2024年3月26日 参議院予算委員会質疑(訪問介護の基本報酬引き下げに反対!)

○委員長(櫻井充君)

次の質疑者の舩後靖彦君の発言席の準備をしておりますので、しばらくお待ちください。

次に、舩後靖彦君の質疑を行います。舩後靖彦君。

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

予算委員会での質問は初めてとなります。私は、ALSという進行性難病の影響で人工呼吸器を付けており、声を出せません。パソコンによる音声読み上げと代読によって質問いたします。よろしくお願いいたします。

厚労大臣に、介護保険サービスの料金体系、介護報酬についてお尋ねいたします。

高齢によって心身が不自由になった人にとって介護サービスは欠かせません。特に、住み慣れた家で暮らすための訪問介護は、言葉どおり命綱。しかし、政府は命綱を断とうとしています。2024年度からの改定で訪問介護の基本報酬を引き下げたのです。

厚労省によると、訪問介護については介護職員の賃金アップに使える処遇改善加算の加算率をアップしたと減額分を補えるかのように説明しますが、ミスリードです。全く加算を取得していない事業所が取得すれば補填になりますが、既に頑張って取得した事業所はマイナスになる可能性があります。

資料1を御覧ください。

都内のある事業所は、既に加算を取得していることから、基本報酬の引下げにより年間77万円の減収になると試算します。マイナス改定が何を導くか。小規模で必死に取り組んできた事業所の撤退です。

資料2を御覧ください。

記事にもあるNPO法人サポートハウス年輪理事長の安岡厚子さんに話を聞きました。ヘルパーの身分、地位は30年前から上がっておらず、むしろ悪くなっていると危機感を募らせ、今回の改定について、ふざけるな、介護の仕事がばかにされているという気持ちと吐露してくれました。

加算拡充では解決しません。マイナス改定を撤回すべきです。大臣、答弁をお願いします。

○国務大臣(武見敬三君)

地域包括ケアシステムの構築を推進をし、住み慣れた地域でできる限り暮らしていただくためにも在宅サービスを整備していくというこの方針、方向性は全く変わりがございません。

その上で、今般の介護報酬改定においては、介護保険制度全体のバランスを取って財源の配分を行う必要がある中で、介護現場で働く方々の処遇改善を着実に進める観点から、訪問介護については、基本報酬の見直しを行いつつ、処遇改善加算については他の介護サービスよりもより高い加算率を設定することとしております。

また、訪問介護については、介護の他サービスと比べても給与費の割合が高く、人手が確保できなければ経営の維持、拡大が特に難しい事業であると認識をしております。その一方で、訪問介護は他のサービスと比べて処遇改善加算の取得状況は全体としては低い傾向にございます。

その意味で、まず訪問介護員の処遇改善を行い、人材の確保、定着を図っていくことが訪問介護員の方の暮らしの安定はもとより、訪問介護事業所の安定的な運営のためにも重要であると考えました。

このため、既に取得している事業所は新たな処遇改善加算の体系に早期に移行していただくことで介護職員の賃上げを実現できるようしっかりと支援することとともに、今般充実させた各種加算の取得を通じて、より質の高いサービスの提供を後押しすることで、地域で必要な介護サービスが安心して受けられる体制を整備してまいりたいと考えます。

○舩後靖彦君

いかに現場の声に耳を傾けていないのか、よく分かる答弁です。

厚労省の説明どおり、加算で賃金アップを果たせたとして、見込める介護職員の賃金アップは幾らになると試算しますか。端的にお答えください。

○政府参考人(間隆一郎君)

お答えいたします。

今般の介護報酬改定では、政府経済見通しで令和六年度の全産業平均の1人当たりの雇用者報酬の伸びが2.5%と、物価上昇率と同水準と見込まれている中、こうした見込みと整合的にベースアップを求めているところです。

この2.5%のベースアップというのは、介護職員全体平均で1人当たり月額約7500円相当と考えておりまして、このほかに定期昇給等による伸びもあり得るというふうに、あると考えています。

また、訪問介護事業所は、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、処遇改善加算の取得状況が他のサービスと比較して低い状況にございまして、例えば、処遇改善加算未取得の事業所が新たな処遇改善加算のうち最も低い加算を取得した場合であっても、月額3万円以上の処遇改善が可能になると、このように考えております。

○舩後靖彦君

全然足りません。

資料3を御覧ください。

全産業平均と介護職員の賃金格差は7万円弱あります。しかも、事業所の中には、より大きい加算を取れるけど、利用者負担が増えたり使えるサービスが減るのを避けたりするため、利用者のためにあえて取らない事業所もあると聞きます。

これを踏まえると、事業所の我慢や利用者負担増に頼るのではなく、国が税で人件費を補填し、少なくとも全産業平均まで引き上げるしか手段はありません。

大臣、答弁をお願いします。

○国務大臣(武見敬三君)

介護職員については、全産業平均に比べて給与が低い状況が続いております。こうした事態に対応して、人材確保を図るために、公的価格を見直し、これまで累次の処遇改善を講じてまいりました。こうした取組の成果により、全産業平均との差は縮小をしてきたところです。

介護保険制度は、保険料負担、公費負担、利用者負担の適切な組合せにより国民皆で支え合うことで持続可能なものとしております。介護職員の処遇改善については、こうした枠組みの下で、国民の理解を得ながら介護報酬で対応していくことが基本と考えております。

その上で、政府経済見通しで令和6年度の全産業平均の1人当たりの雇用報酬の伸びが2.5%と物価上昇率と同水準と見込まれている中で、まずは物価高に負けない賃上げとして令和6年度2.5%のベースアップを求めており、これを実現するために処遇改善加算の取得促進に全力を尽くしていきたいと思います。

○委員長(櫻井充君)

舩後君が発言の準備をしていますので、お待ちください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

このままでは介護をする人がいなくなってしまいます。大臣、私を介護してくれますか。

○国務大臣(武見敬三君)

私は、介護保険制度そのものを持続可能な形で維持しつつも、サービスを必要とされる方々にしっかりとそのサービスを提供させる、その政策を統括する責務を負っておる立場でございます。その点についての御理解をいただければと思います。

○委員長(櫻井充君)

発言の準備をしますので、お待ちください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

大臣、私の質問を御理解されていないと存じます。いざとなったら私を介護してくださいますか。

○国務大臣(武見敬三君)

先ほども申し上げたとおりであります。

私は、介護を必要とされる方々に対して、その制度自体を持続可能な形で維持しつつも、必要とされる方々にそのサービスを提供する、その政策を統括する責務を負っておる立場にございます。その点についての御理解を是非よろしくお願い申し上げます。

○舩後靖彦君

深刻さを理解しているとは思えません。介護労働者を軽んじています。

次の質問に移ります。

今回の加算拡充政策の中で、介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件などを見ると、厚労省は生産性向上を強調されています。この狙いをお答えください。

○国務大臣(武見敬三君)

これからもこうした介護のサービスの需要はますます高まる一方であります。生産年齢人口の急速な減少が見込まれる中で、介護人材の確保というのは喫緊の課題でございます。介護サービスの質を確保しながら、介護ロボットやICT機器等のテクノロジーを活用した介護現場の生産性向上を一層推進していくことが必要と考えます。生産性向上の取組が進めば、例えば、残業時間が減るなどの職員の負担軽減や、職場環境の改善などを通じて介護職員の定着も図られ、持続的な処遇改善がしやすくなる環境が整備されることを期待しております。

こうした生産性向上の取組を更に進める観点から、今般の介護報酬改定における処遇改善加算の要件の見直しを行うとともに、テクノロジーを活用した業務改善を継続的に行う取組を新たに評価する加算の創設などの対応を行ったところでございます。

引き続き、介護現場の業務改善や勤務環境の改善に取り組んでいきたいと思います。

○舩後靖彦君

この生産性向上、人手不足の中で、少ない人数で効率的に仕事を進めていくということでしょう。それが何を招くのか。身体介護で介護しやすい利用者をたくさん受け持ち、効率よく稼ぐということです。

こぼれ落ちるのは誰か。私のように、胃瘻やたん吸引など医療的ケアが必要で、コミュニケーション支援を必要とする人たちです。介護保険では、手間が掛かって効率が悪い利用者として切り捨てられてしまうのです。現場からは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居できない経済弱者が更に増え、そうした人たちが頼るはずの訪問介護の担い手がいないことを危惧する声も聞こえています。

国がすべきことは単純です。介護労働者の待遇を国の責任で守ることです。政府が進めるマイナス改定には断固として反対し、今からでも、原則1割負担の利用者負担の在り方、人件費を国が税で補填するなど、根本的な制度設計の改革をすべきだと訴え、私の質問を終わります。

○委員長(櫻井充君)

以上で舩後靖彦君の質疑は終了いたしました。(拍手)

本日はこれにて散会いたします。