2023年3月9日 参議院文教科学委員会質疑(大臣所信に関する質疑/定員内不合格、高校受検における合理的配慮、教員不足)
○舩後靖彦君
れいわ新選組、舩後靖彦でございます。
本日は永岡大臣の所信についての質問ですが、そちらに入る前に、以前私が本委員会で質問したことで、令和四年度高等学校入学者選抜の改善に関する状況調査の中で初めて定員内不合格に関する実態調査を実施していただいたことと、高校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料を作成していただいたことについて、まずはお礼申し上げます。
その上でお尋ねします。文科省として、この調査結果と参考資料を今後どう生かしていくおつもりでしょうか。
○政府参考人(藤原章夫君)
文部科学省におきまして、昨年末、公立高校入試における定員内不合格の数等について初めて実態把握を行った令和4年度高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査の結果、これを公表いたしますとともに、高校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料、公表したところでございます。
定員内不合格に関する調査では、令和四年度の入学者選抜における定員内不合格者数、これは全国の延べ563校において延べ1631名が定員内不合格となったということのほか、各高校への指導、ヒアリング等、各都道府県教育委員会が定員内不合格に関して行っている取組等が把握をされたところでございます。
また、受検上の配慮に関する参考資料においては、各教育委員会が入学者選抜における受検上の配慮に関する基本的な考え方や配慮の例を整理してお示しをしており、各実施者において活用できるものと考えております。
定員内不合格に関する調査につきましては、各都道府県教育委員会において今回の調査結果を分析し今後の域内の高等学校政策の検討につなげていただきたいと考えており、文部科学省としても、定員内不合格に関する実態把握に引き続き取り組むとともに、調査結果についての周知を図り、各教育委員会における検討を促してまいります。
また、受検上の配慮に関する参考資料についても、教育委員会への周知を図り、引き続き入学者選抜において適切な配慮がなされるよう促してまいりたいと考えております。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
次に、定員内不合格実態調査の結果についてお尋ねします。
資料1を御覧ください。
定員内不合格者数、学校数を把握すらしていない自治体が6県ある一方、以前から定員内不合格を出していない東京、神奈川、大阪以外にも、埼玉、愛知、滋賀県で定員内不合格はゼロになりました。また、最終募集での定員内不合格がゼロになった自治体も4か所あります。都道府県の対応の差の大きさが分かります。
住んでいる自治体で定員内での合否が分かれるのは受験生にとって理不尽極まりない不利益です。この格差を埋めるために、文科省から、定員の確保と定員内不合格とする場合はその理由について明確に説明できるようにすること、その際、総合的判断のみの理由では説明責任が十分に果たされているとは言えないことを都道府県教育委員会がきちんと高等学校に指導するよう促していただきたく存じます。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(永岡桂子君)
高等学校入学者選抜につきましては、定員内不合格自体が直ちに否定されるものではございませんが、定員内でありながら不合格を出す場合にはその理由が説明されることが適切であると考えております。
入学者選抜の方法は各教育委員会や学校によって様々であることから、具体的にどのような理由を説明すべきかにつきましては一概に申し上げることは困難でございますが、求めがあった場合には、どのような考え方で選抜を実施したかにつきましては当該学校の持ちます社会的役割やアドミッションポリシーを踏まえましてできる限り説明いただきたいと考えております。
定員内不合格に関します調査結果や文部科学省としての考え方につきまして、各種会議等で説明することによりまして入学者選抜が適切に実施されますように各都道府県等に対し促してまいる所存でございます。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
義務教育修了後、ほぼ全員が高校に進学する中、籍が空いているにもかかわらず高校から拒否されることによって、中学までに培ってきた同世代とのつながりが絶たれてしまいます。障害のある子は就職もままならず、なおさら社会での居場所を失いがちです。障害のあるなしや家庭の事情にかかわらず、高校で学びたい生徒の学習機会を保障するために、文科省には更なる尽力をお願いし、次の質問に移ります。
高校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料には、受検上の配慮は、一人一人の障害の状況や教育的ニーズなどに応じて決定されるものであり、決定に当たっては、入学者選抜の実施者、教育委員会が体制面、財政面も勘案し、均衡を失した又は過度の負担について個別に判断することとなりますとあります。
つい先日行われたある市立高校の受験で、障害ゆえに自分で書くこと、話すことが困難な受験生に対して介助者による代筆と時間延長は認められましたが、解答を記述式から選択肢に変更することはほかの受験生との公平性から認められませんでした。市教委と話合いが持たれ、口頭で介助者に解答を告げることが困難であるため、記述式の解答方法では受験に参加することすらできず、ほかの障害のない受験生と平等ではない、全科目選択肢への変更が認められた自治体を参考にしてほしいと訴えましたが、そうした自治体に照会することなく、再度選択肢への変更は認められませんでした。
その上、面接において、事前に準備したカードを選んで回答する方法を提案し、カードの使用とそのカードを介助者が代読することを受験校の校長が認めていたにもかかわらず、受験日の5日前になって、県教委が駄目だというので認められないと市教委は受験生にとって不利益になる変更をしてきました。
障害者差別解消法の文部科学省対応指針には、個別の事案ごとに具体的場面や状況に応じた検討を行うことなく、一般的、抽象的な理由に基づいて障害者を不利に扱うことは、法の趣旨を損なうため、適当ではないこと、関係事業者は、個別の事案ごとに具体的な検討を行った上で正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましいこととあります。
しかし、このように教育委員会が受検上の合理的配慮を認めない場合、また行政の都合で不利益変更がなされた場合でも、相談窓口は当の市町村教委、都道府県教委であり、適正な対応がなされることは望めません。そのような場合、文科省としてはどのように対応をされるのでしょうか。
○国務大臣(永岡桂子君)
高等学校入学者選抜における配慮につきましては、関係者が事前に相談をし、そして連携して取り組んでいくことが重要でございますが、最終的には各高等学校、学科等の特色に配慮しつつ、実施者でございます各都道府県の教育委員会等におきまして適切に行われるものであると認識をしている次第でございます。
文部科学省といたしましては、この度、実施者が決定する際に参考となりますように、高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料を公表いたしまして、基本的な考え方や配慮の例を示すとともに、申請のあった受検上の配慮について、一部又は全部を実施しないことを決定した場合には、関係者にその理由を具体的に説明する必要がある旨を示しているところでございます。
文部科学省といたしましては、本資料の周知を含めまして、引き続き入学者選抜において適切な配慮がなされるように促してまいります。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
受検上の配慮に関する参考資料に合理的配慮の好事例を追加していただくとともに、合意に至らないトラブル事例などについても解決のための考え方の基本をお示しいただくことをお願いし、次の質問に移ります。
さて、事前に通告しておりませんが、大臣にお尋ねいたします。
レストランに車椅子で入ろうとしたら、それほど混んでいないのに、狭いから、段差があるから、車椅子用トイレがないなどの理由で入店を断られたとします。段差は二、三段なので、二人いれば持ち上げてもらえるし、トイレを使う必要はないと説明しても対応できないと断られました。
大臣、これは差別だとお考えになりますか。
○国務大臣(永岡桂子君)
今お話しいただきましたことは、やはり日本が目指します共生社会の実現に向けましては少々どうかなというふうには感じる次第でございますが、私といたしましては、これは文部科学省関係のことではなく、やはり社会通念上の話なのかなと思っておりますし、また、そこのレストランの考え方というものが、やはりちょっともう少し社会的に共生社会の実現に向けた取組ということで、もっともっと社会自体がその取組にしっかりと対応できるような、そういう方向に持っていかなければいけないなというふうには感じた次第でございます。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
同様に、障害のある子は、地域の学校に就学を望んでも、学校がバリアフリーでないから、あるいは、教育ニーズを考えて個別に丁寧にやってくれる特別支援学校の方が良いと就学支援委員会で判定され、地域の学校への就学通知を出してもらえないこと、これは差別ではないですか。
○国務大臣(永岡桂子君)
お答えいたします。
特別支援学校は、障害のある子供に対して教育を行います法律上位置付けられた学びの場でございます。自治体が就学先を総合的に勘案した結果、特別支援学校への就学通知を発出することが差別に当たるとは考えてはおりません。
○委員長(高橋克法君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(高橋克法君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
胸が痛みます。近所の子と同じ学校に通えないことは差別ではないのですか。
○国務大臣(永岡桂子君)
お答え申し上げます。
障害のある子もない子供も、就学先決定というのは各自治体の判断で行うものということでお答えを申し上げました。就学先に係りますその決め方というのは、これ、文部科学省の省内の有識者会議で検討した結果、令和3年6月に就学先決定プロセスにおきまして、本人及び保護者の意向を最大限尊重すべき旨を改めて示したところでございます。
そういうこともありまして、引き続きまして、就学先にはやはり合意形成、これは大変重要であると、そういうふうに考えている次第でございます。
合意形成と申し上げましたのは、就学先決定のプロセスにおいて本人と保護者の意向を最大限尊重すべき旨というものが大事であるということでございます。
○委員長(高橋克法君)
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(高橋克法君)
速記を起こしてください。
○舩後靖彦君
代読いたします。
合意形成がされていないから申しております。望む就学ができていないのです。
大臣にお伺いします。
○国務大臣(永岡桂子君)
引き続きまして、就学先の決定が適正に、適切に行われるように、周知徹底、努めてまいります。
○舩後靖彦君
私のところに、地域の小学校に入学希望の障害のある子の親御さんから、教育委員会とのやり取りをめぐり相談が寄せられています。看護師が見付からなければ、親が付き添わなければ、地域の学校は無理、発達に遅れもあり、本人の力を伸ばすために専門の指導ができる特別支援学校の方が良いなどと言われ、教育委員会とのやり取りに消耗させられています。あるいは、このようなトラブルを恐れて、本人、保護者の希望に沿って地域の学校に受け入れてくれる自治体に引っ越してしまう親御さんもいらっしゃいます。
就学先決定に当たっては、本人、保護者の意向を最大限尊重し、総合的判断で市町村が決めるとされています。しかし、実際には、本人、保護者の希望と市町村教諭の判断が分かれ、合意に至らないまま就学先決定がなされている場合があります。
そもそも、教育ニーズは本人のものであって、本人をよく知らない就学支援委員会の大人たち、特に本人を診たことのない主治医ではない医者が、本人にとって何が良いかを決められることではないと考えます。このことは、レストラン側がお客様のお口に合うメニューがございませんといって入店を断っているようなものです。
過去2回、本委員会で、就学時健診の通知と一緒に校区の学校への就学通知を送るようにすれば、地域の小学校を希望する障害のある子の就学拒否をなくすことが可能になると提案しました。しかし、文科省は考え方を変えません。地域の小学校を希望しているのに拒否され、引っ越しすらさせられている子供がいるんです。
この現状を大臣は御理解されていますか。法律を変えなくてもできることがあるのです。大臣、決断していただけませんか。
○国務大臣(永岡桂子君)
先ほども申し上げましたけれども、やはり、就学先の決定プロセスにおきまして、本人とそれ保護者の意向を最大限尊重すべき旨を示しているわけでございます。引き続きまして、就学先決定が適切に行われるように、しっかりと周知徹底努めてまいりたいと思っております。
やはり、文部科学省といたしましては、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごすための条件整備、また、一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備、これしっかりと取り組んでまいります。
○舩後靖彦君
障害者権利委員会は、全ての障害のある児童に対して通常の学校を利用する機会を確保すること、また、通常の学校が障害のある生徒に対しての通学拒否が認められないことを確保するための非拒否条項及び政策を策定することを勧告しています。
次回、2028年に予定されている権利委員会の対日審査でも同様の勧告が出ることのないよう、今後も就学先決定の在り方について提言をしてまいります。
次に、教員不足と教員の働き方改革についてお尋ねします。
インクルーシブ教育を進めるためには、学校の環境整備は必須です。何よりもOECD平均並みの少人数学級の実現と、教員の量と質の確保が必要です。しかしながら、近年、教員不足がますます深刻化しています。
資料2を御覧ください。2022年度実施の教員不足に関する実態調査で深刻な状況が明らかになっています。
新学期にクラス担任が配置できず、管理職が担任を代行したり、沖縄県では、教員不足を背景に、一部の公立小中学校で来年度の一学級当たりの児童数が40人に引き上げられる可能性があるという報道もありました。
教員採用試験の倍率も低下し、35人学級移行のため採用が増える一方、教員志願者は減少し、小学校の平均採用倍率は2.5倍。2倍を切るところも多く、大分県ではついに1倍になっています。
なぜここまで教員離れが進んでしまったのか、大臣、原因は何だとお考えになりますか。
○国務大臣(永岡桂子君)
近年、公立高校の教員採用選考試験、公立学校の、失礼いたしました、近年、公立学校の教員採用選考試験の受験者数の減少及び採用倍率の低下傾向が続いております。危機感を持って受け止めている次第でございます。
こうした採用倍率の低下の原因は、大量退職等に伴います採用者数の増加と、その中で既卒の受験者層の多くが正規採用に進んだことによります受験者数の減少によるものと認識をしております。
文部科学省といたしましては、教職志望者の増加に向けまして、教員採用選考試験の早期化ですとか複数回実施などの改善に取り組んでいるところでございます。また、教職を志す学生さんの声の一つとして、教師の勤務環境に対する不安もあると承知をしております。教師が安心して勤務できる環境を整備するための働き方改革も含めた教職の魅力向上に取り組んでまいる所存です。
○舩後靖彦君
ありがとうございます。
大臣は所信で、この春、公表予定の教員勤務実態調査の速報値を基に給特法の法制度的な枠組みを含めた教員の処遇の在り方を検討すると述べられました。また、昨年末、自民党内でも元文科大臣の萩生田政調会長をトップに教員の働き方改革推進を目指すとして、給特法の見直し検討を始めたとのことです。
2019年の給特法改正の際に、一年単位の変形労働時間制導入では教員の多忙の解消につながらないと反対いたしましたので、見直しは歓迎いたします。しかし、単に残業代4%の教職調整額を増やすことで月80時間超の残業が可能とされたらたまりません。教員の時間外勤務、休憩時間なしの現状を全て給特法の責任にして、労働基準法とは無関係としているところにひずみの原因があります。
給特法改正検討の方向性についてお聞かせください。
○委員長(高橋克法君)
時間が来ておりますので簡潔にお願いします。
○国務大臣(永岡桂子君)
はい。
文部科学省におきましては、令和4年度実施の教員勤務実態調査の結果等を踏まえまして、教師の処遇を定めた、これ給特法等の法制的な枠組みを含めて検討することとしております。こうした中、昨年12月には、今年の春頃に予定しております実態調査の速報値の公表後の円滑な検討に資するように有識者等から構成される調査研究会を設置いたしまして、給特法等の、等にですね、関係する諸制度や、また学校組織体制などについて幅広く情報収集や論点整理を進めているところでございます。
調査結果等を踏まえました検討の方向性につきましては、調査結果が出ていない現時点では具体的なことをお答えすることは困難ではございますが、働き方改革は、教員、教職員の定数や支援スタッフ、勤務制度、また校務効率化の在り方など様々な論点が総合的、複合的に関わる課題でございます。
今後、勤務実態調査の結果等を踏まえまして、教育の質の向上に向けて、働き方改革、処遇の改善、学校の指導、運営体制の充実を一体的に進めていきたいと、そう考えております。
○舩後靖彦君
代読いたします。
終わります。ありがとうございました。