2022年11月8日 参議院厚生労働委員会質疑(重度訪問介護について)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

天畠大輔委員に代わって、初めて厚生労働委員会で一般質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

まずは、皆様に少し自己紹介をいたします。

41歳でALSを発症し、全身麻痺で24時間の介助を必要としています。人工呼吸器を使っており、たんの吸引などの医療的ケア、胃瘻での食事など、生命維持のケアが必要です。さらに、人工呼吸器を装着するため、気管切開をして声が出せません。文字盤を使い、視線と瞬きで一文字一文字介助者に読み取ってもらい、コミュニケーションを取っています。また、顔の筋肉は僅かに動かせますので、チューブをかんでセンサーを通してパソコンを操作、文章を作ったり、音声読み上げソフトを使って文章を読んだりしています。

最重度の障害のある私と木村英子議員が3年前の参議院選挙で当選したことにより、参議院では議場の改修や委員会質疑における合理的配慮の提供など、改革がなされてきました。しかし、何も変わっていないことがあります。先週も天畠委員が質問した、重度障害者が障害福祉サービスの介助を付けて仕事ができない問題です。

障害福祉サービスの重度訪問介護、以下重訪を使って生活している木村議員と私が議員になった際、重訪が通勤や就労に使えないことが問題になりました。これは、厚生労働省告示第523号が、重訪、視覚障害者の移動を支援する同行援護、そして知的障害者や精神障害者への支援を行う行動援護に関して、通勤、営業活動などの経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除くと定めているからです。結果的に、議員活動の介助費用は参議院が出すことになりました。

あれから3年、天畠議員が参議院議員となりましたが、相変わらず、厚労省は議員活動中の重訪の利用を認めていません。

先週、天畠議員の質問に対して大臣が示された、令和2年から実施されている市区町村の雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業は、今年7月1日時点で実施自治体数が25市区町村、利用者数が82名です。2年たっているのに、1817ある市町村のうち25市町村しか実施していません。原因は何だと考えておられますか。

○政府参考人(辺見聡君)

お答え申し上げます。

御質問をいただきました雇用施策との連携による重度障害者就労支援特別事業の実績につきましては、令和2年度は2自治体、利用者数が8名、令和3年度は実施自治体数が14、利用者数が46、令和4年度は年度途中ですので10月1日現在でございますけれども、実施自治体数が26、利用者数が92と年々増加してきている状況でございます。なお、今年度、令和4年度につきましては、今後事業を開始する予定である自治体も含めますと、56の自治体から本事業に関する協議を受けているところでございます。

なお、本事業につきまして、社会保障審議会の障害者部会において御議論をいただいたところでございますけれども、例えば、障害者を雇用する事業主と自治体の双方が動き出さないと事業を利用できないといったような御指摘ですとか、また重度の障害者の方が雇用、就労の場で御活躍されるイメージですとか現場における工夫のイメージということは念頭にあると思いますけれども、事業の利用のイメージや好事例を自治体等の関係者に示してはどうかといったようなことなど、改善に向けました具体的な御意見もいただいているところでございます。

こうした御議論も踏まえながら、今後、利用事例に関する情報収集を行うなど、実施状況の把握に努めてまいります。

○舩後靖彦君

制度が導入されてすぐに、都内のある区で障害者支援を行っている事業所が区にこの特別事業を始めてほしいと要望しましたが、いまだに実現していません。この事業所では、人工呼吸器の利用者を始め、2名の重訪利用者が働いています。就労、通勤の時間内の介助費用は事業所が肩代わりしています。当然、給料も支払っていますので、結構な負担となります。

一方、別の区は既に特別事業を実施し、利用できている人もいます。同じ重訪利用者で同じような事業所で働きながら、一方の区では介助費用が特別事業で賄われ、一方の区では介助費用を事業所が全額負担しています。明らかに地域格差です。国が率先して重度障害者の雇用施策を担うべきところを市区町村に丸投げしてしまった結果です。

大臣、自治体の任意事業に任せておいて重度障害者の雇用、就労が進むとお考えですか。

○国務大臣(加藤勝信君)

重度の障害者の方に対する就労中の介助等の支援については、障害者雇用を促進する観点から事業主に対する助成措置を講じてきており、また障害者雇用促進法に基づく事業主の合理的な配慮との関係、さらには重度訪問介護において個人の経済活動に関する支援を公費で負担すべきかといった議論が、課題がある中、重度障害者に対する支援をしっかり進めていきたいという企業や自治体に対し、障害者雇用納付金制度に基づく助成金と地域生活支援事業が連携して事業を実施しているところでございます。

社会全体で重度障害者の就労を支えるためには、企業、自治体、事業者などの関係者が連携して取り組んでいくことが重要であります。こうした取組が更に円滑に実施されるよう、既存の制度、これ十分に周知を図っていく、また実施状況、我々も把握に努めさせていただくとともに、運用面における課題があれば必要な改善を行い、そしてそれを各自治体にも働きかけ、重度の障害を持っている方々が働くことのできる環境をつくっていきたいというふうに考えております。

○舩後靖彦君

重度訪問介護利用者等職場介助助成金制度、通勤介助助成金制度、重度障害者等就労特別支援事業を実施している市で制度を利用している事業所に使い勝手を聞きました。5人障害者を雇っており、うち3人が制度を利用しています。

お一人を例に取って説明します。資料を御覧ください。

この方は重訪を月870時間使っています。新たに特別事業から1日3時間、週3日勤務と、職場介助制度から1日2.5時間、そして通勤介助制度を使っています。朝夕の通勤各30分は通勤介助を使います。ただし、通勤介助制度が使えるのは3か月のみのため、4か月目以降は特別事業を使うことになります。12時から17時30分までの就労時間中は、業務に必要なパソコン操作、電話対応、代筆、文字盤読み取り、移動介助は職場介助制度、給水、食事介助、トイレ介助、姿勢の調整、見守りなどは特別事業からとなります。そして、自宅にいる18時から翌日11時30分までは重訪を使っています。自宅でも職場でも重訪で入るヘルパーさんが介助を担います。

重訪が就労、通勤に使えれば使用目的に合わせて時間数を分けて集計する必要はなく、月に1回ヘルパーの入った時間数を国保連合会を通じて市に請求すればよいだけです。

しかしながら、今の制度では、介助者の勤務報告を基に、職場介助助成金制度、通勤介助助成金制度で利用した時間数は半年ごとに高齢者、障害、求職者雇用支援機構に請求します。そして、職場における特別事業の利用時間数と、就労、通勤以外の自宅などで重度訪問介護を利用した時間数は、それぞれ別に集計して国保連を通じて市に請求します。

本来、重訪の利用時間数一本で済む勤務報告と請求業務が三種類に分けてやることになり、介助者も請求事務の担当者も業務負担が増え、かなりの煩わしさ、負担感があるといいます。同じ煩わしさは市町村側にもあります。その上、元々の重訪の支給時間に加え、特別事業の追加支給が必要となります。重訪の利用者がそれほど多くはないとはいえ、新たな負担を歓迎しない市町村もあると思います。

天畠議員の質問に大臣は、運用面における様々な課題があれば課題に対して改善を行うと答えておられますが、運用の問題ではなく、人の一連の行動を経済活動と生活、生命の維持活動に切り分けようとした制度設計自体に無理があります。人の営みを制度に合わせるのではなく、制度を人に合わせるべきです。

大臣、国が責任を持って重度障害者の就労を進めるために、告示523号を撤廃し、重度訪問介護、同行援護、行動援護を就労、通勤に使えるようにすべきと考えます。大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君)

先ほど御答弁させていただいたように、様々な課題があるという中で、今回の今いろいろ御説明がいただいた制度をつくり、そしてその活用を図っていただくべく進めさせていただいているところでございます。

ただ一方で、利用件数が必ずしも伸びてはない、あるいは今お話があったようにいろいろな煩雑な面がある、こうした御指摘をいただいたところでございますんで、まさに申し上げたように、運用面における課題があれば必要な改善を行うということを申し上げてまいりましたんで、こうした課題一つ一つにどういう対応が取り得るのか、我々の方でもしっかりと議論をさせていただきたいと考えております。

○委員長(山田宏君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(山田宏君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読します。

福祉は恩恵ではなく、我々が社会参加するための権利です。経済活動はなぜ駄目なのでしょうか。以下、用意した意見を秘書に代読させます。

代読します。

職場でしているのは経済活動だけでしょうか。今委員会に出席されている先生方も、水を飲んだり、トイレに立ったり、椅子に座り直したりして体の位置を調整したり、様々な動きをされています。それも委員会出席の一部です。私は自力でできないので介助者にしてもらっていますが、そうした生命維持に必要な介助がなければ、仕事も経済活動も成り立ちません。この二つは決して分けられず、一体なのです。仕事上の介助と生命維持の介助とは一つの制度の中で行われるべきと考えます。

大臣、見解をお聞かせください。

○国務大臣(加藤勝信君)

重ねての答弁になって恐縮でございますけれども、これまでの議論の中で、就労中の介助の支援については、障害者雇用を促進する観点から事業主に対する助成措置が講じられてきていること、障害者雇用促進法に基づく事業主による合理的な配慮との関係、あるいは重度訪問介護において個人の経済活動に関する支援を公費で負担するべきといった課題がある中で、様々な議論を経て現在の仕組みをつくらせていただいたところでございますので、まずは現在の仕組みの中でより多くの方に活用していただけるように、また、先ほど申し上げたように、課題があるということであれば、その課題に対して一つ一つ答えを出してより使い勝手がいいものにしていただいて、重度障害がある方も様々な活動がしていただける、こういう環境をつくるべく、引き続き努力をさせていただきたいというふうに思っております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

重度障害者が障害のない人と平等に地域で当たり前に生活するには、多くの支援を必要としています。その支援の中身を経済活動と生命維持活動に分けるのは無理であり、無意味です。

告示523号を撤廃し、私たち重度障害者が障害のない人と同様に社会参加できることを願い、質問を終わります。