2023年4月26日 参議院資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会質疑

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

私は、難病、筋萎縮性側索硬化症、ALSの進行により、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出せません。このため、パソコンによる音声読み上げで質問をいたします。聞き取りにくい部分もあるかもしれませんが、御容赦ください。

それでは、質問いたします。

まず、国のエネルギー、原発政策の大転換について経産省にお尋ねします。

政府は、グリーントランスフォーメーション推進の一環として、福島第一原発事故後の原発政策を大転換させ、原発の六十年を超える長期運転容認、建て替え推進など、原発利用促進へとかじを切りました。しかも、そのための法改正として、原子力基本法など四改正案と地域と共生した再生可能エネルギーの最大限の導入促進に関わる再エネ特措法とを抱き合わせ、五つの法律改正の束ね法案として拙速に審議して通そうとしています。それぞれの改正案が問題だらけですが、原子力の憲法とも称される原子力基本法改正に関連してお尋ねします。

本改正案では、原子力利用に当たって必要な施策を講ずることを国の責務としています。その内容は、原発の人材育成や産業基盤の維持強化を図ること、原子力事業者の投資環境の整備を定めること、原子炉運転規制を書き込むこと、最終処分の実施に向けた地方公共団体そのほかの関係者に対する主体的な働きかけなど、原子力推進の姿勢を明確化するものとなっています。特に、投資環境の整備については、電気事業に係る制度の抜本的改革が実施された状況においてもと、いかなる環境になろうと原発を推進するという強烈な意思表示がなされています。

原発は、地震や老朽化、テロなどによる原発事故のリスク以外にも、行き場のない放射性廃棄物の問題など様々な問題があり、持続可能なエネルギーとは言えません。また、2月15日の調査会に招致された大島参考人の参考資料にもありましたように、原発はライフサイクルの中で自然エネルギー以上のCO2を出しています。さらに、ウラン鉱の採掘、定期検査、廃炉の過程で被曝労働を伴い、クリーンなエネルギーとも言えません。原子力は数ある電源の一つにすぎないのに、クリーンでも持続可能でもない原発をなぜここまで優遇するのでしょうか。

4月12日の本調査会に招致された竹内参考人が、御自身が理事を務める国際環境経済研究所のホームページで掲載した、日本の原子力は復権するのかの論文の中で、今までの原子力行政においては、国の関与の曖昧さを残し、本来民間事業者が取り得るリスクを超えた民営体制が確立されたが、現状、電力システム改革によって、そのリスクを負えなくなっていると指摘されています。

今回の方針転換は、この課題を解決するために、原発、電力事業者を国策として支えるということとしか理解できませんが、それを国民は納得しているでしょうか。12年前の福島原発事故の反省から、原発依存度を下げ、再生可能エネルギーの主力化を目指してきたはずです。ここに来て、なし崩し的に原発推進に転じる政府の方針転換は断じて容認できません。

2月15日の調査会で大島参考人が述べられたように、どのようなエネルギー源をつかみ取っていくのか、若者を含めて国民的な議論を通して決めていくべきではないでしょうか。お答えください。

○大臣政務官(長峯誠君)

お答えいたします。

周囲を海に囲まれ、すぐに使える資源に乏しい我が国では、安価で安定的なエネルギー供給を確保すべく、Sプラス3Eの原則の下、原子力のみならず、再エネ、火力などあらゆる選択肢を追求することが基本方針でございます。

エネルギー安定供給と気候変動対策を両立するためには、再エネか原子力かといった二元論に立つのではなく、脱炭素電源である再エネと原子力を共にしっかり活用していくとの発想が重要と考えます。

なお、エネルギーを安定的に供給するために再エネや原子力をどのように活用するかという点について、これまで約1年間にわたり、関係省庁の専門家会合での議論を百回以上行ってきたところであります。その上で、GX実現に向けた基本方針の策定に際しては、約1か月にわたってパブコメを実施し、必要な修正を行った上で、本年2月に閣議決定をいたしました。

国民の皆様にしっかりと御理解いただけるよう、国会における議論を始め様々な場を通じて、引き続き丁寧な説明を行ってまいりたいと存じます。

○舩後靖彦君

質問を続けます。

原子力基本法改正案では、使用済核燃料の再処理について、着実な実施を図るための関係地方公共団体との調整そのほかの必要な施策を講ずると定めています。核燃料サイクルは既に破綻していると批判が多いのに、更にだらだらと国が施策を講じるとはどういうことでしょうか。

高速増殖炉「もんじゅ」は廃止されました。六ケ所村の再処理工場も、1997年の完成予定だったのが延期を繰り返し、2022年9月8日付けの東京新聞によれば、未稼働のまま総事業費十四兆円となっています。絵に描いた餅の核燃料サイクルに多額の費用を投資し、核のごみ処理問題が解決しないまま原発の最大限活用をうたう政府の方針転換は、後の世代にツケを押し付けているだけです。

資料を御覧ください。

4月15日、12年前の福島第一原発事故を受け脱原発を決定したドイツで、最後の原発3基が稼働を終え、全ての原発が停止しました。ニーダーザクセン州政府のマイヤー環境・気候保護相は、ドイツが脱原発に進むに当たって福島原発事故が決定打となったと語っています。そして、原発を止めた後の廃炉作業には少なくとも10年から15年は掛かり、30基の廃炉作業と高レベル放射性廃棄物の最終処分には488億ユーロ、約7兆円が掛かると試算しています。日本は、この7兆円の倍のお金を日本原燃の未稼働の再処理工場に費やしてきました。一方で、高レベル放射性廃棄物の処理はおろか、福島第一原発の事故で発生した除染土の最終処理場すら決まっていません。

ドイツのショルツ首相は、原子力エネルギーを、安全面のリスクと維持管理から廃炉までの莫大なコストにより、将来の世代に負担を強いるとしています。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するヨーロッパの深刻なエネルギー危機のさなか、原発を止めることに対して反対する人が半数を超えたにもかかわらず、ドイツ政府は原発廃止を実行しました。

持続可能性どころか、次世代に核のごみ、負担を押し付ける原発は即時に廃止し、再生可能エネルギーの促進と廃炉事業に転換すべきと考えますが、いかがですか。

○大臣政務官(長峯誠君)

2021年秋からの資源価格高騰や昨年2月以降のロシアによるウクライナ侵略等によりまして、我が国を取り巻くエネルギー情勢は一変をいたしました。世界のエネルギー需給構造は今まさに歴史的な転換点にあり、脱炭素社会の実現とエネルギー安全保障の両立という課題解決に向けまして、再エネ、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求していくことが極めて重要でございます。

その上で、今後も安定的かつ継続的に原子力発電を利用するためには、委員御指摘のとおり、核燃料サイクルの推進や最終処分などのバックエンド対策は重要な課題であると私どもも認識をいたしております。

第六次エネルギー基本計画にあるとおり、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用などの観点から、核燃料サイクルを推進することが我が国の基本方針でございます。具体的には、使用済燃料を再処理し、回収したプルトニウム等を原子力発電所において再利用するとともに、再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分の実現を目指しております。

こうした核燃料サイクルの実現に向けまして、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、六ケ所再処理工場の竣工に向けた取組やプルサーマル推進など、引き続き着実に進めてまいります。

過去半世紀以上にわたり原子力を利用し、使用済核燃料が既に存在している以上、高レベル放射性廃棄物の最終処分は必ず解決しなければならない重要な課題であり、将来世代に負担を先送りしないよう、我々の世代で解決に向けた対策を確実に進めることが必要であります。

2月10日の最終処分関係閣僚会議で示しました特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の改定案のとおり、国が、政府一丸となって、かつ政府の責任で最終処分に向けて取り組んでまいりたいと存じます。

○舩後靖彦君

次に、東京電力にお尋ねします。

12年前、福島第一原発事故が発生しました。被災した方々の生活は、今も事故の延長線にあります。事故からまだ12年しかたっておりません。原発事故によって人生を大きく変えられてしまった方々の支援と補償は道半ばであることは、東京電力の皆さんが一番よく理解しているはずです。被災された方々、避難された方々を支えるためにこれからどのように取り組まれるおつもりか、まずはお聞かせください。

○参考人(山口裕之君)

東京電力ホールディングスの山口でございます。

福島第一原子力発電所の事故から12年が経過しておりますけれども、今もなお広く社会の皆様に御心配と御迷惑をお掛けしましておりますこと、心よりおわびを申し上げます。

お答えいたします。

当社は、あのような事故を起こしたことを深く反省し、二度とこうした事故を起こさぬよう、根本原因や背後要因を詳細に分析し、事故の反省と教訓を全社の事業活動に生かす取組を進めてございます。

当社は福島への責任を果たすために存続を許された会社であり、福島への責任の貫徹は最大の使命であると認識しております。引き続き、福島のために何ができるのかを考え、復興と廃炉の両立、賠償の貫徹に向けて全力で取り組んでまいります。

当社は、事故直後から地域の皆様のニーズや状況を捉えた取組を進めてまいりました。具体的には、放射線測定等の国や自治体による除染、中間貯蔵への御協力や、除草や清掃、片付けなどの復興推進活動、風評被害払拭に向けた福島県産品の流通促進活動などでございます。

また、損害賠償の迅速かつ適切な実施のための基本的な考え方である三つの誓いに基づき、被害者の方々の個別の御事情を丁寧にお伺いさせていただきながら、引き続き適切な賠償を進めてまいります。

今後も、復興に向けて地域に寄り添った取組を進めてまいります。

以上でございます。

○舩後靖彦君

東京電力と国のなすべきことは、被災者、避難者への支援と補償です。その取組が道半ばにあるにもかかわらず、再稼働を進めるのみならず、新しい原発を造ろうとする、あり得ないと思います。

東京電力が今、原発を再び稼働させたり、あるいは新増設を進めたりすることについては強い危機感を抱いています。その理由の一つは、原発事故が起きた後の東電が度重なる不祥事を起こしてきたことです。

2022年に判明、福島第二原発への車の不正入域、柏崎刈羽原発で社員が期限切れ入構証で原発内に入構、福島第二原発で二人一組で行う巡視やメンテナンスを一人で実施し、柏崎刈羽原発で放射性物質の外部放出を抑えるフィルター付き排気設備で規制委員会の定める基準を満たしていない部品を使用。

2021年に判明、柏崎刈羽原発で侵入者を検知する複数のテロ対策設備が機能しない不備、福島第二原発でもテロ対策不備、柏崎刈羽原発で安全対策工事の未完了、柏崎刈羽原発で他人IDで原発制御室に入室。この辺りにしておきますが、安全管理の根幹に関わるような問題を起こし続けておられます。

東京電力にお尋ねします。一体、なぜこのようなことになっているのでしょうか。

○参考人(山口裕之君)

改めまして、地元地域や社会の皆様に御不安、御不審を抱かせるような一連の事案を発生させたことにつきましておわびを申し上げます。

お答えいたします。

2021年9月に公表いたしました核物質防護に関わる改善措置報告書では、リスク認識の甘さ、弱さ、失礼いたしました、弱さ、現場実態の把握の弱さ、組織として是正する力の弱さといった三つの根本原因を特定してございます。

核物質防護を含めた一連の事案については、第4次総合特別事業計画でお示ししているとおり、本社、サイトの一体的な運営、プロジェクトを完遂するための体制、システムの導入、核物質防護の抜本強化のためのリソースの拡充や質の向上、人事配置、ローテーション見直しや外部専門家の活用など、抜本的な改革に取り組んでおります。

改革の実績を一つ一つ積み上げ、その都度しっかりと御説明をしていくことで、地元地域や社会の皆様に御信頼をいただき、地元の発電所として受け入れていただけるように努めてまいりたい、このように考えてございます。

以上でございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

一刻も早く私たちは、原発を全て廃炉にすべきだと考えております。

質問の順番を少し変え、少し方向性を変え、原発事故を想定した対応についてお尋ねします。

通告しておりませんが、政務官に是非一言お聞きしたいことがあります。避難弱者という言葉を御存じでしょうか。福島第一原発事故を取材した新聞記者による言葉です。高齢、障害、病気のある人の死亡が続出していたそうです。私は、廃炉にしない限り同じようなことが起こる可能性があると思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(長峯誠君)

避難弱者の対策というのは大変重要というふうに認識しております。私も以前自治体の首長をしておりましたので、そういう災害弱者対策というのは非常に心を砕いてまいりました。

この原発事故において、避難計画を立てて避難弱者をしっかりと対応していくというのは自治体にとっては大変厳しい課題だというふうには思いますが、精いっぱいそれぞれの自治体も取り組んでおられると思いますので、経産省としてもそれをしっかりとバックアップをしていって、遺漏なきように図ってまいりたいと存じます。

○舩後靖彦君

原発事故から12年がたち、今も福島県内外に避難者がおられるという。運転に伴うリスク、放射性廃棄物の処理については全く見通しが立たず、最終処分といっても地層に埋めるというもので、将来にわたる負担。

このような原子力発電が持続可能などとは到底言えないと改めて申し上げ、質問を終わります。

○会長(宮沢洋一君)

本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。