2023年2月8日 参議院資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会 参考人質疑

◆テーマ

ロシアのウクライナ侵略による新たな局面と資源エネルギー情勢

◆参考人出席者

白石隆・公立大学法人熊本県立大学理事長(専門・国際関係論、政治学)

大場紀章・合同会社ポスト石油戦略研究所代表(専門・エネルギー安全保障、化石燃料供給)

廣瀬陽子・慶應義塾大学総合政策学部教授(専門・国際政治、紛争・平和研究、旧ソ連地域研究)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、参考人の皆様、御多忙の中、御出席いただきまして、本当にありがとうございます。

私は、ALSという難病により全身麻痺で、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。このため、パソコンによる音声読み上げで質問をさせていただきます。聞きづらい点もあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。

まず、白石参考人にお尋ねします。

白石参考人は、日本は一国では自らの経済的な安全を確保できない、信頼できる国や企業、研究チームとの連携が基本であるとした上で、研究機関やチームの技術開発、共同研究の状況など、経済安全保障政策のための調査研究を任務とするシンクタンクさえないと指摘しています。

各国、特にASEAN諸国との連携強化のために日本としてどのような働きかけを行うべきなのか、また御指摘のシンクタンクについてどのようなものが必要と考えておられるのか、お示しください。

○参考人(白石隆君)

どうもありがとうございます。

まず第一に、経済安全保障については、先生方御承知のとおり、法律の立て付けから申しましても、戦略的な自律性と戦略的な不可欠性、この二つをどう確保するかということが課題になっております。

私は、戦略的自律性はもちろん重要で努力すべきだと思いますが、日本の経済的な規模が、かつてに比べますと、もう既に世界のシェアからいいますとかつての3分の1になっていて、5%くらいになっております。しかも、日本の企業も含めてサプライチェーンは国際的に広がっていると。そういうことを考えますと、信頼できる国、企業と連携しながら、同時に、しかし、外されないように、非常に重要な部分は日本の企業あるいは日本の国が持っている、そういう仕組みをつくっていくことが経済安全保障の一番重要な課題ではないだろうかと考えております。

シンクタンクというのは、そういう戦略的不可欠性に関わる技術あるいは産業、そのサプライチェーン、こういうものがどこにあるのかと、それを強化するにはどうすればいいのかということを考える、で、政府に提言するというのが非常に重要なミッションだろうと考えております。

ASEANにつきましては、ASEANは現在の米中対立の中では決してどちらかの陣営にコミットしようというふうにはなかなか考えないだろうと。国によっては、確かにフィリピンのように、もう事実上、事実上じゃない、実際にアメリカの同盟国でありますし、そちらの方にかじを切っている国もございますけれども、多くの国はむしろ米中対立の中でできる限りバランスよく両方から利益を取りたいというふうに考えております。

ただ、同時に、実際に将来のこういう国の人たち、特にエリートが何を考えているかということを考える上では、私は、実は子供をどこで勉強させるかと、自国で勉強させるのは当然ですけれども、同時にどこに留学させるかということを見るのが実は非常に分かりやすい判断の基準だと考えておりまして、そういうふうに見ますと、実はやはりアメリカに留学させるというのが非常に多うございます。

残念ながら、日本に対する留学生というのは増えておりませんが、私はそこについては、これからは単に留学生、それも大学あるいはその大学院の学生だけではなくて、むしろポスドクだとか、あるいは研究者、もう既に一人前の研究者になったとか、そういう人も是非日本に来ていただいて、まさにネットワーク的に連携を強めていくというのがASEANの場合には日本として関与する一つの重要な考え方ではないだろうかと考えております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次に、廣瀬参考人にお尋ねします。

ロシアによるウクライナ侵攻からもうすぐ丸1年がたとうとしています。この戦争を終結に向かわせるため、国際社会はどのような働きかけをするべきなのか、戦争を終結するために日本としてはどのようなことができるのか、この2点について、廣瀬参考人の御見解をお聞かせください。

○参考人(廣瀬陽子君)

御質問ありがとうございます。

確かに、戦争が1年になりますけれども、どんどん長期化の様相を示していまして、なかなか終わらせることが非常に難しい状況にはなっておりますけれども、そういう中でも、国際社会というのは、今は残念ながらロシアに対して制裁を科し、そしてウクライナに対して支援をするということしかできない状況になっています。

というのは、どの国が、仮に例えばNATOなどがウクライナ側で参戦ということになったとしますと、それは第三次世界大戦になってしまうと。そういうことがございまして、非常に欧米もいかにロシアに刺激を与えず、極端な刺激を与えず、そしてウクライナに何としても勝ってもらうかというところで、非常に加減をしながら支援を続けている状況です。特に兵器については、段階を経てだんだん攻撃のレベルの高い兵器の供与がなされていますけれども、とにかくそうやってウクライナに勝ってもらうしかないと。

残念ながら、現状ですと和平のための交渉を行うというのが非常に難しいところになっています。というのは、ウクライナ側はロシア兵が一人たりともウクライナ領に残っていない状態にならなければ交渉しないと言っておりますし、ロシア側はロシアの新しい土地、つまり2014年に併合したクリミアと去年勝手に併合を宣言したウクライナ東部、南部の四州、これがロシア領であることを認めない限りは交渉しないと言っている関係で、交渉はまず難しいと。そうなりますと、ある程度この戦争での終わりということを想定するしか現状では解決が見えないところになります。

しかし、ロシアが非常に追い詰められて、仮に交渉に乗ってくるということがあれば、まあ、そこは世界がいかにロシアがまた新しい混乱の種にならないように、というのはですね、ロシアが仮に和平が起こった後に弱体化して、そこから多くの難民が出るであるとか、世界一の大きな領土ですけれども、それが不安定化して、世界にその不安定な状況が広まるということも避けたいと。いかにロシアを維持しながらこの平和な状態に、またノーマルな状態に持っていくのかというところではやはり国際社会ができる部分があると思います。

日本ができるところというのもまさにその部分でして、日本が一番できるところは戦後復興の部分ではないかと思いますし、また、現状での、この戦っているウクライナに対して様々な支援を行う。例えば、ウクライナから逃げてきた避難民に対するケアですとか、ウクライナに残っている方々への様々なケア。特に今は医療物資が非常に少なかったり、そして、ロシアによる攻撃によって電力システムがかなり破壊されていることによって相当寒い冬を経験しているわけですが、発電機を供与する、そういうところでウクライナを支えていくと。そういう、非常にできることが限られていますけれども、日本が平和的にできることを一つ一つこなしていくということなんだと思います。

○舩後靖彦君

終わります。ありがとうございました。