2022年5月10日 参議院文教科学委員会質疑(教育公務員特例法・教育職員員免許法/障害のある大学生の教育実習における合理的配慮について)

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

本日は、教育公務員特例法及び教育職員免許法改正案につきまして、参考人質疑での参考人の御意見も参考にしてお伺いします。よろしくお願いいたします。

まずは、今回の改正で廃止されることになりました教員免許更新制についてお伺いいたします。

そもそも、なぜそれまで無期限であった教員免許に十年の期限を付け、研修をクリアしなければ免許失効という制度設計にしたのでしょうか。

元々の制度導入の意図に、安倍元首相が発足させた教育再生会議の報告にある不適格教員の排除があったと言われています。しかし、仮に指導力や教員の資質に問題がある教員がいたとしたら、衆議院の参考人質疑の際に佐久間参考人が述べていらしたように、10年間も待っていられません。研修制度の中に既に指導改善研修があり、また、指導改善をしても改まらない場合は就業規定による処分制度もあるわけです。意図的な処分の濫用は困りますが、免許更新制とリンクさせる必要はありませんでした。

また、初任者研修、10年研修という法定研修や教科ごとの研修、校長、教頭、主幹教諭、主任教諭などの職階ごとの研修などなどがある中、更に10年目に免許更新制を設ける必要があったのでしょうか。2年の間に大学などで30時間以上の研修受講、しかも研修費用3万円という負担と研修の効果が釣り合うのかという声もありました。

これらの懸念、疑問は現実のものとなり、更新の期日を機に早期退職する教員、うっかり更新を忘れて免許失効する教員が出るだけでなく、更新をしてまで講師を希望する人が減少し、現場の人手不足は深刻化しました。それがまた教師の多忙化に拍車を掛け、その結果、教員志望者の激減という悪循環に陥ってしまい、免許更新制を廃止しなければ学校現場が回っていかないところまで来てしまったわけです。

文部科学省としても、免許更新制度の改善に係る検討会議や中教審教員養成部会、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会で、免許更新制の在り方、問題点をさんざん検討されてこられていますので、当然これらの現状は把握しておられることと思います。

そこで、大臣にお尋ねいたします。2009年から13年間続いてしまった免許更新制をなぜやめることにされたのか。この間の教育現場への影響をどう総括されておられますか。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生にお答え申し上げます。

近年、社会の変化が早まりまして、非連続化するとともに、オンライン研修の拡大や研修の体系化の進展など教師の研修を取り巻く環境が大きく変わるなど、更新制導入時にはなかった状況の変化が生じてございます。

また、教員免許更新制は、教師の学びの機会の拡大、また大学によります教師の資質能力の向上に対する関与の拡大など、一つの一定の成果を上げてまいりました。

一方で、10年に一度の講習は、常に最新の知識技能を学び続けることと整合的でないということや、座学を中心とした講習では現場に即した学びの実施が困難といった、こうした課題もあったと認識をしております。

こうしたことを踏まえまして、総合的な判断として、研修等の記録や指導助言等の義務付けなど、新たな教師の学びの姿に向けた方策の実施によりまして、教員免許更新制を発展的に解消し、教師の個別最適な学び等をより効果的に進めることとしたところでございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

引き続き、免許更新制についてお尋ねします。

免許更新制が導入された当時、いじめ、不登校、学力低下といった教育現場の問題が噴出していました。それに対して、道徳心、公共の精神、自律心などの精神論でもって教育の再生を図ろうとする教育再生会議の第一次報告を基に政治主導で行われた経緯があります。

一方で、教育予算を見ますと、2006年度より、義務教育費国庫負担割合は2分の1から3分の1へと引き下げられました。衆議院での参考人質疑で佐久間参考人がOECD調査の結果を紹介されていますが、2005年から2018年の間で教員の給与を下げたのはごく僅か、そのごく僅かな国の中で日本は財政破綻したギリシャに次ぐワースト2位で、その下げ幅は最低でも10%ということでした。

つまり、免許更新制は、教員の労働環境、処遇の改善を置き去りにしたままスタートし、教員への負担増で現場が破綻し、続かなくなったわけです。今回、免許更新制を廃止するに当たり、一番の教訓は、教員の専門性や資質を向上させるためには、研修の強制や免許失効という罰ではなく、教員が自主的、内発的に学び、研修を受けられるよう、精神的、時間的な余裕を持てるようにするということです。そのためには、何よりも正規教員の数を増やすこと、教員の業務の選択、学習指導要領で決められた学ぶ量、書類作業を減らすなどの働く環境の改善、そして待遇改善が必要です。

免許更新制を廃止するに当たり、研修制度に付け加える前に、まずは教育に対する公的支出割合がOECD諸国内で最低ランクという日本の教育予算を大幅に拡充し、教員の働き方改革、待遇改善を優先すべきと考えます。大臣の考えをお聞かせください。

○国務大臣(末松信介君)

御意見を、御指摘をいただきました。

教員免許の更新制の抜本的な見直しにつきましては、昨年3月の中央教育審議会の諮問におきまして、それまでの中教審における包括的検証も踏まえ、必要な教師数の確保とその資質能力の確保の両立を早急に図る必要があることから、先行して結論を得ることといたしました。文部科学省では、昨年11月に審議が、審議まとめが報告されたことを踏まえまして、本法案を国会に提出をしたところでございます。中教審の渡邉会長ともこのことはしっかりと話をいたしました。

教師の勤務状況につきましては、文部科学省の調査結果では、時間外勤務は平成30年度以降、一定度の改善傾向にはありますが、学校における働き方改革の成果が着実に出つつあるものの、依然として長時間勤務の教職員も多く、引き続き取組を加速させていく必要があると強く認識をしております。

このため、文部科学省では、令和元年の給特法の改正によります教師の勤務時間の上限等を定める指針を策定するとともに、小学校35人学級の計画的整備や高学年の教科担任制の推進等の教職員定数の改善、教員業務支援員や部活動指導員を始めとする支援スタッフの充実など、様々な施策を総合的に講じているところでございます。今後は、これまで推進してきました働き方改革の取組と成果等を踏まえつつ、本年度に勤務実態調査を実施し、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況をきめ細かく把握する予定でありまして、その結果等を踏まえ、給特法等の法制的な枠組みを含め検討してまいります。

文科省として、引き続き働き方改革を強力に推進するとともに、必要な教育予算を着実に確保し、人への投資を通じて成長と分配の好循環を実現してまいりたいと思います。教育予算、着実に確保するために、また先生のお力添えをお願いを申し上げたいと存じます。

答弁二番目、以上でございます。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

次の質問に移ります。

ようやく免許更新制がなくなることになり、このことは歓迎したいと思います。一方で、教える立場である以上、教員の自己研さんとしての研修は当然必要です。しかし、研修で得た新しい知見や指導方法をどう授業や学級、学校運営、子供たちとの関係をつくっていく上で役立てていくかということこそが重要なはずです。そして、少なくとも、教科の指導、学級運営などに関する研修の成果を評価するのは、日々教員と接している子供たちであるはずです。

本委員会の参考人質疑で妹尾参考人、池田参考人が述べられたとおり、研修記録を残すことは本人の振り返りには役立ちますが、研修記録を作成すること自体が教員としての資質能力の向上を担保するわけではありません。妹尾参考人は、あってもいいというくらいのもので、法改正してまで必要不可欠なものとは思えない、記録がなくても本人の適性や授業の様子などを見てコンサルテーションは可能だと指摘されています。

その一方で、研修記録の範囲、内容、記載方法、利用の範囲が法案段階では不明確です。個人情報の取扱いの問題や、人事評価と結び付けられるのではないかという不安が教員から出ています。また、研修履歴の報告、記載、管理のために、教員の負担、教育委員会や学校管理職らの管理業務が増えることも予想されます。

このように、免許更新制を廃止する代わりに新たに研修履歴の管理システムを設けることは、教員の質向上の効果が期待できないだけでなく、研修の量だけこなすという研修の形骸化を招き、教育委員会、学校の業務負担を増すという弊害が予測されます。更新制廃止に至るまでの経緯に何も学んでいないことになります。

大臣にお伺いします。教員免許更新制を廃止する代わりに研修記録の作成がなぜ必要なのでしょうか。端的に更新制を廃止する、それだけでいいのではないでしょうか。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生にお答えを申し上げます。

これからの教師の学びの姿としては、教師一人一人の置かれた状況に照らして適切な現状把握と具体的な目標設定を行った上で、個別最適で協働的な学びが行われることが必要と考えております。

今回の法律案で義務付ける研修等の記録は、一人一人の教師が自身の学びを振り返りつつ、現状の把握と適切な目標設定を行うための必要不可欠なもの、言わば学びの足跡でありまして、主体的で個別最適な学びを実現する上でのベースとなるものでございます。

過去に教師が研修等で何を学んできたのかという客観的な記録を活用することで、校長等によります効果的な指導助言が可能となります。また、個々の教師の強みや専門性を把握した上で校務分掌を決定するなど、効果的な学校運営を行うことも可能になるものと考えてございます。

以上のような考えに基づきまして、今回の法案では研修等の履歴の記録を義務付けることとしたものでございます。

御理解のほど、お願いを申し上げます。

○委員長(元榮太一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(元榮太一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

手本とすべき文科省では、研修記録を付け、それをどのように活用しているのでしょうか。

○政府参考人(藤原章夫君)

文部科学省では、通常、人事記録がございますけれども、そうした中に研修の履歴というものが、書く欄がございまして、そうしたところで記録をしていると、そして活用しているという状況でございます。

○委員長(元榮太一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(元榮太一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

質問は、どのように活用しているかということをお尋ねしています。

活用方法について詳しく御説明ください。

○政府参考人(藤原章夫君)

お答えいたします。

研修、どのような研修を受けてきたのかというのは書く欄があるわけでございますけれども、文部科学省の方も、ほかの国家公務員と同様でございますが、人事評価、これ期首面談、期末面談がございます。そうした中で上司と話をするわけでございます。そして、その中で人事評価の関係で目標を定めて、それをどうやって達成していくかといったような話などを議論、議論を行うわけでございますけれども、そうした際の参照する情報として研修の記録といったものを活用しているということでございます。必要があれば、もちろんこうした研修を受けていくことが望ましいのではないかというような指導助言が行われることもあり得るものと考えております。

○委員長(元榮太一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(元榮太一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

そのような方法だとパワハラにつながりませんか。

○政府参考人(藤原章夫君)

パワハラといったことにはつながっていないと存じております。そうしたことは、パワハラといったことはですね、これは厳にあってはならないことでございまして、そうした事例が仮に判明すれば厳しく対処していくと、そういう方針で臨んでいるものと承知をしております。

○舩後靖彦君

ありがとうございます。

引き続き、研修についてお伺いいたします。

教育職員特例法にあるとおり、本来、教員の研修は義務であると同時に権利であるはずです。参考人質疑の中でも多々指摘されておりましたが、まず研修を受けるための教員の時間的、精神的余裕が重要なのは言うまでもありません。

2019年の教職員給与特別措置法改正案の質疑の際に、教員の多忙の原因について聞き取りをしました。教員生活20年、都内の小学校に勤める先生は、この10年間で教員の多忙が深刻化したと証言しました。その理由の一つが研究授業の増加です。校内研修計画にのっとって幾つもの研修があり、研究授業の準備が以前と比べとても大変になっているということでした。10年前は全校で年に1回だったのに、今では6月から12月まで毎月、年6回あります。研究授業のための指導案はA4判10ページにも及び、学年主任、主幹教諭、校長のチェック、修正、更に研究授業の講師、大抵は教育委員会の指導主事によるチェックと、何度も修正を重ねます。1回の研究授業のために2か月ほど必要で、夏休みや連休を費やしているのが実情だそうです。

教員にとっての一番の学びは、日々の授業や学校生活における子供との関わりの中で子供に学ぶこと、同僚の教員から学ぶことです。研修計画に記された授業づくりの目標にのっとって、研究授業のための机の上での準備と、終了後はその報告を書くために時間を費やし、目の前の子供に向き合う時間がなくなるなど、本末転倒ではないですか。

さらに、今回の改正案では、校長、教員の資質向上に関する指導助言が盛り込まれていますが、これらが教育委員会、管理職による研修の強制、人事評価とリンクするのではないかという懸念が現場から挙がってきています。

池田参考人は、免許更新制のポイントは、教員としてこの後もやっていけるかどうかを判断し、免許の更新をしないという判断をなされる制度なわけで、その発展的解消という筋書の中で研修が語られるとすれば、当然、教員としての職務遂行上の何らかの処遇の在り方と関連付けられてくるのではないかと語っています。これでは、教員が探求心を持って自律的に学ぶ研修にはなり得ません。

妹尾参考人が指摘されたとおり、この改正が通ったら、教員は、管理しないと、校長から指導がないと学ばないという教師不信のメッセージを送ることになります。これでは教員のモチベーションを下げるだけで、ますます教員離れが加速し、免許更新制の過ちを繰り返すことになります。

大臣に重ねてお尋ねします。なぜ、免許更新制を廃止する代わりに資質の向上に関する指導助言を付け加える必要があるのでしょうか。不要と考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(末松信介君)

舩後先生にお答え申し上げます。

法案では、本法案では、校長等の管理職と教師が過去の研修等の記録を活用しつつ対話を行いまして、今後能力を伸ばす必要がある分野などの研修について教師から校長等へ相談することや、校長等から情報提供や指導助言を行うことを想定いたしております。その際に、教師が自ら学びを振り返りつつ、適切な現状把握と目標設定の下、自ら研修のニーズや学校の教育課題に対応した必要な学びを行っていくことが期待されるものでありまして、この指導助言等については、校長等から一方的に指導するのではなくて、対話の中で行われることが基本だと考えております。

こうした仕組みによりまして、教師が主体性を発揮しつつ、個別最適な学びが学校組織全体として実現されるものと期待をいたしているところでございます。そのように考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

残念ながら納得できる回答はいただけませんでしたが、教育公務員特例法及び教育職員免許法改正に対する質問はここまでとします。

続いて、今回の教員免許法には直接関係ありませんが、教員養成という視点から、障害のある学生の教育実習の支援についてお尋ねします。

以前、本委員会で、手話で会話する聾の学生が教育実習先の学校で声を出すことを強要されるという差別的取扱いについて質問いたしました。その後、文科省は全国調査を実施し、適切な支援を求める通知を発出されました。さらに、文科省の委託事業で、大阪教育大学により、障害学生の教育実習における合理的配慮対応マニュアル、チェックリストが作成されたと報告を受けました。

資料を御参照ください。以下、このマニュアル、チェックリストに関連して質問いたします。

このマニュアル、チェックリストの作成は、障害学生がほかの学生と同様、当たり前に教育実習に参加できるために一歩前進の取組だと感じます。

その上でお尋ねします。完成したこのマニュアルとチェックリスト、文科省はどのように活用するのでしょうか。大切なのは、支援する教育実習担当部署、障害学生支援窓口、教育実習に参加する学生の元にきちんと周知されることです。支援担当者や学生の手元に届くような活用方法を御検討いただきたいと思います。この点について、大臣の見解をお聞かせください。

○政府参考人(藤原章夫君)

障害のある学生の教育実習の受入れに関し、舩後議員からの国会質疑等を通じ、受入先の学校で本人の意に沿わない実習方法となってしまった事例についての御指摘を踏まえ、文部科学省では、令和二年度に、教職課程のある大学に対し、障害のある学生の教育実習の受入れに関する実態調査を行うとともに、令和三年度に、障害のある学生の教育実習の円滑な実施に資するため、大学等が留意すべき点について委託事業により対応マニュアルを作成したところでございます。

文部科学省といたしましては、今後、教職課程を置く全ての大学に対し、この調査研究に関する報告書及びマニュアルについて通知を行うとともに、教職課程認定大学に対する説明会や文部科学省のホームページ等も活用し、周知を図っていく予定でございます。その際、本マニュアルについては、教育実習の担当部署のみならず、障害学生の支援窓口や学生にも情報が行き届くことが重要と考えており、各大学の関係部署が連携して取り組むことができるよう促してまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

マニュアルとチェックリストについて、障害学生の支援に携わっている当事者団体や教員に意見を聞いてみました。そのヒアリングから、懸念点などについてお尋ねします。

まず、障害学生本人の主体性を大切にしてほしいという点です。マニュアル二ページ目には、学生本人の主体性を大切に、丁寧に話し合いましょうと書かれています。当事者支援団体、全国障害学生支援センターのスタッフは、このマニュアルやチェックリストはあくまでガイドであり、実際には障害学生本人との対話で配慮の内容や在り方を決め、妥当性を継続的に評価することが大切と指摘しています。教員、学生間で力関係に差がある教育現場では、特に学生主体を意識する必要があります。活用に当たっては、この点を是非留意していただくよう、現場に周知徹底していただきたいと思います。大臣の見解をお聞かせください。

○政府参考人(藤原章夫君)

障害のある学生が教育実習に参加するに当たっては、障害のある学生の意思を尊重しながら、学生、大学、実習先の学校が互いの現状を認識共有し、話合いを進めることが重要と考えます。

本マニュアルにおいても、互いに納得のできる方法を検討するため、障害特性や特性に応じた物理的な環境調整、心理的なサポートについて、学生本人の主体性を大切に丁寧に話し合うことを呼びかけているところであり、この点も含め、関係者に対ししっかりと周知をしてまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

障害者差別解消法に基づき、各国立大学法人には、差別禁止や合理的配慮に対応するために必要なことをまとめた対応要領を作成する義務があります。教育実習における合理的配慮が大学が提供すべき合理的配慮の範囲に含まれていることを考慮すると、今回のマニュアルを基礎として、できれば各大学が対応要領に基づき、それぞれの大学でのマニュアル整備を進めることが望ましいと考えます。

さらに、整備に当たっては、障害当事者からの意見を聴取することで、より充実した内容になるのではないでしょうか。このマニュアル作成で完結させるのではなく、マニュアルを生かした取組を各大学に促してほしいと考えます。この点について、大臣の見解をお聞かせください。

○政府参考人(藤原章夫君)

障害の有無にかかわらず、教員を目指す全ての学生がその意欲と能力に応じて大学等で学ぶことができる環境等の整備は重要と考えております。既に障害のある学生向けに対応要領やマニュアル等を作成している大学もあると承知をしておりますが、その策定や改訂の際に障害のある学生等の意見を聴取することは意義があることと考えます。

文部科学省としては、この点も含め、障害のある学生の教育実習が円滑に実施され、学生が安心して教育実習に臨めるよう、教職課程を設置する大学に対し、本マニュアルを参考とした取組を促してまいりたいと存じます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

以下、少し具体的な点についてお尋ねします。

このマニュアルを実際に障害学生の支援に携わった経験のある大学教員に見ていただきました。大方網羅できているとの評価があった一方、懸念点として、介助者の想定が足りていないのではないかという指摘もありました。

少し前の事例だそうですが、実際にこんなケースがあったそうです。全盲の学生が高校に実習に行った際、受入先の高校から介助員を付けるようにと言われました。しかし、高校では用意できないとも。このため、大学の先生が学内資金を申請して、アルバイトとして雇用したそうです。

対応マニュアルの中には、外部介助者が入構して支援を行う場合は、教職員だけでなく幼児児童生徒への説明が必要となるとの記載があります。それと同時に、同行する介助者が必要になった場合、その際の費用負担の在り方についても事前の調整が必要だと考えます。

この点について、必要と認められた場合、国としても財政的支援をするための枠組みを用意してほしいと考えます。大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(藤原章夫君)

障害のある学生に対するものも含め、教育実習は大学の教職課程の一環でございます。したがって、その実施に当たっては、大学と障害のある学生とが十分話し合い、学生の障害の状況や希望、学校側の受入れ体制等を踏まえ、具体的な実習方法を決定していくことが重要でございます。そうした一連のプロセスの中で、障害のある学生から配慮の希望等があった場合、大学は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律に基づき、必要な合理的な配慮を行うこととなります。

こうした点につきまして、例えば、大阪教育大学の例でございますけれども、聴覚障害のある学生が附属の特別支援学校で教育実習を行った際、手話通訳及びノートテーカーを大学の障がい学生修学支援ルームの職員や学生ボランティアをサポートとして派遣して実施をしたと、こういった事例もあるものと承知をしております。

そして、国の財政支援ということにつきましては、国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金などの基盤的経費を活用しながら、各大学において合理的配慮の充実を図っているところでございます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

今回のマニュアルの中にも、実習前の面談の在り方という項目が作られていますが、実習前から継続的な取組をしていくことが重要だと考えます。

さきの教員の方からお聞きしたもう一つの事例を紹介します。ある学生が教員免許を取ろうとしたところ、実習前に予定されていた介護体験、学校見学といった科目で参加を拒否されることがあったそうです。この結果、教育実習を行く前に、教師になることを諦めざるを得なかったとのことでした。

実習以外の免許取得の要件の科目についても継続的な支援体制が必要だということを示す事例だと思います。障害者差別解消法の理念に基づき、こうした事例が起きないようにしてほしいと願います。教育実習に関しては、全ての学生が一年次から参加をしているわけではないことは理解しています。しかし、入学時からの支援体制があれば、こうした問題は防げるのではないでしょうか。

障害のない学生同様、障害のある学生に対しても、教育実習の機会、教職課程を学べる機会が当たり前に提供されるように取り組んでいくことが重要です。ちょっと関心があるな、選択肢として教職課程を取っておきたいなという障害学生にも、障害のない学生と同じような機会、可能性が提供されるべきです。

教育実習への参加を見越しながら、入学時からの継続的な支援の必要性について、文科省から大学に働きかけていただけませんでしょうか。大臣、御検討お願いします。

○政府参考人(藤原章夫君)

入学時からの継続的な支援が重要ということで、文部科学省としてもそのように考えております。

これは滋賀大学の例でございますけれども、障害のある学生につきまして、個別支援チームというものを設置をして、一年次から支援の検討を開始をして、そして教育実習なども含めて様々なサポートを行っているというふうな事例がございます。

文部科学省としては、マニュアル等を今後周知する機会を活用し、障害のある学生が教員を目指すことの可能性や選択肢を諦めることのないよう、教育実習はもとより、入学時から教職課程全体を通じた継続的な支援を行うよう各大学に積極的に働きかけてまいりたいと存じます。

○舩後靖彦君

代読いたします。

ありがとうございます。

障害学生の受入先として、設備や経験が豊富な学校はほとんどないと思います。そう考えますと、たとえ設備が十分でなくても、学生との対話を通じ、希望をかなえられるよう対応していくことが必要なのだと感じます。

さらに、障害学生が教育実習、教育現場にいることで、児童生徒にとって障害者とともに過ごすきっかけになるとともに、障害のある児童生徒にとってはロールモデルになるという好影響もあるはずです。

是非、国として、障害のある教員が教育現場にいる大切さを共有していく、機運を高めていくことをお願いし、質問を終わります。


◆反対討論

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

私は、党を代表して、教育公務員特例法などの一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。

教育職員免許法改正案により、ようやく教員免許更新制がなくなることになりました。免許更新制は、現場や関係者の懸念、疑問を無視して導入されました。その結果、教員、非常勤講師のなり手が減少し、学校現場が回らないところまで来て破綻したわけです。

しかし、今回、発展的解消と称して教育公務員特例法を改正し、研修記録の作成と資質の向上に関する指導及び助言が義務付けられました。研修記録を義務付ける目的は、教員自らが個別最適な学びをより効果的に進めるためとされています。しかしながら、研修記録の範囲、内容、記載方法、利用の範囲が法案段階では不明確です。当該任命権者が必要と認めるものとは何の基準によるのか、運用次第でどうとでもなる懸念があります。

そもそも、研修履歴が教員の資質能力を担保するのではありません。量だけこなすという研修の形骸化を招き、研修報告を書くために教員の業務負担が増すという弊害が予測されます。さらに、資質の向上に関する指導及び助言に研修記録の情報を活用することは、教員が自律的に学ぶ研修の成果や効果まで管理職、教育委員会に評価され、教員に対する管理強化になりかねません。

また、研修についての対話と奨励が管理職、教育委員会による研修の事実上の強制、人事評価につながるのではないかという心配が現場から出ています。残念ながら、免許更新制廃止までの経緯から、これらの懸念が現実のものとなる可能性は高いと言わざるを得ません。それゆえ、免許更新制を廃止するだけでよく、研修記録の作成と資質の向上に関する指導及び助言などを付け加えることには反対いたします。

昨年度、文科省が行った調査で、公立学校で2558人教員が不足という衝撃的な数字が明らかになりました。今年度も多くの自治体で学級担任が足りていない実態があります。必要なのは、研修制度に手を加えることではなく、教員が自主的、内発的に研修を受けられる時間的、精神的余裕を学校現場に取り戻すことです。そのためには、教育に対する公的支出割合がOECD諸国内で最低ランクという日本の教育予算を大幅に拡充するべきです。そして、正規教員の数を増やし、教員の働き方改革、待遇改善に最優先で取り組むべきであることを申し上げ、反対討論といたします。