2024年2月21日 国民生活・経済及び地方に関する調査会 参考人質疑

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、竹信参考人、山口参考人、筒井参考人、お忙しい中、ありがとうございます。

私は、ALSという難病で人工呼吸器を付けているため、声を出すことができません。そのため、事前にいただいた資料を基に作成した質問をパソコンの音声読み上げで質問させていただきます。本日お聞きした内容が反映されていなかったり、また、お聞き苦しいところがあるかもしれませんが、御容赦いただければ幸いです。

では、質問に移ります。

まず、3人の参考人の皆様に、障害当事者の立場からお伺いいたします。

今の雇用労働施策は基本的に長時間働ける男性健常者をモデルにつくられており、障害や慢性疾患のある人、あるいは子育て、家族介護などに携わる人は周辺に追いやられていると感じています。

私も、40歳の頃、ALSを発症するまで商社マンとして海外を飛び回り、家事、育児は家族に任せきりでした。全身麻痺で働けない、それどころか24時間の介助を必要とするというギャップを受け入れるまで非常に大きな葛藤があり、死にたいとばかり考えていた時期もありました。しかし、現在、必要な医療的ケアと介助、コミュニケーション支援を受け、また、参議院から合理的配慮を受けて、こうして国会議員として働くことができています。

国会議員は非常に特殊な仕事で、一般化するのは難しいかもしれませんが、多くの障害者も働いて自立したい、社会参加したいと考えています。

私のこうした感じ方について、竹信参考人、山口参考人、筒井参考人から一言ずついただければ幸いです。

○参考人(竹信三恵子君)

非常に重要な御指摘だと思います。

障害をお持ちの方と女性の状況ってとても似ています。先ほど何度か指摘していますように、子供がいると短時間労働になるから有期雇用になれと言われ、そこにちゃんとした同一労働同一賃金がないために、極端に貧困的な、貧困化するような労働条件で働かなくちゃならない、これが今の女性の状況、一般的な状況ですよね。

そのために、ケアがないと言われている男性型の働き方の人に非常に依存をしなくちゃいけなくて、そこにDVが発生したりすることさえあるという、とっても人権侵害的な状況になっているということは事実なんですよね。

なので、おっしゃったように、様々なシステムがあって合理的配慮、これは障害のある方だけじゃないと思います。先ほどの、何で子供がいるという当たり前のことをちゃんとやっているために配慮してもらえないのかとか、それから、どうして生理痛があるからといって我慢して働き続けなければいけないのかとか、それを言うと一人前の労働者じゃないと言われてひどい扱いを受けたりするとか。これって、その体験は全く重なっていて、何か、そのように日本って標準型の妻が付いている男性モデルじゃないとまともに生活できないというちょっと異様な事態になっていることに問題があるので、それをそれぞれがちゃんと働ける仕組みに基準を変えるんだというのは、今日皆さんおっしゃっていることだと思うんですけど、その基準を変えていく。それが今おっしゃったような障害のある方もちゃんと働けるということにつながっていくというふうに思いますし、そのためには、働けない場合でもいろんなセーフティーネットがあって何とかなるというような、ユニバーサルなセーフティーネットがやっぱりないとまずいんだということをはっきり分からせるものだと思うんですね。

ということで、そのような大転換というか、それが必要な時期に来ている。女性の問題というのは、ほとんどもうそのためのバリエーションみたいなものだということを申し上げたいと思います。

○参考人(山口慎太郎君)

舩後議員の御指摘のように、長時間労働を前提としており、専業主婦を持つような男性を中心としたような働き方になっており、結果として、病気の方、介護をされる方、子育てする方、障害をお持ちの方というのは周辺に追いやられているという御認識はそのとおりだというふうに感じております。

まず、大前提として、障害があろうが病気であろうが、介護、子育ての責任があるような方が合理的配慮の下で力を発揮できるような社会にするというのは、もう人権の問題で大前提だというふうに感じております。その上で、そうした多様性、包摂性のある社会というものには一定の経済合理性もあるものだというふうに認識しております。今、少子高齢化で労働力不足が言われていますが、様々な方の力を総動員して社会の、経済の活力を入れていかなければならないというふうに考えています。

人によっていろいろな働き方が必要だったり助けが必要だったりするわけですが、逆に言えば、配慮をすることによって、その人が真に持つ能力を発揮することができるようになるわけです。そうすれば、結果的に経済も社会も活性化していくわけですから、人権の問題であるというのが大前提でありつつも、経済合理性も踏まえた方向であるというふうに認識しております。

○参考人(筒井淳也君)

私の専門分野は社会学という学問で、特に私は家族社会学を専門にしておりますが、家族社会学でもここ最近の集中的な議題の一つがやはりケアなんですね。これは、ケアが必要な人、それからそのケアが必要な人のケアをする人、この二つの集団に関して特に就業の面で不利に、極端に不利になってしまうというこの問題を、じゃ、どういうふうに社会的に解決していくのかというところでいろんな議論が交わされているということです。

他方で、ケアが必要な人、これは家族社会学ではよく依存という言葉を使いますが、どうしても身近に集中的なケアをしてくれる人がいないとなかなか生活が困難になってしまう、これ依存する人、依存者という言い方をしますが、この依存する人という、実は、その依存と自立というのは相対的な概念なので、実はばりばり働けるように見えている男性でさえどこかでは依存しているんですよね。

ですので、根本的に人は誰かに依存している人というのはあるのですが、他方で、特に就業に困難を感じるようなそのケアが必要な人、それからケアをする人というのは、これ、実は全ての人にとってそうなる可能性はあるということなんですよね。たまたま健康、いわゆる普通な生活が、日常的な介助が必要なく働けて、しかも、家事さえも免除されてしまうような男性がずっと長い間活躍してきた時代があったんですけど、それさえも今はおかしいと。ケア、ある程度全ての人がケアを引き受けなければいけないし、場合によっては人生のどこかでケアが必要な人になっていくという可能性がある、そういったことを認識すると、人々が最低限将来、将来に向けて安心した生活を行っていくためには、ケアが必要な人あるいはケアラーの人への手当てというのをやはり行政が安心して提供しますから、人生どういう状況に入ったとしてもある程度継続して働けるんだよというメッセージをどこかで担保しておく必要があるのかなと思います。

今のところ、行政というよりは、ケアは家族に集中しているのが現状です。これは実はどの国もそうなんですよね。どの国も、もう最低限やっぱりその身近なケアをする人は家族なんだという前提で制度をつくっているんですけど、ただ、そのケアをする人の負担というのをどういうふうに減らしていくのかというところで若干国によって違いがあるということなんですよね。

ですので、そういったその公的な仕組みをつくることによってケアに関する不安や困難というのを取り除いていくことが、例えば若い人にとって、将来、ああ、ある程度は私も安心して暮らしていけるんだなという、なかなか政治家の方もちゃんとやってくれているんだなというような、その安心感をどこかで与えてくれるようなその行政的な仕組みですよね、これ、今やっぱり伝わってないと思うんですよ。どうしても不安ばかり感じているところがあるんですよね。

なかなか、その不安感というのの大きなところはやっぱり失業なんですけど、ただ、やっぱりケアが必要になった、必要になる場合に、じゃ、どれぐらい助けてくれるのかということに関してもやっぱり不安を覚えている人は多いと思うんですよね。この不安感をどこまで取り除くことができるのかというのは、社会全体の課題として、特に政治の課題として大きいのではないかと思います。

以上です。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次に、筒井参考人、竹信参考人にお伺いいたします。

お二人の資料の中で、男女雇用機会均等法は、性別役割分業の上に成り立つ男性の長時間労働を正社員モデルとして定式化し、かえって女性の非正規雇用を拡大したという指摘がありました。そして、男性も雇用の調整弁としての派遣、有期雇用という非正規に投げ込まれ、2023年12月の非正規雇用労働者は、男性労働者の23%、女性労働者の54.3%にまで広がっています。このような状況の中で、非正規雇用から正規への転換、失業給付などの社会保障の強化などは当然必要と考えます。

その一方で、賃金格差をなくすために、正規、非正規にかかわらず、同一労働同一賃金、ジョブ型雇用を進める必要があるという意見もあります。この意見に関して、お二人のお考えをお聞かせください。

○参考人(筒井淳也君)

では、先に私が回答いたします。質問ありがとうございました。

正規雇用と非正規雇用の賃金格差の問題、この問題は日本において特に鮮鋭に現れる。それは、同一、類似の職種においても賃金格差を許してしまうような働き方ですよね、こういったところが一つ原因にあるんではないかというのが私の考えで、その問題を克服するために、同一職種であれば大体類似の賃金になるという仕組み、欧米、これはグローバル基準はそうなっていると思うんですけど、こういったものを導入するというのが一つの道筋ではあるかなと思いますが。

これは実は先ほど申し上げた副作用に関係するところで、社会全体、割と大きな仕組みを変えるときには必ず副作用が生じるんですよね。この副作用というのの大きな一つは、やはりジョブ型雇用の社会というのは、特に若年者の失業が高くなるんですよね。日本は、実は若年者、非正規雇用化はしているんですけど、失業自体はそれほど大きくならないんですよね。ですので、何か問題を解決しようと思えば、どこかで新たな問題が出てくるという、ここが実は社会を動かす上での非常に困難な課題になるんですね。

ただ、そう言っているうちはなかなか動かないですので、やはり私は、雇用外の生活保障ですよね。ここは、例えばいろんなやり方があるんですけど、スウェーデンなんかで割とやられているのが、雇用の外にある人に積極的な職業訓練なりあるいはそれを雇用の世界に戻すようなサポートですよね、これ日本ももちろん存在するんですけど、支出の規模がやはりまだ少ないですよね。

こういったところも併せて、要するに、ジョブ型、同一労働同一賃金の社会にしていったときに生じる、生じる得る副作用もちゃんと見据えながら制度改革をやっていくという、これが必要になってくるのではないかと思います。

以上です。

○参考人(竹信三恵子君)

今のお話に加えまして、そういったものを実現するためには、やはり働く側といいますか、人々からの圧力、賃上げ圧力や社会保障強化の圧力が必要であると思います。

日本でそれがなかなか進まなかったというのは、企業別で、なかなかそれがみんなで横断して一緒にやっていくということができない。企業別って悪くはないところもあるんですけど、企業別労働組合が何が大変かというと、自分の働いているところを強化するためにみんな協力してくださいというのが企業別組合の非常に持ち味なんですよね。だから、パイが全体に広がっていれば自分のところも広がっていくからいいんですけど、そうでもない社会になってくると、うちの企業が潰れたら困るでしょう、だから君たちも頑張ってくださいねといって従業員をむしろ一体化させてしまうというマイナスの効果があるわけです。

だけど一方で、企業横断型になりますと、その壁を越えていますから、社会全体としてどれだけ働く人の取り分を増やしていくのかというようなことに視点が向かう。そうなると、当然賃金の上での同一労働同一賃金も必要になってくるし、それが万一駄目で首になったときも、その横断型の労働組合に残ることが理論的には可能です。

つまり、企業別は、その会社首になったらもうメンバーシップはなくなるので、企業のメンバーでさえも、あっ、違う、ごめんなさい、労働組合のメンバーでさえもなくなってしまう。だけど、横断型に、企業横断型の組合に属していれば、職種として、仮にその会社を首になっても、その中でまだメンバーとして残っていることが可能になるというような仕組みですね。そうなると、国によっては失業者まで組織しているという組合が出てきていたりしますよね。

そのような形で、人間って失業したり就職したりいろいろするので、必ず働くということとセーフティーネットということは一体になって、それを働く側のためにどのように整備するかという総合的な視点が必要になったときには、企業横断型のネットワークなり労働組合なりがやっぱり必要になってくるということはもうやっぱりあると思います。

そういう形にしておけば、仕事を失った人たち、また障害を持ってしまったケース、労働災害とかも当然ありますから、それから子供がいて働けなかったとか、いろんなケースの人をそれなりに中に組織して圧力として行使させていくことができる可能性を持っていますので、そのような組織づくりというものを狭い意味の労働組合に限らなくてもいいのでやっていく必要がある。そうしないと声が出てこないということですね。一人で言うのって大変ですけど、集まると声が出るという、そういう特性が人間は社会的存在なのでありますから、それを意識した形でのシステムをちゃんとつくり直していくことも併せて必要だということをお話伺っていて思いました。

○舩後靖彦君

本日は、参考人の皆様から貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

これで質問を終わります。