2023年12月12日 参議院法務委員会、文教科学委員会連合審査会質疑(旧統一教会被害者救済法案について)

○舩後靖彦君

れいわ新選組の舩後靖彦でございます。

私は、難病ALSを発症し、喉に穴を空けて人工呼吸器を装着しています。声を出せませんので、パソコンによる音声と秘書による代読で質問いたします。聞き取りにくい部分もあるかもしれませんが、御容赦ください。

本日は、宗教団体の不当な寄附勧誘などにより被害を受けた方々の救済法の審議ですが、この法案は、被害者やその支援をしている弁護団の方々の意見が十分に反映されていないと感じます。

私たち障害者は社会から排除されてきました。2006年に作られた障害者権利条約の制定の際のスローガンは、私たちのことを私たち抜きに決めないで。この言葉に表されているように、意見を聞くというヒアリングだけではなく、障害者が政策などの立案、決定に参画することを訴えてきました。このスローガンは障害者に限ったものではありません。社会的に弱い立場に置かれている人たちにとっても重要です。今回の法案は、まさに当事者参画の下で作られるべきものだと考えております。

そこで、質問いたします。

今回の法案で念頭に置かれている旧統一教会の被害者、被害者を支援している弁護団などは法案作成の議論に参画できていましたか、お答えください。

○衆議院議員(山下貴司君)

舩後委員にお答えいたします。

この弁護団などにおいて法案作成の過程に参画されたかということでございますが、本法案を我々与党がまとめるに当たり、与党は実効的な被害者救済の推進に関するプロジェクトチームにおいて、被害当事者の方々や全国統一教会被害対策弁護団、宗教団体、宗教関係の団体、あるいは憲法学者などの有識者などからそれぞれ丁寧なヒアリングを行いつつ、取りまとめたものでございます。

そして、その中には、今委員がお配りになられた資料の中に記載されておられます被害対策弁護団の、例えば弁護団長の村越先生であるとか紀藤先生であるとか、様々な弁護士の先生方と公式、非公式に非常に突っ込んだ意見交換もさせていただいた上で法律を作らせていただいたということでございます。

そうした中で、さらに法案提出後も、与野党協議の場でも与野党の法案提出者でそろって弁護団から意見聴取を行ったということでございまして、弁護団の皆様からの御意見、特に民事保全の実効性ですね、この懸念に対していかにお応えするのかということは、法律の専門家という観点から非常に大きな示唆をいただいたというふうに感じておりますし、またそれを踏まえて与党案を作らせていただき、またその後の修正にも生かさせていただいたというふうに考えております。

その結果、弁護団の皆様からも与党案についても必要だという積極的な評価をいただいたことについては、提案者として評価させていただきたいと思っております。

○舩後靖彦君

ヒアリングをしたのであれば、なぜ被害者や弁護団が求めている包括的な財産保全が入っていないのか疑問です。今回の法案は、被害者、当事者たちの声を反映させたものとは到底言えません。

質問を続けます。

次に、包括的な財産保全についてお尋ねします。

包括的な財産保全については、信教の自由との関係で問題があるとの指摘がありますが、11月29日にこの問題に尽力されている全国統一教会被害対策弁護団から声明が出されており、その声明でも問題点を解消するための改善策が提案されています。

資料を御覧ください。例えば、管理の対象を重要な財産処分行為、海外送金、不動産の処分などに限定し、管理の対象から日常的な財産処分行為を外すことが提案されています。また、所轄庁が財産状況についての報告を求め、必要に応じて裁判所が選任した調査委員、仮称に財産状況を調査させ、財産散逸のおそれが認められた場合には、裁判所が更に監督委員、仮称を選任し、重要な財産処分行為に監督委員の同意を要するとし、それでも実効性がない場合には包括的に財産保全を認めるというような段階的な仕組みも弁護団から提案されています。

れいわ新選組としては、自民党が長年、旧統一教会に対して便宜を図った疑いがあること、また、組織支援と選挙協力などの相互依存関係も明るみになっている歴代自民党政権の責任は重大で、被害に対して責任を持って償うべきだと考えております。責任を取るためにも、今からでも被害者や弁護団を交え議論を行い、被害者救済が十分になされるよう包括的な財産保全を盛り込んだ法案に修正すべきと考えます。

修正案について、被害者や弁護団の意見を生かしたのでしょうか。この点について見解をお示しください。

○衆議院議員(山下貴司君)

まず、与野党問わず、この旧統一教会に関わったことに関して、それが信者の皆様に何らかの影響を与えていることであれば、これは本当にじくじたる思いでございます。そして、それに対して政治家がすべきは、お互いをあげつらうことではなくて、本当に被害者の救済のために必要な実効的な施策をつくり上げる、これが我々立法府に課された使命であると我々は考えておりまして、その観点から実効性のある被害者救済案ということで与党案をまとめさせていただいたわけでございます。

そして、御指摘の弁護団が御提案の調査委員、監督委員から成るこの提案を伺いました。これについては、まず第一に、立民あるいは維新の皆様が提案されているあの法案とは全く違うというものであるということで、それらについてやっぱり慎重に検討しなければならないということが一点。

そして二点目は、実はこの構造というのは、弁護団の皆様から伺うと、民事保全、民事再生法を参考にしたものでございました。そして、民事再生法というのはこれは主として債務者からの申出で民事再生手続を行う際の手続ということで、そうなると解散命令の対象宗教法人に対する財産の保全とは構造が異なるのではないかということ。そしてまた、民事再生法は、これ経済権の保障、財産権の保障の部分でございますけれども、宗教法人法につきましては、憲法20条、そしてそれを更に受けた宗教法人法85条によって、裁判所も含めて、いかなる形であれ、宗教上の事項に干渉しないようにしなければならないという宗教法人法85条の規定もあって、その観点から民事再生法を参考にした弁護団のところについては採用に至らなかったということでございます。

決して検討していないわけではないのです。我が国の憲法体系において、精神的自由権とそして経済的自由権と、こういった憲法体系の中でいかなる実効的な措置がとれるのかということを我々が真剣に検討した結果であるということは是非御理解賜りたいと思います。

○舩後靖彦君

質問を続けます。

衆議院では与野党の協議で修正案が出され、れいわ新選組以外の野党は与党案に賛成しました。しかし、肝腎の財産保全については、3年を目途に財産保全の在り方を含めて検討するという程度の検討状況にとどまります。

対象となる宗教法人から資産の流出を防ぎ、可及的速やかに保全する必要があるのではないのですか。なぜ3年を目途と悠長なことが認められるのでしょうか。政治の都合ではなく、被害者を救済するという当たり前の目的に沿い、一刻も早く財産保全をするべきではないのでしょうか。どうして財産保全に関する見直しをすることについて3年を目途が妥当だとお考えなのでしょうか。この点について見解をお聞かせください。

○衆議院議員(柴山昌彦君)

お答えをいたします。

仮に財産保全がなされたとしても、各被害者の方々において債権を確定させなければ意味がなく、まずはそこを支援するのが重要であると考えております。

なお、今御指摘になられた附則第六条の規定に基づいて、この法律の施行の状況などを勘案した結果、具体的に検討をするべき課題が生じた場合においては、3年を待たずに財産保全の在り方を含めこの法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて法制上の措置その他所要の措置を講ずることとなります。

ただし、今の段階では具体的な対応の時期をお答えすることは差し控えさせていただきます。

○委員長(佐々木さやか君)

速記を止めてください。

 〔速記中止〕

○委員長(佐々木さやか君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

被害者の声を改めて聞いてください。

今すぐに取り組むことこそ必要なのだと改めて申し上げます。

与野党による協議を踏まえて出された修正案が、衆議院で法案が通過した後、被害者の反応が新聞各紙に掲載されていました。一部を紹介します。

6日付け朝日新聞によると、母親が高額献金の被害に遭ったと訴える女性は、包括保全を含む案が否決されたことに怒りを感じる、自民党と教団の関係は解明されないままで、自民党が関係を解消したかどうかも疑わしい、結局、財産保全案が制定されないよう求めた教団の意向どおりになったのではないかと指摘しています。

同日付けの毎日新聞でも、両親が3000万円以上を献金したという元二世信者の男性が、正直、がっかりした、いろんな被害がある中、せめて金銭被害の救済は担保しましょうという法律すらできないのだろうかと述べたといいます。被害救済に当たってきた全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長の川井康雄弁護士も、同紙の取材に、非常に不十分な内容、附則も既に待ったなしの課題を3年後に先延ばしするだけで、言い訳にすぎないとコメントを寄せています。

被害者のための法案なのに、どうして被害者が落胆しなければならない状況になっているのでしょうか。れいわ新選組は、国が責任を持って、今までの被害の救済と今後被害者を出さないための対応策を早急に打ち出すべきであり、そのために包括的な財産保全法への修正を強く訴えます。

その上で、①統一教会と一体になって被害を拡大させてきた自民、政府が国家的な責任を認め、被害者に対する謝罪と補償を行うための被害者救済基金の設置、②かねてから求めてきた旧統一教会と政府・与党の癒着を調査する国会の特別委員会の設置を求めています。被害の救済と更なる被害を防ぐためにも一刻も早く実現すべきです。このことを訴え、私の質問を終わります。