2022年4月7日 参議院文教科学委員会質疑・反対討論(博物館法改正案について)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。
まずは、大臣に基本認識をお伺いいたします。
本改正の目的は博物館の質の向上という認識で間違いございませんでしょうか。
○国務大臣(末松信介君)
博物館の法の制定から、認識は間違いございませんです。
○舩後靖彦君
大臣が博物館の質を向上させるために最も力を入れるべき分野はどこだとお考えでしょうか。
○国務大臣(末松信介君)
本日、各先生方からいろんな意見も頂戴をしました。
博物館法の制定から約70年が経過しまして、博物館をめぐる状況が大きく変化する中で、今回の改正法案におきましては、法律の目的に、文化芸術基本法の精神に基づくことを追加をいたしました。この趣旨は、博物館がその事業を通じて文化の振興を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与する文化施設であることを明確化するものでございます。
博物館の質の向上には様々なことが必要となりますが、最も大事なことは、この法改正を機に各館のミッションに立ち戻って、限りあるリソースの中で文化施設として今何をすべきか改めて考えていただくことなど、館長を始め職員の方々の意識が変わることだと考えてございます。
このため、博物館では、貴重な文化資源の集積、管理と国民への展示、共有を通じまして、我が国の文化芸術の振興に寄与するとともに、文化施設としての使命を果たすために必要な活動の在り方や体制整備について、これは館長を中心にしっかり考えていただくことが重要と思います。
その上で、それぞれの地域において求められる役割や各館の状況に応じた機能を博物館が着実に果たしていくことによりまして、博物館が地域住民に親しまれ、信頼され、そういった存在となりまして、活動や体制が更に充実するという好循環が生まれることが、生まれてくることが大切だと思います。
○舩後靖彦君
私は、岸田内閣がうたう人への投資の強化だと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(末松信介君)
舩後先生の人への投資ということでありまして、その人というのは、やはり入館者のことを指されるかあるいは学芸員の方々など館を運営される方々などを指すか定かではございませんけれども、いずれにしましても、人が主体でございますので、先生の御趣旨も私は当たっているかと思います。そのようにも考えております。
○舩後靖彦君
本改正案では、学芸員の処遇改善や、正規学芸員がいない博物館への人的補充、学芸員の非正規化に対する歯止め対策など、人への投資の具体的施策が盛り込まれなかったと認識しております。
令和2年9月の日本の博物館総合調査報告書で、平成9年と平成25年の常勤職員の平均数を比較すると、1.61人減、一方、非常勤職員は0.85人増となっています。さらに、学芸員資格を持った常勤職員がいない博物館が全体の35.3%に及んでいます。
博物館の質を高めるためには、学芸員の方々への投資が不可欠です。なぜ改正案で人への投資が盛り込まれなかったのでしょうか。大臣、その理由をお聞かせください。
○国務大臣(末松信介君)
今回の改正法案につながります基本的な考え方を取りまとめました昨年末の文化審議会の答申では、お尋ねの学芸員制度の今後の在り方につきましては、実態の把握を行いながら中長期的な課題として引き続き検討していくことが提言されております。このため、今回の法案では学芸員制度の在り方について見直すことはしておりませんが、今後さらに関係者の方々から意見を伺いながら、引き続き文化審議会で議論を深めまして一定の方向性を得るべくしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
また、学芸員の処遇につきましては一義的には設置者の判断となることから、文部科学省としては、今回の改正法案を契機として、博物館と地域とのつながりを強め、地域からの信頼を確保していく施策を充実させながら、設置者に学芸員の専門性や果たすべき役割をしっかりと御理解いただきつつ処遇改善の機運を盛り上げていくことが大切と思っております。こうした認識の下、今後引き続きの施策の充実に努めていきたいと思います。
○舩後靖彦君
学芸員の非正規化に付随する問題があります。学芸員が非正規化することによって専門職として処遇されることがなくなり、科学研究費の申請が困難になっている点です。
博物館の環境整備を進める上で科学研究費の予算の積み増しは急務だと考えますが、大臣、この点についてどのような方策をお考えでしょうか。
○政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
自らが収集管理する資料等に関する調査研究を行うことは、博物館が従前から担っている重要な業務の一つでございまして、その役割は今回の改正にかかわらず十分に果たされていく必要があるものと考えております。
今御指摘の科研費、科学研究費補助金のうち、一部費目については、申請する研究者が大学等のほか、文部科学省が指定する研究機関に所属していることが必要ですが、博物館の中にもこの研究機関として指定されているものが約60機関あると承知しております。また、学会によっては、この研究機関としての指定を受けるために必要な申請に関してマニュアルを作成し、博物館の指定を支援している例もあると伺っております。
文部科学省としては、博物館における調査研究活動が円滑かつ十分に行われますよう、御指摘の科研費の申請も含め、各館の声や要望に丁寧に耳を傾けながら、必要な情報提供等に取り組んでまいりたいと考えております。
○舩後靖彦君
もう一点、本改正案で置き去りになった点について質問させていただきます。
今回の改正では、博物館館長の資格要件については手が付けられておりません。既存の博物館法では館長については人材の属性の規定がなく、非常勤の行政職の天下り館長や一般行政職の昇進ポストの一つとなっている現状が生まれる元凶となっているという有識者の指摘もあります。
令和元年度日本の博物館総合調査報告書によると、館長が学芸系職員の職歴を有する博物館の割合は13.8%とのことです。
こうしたことを踏まえ、館長は、原則、学芸員資格を有し、実務経験が豊富な常勤の専門家館長とすることを省令である博物館の望ましい基準に明記すべきと考えますが、大臣の御見解をお聞かせください。
○国務大臣(末松信介君)
博物館の館長は、館の展示内容に関する専門性への理解を有することはもちろんでございますし、館の魅力ある社会への発信、地域社会の関係構築など様々な役割が求められておりまして、博物館の事業全体をマネージメントする重要な役職であると認識をしております。博物館法第4条には、「館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、博物館の任務の達成に努める。」とあります。
それで、一方、その博物館ですけれども、その扱う分野によって多様な種類がありまして、具体的にどのような資質、能力を持った方が館長にするかは、館の目的とか特性、地域の実情、館の抱える課題等を踏まえましてそれぞれの設置者が判断しておりまして、国が一律の資格要件を設けることは慎重な検討が必要であると考えております。
その一方で、舩後先生御指摘のとおり、館長の資質の向上は重要なテーマでございます。このため、本改正案では、国、都道府県が館長に必要な研修を行うことを新たな規定にしてございます。法案の成立の暁には、新任の館長さんへの研修等によりまして資質向上に一層努めてまいりたいと、まずこれを一歩にしたいと思います。
○委員長(元榮太一郎君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(元榮太一郎君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
研修の具体的要件はお決まりでしょうか。
○政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
管理職の関係の研修につきましては、新任の館長、博物館館長の研修をもう措置しておりまして、管理運営や、博物館を取り巻く社会の動向などの研修を行うこととされております。
○委員長(元榮太一郎君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(元榮太一郎君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
今の答弁ではよく分かりませんでした。例えば研修期間がどのぐらいなのか、教えていただけませんか。
○政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
令和3年度に行われた例で申し上げますと、博物館館長研修は令和3年10月6日から3日間実施したところでございます。
○委員長(元榮太一郎君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(元榮太一郎君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
専門家になるには3日間の研修で十分だと思われますか。
○政府参考人(杉浦久弘君)
お答え申し上げます。
この三日間の研修につきましては、社会教育施設として、博物館の役割、機能、管理、運営、サービスに関する専門知識、また、博物館を取り巻く社会動向などについて学ぶということを趣旨といたしまして、責任者としての力量を高めるというところでございます。
今お尋ねの意味の専門の意味は学芸的な専門ということをおっしゃっていると思われますが、もしそういうことであれば、この研修で学芸的な、専門的な研究をしたりとか、そういう学ぶというものではないと思います。
ただ、そのような資質が求められるという博物館であれば、やはり設置者の方でも、そのときにその博物館が必要だということであれば、それはやっぱりそうしたふさわしい方を選んでいただくというのが基本でございまして、博物館の館長は、もちろん専門家も大切ですが、同時にマネジメントもありますので、今のようなこの研修は、この3日間のスタイルというのは、その全体を見た上でのスタイルとなってございます。
○舩後靖彦君
博物館を観光資源としてインバウンドの起爆剤とするためには、博物館に従事する人への待遇改善、予算増額が必須だと考えます。
大臣、法案成立後も引き続き具体的施策を講じていただきますようお願い申し上げて、質問を終わります。
◆反対討論
○舩後靖彦君
私は、れいわ新選組を代表して、博物館法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
本法案は、文化芸術基本法制定、文化財保護法改正、文化観光推進法制定との整合性を取ることが主な目的と言えると考えます。つまり、文化財の保存よりも活用を重んじるという政策の延長上にあります。
登録制度の改正や審査の見直しなどについては異論はありませんが、館長の資格や学芸員の処遇改善、科学研究費の拡充については手付かずでした。博物館の表側に関してはてこ入れはなされたが、肝腎の内側については放置されたと言っても過言ではありません。人への投資の強化をうたう岸田政権なら、本法案でも、学芸員の処遇改善や事務員の増強など、改正案の中に盛り込むべきです。
以上の理由をもって、本法案に反対をいたします。
御清聴ありがとうございました。
◆付帯決議で舩後の提案が盛り込まれる
この博物館法改正案に対しては、舩後議員以外の委員は賛成し、賛成多数で可決されました。
可決後、議決された法案に対する「意見」「提案」などを盛り込んだ「付帯決議」が提起されました。
舩後議員は法案には反対したうえで、この付帯決議で課題を盛り込むべきだと考えて一部の項目について提案し、一部採用されました。
舩後議員が提案した項目は
・学芸員、学芸員捕など専門的職員の育成・配置が重要であり、雇用の安定や処遇改善、財政的支援、調査研究助成などを充実させ、人材の育成・確保等に努める(3項)
・館長の専門職化(4項)
・博物館に対する財政上の措置の拡充や新たな税制上の優遇策の検討などの振興策(7項)
などです。
今後、改正法が施行されるにあたり、こうした課題がきちんと進んでいるか引き続きチェックしてまいります。