の募集定員とは、これだけの人数の生徒を募集し、そのための予算措置をとっているという、都道府県民に対する公約です。各教育委員会は、その高校、学科の教育を受けるに足る能力、適性があるかどうかという適格者主義を盾に、定員が余っているのに教育を必要としている子供を拒否するのではなく、募集定員を満たすよう努力すべきと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生にお答え申し上げます。

高等学校の入学者選抜の方法等は各都道府県教育委員会等の実施者が決定しまして、各学校長が、その学校に期待される社会的役割とかあるいは学科等の特色を踏まえまして適切に合否を判定する必要がございます。

その中で、障害のある生徒が障害の状態などに応じた適切な配慮の下で入試を受けられるようにすることや、入学後も適切な指導や支援を受けられるようにすることは大変重要なことでございます。

このため、文部科学省では、障害者差別解消法を踏まえまして、入学試験の実施に際しての合理的配慮の具体例として、別室実施や時間延長等の工夫を示すとともに、可能な限り配慮を行うよう都道府県教育委員会に周知しているほか、入学後に関しましても、高等学校学習指導要領におきまして組織的かつ計画的に個々の生徒の障害の状態に応じた指導内容や指導方法の工夫を行うことを示し、特別支援教育支援員や医療的ケア看護職員の配置に係る財政的な支援などを実施をいたしております。

引き続き、障害のある生徒も含めまして入学者選抜を適切に実施されますように、各都道府県等に対しまして各種会議を通じて促してまいりたいと思います。

以上でございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次の質問に移ります。

宮城県では、2020年度、1次募集で138人の定員内不合格、2021年度は1次募集で34校、88名、2次募集で11校、13名の定員内不合格者を出しています。その一方で宮城県は、応募者が定員に満たない高校が多いことを理由に、全国から受験生を募集する制度を新設すべく検討を進めていると新聞で報じられました。

資料1を御覧ください。

2023年度から2校をモデル校として事業を開始するということです。しかし、主に県民の税金で運営される県立高校で、100名以上の県内の受験生を定員内不合格にしておいて、その定員を埋めるために県外の受験生を募集するということは本末転倒ではないでしょうか。

全国募集の目的の一つに、宮城県教育委員会は、多様な価値観に触れて視野が広がることを挙げているそうです。それならば、勉強が苦手な生徒や障害のある生徒を受け入れ、多様な存在とともに学ぶことも重要ではないでしょうか。

資料2を御覧ください。

2018年10月に公表された文部科学省の調査によりますと、32道県、306校で全国募集を実施しています。全てが定員割れしている高校とは限らず、特色ある学科に全国から受験生を呼び込もうとしている高校もあるようです。しかし、少子化の中、定員を満たすことが難しいために全国から募集している事情がうかがえます。そうであれば、まずは地元の受験生の定員内不合格を出さないようにすべきではないでしょうか。

このような動きに対して、大臣はどうお考えになりますか。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生から具体例を挙げて御指摘をいただきました。

高等学校の入学者選抜の方法等は、各都道府県教育委員会等の実施者が決定をしまして、各学校長が、先ほども申し上げましたように、その学校に期待される社会的な役割あるいは学科等の特色を踏まえて適切に合否が判定されることが必要でございます。

その上で申し上げれば、公立高等学校が当該都道府県外から生徒募集を行う場合は、その過程で募集の意図、目的等について県民や関係団体等に十分な説明を行い、それらの意見を十分に考慮した上でしっかりと検討すること、また、都道府県、当該都道府県のですね、生徒の就学に過度な影響を及ぼすことがないような十分な配慮が必要でございます。さらに、定員内の不合格を出す場合には、その理由について十分に説明をし、理解を得るべきと考えます。

これらを踏まえながら、実施者である都道府県教育委員会において適切に判断いただきたいと考えております。

○委員長(元榮太一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(元榮太一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

角度を変えて質問いたします。

地方議会選挙では、候補者が定員以下だと全員当選、つまり合格です。では、なぜ高校には定員内不合格があるのでしょうか。

○政府参考人(伯井美徳君)

これ先ほども大臣が御答弁させていただきましたように、高校の入学者選抜につきましては、各学校長がその学校に期待される社会的役割や学科等の特色を踏まえ、その学校の教育を受けるに足る能力、適性を有しているかどうかを適切に合否を判定するという仕組みで運営されておりまして、そうしたことから定員内不合格というのが生じているというものでございます。

ただし、定員内不合格を出す場合には、やはりその説明責任、学校長として、あるいは設置者である教育委員会としてその説明責任を徹底し、そうした理由について十分に説明をして理解を得るということが肝要であるというふうに考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

大臣の御見解もお聞かせください。

○国務大臣(末松信介君)

繰り返しになりますけれども、先ほども申し上げたように、高等学校の入学者選抜の方法につきましては、今、伯井局長もお話がありましたけれども、各都道府県の教育委員会の実施者が決定しまして、各学校長がその学校に期待される社会的役割や学科等の特色を踏まえてその学校及び学科等で学ぶための能力や適性等を適切に判断することとされておりまして、定員内不合格自体が必ずしも否定されているものではございません。

一方で、障害を理由に入学を認めないということはあってはならないと考えております。当然です。このため、文部科学省では、障害者差別解消法を踏まえまして、合理的配慮の具体例として、入学試験の実施に際して別室受験実施や時間の延長等の実施方法の工夫を示すとともに、可能な限り配慮を行う、都道府県委員会に対して周知をしているところでございます。

その上で、定員内不合格を出す場合には、その理由について十分に説明をし、理解を得るべきものと考えてございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次の質問に移ります。

2020年の本委員会で、定員内不合格に関する実態調査を求める私の質問に対して、政府参考人は校長の公正な合否判断に影響を与える可能性があるので控えたいとお答えになりました。納得いきません。

資料3を御覧ください。

これは、質疑直後の11月21日、文部科学省はまずは実態調査をと訴えている毎日新聞の社説です。高校進学率98.6%とほぼ全入に近い中、最も教育を必要とする少数者に対して高校の門を閉ざす、教育の本義に反していると私は考えます。

東京、大阪、神奈川のように、定員内不合格者を出していない地域でなら高校生になれているのに、能力、適性という適格者主義の下、何年も何度も定員内不合格に泣いている受験生がいます。定員内不合格者の数を明らかにすることで、入学者選抜の実施にどのような支障が出るのでしょうか。その懸念と、定員内不合格で同世代のつながりを絶たれ、社会の中での居場所を失う子供の不利益を比較したとき、大臣はどちらが深刻とお考えになりますか。定員内不合格に関する実態調査を再度お願いいたしたく存じます。大臣、いかがでしょうか。

○委員長(元榮太一郎君)

申合せの時間ですので、お答えは簡潔に願います。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生にお答え申し上げます。

定員内不合格の実態調査につきましては、その実施によりましてその学校及び学科で学ぶための能力や適性に関する校長の公正な合否判断、少なからず影響を与えてしまう可能性があることと、各地域の事情を踏まえてそれぞれの方法等により選抜したにもかかわらず、定員内不合格の人数等の多寡のみで単純に都道府県が比較をされますなどの理由によりまして、入学者選抜の円滑な実施等に支障が生ずるおそれがあるとの都道府県教育委員会からの意見を踏まえ、慎重に考えておりました。

しかしながら、入学者選抜は公正に行われるべきものでありまして、定員内不合格を出す場合にはその理由が説明されるべきものであると、こういうことを踏まえまして、先生からの御指摘の趣旨を踏まえて、改めてどのような調査が可能か検討いたします。

○舩後靖彦君

代読します。

終わります。ありがとうございました。

○委員長(元榮太一郎君)

本日の調査はこの程度にとどめます。