舩後の質疑をきっかけに、高校受検における初の合理的配慮ガイドライン作成/初の定員内不合格全国実態調査

舩後の文教科学委員会における質問をきっかけに、文部科学省が動きました。

2022年末、障害児の進学を巡る2つの項目について、文部科学省から新しい取り組みを行ったと連絡がありましたので、報告いたします。

①「高等学校入学者選抜における受検上の配慮に関する参考資料」

②定員内不合格に関する全国調査(「高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」の中の1調査項目:31-34ページ)

◆経緯

障害児の高校進学、定員内不合格の問題に取り組むきっかけは、2019年に寄せられた沖縄の仲村伊織さんのご両親からの手紙でした。沖縄では、知的障害のある生徒の高校受験は伊織さんがはじめてでした。「点数が取れないのだから高校生になれないのは当たり前」と、障害のある伊織さんばかりでなく、毎年百人以上の受験生が、1500人も定員が空いているにもかかわらず、定員内不合格にされているといいます。

しかし、本人は中学まで一緒に学んだ同級生が皆高校生になっていくなか、あたりまえに高校に行くと思っている。同じ日本で、東京・神奈川・大阪では、定員内であれば不合格は出さないとなっていて、重い知的障害の子も高校生になっている。進学率99%、ほとんどの子が無償で高校に通っている時に、「高校の教育を受けるに足る能力・適性」で切り捨てるのは間違っている。むしろ、生徒の多様な能力・適性、意欲や努力の成果を様々な観点から評価することが必要ではないかと、お手紙にありました。

そして最後に、「定員内不合格をなくすことが、インクルーシブ教育実現につながるのではないか、れいわ新選組でぜひ取り組んでほしい」と結ばれていました。

お手紙を拝見して、全国の障害児の高校進学に取り組んでいる状況をリサーチし、すでに30年以上の取組みの歴史があることも知りました。これだけ長く取り組んできても、定員内不合格がなくなっていないということは、かなりの難問と覚悟いたしました。

そして、沖縄、熊本、愛知などの高校受験に関して教育委員会宛てに要望書を出したり、当事者と教育委員会との話し合いに参加するなど、個別の支援をする一方、参議院の文教科学委員会で3回、この問題について質問いたしました。

◆①=「高校受検における障害児への合理的配慮ガイドライン」ついて

2020年11月17日の参議院文教科学委員会で、高校受検の意思疎通支援者として、公平性の担保という理由で普段慣れている介助者が認められず、初見の教育委員会の人が意思疎通支援者として同席した熊本の事例を取り上げ、受験生にとって不利益、合理的配慮として不適切ではないか。都道府県ごとに合理的配慮の在り方がバラバラであるので、最低限のガイドラインが必要ではないか、と舩後は質問いたしました。

この質問に対し、萩生田文科大臣(当時)が検討すると答弁。その結果、作成されたものです。

ガイドラインでは、「本人・保護者の合意を得ること」などを明示し、さまざまな事例が紹介されています。質問してから2年という時間がかかりましたが、公平な受検機会に向けた第一歩になると確信しております。

◆②=定員内不合格について初の全国実態調査について

同じく2020年11月17日の委員会で、全国で東京・大阪・神奈川を除き、高校の定員が空いているにもかかわらず、数十人から百人を超す不合格者が出ている実態に対し、せめて定員内不合格の実態把握が必要ではないかと迫ったところ、「定員内不合格の人数の多寡のみが単純に比較される。校長の公正な合否判断に影響を与える可能性がある、との理由で、入学者選抜の円滑な実施に支障を生じる恐れがあるので控えたい」との回答でした。

そこで、2022年4月21日の委員会では、千葉県で定員内不合格を出す場合、単に「総合的判断」という説明では説明責任を果たしたことにはならない、という通知を出したところ、定員内不合格者数が激減し、二次募集ではゼロになったことを紹介し、都道府県教委が本気で定員内不合格をなくそうと取り組めば、減らすことができるのに、都道府県によって対応が異なることは受験生にとって大きな不利益であることを指摘して、実態調査の検討を再度お願いした結果、末松文科大臣は「先生からの御指摘の趣旨を踏まえて、改めてどのような調査が可能か検討いたします」と従来の答弁を変更し、前向きな回答をされました。

この答弁を踏まえ、この8月に行われたものです。

この調査については、教育新聞でも取り上げられています。

◆最後に

定員内不合格をなくすために取り組み始めて3年。ようやく第1歩を踏み出しました。

定員内不合格の実態調査の結果、数値の把握すらしていない自治体が4県あるなど、取り組みの地域格差がうかがえます。

調査結果を検討し、高校進学を希望する障害のある受験生や障害児の高校受験に取り組む団体などと連携し、各自治体へ働きかけてまいりたいと存じます。合わせて文科省には、都道府県教委に対して、実態把握と定員確保の働きかけ、受検時の合理的配慮に関して、本人の不利益にならない方法を基本的考え方として据えることの徹底などを求めてまいりたいと存じます。

引き続き、障害のある子もない子も希望者が全員高校に行けるよう、せめて公立高校は公約としての定員を確保するよう取り組んでいります。