2025年4月15日 参議院文教科学委員会質疑(定員内不合格をなくして)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
国会議員となり、障害のあるお子さんの高校受験に関わって5年半。毎年この時期は定員内不合格の問題について質問させていただいています。
昨年4月18日の私の質問に応えて、文科省は6月25日、各教育委員会等においては、定員内不合格を出さないよう取り扱っている例を含め、ほかの教育委員会における入学者選抜の実施方法などを参照していただくようお願いする通知を発出いたしました。改めて感謝申し上げます。
同級生たちが高校生として新たな生活を始める中、定員内不合格で行き場を失った千葉県の障害のある二人は、この通知に励まされ、空き募集の三部制高校の午前部と午後部を受験しました。受験後、二人はやり切ったとすがすがしい笑顔だったそうです。しかし、どちらも定員に満たない中、午前部受験の受験生は合格、午後部の受験生は不合格でした。高校はその理由を、学ぶ意欲が読み取れなかったと説明しました。
不合格の受験生は、レット症候群という難病で、情報のインプットはできるが、アウトプットが難しく、言葉が出ない、手が使えないなどの障害があります。それでも作文や面接の練習をし、受験に臨みました。受験生の障害特性、努力を理解せず、読み取ろうとしない学校側にこそ問題があります。しかも、校長は、新聞社の取材に、不登校や外国籍の生徒のケアに追われ、障害を持つ受験生を受け入れるのは困難と答えています。これは、障害者に対する排除、差別です。
千葉では高校生になれないと判断し、東京に引っ越した受験生は、この春、都立高校を受験して合格しました。障害の状態は何も変わらないのにです。違いは、都教委が定員内不合格は想定されないとしており、各高校がそれを遵守しているからです。
大臣、この自治体間格差、高校生になるために住み慣れた地域と同級生と離れて引っ越さなければならないこの不合理をどう考えますか。
○国務大臣(あべ俊子君)
舩後委員にお答えさせていただきます。
学ぶ意欲を有する生徒に対して学びの場が確保されることはまさに重要でございまして、定員内不合格になった生徒がその後の学びの機会を得られなくなってしまうようなことは極力避けるべきだというふうに考えています。
他方で、高等学校入学者選抜の実施方法に関しましては、この実施者である都道府県教育委員会等の判断で決定をし、入学者については、各校長が、その学校及び学科等の特色を配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力、適性等を入学者選抜による判定するものとなります。
文部科学省といたしましては、これまで定員内不合格を出さないように取り扱っている例を含めまして、ほかの教育委員会における入学者選抜の実施方法等を参照するなどしていただくとともに、合理的な説明となっているかどうか、検討していただきたいことに関しても通知で示しているところでございまして、引き続き、様々な機会を通じながら、その趣旨について周知、情報発信に取り組んでまいりたいというふうに思います。
○舩後靖彦君
私が把握する限り、千葉県以外にも、静岡、熊本、香川、沖縄で障害のある受験生の定員内不合格が起きています。もちろん、定員内不合格は障害のある受験生だけではありません。福島、山口、高知、宮崎、沖縄県では、それぞれ100人、200人を超す不合格者を出しています。
静岡で一昨年、昨年と定員内不合格になった脳性麻痺の受験生は、昨年と同じ全日制高校の福祉科を受験し、不合格。同校の定時制の二次募集を受験しましたが、4人受験し、ただ一人、定員内不合格でした。県教委、受験校と合理的配慮について話合いを重ね、この高校で学びたいという意欲は十分伝わっています。学ぶ意欲がないことを不合格理由にはできません。そこで高校が挙げたのは、定時制の夜間四年間通って学ぶ強い意思を確認できなかった、定時制は全日制と違い規模が小さく、面接で福祉を学びたいと答えたが、福祉科はない、定時制を理解していないでした。
3年連続で全日制高校を定員内不合格とされ、夜間通う大変さはあっても、これ以上浪人できない、その強い覚悟を持って定時制を受験した受験生に言う言葉でしょうか。障害があり福祉を必要とするからこそ、同年代の人たちと福祉を学びたいという思いから、全日制では福祉科を目指しました。定時制に福祉科がなくても、多様な背景を持つ生徒が通う場で福祉的な学びはできるはずです。
1989年の文部省告示、高等学校学習指導要領の指導上の配慮についてには、学習の遅れがちな生徒、心身に障害のある生徒については、各教科、科目などの選択、その内容の取扱いについて必要な配慮を行い、生徒の実態に即した指導を行うこととあります。
そうした配慮を尽くしても定時制で学べないと判断した理由を問われ、校長は、受け入れるには体制を整えることが必要、それなしには難しい、県教委から定員内不合格を出さないという明らかな指示があって様々な対応ができるというのであれば、違った対応ができたかもしれないと答えています。
千葉県同様、体制不足を理由にしていますが、条件整備や合理的配慮が整わないことを理由に不合格とするのは、障害者差別であり、あってはならないと考えます。大臣、いかがですか。
○国務大臣(あべ俊子君)
文部科学省といたしましては、令和5年12月に文部科学省の所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針を改正させていただきまして、その趣旨について各都道府県に通知を行うとともに、各種会議等を通じまして周知を行っているところでございまして、図っているところでございまして、この中におきましては、合理的配慮のない基本的な考え方といたしまして、実施に伴う負担が過重でない際には、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、必要かつ合理的な配慮を提供しなければならないこと、代替措置の選択も含め、双方の建設的な対話による相互理解を通じまして、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされる必要があることなどを示しておりまして、入学者選抜実施者におきましても、これを踏まえて適切に対応していただきたいと考えているところでございます。
引き続き、障害者差別解消法、また合理的配慮の趣旨が適切に理解されるよう、周知に努めてまいりたいというふうに思います。
○舩後靖彦君
代読いたします。
もちろん高校の現状を無視していいとは思いません。教員不足、多忙化の中で、様々に課題を抱えた生徒への対応に苦労している現場の環境改善は急務です。しかし、それを障害のある受験生を不合格にする理由にしていいはずはありません。
静岡県教委も、入学後の合理的配慮について検討したといいます。しかし、条件整備や合理的配慮に関して面倒を見るから、学ぶ意欲のある受験生を受け入れるようにとの指導はしていません。そして、静岡県教委は、文科省も定員内不合格自体が直ちに否定されるものではないと言っているとして、適格者主義を崩そうとしていません。
文科省は2012年の中教審高等、高等学校教育部会において、高等学校への進学者が98%に達し、高校は国民的な教育機関として位置付けられている、家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある生徒の後期中等教育段階の学びを支援するとしています。
6.25通知の趣旨を踏まえ、自治体、高校が、義務教育後も学びたいという子供たちに真摯に向き合い、定員内であれば引き受けることを期待しておりましたが、残念ながらそうはなっていません。
障害児を普通学校へ全国連絡会が都道府県教委に行ったアンケート調査では、6.25通知を受けて、志願者数が定員に満たない場合の対応などに変更の予定があるかとの質問に対して、あると答えたところはゼロ、未定は6でした。高校での新たな出会いと学びを希望しながら、定員内不合格で受入れを拒否され、同世代とのつながりを絶たれる損失は、計り知れません。理不尽な自治体間格差をなくし、学ぶ意欲のある生徒を取り残さないために、学校教育法施行規則第九十条の改正を提案いたします。
高等学校の入学は、入学者選抜に基づいて、各校長が許可するを、入学者選抜に基づいて、定員を超過した場合、各校長が許可する、つまり、校長が合否判定するのは定員オーバーのときのみとするわけです。大臣、御検討いただけませんか。
○国務大臣(あべ俊子君)
入学者につきましては、各校長がその学校及び学科等の特色に配慮しながら、その教育を受けるに足る能力、適性等を入学者選抜による判定するものでございまして、この定員内不合格自体が直ちに否定されるものではないというふうに考えています。
文科省といたしましては、このいわゆる文科省が実施する高校入試に関する調査結果を活用しながら、ほかの教育委員会における入学者選抜の実施方法を参照するなどしていただくとともに、合理的な説明となっているか検討いただきたいこと、また、学ぶ意欲を有するこの中学生の進学先の確保につきましても、教育委員会の高校担当部署と中学校の担当部署が連携するなどして、確認、分析するとともに、今後の域内の高校政策のいわゆる検討につなげていただきたいことについて、通知では示させていただいているところでございます。
引き続き、様々な機会を通じて、その趣旨につきまして、終始情報発信、取り組んでまいりたいというふうに思います。
○委員長(堂故茂君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(堂故茂君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
高校に行きたい子供たちを誰一人取り残さないでください。
以下、事前に準備した原稿を代読いたします。
2020年には高校進学率は99%となり、来年度からは、私立高校を含め、ほぼ全額授業料無償で高校に通うことができる時代です。一部の進学校、ブランド校を除き、高校は選ばれし者が行くところではなく、義務教育を終えた子供たちが新たな出会いと、より幅広い学び、社会に出るための力を付ける場と、その役割を変えています。
子供の成長はあっという間です。同世代とともに学び、経験を共有する貴重な時間を定員内不合格で奪わないでいただきたい。住んでいる自治体や受験する高校の判断で定員内不合格が生じたり生じなかったりの自治体ガチャ、高校ガチャを国の責任でなくしていただくことを再度お願いして、質問を終わります。