相模原市障害者施設殺傷事件控訴期限を前に

報道などによると、植松被告は自分への死刑判決について控訴しない意向とのことです。しかしそれは彼が「死ぬ」恐怖を知らないからだと、私は思っています。

自分が「死ぬ」ことは大変怖いものです。私が発症した全身麻痺になるALSは、呼吸不全で息絶える病気です。私も全身麻痺になる絶望感から、はじめは人工呼吸器をつけての延命をしないつもりでした。

ところが2001年12月に肺炎を起こし、呼吸を楽にするために気管切開してカニューレを着けた頃から、「死ぬ」恐怖が沸き上がって来ました。2002年6月、主治医に「患者仲間、さらには社会に貢献したい」と、人工呼吸器を付け、延命することを告げました。が、内心では「死ぬ」ことへの怖れを、かなり募らせていました。

私は障害者療護施設に、2003年6月から2011年11月まで入所していました。そこで経験したことは、経済的・精神的・(間接的)身体的虐待です。そこの職員の一部は、「上下関係」をつくり、職員が上、障害者が下といった態度で、我々入居者に接して来ました。

先導役のナースは、目の前でため口をきくのは当たり前で、ネグレクトは始終でした。いたたまれなくなった私は、2011年11月、その障害者療護施設を逃げるように退所しました。

いま思いますに、その先導役のナースは、障害者を見下す心が強い上に、支配欲もあったのでしょう。

時も経ち政治家になった私は、各種施設の状態をとらえ、悪しき状況にある施設、特に意思を自由に表せない方々が入所しておられる〝知的障害者福祉施設〟の改善を責務と考えています。

私は、やまゆり園という障害者施設の実態が植松被告のゆがんだ、独善的な障害者観につながった部分もあるのではないかと思っております。施設の問題点をつまびらかにするためにも、被告人の控訴は必要ではないかと考えております。

最後に、植松被告に告げたい。

植松被告、あなたにも私と同じ気持ち、つまり自分が「死ぬ」ことへの恐怖心をもって欲しい。そして、恐怖心からの控訴をして欲しい。

そうしないと、ジェノサイド(集団殺戮)した施設入居者の方々の気持ちをあなたが分からないばかりか、私が知りたい知的障害者福祉施設の実態が分からなくなってしまうからだ。

2020年3月27日

参議院議員 舩後靖彦