2024年4月18日 参議院文教科学委員会質疑(障害生徒の高校受験/定員内不合格)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。本日もよろしくお願いいたします。

国会議員となり、障害のあるお子さんの高校受験に関わるようになってから、3月は私にとってうれしくもあり、つらい時期でもあります。今年は千葉県と静岡県の脳性麻痺のお子さんの高校受験に関わりました。千葉県の受験生については、衆議院文部科学委員会で田嶋議員が質問されていましたので、大臣も御記憶のことと存じます。

この受験生は、障害ゆえに筆記に時間が掛かるため、合理的配慮として1.5倍の受験時間延長を申請しましたが、1.3倍しか認められず、相談されてきました。理由は、1.5倍の延長は前例がないこと、2教科でヒアリングの試験があり、ほかの生徒が2教科目の試験を受ける際に問題が全館放送で流れるので、この受験生が事前に問題を聞いてしまうということでした。合理的配慮は、個々の障害に応じて個別に検討されるもので、前例のあるなしでなく、本人にとって必要かどうかで判断されるべきです。この受験生の場合、中学校で試行錯誤を繰り返し、学校側が1.5倍の時間延長が妥当として学校の試験をやってきた実績があります。また、ヒアリング試験については、この受験生の1教科目の試験開始時間を早める、2教科目のヒアリングの問題が流れている間、ヘッドホンを付けて聞こえなくするなど、対応方法はあります。1.5倍延長を断る理由にはなりません。結果的に、千葉県教委が1.5倍の受験時間延長を認め、この受験生は合格しました。

もう一人の静岡県の受験生は昨年、市立高校一次募集、二次募集とも定員内不合格で浪人。今年は県立高校を受験しました。この受験生は、脳性麻痺による四肢麻痺、言語障害、知的障害があります。昨年の受験では介助者による問題の読み上げ、解答の代筆、1.5倍の時間延長は認められました。しかし、言葉で意思を伝えるのが難しく、記述式では時間延長しても解答欄を埋めることはできません。そこで、選択肢での解答に変更を求めましたが、市教委、県教委からほかの受験生との公平性を確保するため認められないと回答があり、相談がありました。障害のない受験生であれば、選択肢の解答と記述式の解答では明らかに不公平です。しかし、この受験生の場合、解答方法を選択肢に変えなければ、ほかの受験生と平等、公平に受験に参加することはできません。私は、話合いにも参加、東京都では1987年に選択肢への変更が行われており、ほかの自治体でも同様の合理的配慮事例があることを説明しましたが、対応は変わりませんでした。

今年は、早くから県教委と合理的配慮について協議を重ねました。その結果、ほかの障害のない受験生と平等に学力検査の土俵に上がるために解答方法の変更は必要なことを理解いただき、全問選択肢への変更が認められました。また、受験の際の介助者も、本人とコミュニケーションが取れる、慣れている人ということで、卒業した中学校から派遣され、現在通所している事業所のヘルパーの同席も認められました。

ようやく学力検査に臨める体制が整いましたが、実際の受験で大きな問題が起きてしまいました。県教委から派遣された試験監督は受験生の意思表示、介助者とのコミュニケーション方法を理解できず、受験生が選択肢のカードを取捨選択する方法が認められなかったのです。

受験生は、脳性麻痺の付随運動があり、カードが何枚もあると集中して見ることができません。そのため、受験生が選んだカード以外は介助者が一旦脇によけ、選んだカードでいいのか介助者が確認する、ほかのカードから選び直すことを受験生が求めたら残りのカードを一枚ずつ確認するという取捨選択方法をしてきました。しかし、監督者は、よけたカードを元に戻し、全てのカードを並べた状態で選ぶよう指示しました。そのため、障害のない受験生がやっている取捨選択プロセスが認められず、本人の意思を生かす形での解答ができませんでした。

静岡県教委は、丁寧に本人、保護者と協議を重ね、受験生と介助者との間でどのように意思確認、意思疎通を図るか検討してきました。しかし、実際の受験会場でシミュレーションをする機会は一回しかなく、県教委から派遣される監督者は不在でした。昨年の記述式の試験に立ち会っていたので問題ないと県教委は判断したようですが、選択肢のカードを選ぶときの受験生と介助者との意思確認、コミュニケーションのやり方を見ていなかったことが今回の事態を招いた大きな原因と言えます。

千葉県、静岡県での合理的配慮提供の問題に関わり、私はいろいろ考えさせられました。私の要望に応え、文科省は、2022年12月、高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料を作成し、基本的な考え方や配慮事例を取りまとめました。そこには、配慮の提供においては、円滑かつ適正に配慮を実施できるよう、事前に当日の対応者が当日と同じ環境でシミュレーションなどを行うことが例示されています。

静岡県の受験生に対する対応は、手続的にも、また試験監督の在り方としても適切でなかったと考えますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(盛山正仁君)

高等学校入学者選抜における合理的配慮については、個々の障害の状況等に応じ、都道府県教育委員会等の実施者において適切に提供されることが重要であると考えています。

御指摘の個別の事案に対するコメントは控えさせていただきますが、文部科学省においては、各実施者が合理的配慮を提供するに当たっての参考としていただくため、高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料を作成しているところであります。

その中では、円滑かつ適正に配慮を実施できるよう、事前に当日の対応についてまとめた資料を作成し関係者間で共有するとともに、事前に当日の対応者が当日と同じ環境でシミュレーション等を行うこと等についてお示ししているところであります。

引き続き、様々な機会を通じてこれらの内容についての周知徹底を図り、適切な配慮の下で入学者選抜が行われるよう各実施者の取組を促してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

本年4月の改正障害者差別解消法施行に伴い、文科省の対応指針が改訂されました。前例がないことを理由にして合理的配慮の提供を一律に断ることは、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられると例示されました。

しかし、今までに前例がないとして認められないことが全国に多々あります。高校の設置者、高校現場の理解を進めるためにも、対応指針の改訂に合わせて、参考資料に前例がないことは理由にならないことを明記していただきたいと思います。同時に、受検上の配慮の手続、取組において、好事例だけでなくトラブル事例からも課題を整理する方向で参考資料を改訂していただきたいと思います。

大臣、いかがですか。

○国務大臣(盛山正仁君)

高等学校入学者選抜における合理的配慮の提供の決定に当たっては、生徒、保護者と教育委員会、学校関係者等で対話を行いながら丁寧に進めることが重要であると考えております。

舩後委員が御指摘のとおり、本年4月に施行されました障害者差別解消法に基づく告示において、前例がないことを理由に一律に対応を断ることについては、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例として新たに明示するとともに、都道府県教育委員会等に通知を発出し、周知徹底を図っているところです。

また、文部科学省が主催する全国の高校入試担当者が集まる会議の場において、各都道府県等における障害のある生徒に対する配慮決定の手続や課題等について様々な事例を持ち寄り、担当者間で意見交換を行うなどして合理的配慮に対する理解を深めているところであります。

文部科学省としては、まずはこれらの取組の周知徹底を図り、生徒、保護者の希望、障害の状態等を踏まえ、適切な配慮の下で受験がなされるよう、各実施者の取組を促してまいります。

○舩後靖彦君

代読いたします。

続いて、定員内不合格について質問します。

先ほどお話しした千葉の脳性麻痺の受験生は合格し、高校生になりました。しかし、同じ千葉県で知的障害のある受験生が定員内不合格になっています。静岡県でも先ほどの受験生が、また香川県、熊本県でも、知的障害のある受験生が定員内不合格でした。いまだに、点の取れない子はその教育を受けるに足る資質と能力という固定化した能力観によって排除されています。

私の質問に答えていただき、一昨年から、高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査の一環として、志願者数が定員に満たない場合の対応等が調査されました。調査をすることで、設置者も、高校は義務教育ではないから点数が取れなければ定員内であっても不合格は当たり前という意識から、課題があるという認識に変わってきたと感じております。

資料1を御覧ください。令和4年度では、定員内不合格者数を把握すらしていない県が六県、最終募集段階での定員内不合格がゼロだったのは11都道府県でした。これが、令和5年度では、数を把握していない都道府県はなくなり、最終募集段階での定員内不合格ゼロは13都道府県に増えました。

また、資料3にありますように、令和4年度に比べ、5年度では、定員に満たない場合は全員を合格することが望ましい旨、文書や口頭により確認、定員内不合格を出す場合には、教育委員会に対し協議に準じて相談するなど、取組の特記事項が格段に増えています。

しかし、それでも定員内不合格を出す高校はいまだに多くあります。千葉県のように、県教委が、学ぶ意欲のある生徒の学びを確保する、学びの場を確保する観点から、学ぶ意欲があると判断できる受験者を定員内不合格とすることのないようと通知しているにもかかわらずです。ある自治体では定員内不合格であれば全員合格、ある自治体では試験で点数が取れないという理由で定員内不合格にされています。

大臣、このようなばらつきをいつまでも放置してよいものでしょうか。98%の子供が、そのほとんどが無償で高校で学ぶ現在、高校は既に準義務化されています。学校教育法施行規則上、高校の入学許可は校長に権限があります。しかし、国としてもう一歩踏み込んで、定員内であれば学ぶ意欲のある受験生全員を受け入れる方向に働きかけることはできませんでしょうか。

○国務大臣(盛山正仁君)

学ぶ意欲を有する生徒に対して学びの場が確保されることは大切であり、定員内不合格になった生徒にもその後の学びの機会が確保されることが非常に重要となります。このため、定員内不合格になった生徒がその後の学びの機会を得られなくなってしまうようなことは極力避けるべきものと考えております。

他方、高等学校入学者選抜の方法等は実施者である都道府県教育委員会等の判断で決定し、入学者については、各校長がその学校及び学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力、適正等を入学者選抜により判定するものとなっております。

これらを踏まえた上で、これまで文部科学省においては、定員内不合格自体が直ちに否定されるものではないとしつつ、定員内でありながら不合格を出す場合にはその理由が説明されることが適切であることを通知等で示しております。

引き続き、様々な機会を通じて通知の趣旨の、趣旨の周知を図ることにより、各都道府県教育委員会等における適切な取組を促してまいります。

○委員長(高橋克法君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(高橋克法君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

大臣、東京都のように募集人員に対し過不足なく決定するとはなりませんか。自治体任せでは600人以上が定員内で落とされ続けています。選抜要項を東京都のようにすれば定員内不合格はなくなります。大臣、答弁をお願いします。

○国務大臣(盛山正仁君)

先ほど申し上げたとおりでございます。最終的に判断するのは学校長ということになるものですから、これは障害の有無にかかわらず、入学を認める、認めないということになります。

他方、一部の自治体で行われておりますように、できるだけ各定員を多く満たすように、その採用ですね、採用というのは入学という意味での採用ですが、そういったことというのは、これは一つのやり方だろうとは思います。

そういったことが広まるように、我々としても各自治体、教育委員会等に周知徹底を図っていきたいと考えます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

子供の、そして学校が持つ可能性を閉ざさないでいただきたいとお願いし、次の質問に移ります。

読書バリアフリー法についてお尋ねします。

昨年5月23日の本委員会における私の質問に対して、出版社側の窓口との電子データ授受を行うスキームについて、実証調査を通じて業務負担や課題の把握を進めると説明いただきました。その後、障害者団体へのヒアリングが実施され、先月21日、文科省、経産省、厚労省で関係者意見交換会が行われたと伺いました。しかし、具体的には、これからの実証調査の準備を進めるということでした。合理的配慮が義務化されたのに、余りにも悠長な対応ではないでしょうか。EU指針では、2025年6月からアクセシビリティーに配慮していない書籍の発行はできなくなるそうです。

昨年、市川沙央さんが芥川賞授賞式で障害者にとっての読書バリアの解消を訴えました。これに応え、4月9日、日本文芸家協会、日本推理作家協会、日本ペンクラブが読書バリアフリーに関する三団体共同声明を発表し、読書環境の整備推進に協力すると言っています。

今や著作権を盾に読書バリアフリーを遅らせることは許されません。誰もが利用可能な形式の電子書籍の販売を促すことはもちろん、発行済みの紙の書籍に関してはテキストデータの販売、提供の仕組みを早くつくっていただきたい。

そこでお尋ねします。

11条2項の出版者からの電子データの提供に関し、モデル事業を計画されていますが、12条の販売についてはモデル事業の予定すらありません。民間任せにするのではなく、せめて環境整備、スキームづくりは国が率先してやるべきではないでしょうか。

○政府参考人(牛山智弘君)

お答えいたします。

読書バリアフリー法の環境整備につきましては、出版業界においてアクセシブルな書籍の整備状況が把握できるデータベースの構築、電子データ等の取次ぎを行うサポートセンターの設置、電子データ等の抽出等に関する環境整備といった取組が継続的に取り組まれているものと承知しております。

こうした出版業界の取組に加え、経済産業省では、令和五年度において、アクセシブルな電子書籍の提供に関し、出版社が抱える課題を把握するためのアンケート調査を実施したところでございます。

本調査を通じまして、電子書籍製作の手順やノウハウについてより一層の普及啓発が必要であることが明らかになったことから、令和6年度においては、読書バリアフリー法第12条関連の取組といたしまして、アクセシブルな電子書籍の製作に向けた出版者向けガイドラインの策定に向けた検討を進めていきたいと考えております。

経済産業省といたしましては、こうしたガイドラインの策定等を通じましてアクセシブルな電子書籍の市場拡大を推進することによって、障害の有無にかかわらず、誰もが読書による活字文化の恩恵を受けるための環境整備を図るべく、関係省庁、出版業界とも連携しながらしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

終わります。ありがとうございました。