2024年5月21日 文教科学委員会質疑(インクルーシブ教育について)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。
4月18日の文教科学委員会で、高校受験の定員内不合格について、自治体任せでは最終募集段階で600人以上が落とされている、各自治体の高校入学選抜の実施要領を東京都のように募集人員に対して過不足なく決定するとできないかという私の質問に対して大臣は、一部の自治体で行われているように、できるだけ定員を満たすやり方が広まるように各自治体に周知徹底を図っていきたいと答弁くださいました。今までより一歩踏み込んだ答弁に、定員内不合格の問題に取り組んでいる方々は大いに励まされました。
委員会質疑の後、千葉県で定員内不合格となった受験生とその親御さんと面談いたしました。資料1を御覧ください。7年間で27回、うち25回は定員内不合格とされ、28回目の受験を前に2019年11月に急逝された渡邊純さんのお母様も、純さんの遺影とともに参加されました。
資料2でお配りした純さんのお母様の手紙にあるように、純さんは、落とされても落とされても決して諦めることなく、ただ普通に生きるだけと進んでいきました。小学校、中学校と障害のない同級生とともに学び育ち、障害のあるなしにかかわらず平等に生きる社会を信じていました。私は、純さんのように悲しい思いをもう誰にも味わってほしくはありません。
そこで、大臣にお願いです。
都道府県の中には、秋に追加募集するところもあります。私が関わった千葉県でも、この春、定員内不合格にされた二人のお子さんが秋の受験に再挑戦します。秋の追加募集に間に合うよう、通知にて大臣答弁の趣旨を各都道府県に周知していただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(盛山正仁君)
先日、4月のこの委員会でも御答弁させていただきましたが、高等学校入学者選抜の方法などは実施者であります都道府県教育委員会等の判断で決定し、入学者については、各校長がその学校及び学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力、適性等を入学者選抜により判定するものであります。
その上で、学ぶ意欲を有する生徒に対して学びの場が確保されることは重要であります。定員内不合格になった生徒さんがその後の学びの機会を得られなくなってしまうようなことは極力避けるべきであると考えます。
このため、文部科学省におきましては、従来から、定員内不合格自体が直ちに否定されるものではないとしつつ、定員内でありながら不合格を出す場合にはその理由が説明されることが適切であることを示しております。
各教育委員会等において入学者選抜の在り方を検討するに当たっては、文部科学省が実施している調査結果等を活用して、定員内不合格を出さないよう取り扱っている例を含め、他の教育委員会における入学者選抜の実施方法等を参照していただくことについて、今後速やかに周知する予定であります。
○委員長(高橋克法君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(高橋克法君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
書き忘れましたが、純さんは亡くなる直前まで高校生になることを期待していました。あとは定員を満たすことを、地方自治体の真摯な対応を望むばかりです。
次の質問に移ります。
次に、文部科学省が令和4年4月27日付けで出した特別支援学級及び通級に関する適切な運用についての通知に関してお伺いします。
この通知は、一部の自治体で特別支援学級在籍の子供が、大半の時間を交流及び共同学習として通常学級で学び、特別支援学級において障害の状態や特性及び心身の発達の段階などに応じた指導を十分に受けていない事例があるとして、是正を求めたものです。
是正を求められた大阪府の自治体では、1979年の養護学校義務化後も地域の学校で共に学び、育つ教育を推進してきました。支援学級に対して通常学級を原学級と呼び、支援学級に在籍する子供たちも支援学級担任が一緒に通常学級に入り込んで障害のない子供たちとともに学ぶ原学級保障という独自の取組です。この方式で共に学んできた当事者と保護者が、学びの場の選択を迫り共に学ぶ時間を制限するのは人権侵害だとして、大阪弁護士会に人権救済申立てをしました。2024年3月22日、大阪弁護士会は、盛山文部科学大臣宛てに、特別支援学級に在籍している児童生徒について、原則として週の授業時間数の半分以上を特別支援学級において授業を行うことを求める部分は人権侵害のおそれがあるとして撤回を勧告しました。
これに対して盛山大臣は、3月29日の定例記者会見で、我々は、インクルーシブ教育を目指したものと考えており、大阪弁護士会さんがなぜこのような勧告をされたのか理解できませんとお答えになっています。この見解は、国連障害者権利委員会から通知の撤回を勧告されたことに対して永岡大臣が述べた見解と同じです。つまり、特別支援学級で半分以上過ごす必要のない子供については通常学級在籍に変更することを促すとともに、特別支援学級在籍者の範囲をそこでの授業が半分以上必要な子供に限ることを目的としたもので、インクルーシブを推進するものと考えるということです。
この言葉どおりに受け取りますと、特別支援学級で週の半分以上を過ごす必要のない子に関しては、合理的配慮や必要な支援を受けながら通常学級籍で学ぶことを基本とするということになりますが、大臣、そう捉えてよろしいですか。また、その場合、特別支援学級で週の半分以上過ごす必要があるかないかは誰が判断することになるのでしょうか。教育委員会ですか。学校ですか。それとも本人、保護者の希望で選べるのでしょうか。お答えください。
○国務大臣(盛山正仁君)
舩後先生御指摘の令和4年4月の通知は、一部の自治体において特別支援学級に在籍する児童生徒が大半の時間を通常の学級で学び、特別支援学級での障害の状態等に応じた特別な指導を十分に受けていない実態があることが明らかになったことから、それまでお示ししてきた内容をより明確化した上で、改めて周知するために発出したものであります。
具体的には、特別支援学級に在籍する子供の範囲をそこでの授業が半分以上必要な子供に限るとともに、その必要のない子供が特別支援学級に在籍している場合には通常の学級に在籍を変更することを促すこと、こういったことを目的としたものであり、これはむしろインクルーシブというものを推進しているものであると我々は考えております。
その上で、障害のある児童生徒の学びの場の判断は、障害の状態、教育的ニーズ、学校や地域の状況、本人及び保護者や専門家の意見などを総合的に勘案した上で市区町村の教育委員会が行うこととなっております。
○舩後靖彦君
まずは本人、保護者の希望を尊重した決定が行われることを強く望みます。
しかし、教育委員会が本人、保護者の意向を聞き、学びの場を選択してもらうにしても、選択すること自体に無理があるから人権救済申立てがされたのです。通常学級に変更した場合、特別支援学級担任によるサポートが得られず、手厚い支援や指導ができなくなるのではないかという不安の声に対し、文科省は、特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について、QアンドAで次のように回答しています。通常学級に障害のある子が在籍する場合、担任などによる合理的配慮を含む必要な支援や、特別支援教育支援員の配置によるサポートの対応は考えられます、また、通級による指導も受けられますと。しかし、支援員は教員ではなく、教科の授業を行うことはできません。担任の指示の下で、本人ができないことの補助をするだけです。
今回の通知で是正を求められた自治体では、支援学級担任が通常学級に入り込み、通常学級の担任とともに遅れがちな子の学習のサポートをしたり付添い指導をするなど、単に学ぶ場を同じくするだけでなく、共に学ぶための手厚い教育を実践してきました。そのため、通常学級籍に変更後は、支援学級担任の入り込みによる合理的配慮、個別支援がなくなることになります。支援学級在籍でほとんどの授業を通常学級で受けてきた障害のある子にとって、現在の学級定員や教員の多忙の現状を考えると大きな不安と不利益をもたらすことになります。
大阪弁護士会の勧告書発表の記者会見で、当事者のお子さんのどちらか片方だけとか、少しの時間しかいられないとか、決められるのは嫌、お友達と一緒がいいというコメントが紹介されています。分け隔てられることなく共に学ぶことは基本的人権であり、子供にとって何よりも重要な教育ニーズです。
その一方で、支援学級担任による支援がない状態で通常学級籍を選ばなければならないことは、合理的配慮の提供と有効な教育を促すための必要な支援を一般教育制度内で保障することを定めた障害者権利条約24条2項(c)と(d)に違反しています。
文科省が、通知はインクルーシブ教育を進めるためというのであれば、通常学級籍で学ぶ障害のある子に今までと同様の合理的配慮と個別支援を保障していくべきと考えます。大臣、いかがですか。
○国務大臣(盛山正仁君)
今おっしゃられました舩後先生の御指摘についてでございますけど、そもそも特別支援学級は、そこでの教育を必要としている児童生徒に対して個々の障害の状態や特性等に応じた特別な教育課程を編成し、少人数でのきめ細かい指導を行うために設置されているものであり、この学級での教育のため、教育を行うために配置されているのが特別支援学級の担当教員であります。
その上で、特別支援学級から通常の学級に在籍を変更した児童生徒に対しては、学級担任等を始め特別支援教育支援員による必要な支援の実施や一人一人の障害の状態等に応じた指導方法等の工夫や学習効果を高めるICT機器の活用、そして通級による指導の活用など、合理的配慮の観点も踏まえ、教育委員会や学校において適切な支援体制を整えていただくものと考えております。特別支援教育支援員ではなく、学級担任以外の教員によるサポートが必要な場合には、教育委員会の判断で別途教員を配置していただくことも可能であると考えております。
我々文部科学省としては、引き続き、通常の学級で学ぶ児童生徒に対して適切な支援がなされるよう、各自治体や学校の取組を支援してまいりたいと考えています。
○舩後靖彦君
代読いたします。
大阪の原学級保障の取組には歴史的な経緯があります。1970年代、部落解放運動による人権教育を実践する中で、障害児が教育から排除されていることに気付いた豊中市の教職員の取組から始まりました。一クラス50人近くの子供がいる中、障害のある子供への合理的配慮という考え方も介助員などの人的資源もありません。人手を確保するために障害児学級と通常学級に二重に在籍する苦肉の策が取られ、実際の授業、活動は、障害児学級担任が入り込んで通常学級で行ってきました。その実践の積み重ねが、大阪では、障害があってもなくても共に学び、育つことが当たり前、小中学校で共に過ごした仲間と共に高校でも学びたいという願いを受け、定員内であれば不合格を出さないよう、出さない、出さないとする大阪府教委の方針になったのだと私は理解しています。
同じ1970年代、イタリアは統合教育に向かいました。1992年の障害者の支援、社会統合、諸権利法により、幼稚園から大学まで、全ての学校教育段階でインクルーシブ教育が保障されました。通常学級で支援を必要する子供がいる場合は、学級定員を25人から20人に削減、支援教員の加配などの環境整備をしました。同様に、80年代以降、世界は統合教育へ、そして、1994年のサラマンカ宣言以降、インクルーシブ教育へ転換しました。
しかし、日本ではこの潮流に逆行し、養護学校を義務化し、障害の種類と程度で分ける教育を進めました。特殊教育から特別支援教育へ、障害者権利条約の批准後はインクルーシブ教育システムへと名称は変わりましたが、障害のある子供の学ぶ場を特別支援学校、支援学級、通級、通常学級と分ける原則は変わっていません。分けた場での手厚い教育が原則とされ、通常学級で共に学ぶための環境整備と合理的配慮、個別支援のための人も財源も十分ではありませんでした。
その中で、大阪では、共に学ぶ教育を維持するために、二重籍で原学級保障という方法を続けてきたと言えます。文科省の通知は、学級定員など構造的な変更を伴わずに、授業の半分以上を通常学級で受けている子供は通常学級籍にしてしまえと言っているに等しいものです。
大臣、本当にインクルーシブ教育を進めていくのであれば、通常学級の定員削減、教員の加配、校舎のバリアフリーなどの環境整備を行い、障害のある子の教育の場を原則通常学級にする必要があります。即実現できるものとは考えておりませんが、まずは通常学級で学ぶための環境整備推進の方針、方向性だけでも示していただけませんでしょうか。
○国務大臣(盛山正仁君)
文部科学省におきましては、障害のある児童生徒の自立と社会参加を見据え、一人一人の教育的ニーズに的確に応える指導や必要な支援が行われるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の整備を進めるとともに、いずれの場で学ぶ場合においても、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に学ぶことができる環境整備を進めております。
障害のある児童生徒が通常の学級で学ぶことができるようにするため、きめ細かな指導等を可能とするための教職員定数の改善、外部専門家や特別支援教育支援員の配置に対する財政的支援、学校施設のバリアフリー化に対する補助を行うなど、必要な支援体制の整備に向けた支援を行っております。
また、その特別支援学校、そちらの、での教育を受けたい、つまりインクルーシブ教育システムではない特別の、個別のその教育を受けたい、そういうようなお子さんあるいは親御さんもいらっしゃるということでございまして、引き続き、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が可能な限り共に学ぶことができる環境の整備に努めていきたいと考えています。
○舩後靖彦君
代読いたします。
インクルーシブ教育の根幹はまず分けないこと、共にいることは人としての権利です。どこに住んでいても当たり前に地域の学校で共に学び育つことができるよう、文部科学省に更なる取組をお願いし、質問を終わります。