2020年6月2日 参議院文教科学委員会(前半 日本人学校への支援/著作権法改正案)

○舩後靖彦君

れいわ新選組の舩後靖彦でございます。

本日は、著作権法改正案に関する質疑でございますが、冒頭に一点だけ、通告はしておりませんが、大臣にお尋ねしたく存じます。

先日の本委員会において、日本人学校に派遣される教員の方々への支援についてお尋ねいたしました。質疑後の五月二十七日、文科省は、国内待機の方に対して在勤手当に当たる国内待機手当を支給するという決定をなされました。教員の方々を応援する施策を取っていただいたことに深く感謝申し上げます。私のところにも、苦しい待機の日々に希望の光をいただいたという声が届いております。

一方、残念ながら前向きな回答をいただけなかった点がございます。それは赴任先の住居費用に関してです。赴任前に住居を借りており、いつでも赴任できるように確保したまま家賃を支払い続けている場合、一定額以上の家賃だと着任前の家賃が補填されなくなってしまい、先生方の自己負担になってしまう問題です。質疑終了後に担当者の方にも再度お尋ねしましたが、住居手当はあくまでも在勤地に居住の実態があることを前提とした手当であることや、赴任前に住宅を確保することを国として求めていないとして、あくまで現行ルールの範囲でしか家賃は手当てしない、つまりゼロ回答というわけです。

国によっては、短期の解約、契約が難しいケースもあると聞いております。大臣は、先日の質疑で、一律の支援というのではなくて、この辺、ちょっと調整しながら考えたいと思いますと答弁されていました。この言葉どおりに是非御検討いただきたいと思いますが、大臣、お考えをお示しください。

○国務大臣(萩生田光一君)

住居の手当につきましては、前回も答弁させていただいたように、一定のルールはあります。しかし、赴任される方が土地カンがあって自分でその家を探すということはまずあり得なくて、現地の学校運営委員会などの御紹介で、あるいはもっと言えば、前任者の先生が借りていた部屋をそのまま次の方が借りるというケースも非常に多いこともありますので、実は実態としては、一回こういうコロナの事情で渡航ができなくなったということをお話しして、契約を一回解除していただいている国も幾つもございます。

ただ、一律にと申し上げたのは、そのお金の部分で全部面倒見れますよということを言ってしまうとこれまた誤解を招くと思いますので、個々のそれぞれ国の事情を見ながら、ただ、せっかく志を持って海外で赴任をしていただくんで、初めての赴任でたまたま契約をした住居がいわゆる予算額いっぱいの部屋を借りざるを得なかった状況で、全く余裕がない方がいまだに日本から出発ができずに空家賃だけをずっと払い続けないといけない、これは短期の解約ができないという国のルールや何かがある場合もありますので、その辺は個別に事情をしっかり踏まえて支援策を考えていきたいと思っています。

このことで海外赴任を戸惑うことがないようにしたいというふうに思っておりますので、是非丁寧な対応をしていきたいと思います。

○委員長(吉川ゆうみ君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(吉川ゆうみ君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。改めて深謝申し上げます。当該先生方も一条の光が差した思いがすることでしょう。

それでは、次の質問に移らさせていただきます。

それでは、著作権法改正案について質問いたします。

本法案は、違法ダウンロードの規制が厳し過ぎるとして、研究者や関係団体等の著作権者自身からも懸念、反対が寄せられて、提出が見送られた経緯があります。その後、パブリックコメントやアンケート、検討会などを経て、法改正の方向性が定められました。その結果、深刻な海賊版被害への実効的な対策を取ることと国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこととの二つの要請のバランスを取る形になり、一般のネット利用者の感覚からすると非常に分かりにくい内容になっているかと存じます。そのため、違法かどうかの判断が難しく、法改正をしても、実効力がないか、逆に必要以上に利用を萎縮させてしまうことになることを懸念しております。そのような観点から、本改正案に賛成ではありますが、以下、質問をさせていただきます。

まず、海賊版サイト対策についてお尋ねします。

海賊版サイトによる被害は非常に深刻で、作者や業界団体に経済的な打撃を与え、新人クリエーターの活動の場を奪うことにもなります。さらに、侵害コンテンツの不正利用の横行を野放しにすることは、文化的、知的モラルハザードを招き、許すことはできないと存じています。このような海賊版サイトは、ドメイン登録、サーバー、サイト運営者が海外に存在し、取締りは非常に困難であると想像します。しかし、本丸をそのままにしておいていいはずはありません。

そこで、大臣にお伺いいたします。

著者、コンテンツ制作会社などの業界団体による自主的な対抗策以外に、政府として、これまでどのような対策若しくは業界への支援策を行ってこられましたでしょうか。また、衆議院の参考人質疑でも紹介されましたイギリス・ロンドン市警の例にありますように、海賊版サイトに対抗するためには収入源である広告出稿の規制強化が有効だと存じますが、そのほかにも有効な手段があれば併せてお聞かせください。

○国務大臣(萩生田光一君)

インターネット上の海賊版による被害を防止するため、総合的な対策を講じることが必要であり、政府においては、昨年十月に作成された総合的な対策メニュー及び工程表に基づき、関係府省庁が連携して取り組んでいるところです。

例えば、文科省においては、海賊版の防止に係る著作権教育、意識啓発を行っているほか、情報検索サービスにおいて海賊版サイトが表示されないようにする検索サイト対策について、著作権者等の検索事業者との協議に対する支援や、海外における権利執行の方法などに関するハンドブックの作成、提供などの取組を実施しているところです。

御指摘の海賊版サイトの収入源を断つための広告出稿の抑制については、経済産業省を中心に必要な取組が進められており、広告関連団体において自主的なガイドラインを策定、公表するとともに、広告出稿をすべきでない海賊版サイトリストの共有が定期的に行われております。

また、先生から途中で御指摘ございましたけれども、これ、海外で、今国連のWIPOという組織の中に加盟している国は一定の著作権保護のルールを持っていますけれども、そこに所属をしない国々と日本国として様々なお付き合いがありますから、今までも対応してきたんですけど、これからも二国間の外交の場でしっかりその協定を結んでおいて、今後その問題が発生したときに、例えば海外にサーバーを置くことによってこういう問題から逃げようという国がないように、一国一国、日本との信頼関係をきちんと、国際条約を含めてしっかり縛りを掛けていくという努力も、今後も更にしていきたいと思っています。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

ネット時代に、日本の多様な文化、コンテンツ産業を保護、育成していくため、全ての著作権侵害に対して、文化庁、経済産業省、総務省、警察庁など関係庁を挙げて国として取り組んでいただくことをお願いしたいと存じます。

同じく海賊版サイト対策についてお尋ねします。

本法案では、侵害コンテンツのダウンロード違法化が追加されましたが、閲覧するだけのストリーミング型は除外されています。ダウンロードを違法化しても、これでは余り効果が上がらないのではないかという意見もございます。

大臣にお伺いいたします。

侵害コンテンツを掲載し、その利用、拡散を助長するリーチサイト、リーチアプリは違法化、犯罪化されながら、違法と知りながらそのサイトにアクセスをし閲覧することは法規制から除外されるというのは、法律上どう捉えたらよろしいのでしょうか。

○国務大臣(萩生田光一君)

まず、侵害コンテンツのダウンロード違法化は、文字どおりダウンロードという複製行為を規制するものですので、先生御指摘のストリーミング型の海賊版サイトには効果がないというのは事実でありますが、ダウンロード型の海賊版サイトが多数存在している中で大きな抑止効果が見込めるため、侵害コンテンツのダウンロード違法化を行う意義は大きいものと考えております。

侵害コンテンツのダウンロード行為は、ユーザーの手元にデータが保存され、海賊版サイトが閉鎖されてもずっと侵害コンテンツの利用が継続されるばかりでなく、ダウンロードされたデータが更に違法アップロードされ、侵害コンテンツが拡散していくリスクもあることから、それを違法化とすることにより海賊版被害の拡大防止に大きな効果を有するものと考えております。

一方、本法案におけるリーチサイト対策では、閲覧のみを行うストリーミング・オンラインリーディング型のものも対象としているため、法案全体として、配信の形態を問わず、悪質な海賊版サイトに幅広く対応することができるものと考えています。

なお、侵害コンテンツのダウンロードを違法化することにとどまらず、侵害コンテンツを視聴する行為自体を規制することについては、国民の情報アクセスへの大きな制約となることなどから、極めて慎重な検討が必要であると考えています。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

次に、侵害コンテンツのダウンロード違法化について御質問いたします。

本法案では、違法にアップロードされたと知りながらその侵害コンテンツをダウンロードすることを違法化する際、除外規定が設けられました。その一つが、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合です。特別な事情の例示として、詐欺集団の作成した詐欺マニュアルが被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載され、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすることが挙げられています。除外の理由としては、詐欺マニュアルは著作権物としての保護の必要性が低く、ダウンロードの目的に正当性があると説明されています。

しかし、一般の感覚からしますと、詐欺マニュアルの無断アップロードとダウンロードに対して詐欺集団が権利主張をして差止めや告発することはまず考えられず、著作権法以前の事例ではないかと感じます。このような極端な事例ではなく、SNSなど日常的なネット利用における身近な例をもって、どのような場合が違法となり、どのような場合であれば特別な事情に当たるのか、分かりやすく説明するガイドラインが必要と存じますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(今里讓君)

著作者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合、これを除外することにつきましては、国民の正当な情報収集等への萎縮を防止する観点から、様々な要素に照らし、違法化対象からの除外を柔軟に判断できる安全弁として設けることとしたものでございます。

これに該当するか否かは、著作物の種類、経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度、これと、ダウンロードの目的、必要性などを含めた態様という二つの要素によって個別の事案ごとに判断されるものでございまして、御指摘の詐欺集団が作成した詐欺マニュアルのダウンロードの事例は、あくまでも本要件に明らかに該当する典型的な例として示したものでございます。

また、このほかにも、文化庁として、身近な例といたしまして、無料で提供されている論文の相当部分が他の研究者のウエブサイトに批判とともに無断転載されている場合にそれを全体として保存することですとか、有名タレントのSNSにお勧めイベントを紹介するためにそのポスターが無断掲載されている場合にそのSNS投稿を保存することも本要件に該当するものとしてお示ししているところでございます。

他方、御指摘のとおり、本改正の趣旨や正確な内容、具体的な事例等を丁寧に情報発信していくことは重要であると考えております。今後、国会での審議等を踏まえ、分かりやすいガイドラインやQアンドAなどを作成しつつ、丁寧な普及啓発を行ってまいりたいと考えております。

なお、著作権法におきましては、かねてから明確性と柔軟性のバランスが重要との考え方の下で法整備を進めてきており、この要件につきましても柔軟な解釈の余地を残すことが望ましいという考え方もあると思います。今後、そうしたことも踏まえながら、具体的にどこまでの内容を示すべきかについてはよく精査をしたいと、このように考えているところでございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございました。