2023年6月21日 世界ALSデーに寄せて

私はALSとともに生きて24年になった。発症したころ、どうして自分だけがこんな苦しみを味わなければいけないのかと考える日々だった。「生きよう」と決断するまでの葛藤。入所施設で暮らしていた日々。施設を出ようと決断する時、在宅で一人暮らしをはじめたときに感じたこと。引っ越しを決断し、住んでいた地域を離れ、会社役員就任を求められて決断したこと。

「命の価値は横一列」

「命ある限り、道は拓(ひら)かれる」

繰り返しこう言ってきたが、自分でも本当にそうだろうか、と考えることもあった。それでも、自分の言葉に背中を押され、ここまで来ることができたと思っている。

もちろん、人は一人で生きることはできない。介助を含めた私を取り巻く人たちとともに過ごすことで、心を豊かにすることができた。

ALSの発症を通じ、人との付き合い方に気づくことができた。障害者でも健常者でも、付き合い方は同じ。いつも笑顔でいること。笑顔を作れなくても、笑顔でいたいと思っていると、相手が分かってくれること。障害があってもなくても、人によって性格や考え方がさまざまなのは当然。しかし、ALSになって動けなくなると、そうした当たり前のことが分からなくなってしまっていたと思う。

私もまだまだ、人として気づけないことはたくさんある。しかし、ALSになってから得た経験は、宝物だ。

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病気を宣告されたばかりの方。進行する症状に苦しんでいる方。家族や、関わっている専門職の方。ALSの当事者、家族、関わるすべての人たちが、その人らしい生活を送ることができるよう願うとともに、私の活動が少しでも、そうした方々の支えになることができるよう、誓いたい。

2023年6月21日 舩後靖彦