【任期最後の質疑】2025年6月12日 文教科学委員会質疑(学校バリアフリー/インクルーシブ教育)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

質問に入る前に、この間体調を崩して重要広範の給特法改正案の質疑を欠席しましたことにつき、一言申し上げます。

委員長始め委員会の皆様に御心配をお掛けいたしました。また、この法案の当事者であり審議を注視していただいた全国の教職員、学校関係者の皆様には、質疑を通して法案の問題点をただすことが十分にできなかったことは大変残念であり、じくじたる思いでおります。

では、質問に移ります。

まず、5月15日の一般質問で時間の都合で質問できなかった学校バリアフリーに関する質問をさせていただきます。

2024年度のバリアフリー化実態調査の結果によると、校舎も屋内運動場も2年前の調査時から数ポイントしか改善されておらず、五年間の整備目標は完全に達成困難な状況です。しかも、バリアフリー化の整備計画策定方針がある学校設置者は31.9%にとどまっており、これでは着実な学校バリアフリー化の進展は望めません。

自治体にバリアフリー化の整備計画策定を義務付けるべきと考えますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(あべ俊子君)

舩後委員にお答えさせていただきます。

委員会にいらっしゃらなくて本当に心配しておりました。そうした中で、委員にお答えさせていただきます。

公立小学校等の既存の施設につきましてでございますが、バリアフリー法におきましてバリアフリー化が努力義務というふうにされているところでございますが、文部科学省におきまして整備目標を掲げておりまして、この学校施設のバリアフリー化を推進してきたところでございます。他方、整備目標に対するバリアフリーの整備状況でございますが、まだ実は低調でございまして、その達成に向けて今着実に進捗させるためにこの一層の取組が必要であるというふうに私どもも認識しているところでございます。

今、このため文部科学省におきましては、現在、有識者会議を設置し、学校施設のバリアフリー化の推進のため理論を進めているところでございますが、その中におきましては、各学校の設置者におきまして整備計画が策定されることが重要というふうに指摘もされているところでございます。

文科省といたしましては、有識者会議の議論を踏まえながら、バリアフリー化を推進するための一方策といたしまして、自治体における整備計画の策定に関する目標を設定することも私ども今検討しておりまして、各学校設置者における着実の取組、この促進をしっかりと図ってまいりたいというふうに思います。これからも御指導よろしくお願いします。

○舩後靖彦君

調査結果から、避難所として使用されることの多い屋内運動場のバリアフリー化が特に遅れていることが分かります。地震だけでなく大規模な水害が増えており、垂直避難が必要となる中でのバリアフリーの重要性を考慮すると早急な対応が迫られます。

また、体育館のステージに車椅子で上がるためのスロープやリフトはほとんどの学校で整備されていないと思われます。学校の行事などで子供たちがステージに上がることは日常的にあります。

屋内運動場のバリアフリー化において、ステージに上がるアクセス整備も一緒に進めるべきと考えますが、いかがですか。

○政府参考人(笠原隆君)

お答えいたします。

文部科学省では、災害時の利用も考慮しまして、学校施設バリアフリー化推進指針におきまして、屋内運動場なども含めた学校全体のバリアフリー化を図ることが重要であるということを示してございます。

また、障害のある児童生徒等が支障なく安心して学校生活を送ることができるようにする観点から、御指摘のございました体育館のステージへの昇降用のスロープですとか段差解消機の設置も含めて、その取組事例につきまして事例集も策定いたしまして周知を図っているところでございます。

引き続き、各学校の状況に応じて適切にバリアフリー化が進められるよう、必要な取組を推進してまいります。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

どの子も安全、安心に楽しく学校生活を送れるよう、学校設備の更なる整備をお願いして、次の質問に移ります。

私は、参議院議員となって第1回目の本委員会質疑から何度も、特別支援教育から分け隔てられることなく共に学ぶインクルーシブ教育への転換を訴え、そのための就学手続の変更や就学支援委員会の在り方の検討、共に学ぶための合理的配慮や環境整備について質問してまいりました。

その中で、看護師、特別支援教育支援員の配置などの合理的配慮、エレベーター設置などのバリアフリー化に関しては、予算や人手、物資不足の問題があり思ったようには進んでおりませんが、少なくとも推進、拡充の方向性で、厳しい予算獲得の中で文科省が努力していただいていることは理解しております。

その一方で、就学先決定、就学支援委員会の在り方の検討に関しては、国連障害者権利委員会の勧告にもかかわらず1ミリも進んでいません。そのため、子供の数は減少しているのに、特別支援学校、学級で学ぶ子供の数はうなぎ登りという現状があります。

これは、特別支援学級に在籍している子は、原則、週の半分以上を特別支援学級において障害の状態や特性及び心身の発達の段階に応じた授業を行うこと、大半の時間を通常の学級で学んでいる場合は学びの場の変更を検討すべきとした令和4年4月27日通知に象徴されるように、特別支援学級、学校に在籍しないと個々のニーズに応じた個別支援や学びが得られないからです。

通常学級に適応できない子供は通級教室、特別支援学級、特別支援学校という別の場で個々に応じて学ぶというインクルーシブ教育システムは、障害のある子供だけではなく、学校になじめない不登校の子供に対しても、今の学校の在り方を変えるのではなく、学びの多様化として学校の外に不登校特例校を設けて対応しようとしていることと同じです。そうして多様な学びの場という枝葉をどんどん増やして、本体の通常学校の幹がどんどん痩せ細っているのが今の学校教育の現状です。

地域の学校の同じ教室に多様な子供たちがいることで、そこから生じるトラブルやあつれきを通して互いを深く理解し尊重する態度が育まれ、共生社会の基礎となるのではないでしょうか。そうした異なる子供が共に学ぶ学校教育を成り立たせるために、授業、学校運営をインクルーシブなものにすることが求められています。

しかし、日本の障害のある子供の教育は特別支援教育の枠組みの中で行われてきており、通常学級の中で多様な子供たちが一緒に学ぶインクルーシブ教育のためのカリキュラムは想定されていませんでした。ようやく、1989年の文部省告示、高等学校学習指導要領の指導上の配慮についてで、学習の遅れがちな生徒、心身に障害のある生徒などについては、各教科、科目などの選択、その内容の取扱いについて必要な配慮を行い、生徒の実態に即した指導を行うことと盛り込まれました。

大臣、文科省として、通常学級で多様な子供が学び合うための柔軟な教育課程についての検討はどのようになされているのでしょうか。

○国務大臣(あべ俊子君)

文部科学省におきましても、障害のある子供一人一人の教育的ニーズ、最も的確に応えていくこの指導を提供できるように、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組を進めさせていただいているところでございます。

御指摘の通常学級における障害のある児童生徒の指導に関してでございますけれども、現行の小学校、中学校、高等学校の学習指導要領におきましても、個々の児童生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うことなどを示しているところでございます。

その上におきまして、次期の学習指導要領におきましては、この中央教育審議会におきまして、障害のある子供も含めた多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方についてまさに審議を今進めているところでございまして、文科省としては、障害のある子供たち一人一人のその教育的ニーズに応じました指導の更なる充実が図られるよう、しっかり検討を進めてまいりたいというふうに思います。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

今まさに次期学習指導要領の改訂に向けて教育課程企画特別部会で議論がなされ、多様な子供たちを包摂する教育課程の柔軟な対応が審議項目に挙がっているということです。

しかし、多様な子供たちに対して子供の発達課題や教育的ニーズに応じて個別支援計画を作成し、個別最適な指導を追求すると、同じ教室で別な進度の学習を個々ばらばらに行うようになりかねません。それでは個別指導をうたう学習塾や家庭教師とどこが違うのでしょうか。一対一の個別支援では得られない多様な子供たちが集団で学ぶことから生まれる集団のダイナミズムによって教員が予期しない結果がもたらされたり、多様な考え方や視点に触れる機会を逸してしまうことを危惧します。

学校現場では、全ての子供の人権が保障される学級づくり、学校づくりを目指して取り組んできた教員たちが、障害に基づく差別、排除をなくすために授業や学校生活において様々な工夫、合理的配慮をしながら、同一空間、同一時間、同一教材で共に学ぶ教育を実践してきた経験があります。ただし、これらの経験は実践報告という形で共有されてきたとはいえ、時代や場所を超えて共有しやすいようにデータ化して蓄積はされていません。そのため、共に学ぶ現場の教員個々の創意工夫に任されて、せっかくの教育実践の体系化がなされていませんでした。通常の学級において多様な子供たちが共に学ぶためには、柔軟な教育課程、そして柔軟な評価基準の設定が必要です。

大臣、中教審教育課程企画特別部会での議論に、特別支援教育の専門家だけでなく、通常学級で共に学ぶ授業実践をされてきた教員の経験、声が反映されるべきと考えますが、いかがですか。

○国務大臣(あべ俊子君)

委員にお答えいたします。

まさに、その実践をされてきた先生方、教員の声を反映していくということは私どもも重要だと思っておりまして、今、次期学習指導要領に向けました議論を行っている中教審の教育課程企画特別部会でございますが、インクルーシブな教育の在り方、御専門としている、学校現場でもまさに実践の経験がある有識者の先生方にもいわゆる御参画をいただいておりまして、この障害のある子供も含めた多様な子供たちを包摂するまさに柔軟なこの教育課程の在り方につきまして御審議を進めていただいているところでございます。

文部科学省といたしましては、引き続き、この通常の学級におきまして障害のある子供たちも含めた多様な子供が可能な限り共に学ぶことができる教育環境の構築に向けまして、今後設置する予定の専門部会等も含めまして必要な検討体制を整えてまいりますので、これからもまた御指導よろしくお願いします。

○舩後靖彦君

障害者権利条約24条、教育の解釈である一般的意見4号の分かりやすい版では、インクルーシブ教育とは、あらゆる可能性のある児童生徒、学生が同じ教室で一緒に学ぶことであるとあります。さらに、一般的意見4号パラグラフ十一では、インクルージョンの定義として、障壁を克服するための組織、カリキュラム及び指導、学習方法などの構造的な変更を伴わずに障害のある生徒を通常学級に配置することは、インクルージョンにならないとしています。

つまり、障害者権利条約は、障害のある子を含め、あらゆる子供が同じ教室で共に学ぶためのカリキュラムや指導、学習指導方法などの変更を求めているのであって、個別最適な学びのために学ぶ場所を分けることを求めているのではありません。子供を分けているのは大人であって、子供たちは分けられたがってはいません。

改めて、文科省に、分けた上での特別支援ではなく、同じ教室で必要な配慮を得て共に学び育つインクルーシブな制度に転換することを求め、質問を終わります。