2023年5月23日 参議院文教科学委員会質疑(読書バリアフリー法、LGBTQの子どもたちへの支援について)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。

まず、2019年に施行された読書バリアフリー法の進捗状況についてお尋ねいたします。

2020年6月と2021年5月の本委員会において、私は、読書バリアフリー法の環境整備のために出版関係者との検討の場を設けることについて質問いたしました。そのときにも申し上げましたが、私は、全身麻痺で、自分でページをめくって本を読むことができません。また、眼球の動きに制約があり、縦組みの文字は読めません。読書障害者でもある私にとって、この問題は我が事として非常に重要な問題であるわけです。

読書障害者といっても、全盲の人、ロービジョンの人、私のように眼球の動きに制約のある人、肢体不自由でページをめくることのできない人、難読症の人など、その状態は多様です。そして、それぞれにアクセス可能な形式も多様です。しかし、出版社が全ての形式に対応することは不可能ですので、ワンソース・マルチユースが可能である書籍のテキストデータ提供の仕組みを構築して、多様なニーズに対応していくことが読書バリアフリー法の肝ではないかと考えております。

2021年の私の質問に対して、経産省からは、2020年7月に公表された読書バリアフリー法の基本計画に基づき、読書バリアフリー環境整備のための電子書籍市場などの拡大に関する検討会を設置し、電子書籍などの製作及び販売などの促進並びに出版社からのテキストデータ提供の促進を図るため、その障壁となる課題解決に向けた方策について議論を開始し、出版社からのテキストデータの提供に関する今後の出版業界の取組を2021年度から着手するとの回答をいただきました。

その上で、令和3年以降の読書バリアフリー法の環境整備の取組状況をお教えください。

○政府参考人(藤田清太郎君)

お答えいたします。

委員から御指摘ありましたとおり、2021年5月の本委員会における御質問に対しまして、今後の出版業界の取組として三点、アクセシブルな書籍の整備状況が把握できるデータベースの構築、テキストデータの取次ぎを行うサポートセンターの設置、テキストデータ抽出等に関する基準の整備が、これらが取りまとめられまして、令和三年度から着手していくとお答えしたところでございます。

まず、データベースの構築につきましては、日本出版インフラセンターが有するデータベースを改修し、電子書籍やオーディオブック等のアクセシブルな書籍のデータが整えられ、令和4年1月より運用を開始したところでございます。

次に、サポートセンターの設置につきましては、令和3年6月にサポートセンター設置に向けた準備会が日本出版インフラセンター内に設置され、活動を開始しまして、令和五年度の、五年度中に本格的な運用を開始する予定としているところでございます。

三つ目のテキストデータ抽出等に関する基準の整備につきましては、テキスト化が困難な図表や数式を多く含む学習参考書や学術書において、障害者の方々に分かりやすい表現を実現するためには更なる検討が必要な状況でございます。これにつきましては、引き続き、出版関係者との議論を継続しながら、基準の整備を進め、読書バリアフリー法の環境整備に取り組んでまいる、こういった所存でございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

経産省では、出版社側の窓口をつくり、アクセシブルな書籍やテキストデータ提供のための具体的な体制整備が進められ、運用が開始されるとのこと。是非この動きを加速化していただきたく存じます。

一方、この経産省の議論の中で、利用者である障害者側も窓口が必要ではないかという声が上がったと聞いております。出版社側の窓口と障害者側の窓口が車の両輪を担うという考え方です。

法十八条にのっとって設置された視覚障害者などの読書環境の整備の推進に係る関係者協議会の2021年6月に開かれた第七回協議会でも、障害者側のセンターの受皿をどうするのか、どの会議体が検討していくのかという質問が出ておりましたが、一方の障害者側の窓口に関する検討はどういう状況でしょうか。

○政府参考人(藤江陽子君)

お答え申し上げます。

昨年の6月に開かれました第8回の視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会におきまして、経済産業省から、特定書籍等の製作支援及び販売等に係る出版社からのテキストデータの提供についてスキーム案が示されたということを受けまして、障害者側の窓口の在り方については、協議会事務局である文部科学省、厚生労働省において検討することとなったところでございます。

これを受けまして、経済産業省も含めました3省において協議し、障害者側の窓口として新たな機関を設置することは多大な時間とコストを要することから、図書館等による特定書籍等の製作支援の枠組みを活用し、出版社側の窓口との電子データ授受を行うスキームにつきまして、実証調査等を通じて業務負担や課題の把握等を進めることとしているところでございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

議事録を拝見しますと、この協議会は読書バリアフリー法の基本計画策定後は年1回のペースでしか開かれず、省庁の報告が主なテーマになっており、関係者が個別の課題を丁寧に検討、議論する時間はなさそうです。

そうしますと、出版社側が準備したアクセシブル・ブック・サポートセンターと図書館を通してアクセシブルな書籍や出版社からのテキストデータ提供の枠組みを具体的に運用していく際の障害者、利用者側のニーズや課題はどこがどのように把握するのでしょうか。

○政府参考人(藤江陽子君)

先ほどお答えの中で実証調査等を進めると申し上げましたけれども、この調査等につきましては関係省庁等が協力して行うこととしております。

文部科学省では、特定書籍等の製作支援を通じて具体的ニーズに接する機会のある図書館等の協力を得るなどし、また、他の関係省庁等でもそれぞれの関係機関の協力を得ながら、障害者、利用者の御意見を伺いつつ検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

出版社側からのアクセシブルな書籍やテキストデータ提供の窓口が用意されても、具体的な提供方法、利用方法が利用者側のニーズを反映したものでなければ意味がありません。肝腎要の障害者へのデータ販売、提供を先延ばしにすることのないよう早急な取組をお願いし、次の質問に移ります。

続きまして、セクシュアルマイノリティー、LGBTQの子供たちの支援について質問いたします。

私は、当事者団体からのヒアリングや書籍、調査資料などを拝見し、LGBTQの子供たちの人権を守ることが非常に重要だと感じております。子供たちがいじめ、差別、偏見で苦しむことのない環境をつくるための責任を痛感しております。

そこで、まず大臣にお尋ねします。LGBTQと教育に取り組む認定NPO法人ReBitさんが2022年に行った調査によると、10代のLGBTQは、過去1年に48%が自殺念慮、14%が自殺未遂、38%が自傷行為を経験したと回答しております。日本財団の2021年の自殺意識調査と比較すると、10代LGBTQの自殺念慮は3.8倍高く、自殺未遂経験は4.1倍高い状況で、非常に深刻です。この点について、大臣の見解をお示しください。

○国務大臣(永岡桂子君)

舩後委員御指摘のとおり、性的マイノリティーの方は自殺念慮などの割合が高いことが各種の調査で指摘をされていることは承知をしております。

そうした状況を踏まえまして、昨年10月に策定した新たな自殺総合対策大綱におきましても、自殺念慮の割合が高いことが指摘をされております性的マイノリティーの方々につきまして、無理解や偏見などがその背景にある社会的要因の一つであると捉えまして、理解促進の取組を推進することとしておりまして、文部科学省といたしましても、各学校における性的マイノリティーへの理解促進の取組、これを推進してまいります。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

その上で、この現状を改善するために文科省としてどのような取組が必要だと考えますか。お答えください。

○国務大臣(永岡桂子君)

性的マイノリティーとされます児童生徒が学校生活で孤立することなく、悩みであるとか不安があった場合にはそれぞれをやはり受け止められる相談支援体制というものが構築されるということが大変重要であると考えております。

このため、文部科学省では、人権教育を通しまして、多様性に対する理解、そして自他の人権の尊重等の態度を育む取組を進めるとともに、学校生活の各場面におけます支援の例などを掲載した教職員向けの啓発資料ですとか研修動画の作成、周知に、これは改訂版の生徒指導提要ですとかにございます。改訂版の生徒指導提要のこれ性的マイノリティーに関する記載の追加というのもありますし、また、いじめの防止などのための基本的な方針の改定などに取り組んでまいりました。

性的マイノリティーとされる児童生徒が安心して学校に通うことができますように、引き続きまして取組を進めてまいる所存でございます。

○委員長(高橋克法君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(高橋克法君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

命に関わることです。きめ細かい支援をお願いしたく存じますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(永岡桂子君)

舩後委員おっしゃるとおりでございますので、しっかりと子供たちのためにもそういう対応やらせていただきたいと思っております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

子供は、大人と比べ、居場所が家庭か学校かになることが多く、学校が子供にとって安心できる環境かどうかが重要な意味を持ちます。

一方、教師がLGBTQについて十分に学ぶ機会が少ないのが実態です。

資料を御参照ください。

先ほども紹介したReBitさんが実施した別の調査で、児童生徒約1万2000人、教職員約1500人の回答によると、教員養成課程でLGBTQの子供の課題や適切な支援について学んだ経験があると答えた教職員は13%と非常に低い実態があります。教員になってから研修を受けた割合は56%と多くなりますが、学んでいないと回答した教員は21%にも上っています。この調査はReBitさんが出張授業などを行った学校や行政機関などを対象にしているため、実態としては更に知識、理解が不十分な実情があると思います。

学校においてLGBTQについての知識、理解が不十分である、この認識に立ち、文科省として実態調査をしたり研修の機会を増やしたりするなどの対策が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(永岡桂子君)

学校で児童生徒の相談支援に当たる教職員が性的マイノリティーとされております児童生徒に適切に対応することができますように、教職員一人一人が研修などの機会を通して正しい知識を身に付けることが重要であると、そういう認識をしております。

このため、文部科学省では、性的マイノリティーとされる児童生徒への相談体制の充実などについて、教職員の理解を促すためのパンフレットや研修動画を作成、周知するなど、必要な支援などが学校でなされるように努めてまいりました。

引き続きまして、教育委員会に対する周知の更なる徹底に加えて、独立行政法人教職員支援機構の実施いたします研修の充実、そして、教職課程を置きます大学全てを対象とした説明会での最新の情報の提供など、あらゆる機会を通じまして周知し、そして、全ての教職員が性的マイノリティーについて理解する機会を得られますように一層取組を進めていきたいと頑張ってまいります。

○舩後靖彦君

教師が子供たちにとって安心、信頼できる存在であるためにも、教師が子供たちを差別したり偏見を向けたりすることはあってはならないと思います。そのためにも、生徒指導に関する学校教職員向けの基本書として作成した生徒指導提要の役割も大きいと考えます。

文部科学省は2022年、12年ぶりに提要を改正し、性的マイノリティーに関する課題と対応という項目を新設しました。項目を新設した点については、当事者団体からも評価されています。

一方、その内容は不十分との意見も出ています。当事者らでつくる団体、LGBT法連合会さんが生徒指導提要改訂に当たって出した声明では、既存の制度や慣行そのものに問題意識を持ってアプローチする視点が欠けていることなどを指摘されています。また、アウティングやカミングアウトといった学校現場における重要語句についての言及がないことなども指摘しています。

ここで、相談体制について質問します。

先ほど紹介したReBitさんの調査において、教職員が児童生徒からのカミングアウトやLGBTQに関わる相談を受けた経験は26%でした。しかし、その対応について、適切に対応、支援できたと答えたのは18%、適切だったか自信がないと答えたのは75%に上りました。相談を受けても適切な対応、支援ができていないという実態を認識することが必要です。

当事者との協働の上、生徒指導提要の追記、あるいは別の通知やガイドラインなど、改善のための取組を進めていただきたいと存じますが、御見解をお聞かせください。

○国務大臣(永岡桂子君)

舩後委員にお答え申し上げます。

生徒指導の基本書でございます生徒指導提要につきましては、昨年12月に初めて改訂を行いまして、その中で性的マイノリティーに関する課題と対応について追記をしたところでございます。

具体的には、日頃から児童生徒が相談しやすい環境を整えるとともに、教職員自身が理解を深めること、そして、最初に相談を受けた者だけで抱え込むことなく、学校内外の連携に基づく支援チームをつくり対応するなどの組織的な取組が重要であること、そして、学校として先入観を持たず、その時々の児童生徒の状況などに応じた支援を行うこと、医療機関や精神保健福祉センターとも連携、相談を行いながら対応することなどを明記したところでございます。

文部科学省といたしましては、生徒指導提要を直ちに改訂するのではなくて、各種会議などを通じまして、性的マイノリティーとされる児童生徒への対応に係る改訂内容がしっかりと現場に周知されるようにするとともに、相談対応や支援についての工夫の事例などについても収集、共有をすることによりまして、各学校現場で適切な対応が取られるように取り組んでまいります。

○舩後靖彦君

代読します。

終わります。ありがとうございました。