2022年12月8日 参議院内閣委員会質疑(PFI法改正案、障害者権利委員会の勧告について)、反対討論

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦でございます。

私は、難病ALSの進行により、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けています。声を出すことができないため、パソコンによる音声読み上げ、文字盤による文章作成、秘書による代読によって質問を行います。聞き取りづらい部分もあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

まず、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、PFI法改正法案について御質問いたします。

PPP/PFIアクションプラン、令和四年改定版では、地域交流の場である公園、公民館などの身近な施設でのPPP、PFI活用を掲げています。内閣府や関係省庁は、公園、公民館などでPPP、PFIを活用する先導的モデル事業の形成に取り組み、そのモデル事業を横展開してPPP、PFIを推し進めようとしています。身近な施設をどのようにつくるかについては、利用する地域住民にとって使いやすい施設であることが最も重要なことだと思います。したがって、これらの施設の整備に当たっては、地域住民の声を聞き、地域住民が参加することが是非とも必要なこととなります。

そこで、PFIへの住民参加の必要性についてどのような御認識なのか、大臣にお伺いしたいと思います。また、あわせて、地域住民の声を聞く仕組みをどのように取り入れるおつもりなのか、お伺いします。

○国務大臣(岡田直樹君)

舩後委員にお答え申し上げます。

公共施設を整備、改修する際には、事業目的、内容について地域の御理解を得た上で進めるべきものであり、そのプロセスにおいて関係住民の意見を十分聴取することが必要と認識しております。

その上で、PFIについて申し上げれば、事業の実施に際しては住民の方々への情報の提供、また住民の方々の同意や理解を得るための啓発活動の推進、またパブリックコメントなどを通じた住民参加の促進などを行うよう地方公共団体に御要請しております。舩後委員御指摘のように、公民館、市民ホールといった住民の方々が日常的に利用する身近な施設については、特に利用者の声を事業内容に反映することが重要であると認識しております。

今後、こうした身近な施設でのPFIの活用の拡大を図ることといたしておりますが、地域のニーズに沿った取組が進められるよう、引き続き住民の方々の声を適切に集めることの必要性や重要性を周知してまいりたいと存じます。

○舩後靖彦君

令和三年五月十四日に会計検査院が国会及び内閣に対し、国が実施するPFI事業についてという報告書を出しています。そこでは多くの課題が指摘されていましたが、例えばVFM評価、支払に対し最も価値の高いサービスを提供するという考え方に当たって、PFI事業が有利になるような割引率を用いていたという事実も指摘されています。PFI事業実施判断の前提となるVFMが恣意的に算定されていたということであれば、PFIに対する国民の信頼を揺るがせることになりかねません。極めて遺憾なことだと思います。

今後、政府は会計監査院の指摘に対してどのように課題を解決していくお考えでしょうか。

○国務大臣(岡田直樹君)

お答え申し上げます。

舩後委員御指摘の会計検査院の報告では、各府省等、国でございますが、国におけるVFMを始めとして、PFIを推進していく上での重要な課題が示されたと認識しており、重く受け止めております。

この指摘を踏まえ、すぐに着手できる事項として、令和3年6月、各府省等や地方公共団体に対して、VFMの算定に加え、モニタリングや事後検証を適切に実施するように要請したところであります。

今後、各府省や地方公共団体の取組状況等を踏まえつつ、PFI事業のより効果的かつ効率的な実施につながるように、有権者の意見も踏まえながら、有識者の御意見も踏まえながら、各種ガイドラインやマニュアルの改定を含めて必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

○舩後靖彦君

次に、9月9日に出された国連障害者権利委員会からの対日本総括所見についてお伺いいたします。

幼少期の分断が社会の分断を生むということを指摘したいと思います。

ジュネーブでの建設的対話の結果、全ての条項に関して懸念と勧告、具体的にとるべき措置が示されましたが、特に19条、自立生活と地域社会へのインクルージョン、及び24条、インクルーシブ教育に関する勧告について緊急の措置を講じる必要があると注意喚起しています。

このことについて、国別報告者のヨナス・ラスカス氏は来日講演で、障害の有無で分離した特別支援教育は、インクルーシブな社会で暮らしていく道のりを否定し、将来、施設で暮らすことにつながる、インクルーシブ教育なくして、障害のある人の自立生活はあり得ないとおっしゃいました。全く同感です。

障害者権利条約19条が求める自立した生活とは、何でも人の手を借りずに自分でやることではありません。その逆で、自立とは、周りとつながる力を付けること、頼れる人、所を増やすこと、そして自分で決めることです。

親、家族以外に地域社会でのつながりをつくっていくためには、幼少時から分け隔てられることなく学び育つことが重要です。

そこで、共生社会政策に関わる内閣府にお尋ねいたします。ラスカス氏のこの指摘について、いかがお考えになりますか。

○大臣政務官(自見はなこ君)

舩後委員御指摘の、インクルーシブな社会や、それを支えるインクルーシブ教育システムが重要であるということを強く認識しております。

文部科学省においては、インクルーシブ教育システムの実現に向けて、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごすための条件整備や一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として取り組んでいると承知をしております。

また、子供の心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、障害のある子供や子育ての支援につきましては、子供やその保護者の視点に立ち、特別な支援の充実と併せ、地域社会への参加、インクルージョンを推進することが非常に重要だと考えております。

内閣府といたしましては、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現が重要であると考えており、共生社会の実現に向けて、関係省庁と連携してしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

○舩後靖彦君

インクルーシブ教育についての質問を続けます。

障害者権利委員会は、分離、特殊教育を終わらせることを目的として、障害のある子供がインクルーシブ教育を受ける権利を認め、質の高いインクルーシブ教育に関する国家行動計画を採択することと勧告しました。これに対して、文教科学委員会で私が発言の趣旨を確認したところ、文科大臣は、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごす条件整備と教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として取り組んでおり、現在多様な学びの場で行われている特別支援教育を中止することは考えていないと答弁しました。

しかし、障害者権利条約24条、教育の条文解釈とも言える一般的意見第4号では、主流の教育制度と特別支援、分離教育制度という二つの教育制度が持続されることは相入れないと、文科省の言うツイントラックは認めていません。建設的対話においても、議長を務めたメキシコのガミオ委員から、子供が通常学校に行くか特別学校に行くか選ばされるべきではない、障害者権利条約は明確に特別教育を否定し、インクルーシブ教育を推進することを政府に求めていると指摘しています。文科大臣の発言は、権利条約を正しく理解しようとしない姿勢の表れであり、非常に残念に思います。

資料1を御覧ください。

これは、フランスの障害者雇用政策で使われている排除、分離、統合、包摂の四つのカテゴリーを図で表したものです。世界的潮流は統合からインクルージョンに向かおうという中、日本の教育状況は分離と統合のまだら状態にとどまっています。教育の場で分けていては、その後、社会に出てもどのように障害のある人と付き合ってよいか分からず、知らないゆえに偏見や差別が生じてしまいます。

資料2を御覧ください。

障害者雇用が進まず、雇用率達成のために障害者雇用を代行する会社が現れています。法的に問題がないとしても、この方式は、障害者が働くことを通して自己実現と経済的安定を図ること、企業の社会的責任として障害のある従業員が働きやすい環境整備、合理的配慮を定めた障害者雇用促進法の趣旨から完全に逸脱しています。こうした雇用率達成ありきで分離されたあしき雇用形態がはびこってしまうのも、障害のある人とない人が当たり前に共に過ごすことなく育ち、社会に出てから一緒に働くイメージが湧かないからだと記事で指摘されています。

 次回の日本政府報告審査は、6年後の2028年です。障害者権利条約の完全実施に向けて、分けた上で手厚くという日本の障害者政策の在り方を根本的に改める必要性、特に24条、教育に関する勧告の緊急措置が必要と考えます。

内閣府は、共生社会を進める立場からいかがお考えになりますか。

○大臣政務官(自見はなこ君)

先般公表された総括所見の中におきましては、障害者政策委員会の設置、情報アクセシビリティー、差別解消、バリアフリー、雇用促進及び文化芸術活動等の障害者の権利を促進する法律やガイドライン等の幅広い施策の取組が、肯定的な側面として取り上げられました。

一方で、舩後委員が御指摘のとおりでありますが、意思決定、また地域社会での自立した生活、インクルーシブ教育等に関する事項に関しまして、障害者権利委員会としての見解及び勧告が示されたものと承知をしております。

この総括所見は法的拘束力を有するものではありませんが、今般示された障害者権利委員会の勧告等につきましては、関係府省庁において内容を十分に検討していくものと考えておりまして、御指摘の点についても、文部科学省において適切な検討が行われるものと考えております。

○委員長(古賀友一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(古賀友一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

内閣府さんは、勧告に沿って実施していただけるのですね。

○大臣政務官(自見はなこ君)

ありがとうございます。

繰り返しになりますが、御指摘の点についても、文部科学省においても適切な検討が行われるものと考えておりますが、内閣府といたしましてもしっかりと関わってまいりたいと存じております。

○委員長(古賀友一郎君)

速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(古賀友一郎君)

速記を起こしてください。

○舩後靖彦君

代読いたします。

強く背中を押してください。これは意見です。

次に、入所施設の問題に移ります。

資料3を御覧ください。

これは、ジュネーブの建設的対話において、やまゆり園事件を経てなお施設で暮らす人たちがたくさんいることについて政府は考え直したことはあるか、長期的、中期的にどのように資源配分をして19条に従った形で地域生活への移行を支援していくのかというロバート・マーチン委員からの質問に対する厚生労働省の回答です。マーチン委員は、障害ゆえに親からの虐待や施設入所を経験したニュージーランドの知的障害当事者です。

厚労省の回答に対して、私は強烈な違和感を覚えました。私自身、療護施設にいたとき、花見などしたことはありません。たとえ花見ができたとしても、障害のない人が好きなときに好きな人と好きな場所で花見をしているのとは違います。また、高い塀で囲まれた隔離施設でなく、日中活動があって外出ができたとして、厚生労働省の方々、施設の職員は施設でずっと暮らすことを望むのでしょうか。誰も望まないと思います。

では、なぜ障害者は施設で暮らさざるを得ないのか。それは、親亡き後を考えて、本人のニーズではなく、親、家族のニーズで入所が進められてきたからです。私も、ALSを発症し、人工呼吸器を付けなければいずれ死ぬことを宣告されたとき、当初は家族の介護負担を考え、呼吸器を付けることをためらいました。そのため、多くの障害者が自らの意思ではなく施設での暮らしを受け入れていくこともよく分かります。

資料4を御覧ください。

日本への総括所見と同じ日に発表された緊急時を含む脱施設化ガイドラインは、施設入所は障害者福祉ではなく強制的拘禁であると指摘し、施設収容を永続させる正当な理由はないとしています。既に、スウェーデンやニュージーランド、カナダのブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州では、入所施設は廃止されています。

一方、日本でも、建設的対話で厚労省が回答したように、施設からの地域移行に取り組んではいます。しかし、退所者が出てもすぐに新規入所者で埋まってしまい、利用者数は一向に減りません。その背景には、1万8000人余りとも言われる障害者の入所施設待機者の存在があります。

資料5を御覧ください。

令和2年度時点で、地域移行者数、施設入所者の削減数共に第5期の目標値を下回るため、第6期は目標値を第5期より下げ、削減数の目標は1.6%以上の削減となっています。これでは、何十年たっても半減すらできません。

加藤厚労大臣は、9月16日の記者会見において、今回の総括所見の趣旨も踏まえながら引き続き取り組んでいきたいとおっしゃいました。勧告は、日本が共生社会に向けてやるべきことは、計画的に施設を廃止していくこと、それを迅速に実施することと明示しています。

内閣府にお尋ねいたします。

共生社会のビジョンとして、施設、精神病院を必要としない地域社会を打ち出すおつもりはおありですか。

あわせて、厚生労働省にお尋ねいたします。

誰もが安心して地域社会で自立して暮らせる社会に向けて、施設からの地域移行を加速化するとともに、新規入所をゼロにしていくことが必要です。そのためには、脱施設化ガイドラインに沿って、短期、中期、長期的計画を作り、地域で生活するための介助支援の量を圧倒的に増やし、重度訪問介護や行動援護、同行援護などにおける医学モデルに基づくサービス対象と内容の制約をなくし、柔軟で使いやすいサービスに転換することが必要と考えますが、いかがですか。

○委員長(古賀友一郎君)

時間が来ておりますので、簡潔にお答え願います。

○大臣政務官(自見はなこ君)

障害者権利委員会の総括所見は法的拘束力を有するものではありませんが、厚生労働省において、総括所見の趣旨も踏まえながら、引き続き、障害者の地域移行も含めた障害福祉政策などの充実に取り組むものと承知をしております。

また、次期障害者基本計画案については、これまで障害者政策委員会で幅広く議論を積み重ねていただいており、この度の総括所見も踏まえながら議論が行われております。

内閣府といたしましては、引き続き、次回障害者基本計画の策定に向けて必要な対応をしっかりと行ってまいります。

○大臣政務官(畦元将吾君)

お答えします。

まず、地域移行の推進についてお答えいたします。

総括所見において御指摘のような施設からの地域移行を推進すべきと要請があることは承知しておりますが、厚生労働省としては、これまでも、地域、自治体が策定する障害福祉計画において地域移行の目標値の設定の推進や、地域生活の移行、定着を支援するサービスの充実等により、施設からの地域移行を進めてきたところでございます。

一方、障害者支援施設には、強度行動障害を有する方、医療ケアが必要な方など専門的支援が必要な方も入所していることから、地域移行に当たっては、専門的支援の確保を含め、安心して地域で障害者が希望する生活ができる支援体制の整備とともに取り組むことを必要と考えております。

引き続き、障害福祉計画における目標値の設定やその実現に向けた取組に加え、今般提出している障害者総合支援法改正案による地域生活支援拠点などの整備により、障害者の希望に応じた暮らしの実現に向け、計画に取り組んでいきたいと思います。

もう一つ、訪問系サービスケアについてお答えします。

訪問系サービスを含む一部の障害福祉サービスについてはサービスごとに対象者の要件となる障害支援区分を設定していますが、この障害支援区分は、市町村において、障害者手帳の等級や障害者の程度だけでなく、障害者の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要となる支援の度合いについて確定しているものです。

さらに、障害福祉サービスの支援については、障害支援区分に加え、介護を行う者の状況や障害福祉サービスの利用に関する意向、置かれている環境等を勘案して要否を決定しており、引き続き、必要な支援が行き届くよう、各自治体における適切な運営を促進してまいりたいと思います。


◆反対討論

○舩後靖彦君

れいわ新選組、舩後靖彦です。

私は、会派を代表して、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、PFI法改正法案について、反対の立場から討論いたします。

れいわ新選組がPFI法改正案に反対する第一の理由は、PFI事業が適切に運営されているとは言い難く、かつ問題点を指摘されても、それを真摯に受け止め、改善する姿勢が見られないからです。

令和三年五月の会計検査院報告書、国が実施するPFI事業についてでは、VFMの算定に当たってPFI事業が有利になる割引率を用いていた事実が指摘されています。PFI事業の実施判断の前提となるVFMが恣意的に算定されていたということであれば、効率の良くない事業に公費が投入されていたということです。割引率を操作して民間企業に便宜を与えていたのではないかという疑念を抱かせる状況は、国が主導権を持って徹底的に排除すべきではないでしょうか。しかし、一年半前に会計監査院から指摘を受けていながら、この点を抜本的に解決するという答弁は本委員会の質疑からも得られませんでした。

不適正な状態を是正することなくPFIの範囲を拡大するこの改正案には賛成することができません。

次に指摘したいのは、PFI事業への地域住民の参加が十分ではないということです。

PPP/PFIアクションプラン、令和四年改定版を見ると、公園、公民館などが地域交流の場であり、地域コミュニティーを形成するための重要な施設であるということは政府も認識しているようです。身近な施設は、利用する地域住民自身が使いやすい施設でなければなりません。これらの施設の建設や運営に当たっては、地域住民の声を聞き、地域住民が参加する仕組みを取り入れることが是非とも必要です。

しかしながら、地域住民が一定の決定権を持って参加するという仕組みは、残念ながら十分に取られていません。情報を提供し、理解を得るための啓発活動をし、パブリックコメントで意見を聞けば、それで住民参加は十分だと政府は考えているようです。住民に邪魔されないようにガス抜きをしておけばよいというこのような発想は、地域住民が主体であるという住民自治の理念に反するものです。

地域住民が主体的に参加する仕組みが一向につくられることなく、PFI事業を継続させ、拡大すらしようとしている本改正案には反対せざるを得ません。

以上、二点を指摘し、私の反対討論といたします。