2022年5月12日 文教科学委員会質疑(医療的ケア児支援について)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

3月16日の予算委嘱審査で、私は学校における医療的ケア児支援の実施体制について質問をいたしました。本日もその関連でお伺いいたします。

文部科学省は、学校への看護師配置の予算を増加していますが、予算を付けても、各自治体で看護師が見付からないという実態があります。そのため、保護者が通学や授業時間への付添いを求められ、保護者自身の就業や社会活動の機会が限られます。また、子供にとっても、保護者が学校でも付き添うことで、子供同士の関係を築くことや社会的自立の妨げになりかねません。

資料1を御覧ください。

文部科学省による令和元年度学校における医療的ケアに関する実態調査の数字ですが、特別支援学校で保護者が医療的ケアに従事しているのが23人、公立小中学校では463人で、保護者が学校で医療的ケアをしないで済んでいるのは鳥取県と島根県だけです。現在、令和3年度の調査結果を集計中ということですので、少しは改善されているかもしれませんが。

また、資料2を御覧ください。

こちらは昨年6月、岡山市議会事務局が私立学校における医療的ケア実施要項の改定の際に全国の政令指定都市と豊中市を対象に実施した医療的ケアの必要な児童生徒に関するアンケート調査の結果です。

この調査で、親の付添いが全くないのは大阪市、広島市、豊中市の3市のみで、校外学習では85%が、通常授業であっても四割が親の付添いありと答えています。

この現状について、大臣、いかがお考えでしょうか。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生にお答え申し上げます。

医療的ケア児につきまして、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の第10条の2項のとおり、保護者の付添いがなくても、学校において適切な医療的ケアが受けられるようにすることが大変重要でございます。

そのため、文部科学省におきましては、学校における医療的ケアに関し、保護者に付添いの協力を求めることについて、一つは、真に必要と考える場合に限るよう努めるべきであるということ、もう一つは、やむを得ず協力を求める場合には、代替案など十分に検討した上で、真に必要と考える理由や付添いが不要になるまでの見通しなどについて保護者に丁寧に説明をすることを周知するとともに、教育委員会の担当者が集まる会議において、その趣旨を説明してきたところでございます。

また、学校におきましては、医療的ケアを行う看護師さんですね、これ医療的ケア看護職員として、その名称及び業務内容について学校教育法施行規則に位置付けるとともに、令和四年度予算におきまして、医療的ケア看護職員の配置に係る経費について3000人分まで拡充して計上するなど、学校における医療的ケアの実施体制の充実を図ってございます。

令和2年度2400人でして、令和4年度は3000人ですから、600人増えております。予算も20億から約26億円に増加となっております。

保護者等の付添いの必要性につきまして、各自治体、学校等が実情を踏まえて判断するものですが、今後とも、医療的なケアを必要とする児童生徒に対しましては支援の充実に努めていきたいというふうに、そういうふうに強く考えてございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

医療的ケアが必要であっても、親の付添いなく子供が自立した学校生活を送れるようにしていただきたく存じます。

一方で、医療的ケア児の学校生活を支えるためには、単に看護師の数を増やせばいいということではないと考えます。

まず、当然のことながら、学校は病院ではありません。病院で出会う医療的ケアの必要な子供と、元気に学校に通い、授業を受け、友達と一緒に活動する医療的ケア児への看護師の関わり方は当然違ってきます。

ところが、病院や施設の看護方針で動く看護師さんの場合、医療的ケア児本人のニーズでなく、看護師のルールで関わってしまうことがあります。そのため、本人、保護者が苦労している例も出てきます。

例えば、私のように、人工呼吸器を利用し、気管切開していて声を出せない場合、まばたきや眼球の動きでイエス、ノーや簡単な意思表示をします。しかし、本人に確認せず、呼吸器に付いている計器の数値が少しでも正常値を外れると、本人に体調の確認をせず、看護師の自己判断で授業を放棄して、正常値に戻るまで休憩室で待機させるというように、勝手に進めてしまう看護師さんもおられるようです。

看護師との関係が悪くなり看護師が辞めてしまうと、その後任を探すのに苦労します。それゆえ、結局は、本人そして保護者が我慢を強いられ、安心して楽しく学校生活を送ることができなくなってしまいます。

当然ですが、看護師教育の中に、学校で生活する医療的ケア児への看護という単元、視点はありません。学校と病院とでは、存在する目的も、その文化も大きく違います。それゆえ、医療的ケアに特化した看護師という存在が、子供たちのエネルギーにあふれた学校という場所では少し異質とも言えます。

医療の発達により、医療的ケアが必要でも学校に通い、地域で暮らす障害児者はますます増えています。そのため、学校における医療的ケアを全て看護師、准看護師が担うには、人的資源の面でも経費の面からも、かなり厳しいと考えます。現実に、家庭においても、家庭を巣立って自立生活している医療的ケアの必要な方でも、訪問看護の看護師が生活支援の中心を担っているわけではありません。家庭であれば家族とヘルパー、自立生活されている場合は基本的にヘルパーが医療的ケアやコミュニケーション支援を含めた生活全般を支えています。

私が医療的ケア児支援法策定に関わった際にお話を伺った、人工呼吸器を付けた本人と親の会であるバクバクの会の親御さんは、長年、子供の様子を見てくれている在宅支援に入っているヘルパー、看護師の方が、学校で初めて会う看護師より本人も慣れており、親も安心できると言います。しかしながら、文科省通知、学校における医療的ケアの今後の対応についても、それに基づいて作成される各自治体のガイドラインも、看護師、准看護師の学校配置が中心に据えられています。さきに例に挙げた岡山市の実施要項は、看護師、准看護師に限定して、学校における医療的ケア体制がつくられてしまっています。

予算委嘱審査のとき、私の質問に対して、厚生労働省の本多審議官は、介護福祉士、一定の研修課程を修了したと認定された者は喀たん吸引などの特定行為を行うことができる、これらの運用に当たり、医師や看護師との連携体制を求めてはいるが、看護師を常時配置することは求めていないと回答されています。

そうであれば、主治医や看護師との連携体制を確保した上で、一定の研修を受けたヘルパーが医療的ケアも行える体制を整備していただければと考えます。その結果、現在の親の付添いをかなり減らせるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(淵上孝君)

お答え申し上げます。

御指摘の医療的ケアのうち、たんの吸引などにつきましては、一定の研修を受けた介護職員なども実施をするということができることとなっておりますので、各学校の実態や医療的ケア児の状況に応じまして、各自治体の判断によって、看護師以外の人材も活用することも考えられるというところでございます。

文部科学省におきましては、学校における医療的ケアの実施体制の充実に向けて、今年度から、自治体などが医療的ケアを実施する介護職員を配置する、その場合に係る経費についても補助するということにいたしましたほか、介護福祉士や一定の研修を受けた介護職員を学校に配置する際の留意事項として、看護師が巡回する体制を構築するなどの具体的な措置についても周知をしているところでございます。

引き続き、医療的ケアを必要とします子供たちに対する支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

○委員長(元榮太一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(元榮太一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

大臣、そのガイドラインを作る際には当事者の意見を聞くように関連部署あるいは自治体に促してくださいませんか。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生、お答え申し上げます。

よく検討させていただきます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

文科省通知、学校における医療的ケアの今後の対応についてが2019年3月に出されて3年がたちました。昨年3月22日の本委員会で、各教育委員会におけるガイドラインの策定状況を把握する調査の実施をお願いしたところ、当時の瀧本初等中等教育局長より、通知が出されて2年を経過したことから、今後、各教育委員会におけるガイドラインの策定状況を把握する調査の実施を検討されるとお答えいただきました。

改めて、検討状況をお聞かせください。

○政府参考人(淵上孝君)

お答え申し上げます。

お尋ねの医療的ケアに関するガイドラインの策定状況につきましては、全国の教育委員会に対して、令和3年度の状況につきまして現在調査を実施しているところでございまして、現在、文部科学省におきまして集計作業などを行っているところでございます。この結果が整い次第、公表する予定としているところでございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

実態調査の結果を待って、学校における医療的ケア体制の充実に向け、また本委員会でお伺いさせていただきたく存じます。

これで質問を終わります。