2023年12月5日 舩後靖彦 文教科学委員会 国立大学法人法改正案についての参考人質疑

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、田中参考人、上山参考人、光本参考人、高橋参考人から貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

私は、ALSという難病で人工呼吸器を付けているため、声を出すことができません。事前に作成した質問をパソコンの音声読み上げで質問させていただきます。お聞き苦しいところがあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。

では、質問に移ります。

まず、田中参考人、光本参考人にお尋ねいたします。

現在、国立大学法人には、学内者で構成される教育研究協議会と、外部構成員が加わる経営協議会、役員会、学長選考・監察会議があり、学長が最終的な意思決定者となっています。ここに更に運営方針会議が加わり、中期目標、中期計画、予算を最終決定するとされています。

しかし、現在、運営方針会議がなくとも、多様なステークホルダーの意見を取り入れ中期目標、中期計画、予算を策定しているはずです。そうであれば運営方針会議の必要性はどこにあるとお考えですか。

○参考人(田中雄二郎君)

御質問ありがとうございます。

運営方針会議は、決定権を持つというところで非常に重い会議だと思いますが、私は、ここには、やはりどの人に委員になっていただくかというこの人選こそが本質的な問題だと思っております。

それで、私は東京科学大学ではこの議論はしていませんけれども、仮に医科歯科大学でこの会議体を持つとしたら、それはやはり医科歯科大学のミッションとそれから学問の自由ということに関する深い理解のある方に限られると思っております。ですから、具体的には、例えば教育研究評議会、それから経営協議会、あるいは学長参与という方々いらっしゃいますけれども、そういうことを経験されて、十分にそういうものを理解された方になっていただく、で、そのときには運営方針会議が意味を持つと思っております。

以上です。

○参考人(光本滋君)

ありがとうございます。

重要なことは、制度そのものに問題はあるかもしれませんが、まずは大学が多様なステークホルダーと対話する努力をしていくこと、現行の国立大学法人法制の中でベスト、ベターな方向を模索していくことだと思います。

経営協議会の学外委員は大学のことが分からない、意見を言いづらいということをよく言われます。上山参考人の御発言の中にもそういった御指摘あったかと思います。大学の財務についても、単に数字がどうだというのではなく、経営の問題と教育や研究などの問題がどのようにつながっているかを理解してもらうことが必要だと思います。

そうした努力を重ねた先に、運営方針会議のようなものが必要だよねということになれば、国立大学法人が自発的につくることはあってもよいし、そのために必要な法改正をすればよいと思います。現在法案で提起されているような、政府がつくらせる運営方針会議は必要ないと考えます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次に、光本参考人にお伺いいたします。

衆議院の参考人質疑において、今回の法案でトップダウンと文科大臣の承認という二つの要素を兼ね備えた運営方針会議が持ち込まれた場合、下からの牽制機能がほとんど働かない現在の国立大学において、大学自治、学問の自由は危険水域にあるという危機感が表明されました。

国立大学の教員のお立場から見て、運営方針会議の設置の影響についていかがお考えでしょうか。

○参考人(光本滋君)

衆議院の参考人質疑において、隠岐さや香参考人が示した学問の自由度の国際比較の資料というのがございました。それに関連する御質問だったかと思います。

学問の自由がなく大学自治だけがある社会というのは、理論上あり得るかもしれませんが、およそ自由な社会とは言えません。社会が自由であるためには、人々が物事を自由に、批判も含めて、考え、議論し合い、探求していく、そういう自由が不可欠です。そうしたことは、大学においても当然許されなければなりません。大学にそういう自由がなければ、仮に大学に学問の自由があったとしても、それは社会の自由を広げることにはつながりません。

大学の組織運営に社会の声を取り入れることは必要だと再三私も申し上げてきましたけれども、現在の議論されているような合議体は、そういった大学の自由を広げることにつながるかということは大変疑問を持っております。

以上でございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次に、田中参考人、光本参考人、高橋参考人にお尋ねいたします。

2004年の法人化以来、運営費交付金の減額、傾斜配分がなされ、2016年に指定国立大学法人制度、昨年、国公私立を問わず、国際卓越研究大学が導入されました。

今度は、国際卓越研究大学に認定されなくとも運営方針会議の設置が義務化された特定国立大学法人と、任意で設置できる準特定国立大学法人が導入されようとしています。

国立大学協会が11月24日に声明を出されましたが、今以上に大学間格差が拡大するのではないかという懸念についてはどうお考えでしょうか。

○参考人(田中雄二郎君)

やはり、大学がどういうふうに存続していくかというのはお互いに知恵を絞っているところで、最近の傾向としてはクロスアポイントメントというのがよく行われるようになっています。

これは、例えば、ある大学から別の大学に教員が移るというのは、別の大学にとってはプラスになるわけですけれども、元々引き抜かれた大学にとっては研究力低下にもなります、教育力低下にもなります。ですので、例えば六対四とかですね、そういう形で両大学に軸足を残すというやり方が最近増えていて、医科歯科大学でも増えています。

これは、多分、大学がこの変化に適応しようとしている行為だと思っていて、やはりこれを例えばサポートするような仕組みが行政や立法府でもあると有り難いと思っております。

以上です。

○参考人(光本滋君)

大学間格差が今以上に広がるのではないかという懸念、まさしく私もそうだと考えております。

国大協が10月、11月24日でしたか、に出した声明の中では、準特定国立大学法人という呼び名をやめるべきだと言っています。法案ではこれは不可能ですね、少なくとも修正が必要です。これは、私でなくて、大臣が答弁しても、こういう答えになると思います。

また、国立大学法人と他の国立大学法人の間に扱いの、あっ、特定国立大学法人と他の国立大学法人の間に扱いの差を設けるべきではないとも言っています。

文科省は、法案に盛り込んでいない事柄として、運営方針会議を置く国立大学法人には特典として中期目標期間をまたぐ繰越し協議の廃止、つまり一貫した基金の造成を認めるといったようなことを議論しております。この扱いをやめるか、あるいは他の国立大学法人にも同じことを認めるでない限り、扱いに差を付けないと言っても、これはうそになってしまうと思います。

○参考人(高橋真木子君)

御質問ありがとうございます。

大学間格差という言葉を使うときに、ここにいらっしゃる方や我々アカデミア以外の人間の多くがあいにく自分の大学の入試を受けたときの偏差値のような形で大学を見ることにはとても残念だと思っております。

格差が進むというより、むしろ、この20年間、分化が進んできたと思っています。分かれるという意味ですね。そういう意味では、国立大学だったときには一様の形態であったものが、法人化した後にその特性を生かすというところで、先ほど、運営費交付金が減ってきたことに伴いまして、非常にシビアな生存環境の中で、個々の大学はそれぞれ自大学の強みを生かさずにもう生き残れないというところまで来ていると思います。そういう意味では、格差が広がるというよりは、むしろこの20年間、私自身の職務経験でもやはり順当ではなかったにしろ、変化は痛みを伴いながらも、いわゆる富士山型から八ケ岳型へ日本は分化しているのだと思っております。

そういう意味では、その契機になる一つの事業としては、今回の変化はプラスに捉えております。

以上です。

○舩後靖彦君

本日は貴重な御意見をお聞かせいただき、ありがとうございました。

質問を終わります。