2023年4月21日 参議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 質疑

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。よろしくお願い申し上げます。

私は、難病ALSの進行により、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。パソコンによる音声読み上げで質問をいたします。聞き取りづらい部分もあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。

まず、松野大臣にお尋ねします。

政府は、2027年度までの5年間で防衛費を43兆円確保するとして、防衛費の大幅な増額に踏み切りました。この軍事力、防衛力増強、とりわけ敵基地攻撃、反撃能力の保有と、拉致問題の解決に向けたロードマップについてお尋ねします。

反撃能力を保有することは、政府が繰り返し述べている金総書記と向き合うとは相入れないのではないでしょうか。拉致問題の解決のための交渉に悪影響を与えるのではないでしょうか。この点について見解をお示しください。

○国務大臣(松野博一君)

お答えをさせていただきます。

反撃能力の保有を含む今般の防衛力の抜本的強化は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、あくまで国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要となるものであります。我が国の防衛政策や防衛力整備は、特定の国や地域を脅威とみなし、これに軍事的に対抗していくという発想には立っておらず、岸田総理が述べられている、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合うとの方針に矛盾するものではありません。

拉致問題は時間的制約のある人道問題であります。全ての拉致被害者の一日も早い帰国の実現に向け、米国を始め各国と連携しながら、あらゆるチャンスを逃すことなく、引き続き全力で果断に行動していきます。

○舩後靖彦君

拉致被害者救出に対する本気度が伝わってきません。

次の質問に移ります。

政府は、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決するとおっしゃいます。しかし、以前の質疑でも述べたとおり、私どもは、拉致問題は核、ミサイルとは分け、独自外交で対応すべきと考えております。改めてこの点について見解をお聞かせください。

○国務大臣(林芳正君)

日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化の実現を目指すとの政府の方針に変わりはございません。

拉致、核、ミサイルの諸懸案について優先順位を付けることはあってはならず、これらを包括的に解決する方針でございますが、その中にあって、拉致問題は我が国が特に主体的に時間的制約のある中で取り組まなければならない課題であると考えております。

いずれにいたしましても、政府としては、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、引き続き全力で果断に取り組んでまいります。

○舩後靖彦君

包括的なアプローチで拉致被害者救出を進展させることができるのか、疑問です。

次の質問に移ります。

私は本委員会で、政府が考える拉致問題の解決とは何を意味するのかを質問してきました。

2021年の質疑で当時の加藤大臣に対し、政府は被害者の数を正確に把握しているのでしょうかと尋ねると、加藤大臣は、お答えは差し控えさせていただいていると回答。

2022年の質疑で松野大臣に、拉致被害者として政府が認定した方のほか、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者を合わせて900人弱の方々の帰国が実現したときが政府の考える解決の状態ということでしょうかと質問したところ、松野大臣は、お答えは差し控えさせていただきたいと回答。

ごくごく基本的なことを質問しているだけなのに、何も答えていただけません。余りに不誠実だと思います。

昨年6月に行われた本委員会の参考人質疑において、特定失踪者家族会事務局長の竹下珠路さんにお越しいただきました。

竹下さんに対し、拉致問題の解決の定義や被害者の人数さえ明確に示そうとしない政府の態度についてどのようにお考えなのかお聞きしました。竹下さんは、日本政府を私は信頼しております、頼りにしております、取り返してほしいと思っております、しかし、全ての拉致被害者というのはどこまでなのかということをしっかりどれだけ把握しておられるのか不安でなりませんとおっしゃっておりました。

竹下さんのおっしゃるとおりだと思います。これまでのような御回答では不安を感じるのも当然です。大臣、この声についてどのように受け止めるつもりですか。明確な答弁をお願いします。

○国務大臣(松野博一君)

お答えをさせていただきます。

政府としては、拉致被害者として認定された17名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するとの認識の下、認定の有無にかかわらず、北朝鮮に拉致された全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向けて取り組んでいます。

拉致被害者の人数については、拉致被害者に関して様々な情報に接していますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えは差し控えさせていただきます。

拉致の可能性を排除できない行方不明者の方々の御家族に対しては、拉致問題担当大臣である私がお会いをしてお話を伺い、長年にわたり一日千秋の思いで肉親との再会を強く求める思いなどをしっかりと受け止めているところであります。

今後とも、情報提供や要望の聴取など、御家族の気持ちに寄り添い、丁寧な対応に努めてまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

信頼を損ねる答弁だと思います。

次の質問に移ります。

岸田総理は、今年1月、拉致被害者の地村保志さんと面会されました。その際、金正恩総書記との会談に向けて、あらゆるチャンスをものにするべく努力を続けていきたいとおっしゃいました。もうこれ以上先延ばしすることは許されません。一体どのような努力をするつもりでしょうか。被害者の方に直接お話しされた以上は、明確なビジョンがあるのだと存じます。是非具体的な答弁をお願いします。

○国務大臣(松野博一君)

お答えをさせていただきます。

北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権及び国民の安全に関わる重大な問題であり、国の責任において主体的に取り組み、解決を目指すべき課題であると認識しています。拉致問題は時間的制約のある人道問題でもあり、私も担当大臣として何としても解決したいとの思いで全力で取り組んできています。

目に見える進展がないとの御指摘については重く受け止めますが、具体的な内容や現在までの状況などは今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため明らかにできないものの、北朝鮮にはこれまでも様々な働きかけを行ってきています。

こうした我が国自身の直接の取組に加え、米国を始めとする国際社会との連携も重要です。本年一月の日米首脳会談において、岸田総理大臣から拉致問題の即時解決に向けた米国の引き続きの理解と協力を求め、バイデン大統領から改めて全面的な支持を得ました。私自身も、昨年12月のサルモン国連北朝鮮状況特別報告者、本年3月の権韓国統一部長官との面会等、外国要人の方とお会いする機会には拉致問題の即時解決に向けた理解と協力を直接求めています。

このほか、国際シンポジウムの開催やニューヨーク・タイムズ紙への意見広告記事の掲載、NHKワールドでの海外向けの広報番組の放送などを通じた国際社会への発信、拉致問題を風化させないための若い世代への啓発活動、拉致被害者や北朝鮮の人々に向けてのラジオ放送など、多様な取組を行っています。

拉致問題は重大な人権侵害であり、岸田内閣の最重要課題であります。この認識に変わりはなく、引き続き、米国を始めとする関係国や国際社会とも緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向けて全力で行動してまいります。

○舩後靖彦君

前回の質疑でも述べたとおり、拉致被害者家族の高齢化が進む中、拉致問題の解決は一刻の猶予も許されません。勇ましい言葉だけではなく、言葉どおりの行動を是非実行していただきたいとお願いし、質問を終わります。