2025年3月27日,31日 文教科学委員会質疑・反対討論(大学等修学支援法案)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
早速、大学等修学支援法改正案についてお伺いいたします。
大臣は、本改正案の趣旨として、こども未来戦略に基づき、高等教育費により理想の子供の数を持てない状況を払拭するため、多子世帯の学生などについて授業料などを無償化することが必要と説明されました。そして、法改正によって、住民税非課税世帯に加え、扶養する子供が三人以上、かつ大学などに通っている世帯が無償化の対象となります。
2022年の国民生活基礎調査では、18歳未満の子供がいる世帯は推計で991万7000世帯、このうち子供が3人以上の世帯は125万6000世帯で、子供のいる世帯の約12.7%、全世帯割合では2.3%と圧倒的に少ないです。
そもそも、今、生活が苦しい、子育て、教育費にお金が掛かって子供が欲しくても持てないという世帯に対して、子供3人扶養していれば十数年後の高等教育費が無償になるからといって子供をもう一人持とうという気になれるでしょうか。こども未来戦略の少子化対策としてはほとんど意味を成していません。
しかも、求人、転職サイトのMS―Japanが2024年に行った実態調査では、管理部門と弁護士、税理士などの士業で働く人限定ではありますが、子供が3名以上の世帯の六割が世帯年収1000万円以上という結果が出ています。
東京大学大学院医学系研究科特任研究員坂元晴香氏ほかの研究でも、高収入、高学歴の世帯ほど子供を持っている人の割合及び3人以上子供がいる人の割合が多かったとあります。
つまり、今回の改正で恩恵を受けるのは少数の多子世帯であり、かつ、その多くが高所得層ということになります。一方、子供2人以下の年収約300万円から約600万円の中間所得層には何の恩恵もありません。
今回の法改正の目的が教育費の負担が重いため理想の数の子供が持てない状況を払拭するためであるなら、既に3人以上子供がいる世帯を収入に関係なく支援するのではなく、子供を持てない、あるいは2人目、3人目が欲しいけれど経済的に苦しくて諦めている低中間所得層の世帯を全額無償にすべきではないですか。
大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
令和2年度から低所得者世帯の学生等を対象といたしまして開始しましたこの高等教育の修学支援新制度におきましては、今年度から、負担軽減の必要性の高い多子世帯やいわゆる私立の理工農系の学生等の中間層の対象を拡大し、経済的な困難な家庭の支援の充実を進めてきたところでございまして、その上で、今般の制度改正におきましては、子育て、教育費により理想の子供の数が持てない状況が子供3人以上を理想とする御夫婦の間で特に顕著でございまして、この状況を払拭するため、こども未来戦略に基づきまして、喫緊の課題であります高等教育費の負担軽減のため実施をするものでございまして、教育の機会均等の観点から低中所得者世帯の支援の拡充も必要な視点ではございますが、先ほど申し上げたように、少子化対策の観点から喫緊の課題に取り組むことも重要でございまして、この点に関して御理解をいただきたいと考えております。
○舩後靖彦君
確かに、子供3人以上いれば高額所得世帯でも大学まで通わせるのは経済的に大変なことは理解できます。れいわ新選組は、積極財政で所得制限なく大学院までの学費を無償にし、奨学金は給付型にして、奨学金という借金はチャラにと訴えています。そのため、所得制限を撤廃して学費無償化を進めることは大賛成です。
しかし、今回の改正で所得制限を撤廃し全額無償に拡大されるのは、扶養する子供3人以上かつ大学などに通っている世帯となります。これでは、子供3人世帯の場合、一番目の子が大学卒業して就職し扶養から外れると、下の子供は全額無償から外され、一部減免か全く支援なしということになってしまいます。子供の数を条件にすることによって、修学支援のはしごを外された学生にはその時点でアルバイトに奔走しなければならないという弊害が起きるわけです。
大臣、こうした制度設計の欠陥をそのままにして、本当に多子世帯への修学支援になるとお考えですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
委員にお答えさせていただきます。
今回の制度改正におきましては、3人以上を同時に扶養している期間が最も経済的な負担が重い状況であることから、財源が限られている中にございまして、負担が集中しているこの期間の世帯を優先して支援をすることにしたものでございます。
まずは、この制度を着実に実施に移させていただき、その効果を見定めながら、更なる負担軽減と支援の拡充についても、論点を整理した上で十分な検討を行いながら取り組んでまいりたいというふうに思います。
○委員長(堂故茂君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(堂故茂君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
大臣、財源を限ってすることが問題です。
以下、用意した原稿を代読いたします。
あべ大臣自らが財務省やこ家庁を巻き込み、修学支援に必要な財源を獲得すべきです。これまでの大臣の御答弁からは、危機感が感じられません。子育て、教育費の負担にあえぐ子育て世帯を支えるため、本気で財源確保に取り組んでいただけませんか。大臣、答弁をお願いいたします。
○国務大臣(あべ俊子君)
本当に、文部科学省としては、希望する誰もが質の高い教育を受けられるよう、この教育費の負担軽減に取り組むことが、まさに委員がおっしゃるように重要だというふうに考えておりまして、今回の三党合意の内容の実現に向けまして、御党の御意見もしっかり拝聴しながら取り組んでまいりたいというふうに思います。
○舩後靖彦君
次に、修学支援の対象となる学生の要件についてお伺いいたします。
学生の認定に係る基準及び方法については文部科学省令で定められるとされていますが、適格認定の成績要件はどのようになるのでしょうか、お答えください。
○政府参考人(伊藤学司君)
お答え申し上げます。
高等教育の修学支援新制度の成績要件の見直しでございますけれども、これにつきましては、令和5年12月に閣議決定をいたしましたこども未来戦略において、多子世帯の学生等の授業料等の無償化に当たっては、対象学生に係る学業の要件について必要な見直しを図ることを含め早急に具体化することとされたことを踏まえ、有識者会議を開催し検討を行ってまいりました。
具体的な内容でございますが、出席率については、現行は5割以下である場合に支援を打ち切ることとしておりますが、有識者会議においては、出席率は学生等本人の学修意欲や努力による要素が大きいとの意見、また、現行の要件である5割以下はより厳しくすべきであるとの意見等があったことを踏まえ、6割以下を要件とすることとしております。
また、修得単位数については、現行は、標準単位数の5割以下である場合には支援を打ち切り、6割以下であった場合には学生等本人に警告をすることとしておりますが、関係団体からの意見聴取において、標準単位数の六割以下は留年が決定する低さであり警告の意味を成さないとの指摘があったこと等を踏まえ、水準をそれぞれ1割引き上げることとしてございます。
なお、疾病、災害等のやむを得ない事由がある場合は支援の打切り等は行わないこととしております。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
令和7年度からの学生の適格認定の基準では、出席率6割以下、修得単位数6割以下で支援打切り、出席率8割以下、修得単位数7割以下で警告になるとのことでした。さらに、現行の基準では、成績評価が学部などの下位4分の1以下で警告、警告2回連続で支援停止となっており、それもそのまま継続されるようです。
確かに、大学で学ぶための支援ですから、学業成績は必要かもしれません。しかし、完全に学費無償で給付型奨学金を受けられるのは極めて少数であり、多くの学生は支援を受けてもアルバイトに時間を取られています。また、家庭の経済状況と成績は比例しており、世帯所得が高い家庭の子供ほど学力、学歴が高い、いわゆる教育格差が固定化して、成績は学生個人の努力だけではどうしようもありません。
大学の教員にお話を伺うと、私が大学生であった1970年代、80年代の頃と今の学生は全く違い、今の大学に授業をサボる学生はほぼいない、出席率9割、8割は当たり前。したがって、相対評価では、普通に卒業できる成績であっても学業成績不振の烙印を押されて支援から外れてしまう。熱心に学ぶ学生だけ支援すればよい、成績の悪い学生に支援するのは無駄というのは時代錯誤だとのことです。支援に成績要件を付けることに対して、お金のある家庭の子は勉強しないでほしい、成績で支援から外れても学費を払ってもらえるのだから、うちの収入で支援を切られたら大学を続けられなくなるという学生すらいるとのことです。
学生たちを分断し、教育格差をますます固定化しかねないこの弊害の大きな成績要件は撤廃すべきです。せめて卒業できる成績に緩和すべきと考えます。大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
高等教育の修学支援新制度におきましては、支援を受ける学生がしっかりと学べるように、公費によって支援を行う制度でございます。この制度の目的や趣旨を踏まえますと、進学後の十分な学修状況を見極めた上で支援を行うことができるよう、学修意欲に加えまして、学修成果の質の観点から一定の学業要件を設定しておりまして、今後も必要だと考えています。
また、学修成果の質を見る観点からは各科目の評定、すなわち相対評価の平均値であるGPA、これを用いまして一定の成績を修めることを求めていることについては、客観的な成績評価を行う方法として広く導入されているところでございまして、学生等に対する履修の学修支援と一体的に運用されているところなどの利点や効果などを踏まえて設定をさせていただいているところでございまして、GPAは現に進級、卒業の要件、また大学独自の奨学金選考等の基準としても用いている学校もございまして、この取扱いは私ども妥当であるというふうに考えております。
○舩後靖彦君
次に、修学支援の対象となる大学などの機関要件についてお伺いいたします。
現行法の修学支援制度において、修学支援の対象から外れる経営要件として、私立学校では、次のいずれかに該当する場合、対象機関としないとされています。
①直前3年度の経常収支が全てマイナス、かつ前年度の運用資産と外部負債の差額がマイナスであること。②定員充足率が直近の3年連続で8割未満の場合、ただし就職・進学率が9割を超え、かつ直近の年度の定員充足率が5割以上の場合は確認取消しを猶予。
この確認要件は、改正修学支援法においても変更なしでしょうか。
○政府参考人(伊藤学司君)
お答え申し上げます。
高等教育の修学支援新制度は、大学等の経営が継続的かつ安定的に行われることを確認するために、一定の教育や経営に関する要件、機関要件を満たす大学等を対象機関としてございます。この機関要件においては、大学等の経営困難から学生等を保護する観点から、令和6年4月より、収容定員の充足率の要件を満たさない学校については制度の対象外とする見直しを行ったところでございます。
一方、この枠組みは維持しつつも、中央教育審議会における高等教育へのアクセス確保の議論も踏まえ、地域の経済社会にとって不可欠な専門人材の育成に貢献している大学等へ配慮する観点からこの機関要件の見直しを行うこととしており、現在、省令改正の準備を進めているところであります。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
修学支援制度が使えない大学は、学生から選ばれず、大学にとって死活問題です。定員充足率を上げるため、定員を縮小せざるを得ない状況に追い込まれています。しかし、定員を縮小して学生数が減れば、経営が悪化して学生への教育にも悪影響が出て悪循環です。そもそも、少子化、地方の人口流出は加速化し、全国で59%に当たる354の私立大学で定員割れが起きており、大学の自助努力で何とかできる問題ではなくなっています。
定員充足率を条件にすることは、大学の淘汰、再編を加速化させ、地域の教育機関を細らせる結果となります。地方において若い世代の流出は拡大し、地域に必要な教育、介護、看護、保育人材、理工系専門人材の枯渇につながります。その意味では、確認大学の要件を緩和し、地域の経済社会にとって重要な専門人材育成に貢献していると大臣が認める場合は確認取消しを猶予するという変更については歓迎いたします。
日本は、大学、短大、高専、専門学校などの高等教育機関への初回進学率が74%で、OECD平均の57%に対して高くなっています。しかも、高等教育機関に初めて入学する平均年齢が18歳と、OECD32か国平均の22歳に比べ最年少となっています。兵役はなく、高校卒業後そのまま大学などへの高等教育機関へ進学する人が圧倒的だからです。その一方で、社会人、引退後に高等教育機関で学ぶ人は、欧米に比べ圧倒的に少なくなっています。
少子化で18歳未満人口が急激に減少する中、定員充足率、経営収支で地方の大学を淘汰していくのではなく、18歳から22歳以外の年齢の人が専門知識、技能を学び直せる場とすることで、地域が生き残るための拠点としての高等教育機関にしていくべきと考えます。大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
委員にお答えさせていただきます。
いつも委員の質問は、さすが元商社マンで、数字がしっかり出ているので、いつも感銘を受けて聞かせていただいております。そうした中で、地域の大学がすごく、地方大学大切ということは本当に私どももそう考えておりまして、特に、高等教育の修学支援新制度におけるこの機関要件、支援を受ける学生がしっかりと学べるように、公費で支援することも踏まえながら、この大学等の経営が継続的かつ安定的に行われることを確認するために設けておりまして、私立大学等の撤退を促すことを目的としているわけではございません。
その上で、急速な少子化の進行によりまして大学入学者数が大幅に減少する厳しい状況の中におきましては、各地域の質の高い高等教育へのアクセス確保、これを図りながら、各大学が自らのミッションを再確認しながら高等教育全体を適正な規模に見直すことが必要であるというふうに考えておりまして、文部科学省としては、地域のまさに委員がおっしゃるその学び直し、リスキリングのこの拠点としての高等教育機関の体制整備、さらには、地域の産官学等の関係者が社会人の学び直しも含めた地域における人材育成の在り方等を議論して実現していく地域構想推進プラットフォームの構築などを推進しながら、少子化の中でも知の総和の向上を目指して取り組んでまいります。
○舩後靖彦君
大学等修学支援制度は、低所得世帯の高等教育へのアクセスを支援することを目的に創設され、その後、中間所得で多子世帯、理工農系の大学などに通う子の世帯へ支援を拡充してきました。
今回の改正で所得制限をなくし、多子世帯に完全無償化を拡大しました。予算が限られている中、少子化対策の観点から、まずは多子世帯への支援を拡充するといいますが、収入が少なく、子供が欲しくても持てない、もう一人子供が欲しいが、子育て、教育費にお金が掛かってとても無理という世帯に対しては手当てされず、何ら少子化対策になっていません。
そもそも日本は、公的支出に占める教育費割合がOECD加盟諸国の中で3番目に低く、かつ大学などの高等教育に係る費用の家計の負担割合は2021年時点で51%、比較できる30か国の平均19%に比べ、はるかに高くなっています。
2012年9月、日本は中等、高等教育における無償教育の漸進的導入を定めた国際人権A規約の13条2項(b)、(c)に関する留保を撤回し、加盟160か国のうち最後から2番目にようやく批准いたしました。それから8年たって、大学等修学支援制度が始まりました。余りにも遅過ぎます。その間に大学の学費は値上がり、家計の負担が増すとともに、学生がアルバイトで生活費、学費を稼ぎ、奨学金という借金を抱えて卒業することに追い込まれています。
今回の法改正がこうした状況を改善するとは到底思えません。教育は未来への投資であり、受益者は社会全体です。財源不足を言い訳にせず、積極財政で所得制限なく大学院までの学費無償化、奨学金は給付型にし、誰もが家庭の経済条件にかかわらず、負担を気にせずに安心して学べる社会にすべきと訴え、質問を終わります。
反対討論
○舩後靖彦君
私は、れいわ新選組を代表し、大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。
本法案は、子育てや教育費により理想の数の子供が持てない状況を払拭し、今最も子育て負担が重い多子世帯の負担を軽減するために、所得制限を取り払って標準学費を全額無償とする内容となっています。
しかし、扶養する子供の数を条件とするため、2人以下の子供を扶養する層には法改正の恩恵はありません。しかも、子供が3人の場合、上の子供が卒業して扶養から外れると、親の収入区分によって、残り2人は支援が全くなくなるか、減少してしまいます。これでは、教育費の負担にあえぐ多くの家庭にとっての支援にはならず、少子化対策として的外れな制度設計と言わざるを得ません。
また、対象となる学生の要件を厳格化することは、学生の中で分断を生み、経済格差の固定化、強化につながります。
さらに、対象となる大学などの確認要件は、少子化、人口流出で経営に苦しむ地方の中小私立大学にとっては、規模の縮小、淘汰に追い込まれかねません。学生にとって大きな不利益となるだけでなく、若年人口が流出し、地域に必要な専門人材の枯渇、地域活力の衰退につながってしまいます。
以上、本改正案は、急速な少子化と人材不足の中、高等教育費により理想の子供の数を持てない状況を払拭するという目的に何ら合致せず、矛盾に満ちた制度設計と言わざるを得ません。
今何よりも必要なのは、積極財政で教育予算を大幅に増やして高等教育までの無償化を実現、奨学金は給付型にし、誰もが家庭の経済条件にかかわらず、負担を気にせずに安心して学べる社会にすべきと申し上げ、討論を終わります。