2023年12月7日 参議院厚生労働委員会質疑(相談支援事業/生活保護)
○舩後靖彦君
れいわ新選組の舩後靖彦でございます。本日はよろしくお願いいたします。
まず、障害者総合支援法77条に定める委託の相談支援について伺います。
委託の相談支援が、現状、消費税課税扱いになっていること、私は見直すべきと考えますが、本日は当面の課題について伺います。
相談支援事業は、長らく障害福祉サービスの報酬単価が低いことが問題視されています。全国の就労系事業、グループホーム、相談支援事業所などでつくるきょうされんの調査を紹介します。母数は少ないですが、25の委託の相談支援事業所中、22の事業所が相談支援事業単体では運営が成り立たないと答えています。ほとんどの法人が運営費用の不足分をほかの事業からの繰入れなどで支えているほか、人件費を調整しているところさえあります。
厚労省は10月4日、自治体がこの相談支援を民間事業者に委託する場合の委託料は消費税相当額を加えた金額を受託者に支払う必要があると事務連絡を出しました。しかし、国としての支援策は現時点ではなく、どのように追納するかは自治体と事業者の調整に任されています。現場は大変混乱しています。存続さえ厳しい今の相談支援事業者が過去5年分の消費税追納や延滞税の支払をするとなれば、負担は重く、相談支援サービスからの撤退や事業者の廃業さえも懸念されます。障害者にとって危機です。
元はといえば、国の周知不足で起こったことです。非課税扱いだと自治体が誤認していた場合、また、誤認でなくても、事業者に課税との説明をしていなかった場合、原則的には自治体が支払う方針を示すなど、国と自治体の責任で解決するための何らかの通達を国から自治体へすべきではないですか。大臣、お答えください。
○国務大臣(武見敬三君)
御指摘のように、市町村が実施する障害者相談支援事業については、社会福祉事業に該当せずに消費税の課税対象となりますけれども、その取扱いについてはこれまで明確に周知がされていなかったことから、この取扱いについて誤認する自治体などが一定数生じているものと認識をしております。
そのために、今年10月4日に事務連絡を発出いたしまして、障害者相談支援事業は消費税の課税対象であり、自治体が当該事業を民間事業者に委託する場合、消費税相当額を加えた金額を委託料として受託者に支払う必要があることなどについて各自治体に周知したところでございます。
今後、この全国会議などの機会を通じまして、事務連絡を踏まえて適切に取扱いを進めていき、自治体に対しても周知徹底を図ってまいりたいと思います。
○舩後靖彦君
事業所の存続に関わることを国は周知だけで済ませるのですか。不十分です。地域地域で暮らす障害者にとって、よろず相談は生命線です。引き続き追及します。
次に、生活保護基準引下げの裁判について質問いたします。
資料のとおり、11月30日の名古屋高裁判決は画期的でした。厚生労働大臣には少なくとも重大な過失があり、客観的、合理的な根拠のない手法などを積み重ね、あえて生活扶助基準の減額率を大きくしているもので、違法性が大きいと厳しく指摘しています。さらに、支給額引下げの取消しに加えて、引下げを取り消しても精神的苦痛はなお残るとも指摘し、この裁判では初めて国に賠償を命じました。
しかし、これまで国は、基準引下げの根拠となった計算方法は厚生労働大臣の裁量権の逸脱であり、違法とする厳しい判決をもってしても過ちを認めず、減額は適切だったという姿勢を崩していません。
名古屋高裁判決を受けて、政府は姿勢を改めるべきです。これまでの上訴を取り下げ、名古屋高裁判決には上告しないでください。大臣、いかがですか。
○国務大臣(武見敬三君)
現在、この判決内容の詳細を精査するとともに、関係省庁や被告自治体と協議をしておりまして、今後適切に対応してまいりたいと考えております。
なお、厚生労働省といたしましては、今後とも自治体との連携を図りつつ、生活保護行政の適正な実施に努めてまいります。
○舩後靖彦君
質問を続けます。
名古屋高裁の判決は、健康で文化的な最低限度の生活とは何か明確に示しています。
判決によると、人が三度の食事ができているだけでは、中略、生命が維持できているというにすぎず、到底健康で文化的な最低限度の生活であると言えないし、健康であるためには基本的な栄養バランスの取れるような食事を行うことが可能であることが必要であり、文化的と言えるためには、孤立せずに親族間や地域に対人関係を持ったり、中略、自分なりに何らかの楽しみとなることを行うことなどが可能とあります。
この判決を受け止め、真に健康で文化的な最低限度の生活を実現するためには、2025年度の基準改定に向けて社会参加に係る費用も含めた議論が必要です。そのためには、生活保護を受給する当事者や支援者の意見が反映される仕組みを検討する必要があると考えます。厚労省の見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君)
生活保護基準につきましては、一般の低所得世帯の消費実態との均衡を適切に図る観点から、客観的な消費実態のデータに基づき検証することとしております。
具体的には、5年に一度実施される全国家計構造調査などのデータを用いて検証しております。昨年の検証では、家庭の生活実態及び生活意識に関する調査等を用いて生活保護受給世帯と一般世帯の生活実態との比較分析も行いました。
2025年度以降の生活扶助基準については、今後の社会経済情勢などの動向を見極めて必要な対応を行うために、2025年度の予算編成過程において改めて検討を行うということとしておりまして、適切にこれに対応してまいりたいと思います。
○委員長(比嘉奈津美君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(比嘉奈津美君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
生活保護を受給する当事者や支援者の意見が反映される仕組みを検討する必要があると思います。この点について、大臣の見解を改めてお聞かせください。
○国務大臣(武見敬三君)
厚生労働省といたしましては、この課題に関しましては様々な角度から、関係者、意見を聴取して検討を進めていきたいと考えます。
○舩後靖彦君
代読いたします。
生活保護に関する検討会のメンバーに、生活保護を受給する当事者、またその代弁者が参画することが重要だと考えます。大臣の見解をお聞かせください。
○国務大臣(武見敬三君)
これは極めて専門的な課題に関わる調査検討を行う場所でございますので、その条件に合った方を委員としてお願いをすることになると思います。
○舩後靖彦君
当事者参加が必要だと重ねて申し上げます。
質問を続けます。
当時、社会保障審議会生活保護基準部会で部会長代理を務めた岩田正美氏は、部会としての報告書には、保護基準額と一般低所得世帯の消費支出とのバランスを検証する内容で、物価との関係は考察していない、部会はデフレ調整による大幅削減を容認などはしていないと裁判で証言されています。その上で、デフレ調整をするなら基準部会で専門的な議論をすべきだったとの考えを示されています。
重ねて伺います。
上訴を取り下げた上で、物価指数計算の専門家や統計委員会の委員などを含めてデフレ調整の計算方法を再検証すべきと考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君)
平成25年の生活保護基準改定は、まず、生活保護基準部会の検証結果を踏まえて、年齢、世帯人員、地域差のゆがみを直すとともに、デフレ傾向が続く中で当時の基準額が据え置かれていたことに鑑み、物価の下落分を勘案するという考え方に基づいて生活扶助基準の必要な適正化を図ったものであります。
なお、基準改定についての判断は厚生労働大臣の合目的的な裁量に委ねられているとの最高裁判例もございます。
平成25年の改定は、その手順も含め適切なものであったと考えておりまして、再検証することは考えておりません。
なお、平成29年の生活保護基準部会においては、平成25年の基準改定が生活保護受給世帯の家計に与えた影響について、これを検証を行い、改定による影響を評価するまでには至らなかったということを確認しております。
○舩後靖彦君
2025年度の基準改定に向けて、二度とこのような不当な引下げが起こらないよう再検証は絶対にすべきです。
次に、名古屋高裁の判決を受けての大臣の発言について伺います。
大臣は、12月1日の記者会見において、生活保護基準削減の前提条件に係る認識を問われ、このように発言しました。あの当時においては、特に九州の一部の地域などで、こうした生活保護制度というものが極めて好ましくない形で悪用されているケースなどが多々あり、かつまた窓口で大変大きく問題となり、窓口の職員などが大変深刻な脅威の下にさらされるということが実は多々起きておりました。したがって、こうしたことに対してしっかり対処すべきであるという考え方がまず前提にあり、こうした生活保護制度に関わる様々な見直しを行ったということが私どもの考え方です。
不正受給は、当時、金額ベースで0.5%です。ごくごく一部の例を全体化して、生活保護利用者全体の保護基準を引き下げることを正当化するような発言です。この発言は今すぐ撤回すべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君)
12月1日の記者会見では、当時の生活保護バッシングや2012年の衆議院選挙の自民党公約について問われたために、生活保護をめぐる当時の時代背景を述べた上で、これに対処するために生活保護制度について様々な見直しを行った旨をお答えしたものでありまして、事実と異なる発言との認識はございません。
平成25年の生活保護基準改定は、こうしたこととは別に、生活保護基準部会の検証結果を踏まえて、年齢、世帯人員、地域差のゆがみを直すとともに、デフレ傾向が続く中で当時の基準額が据え置かれていたことに鑑み、物価の下落分を勘案するという考え方に基づいて生活扶助基準の必要な適正化を図ったものでございます。
なお、窓口職員への脅威については、国としても、自治体に対しまして、警察と連携体制を構築などの取組を行った場合への国庫補助により対策の支援も行っているということもございました。
○舩後靖彦君
代読いたします。
不正受給について説明したものだったとしても、生活保護バッシングを導きかねません。
生活保護制度は、憲法で保障された生存権保障の最後のとりでです。国民の生活と福祉の向上を担う厚生労働省は、生活保護の適正な運用に責任があるはずです。不正受給や必要でない人が受給していることを殊更に追及する一方、生活保護基準以下で生活し、真に必要としている人が申請をためらい、受給できずに放置されている問題に無関心なのでは、その役目を果たしているとは言えません。生活保護は恥だというような認識や、感情をあおる生活保護受給に対するバッシングは社会を分断します。
重ねて大臣に発言の撤回を求め、質問を終わります。